<イッセー>
「……話はわかったよ」
木場は嘆息しながらもコーヒーに口をつけた。
ファミレスに木場を呼びつけた俺たち。
「いま、例のエクスカリバー使いの2人と会っている。木場にも来てほしい」
と、伝えると文句も言わずにファミレスへ顔を出してくれた。
「正直言うと、エクスカリバー使いに破壊を承認させるのは遺憾だけどね」
「ずいぶんな言いようだね。そちらが『はぐれ』だったら、問答無用で切り捨てているところだ」
睨み合う木場とゼノヴィア。おいおい、共同作戦前なんだから、ケンカは止めようぜ。
「やはり、『聖剣計画』のことで恨みを持っているのね? エクスカリバーと――教会に」
イリナの問いに木場は目を細めながら「当然だよ」と冷たい声音で肯定した。
「でもね。木場くん。あの計画のおかげで聖剣使いの研究は飛躍的に伸びたわ。だからこそ、私やゼノヴィアみたいに聖剣と呼応できる使い手が誕生したの」
「だが、計画失敗と断じて被験者のほぼ全員を始末するのが許されると思っているのか?」
木場は憎悪の眼差しをイリナに向ける。
確かに処分は酷い。あまりに残酷だ。神の信徒とやらにやるにしてはあまりに非人道的だと思う。
イリナも反応に困っている様子だ。そこへゼノヴィアが言う。
「その事件は、私たちの間でも最大級に嫌悪されたものだ。処分を決定した当時の責任者は信仰に問題があるとされて異端の烙印を押された。いまでは堕天使側の住人さ」
「堕天使側に? その者の名は?」
「――バルパー・ガリレイ。【皆殺しの大司教】と呼ばれた男だ」
バルパー。そいつが木場の仇敵ってわけか。
「……堕天使を追えば、その者にたどり着くのかな」
木場の瞳には新たな決意みたいなものが生まれていた。目標がわかっただけでも木場にとってみれば大きな前進か。
「僕も情報を提供したほうがいいようだね。先日、エクスカリバーを持った者に襲撃された。その際、神父を1人殺害していたよ。やられたのはそちら側の者だろうね」
『!』
この場にいる全員が驚いた。当たり前だって! まさか、木場のほうが先に接触していたなんて! 今まで黙っていたのはなぜ? 木場に思うところがあったのは確かだと思うが。
「相手の名はフリード・セルゼン。この名に覚えは?」
フリード! クソ神父だ! 俺は十分に覚えがあるぜ。先日の一件で敵対した白髪のイカレや朗じゃないか! まだこの町に潜伏してたのかよ!
木場の言葉にゼノヴィアとイリナが目を細める。
「なるほど、奴か」
「フリード・セルゼン。元ヴァチカン法王庁直属のエクソシスト。13歳でエクソシストとなった天才。悪魔や魔獣を次々と滅していく功績は大きかったわ」
「だが奴はあまりにもやりすぎた。同胞すら手にかけたのだからね。フリードには信仰心なんてものは最初から無かった。あったのはバケモノへの敵対意識と殺意。そして、異常なまでの戦闘執着。異端にかけられるのも時間の問題だった」
あー、やっぱりそちらでも手に余ってたのね。わかりますよ、その気持ち。
「そうか。フリードは奪った聖剣を使って私たちの同胞を手にかけていたか。あのとき、処理班が始末できなかったツケを私たちが払うことになるとはね」
忌々しそうに言うゼノヴィア。フリード、いろんな人に嫌われているな。当然か、
「まあいい。とりあえず、エクスカリバー破壊の共同戦線といこう」
こうして俺たちの教会側との会談は終わった。
◆
お互いの連絡先を交換したあと、食事を終えて出ていく2人を見送り、俺たちは大きなため息を吐いた。
なんとかうまくいった……。無茶な作戦だと思ったけど、意外にもできるもんだな。失敗したから、エクスカリバーで切断されていたかもしれないと想像すると背筋が寒くなる。
悪魔と神側の争いの火種にもなったかもしれないしな……。我ながら大胆すぎる作戦でした。
「……イッセーくん。どうして、こんなことを?」
木場が静かに訊いてくる。こいつにしてみれば、自分の怨恨をどうして手助けしてくれるのか不思議なのかな。
「ま、仲間だし。眷属だしさ。それにおまえには助けられたことがあったからな。借りを返すってわけじゃないけど、今回はお前の力になろうと思ってさ」
「僕が下手に動けば部長に迷惑がかかるから――。それもあるんだよね?」
「もちろん。あのまま暴走されたら、部長が悲しむ。まあ、俺が今回独断で決めたことも部長に迷惑かけているんだろうけど、おまえが『はぐれ』になるよりマシだろう? 結果オーライになっちまったが、教会の関係者と協力態勢取れたし……、あとエイジにも感謝しておけよ」
「エイジくんに?」
「ああ。あいつは俺たちよりも先にあいつらと交渉してて、おまえが聖剣エクスカリバーを破壊しても『黙認』してくれるように頼んでいたんだ。『表』だって協力できないからって」
「エイジくんが……」
表だってってエイジが聖剣使いであるからだろう。木場も言葉の意味を分かったようで意外そうにしていた。
そこへ小猫ちゃんが口を開く。
「……祐斗先輩。私は、先輩がいなくなるのは……寂しいです」
少しだけ寂しげな表情を小猫ちゃんが浮かべる。普段無表情だからか、その変化はこの場にいる男子全員に衝撃を与えていた。
「……お手伝いします。……だから、いなくならないで」
――っ。
小猫ちゃんの訴え。やべぇ。木場じゃないのに俺がきゅんときちゃった。ああ、俺、絶対に眷属裏切れないね。後輩の女の子にこんなこと言われたら、反逆なんてできやしないぜ!
木場は困惑しながらも苦笑いする。
「ははは。まいったね。小猫ちゃんにそんなことを言われたら、僕も無茶できないよ。わかった。今回は皆の好意に甘えさせてもらおうかな。イッセーくんのおかげで真の敵もわかったし、エイジくんにも迷惑かけたみたいだね。でも、やるからには絶対にエクスカリバーを倒す」
おおっ! 木場もやる気になってくれたか!
小猫ちゃんも安堵したのか、小さく微笑んだ。
やべぇ! かわいいよ、小猫ちゃん! ロリコンじゃないのにときめいちゃった!
「よし! 俺らエクスカリバー破壊団結成だ! 頑張って奪われたエクスカリバーとフリードのクソ野郎をぶっ飛ばそうぜ!」
気合の入った俺! 木場と小猫ちゃんがいればなんとかなる! エクスカリバー、フリード、待ってろよ!
しかし、この場で1人だけ乗り気じゃない者がいる。
「……あの、俺も?」
手を上げながら、匙が訊いてくる。
「つーか、結構俺って蚊帳の外なんだけどさ……。結局、何がどうなって木場とエクスカリバーが関係あるんだ?」
ああ、そういや、こいつは木場とエクスカリバーの関係知らないのか。
「……少し、話そうか」
コーヒーに口をつけたあと、木場は自分の過去を語った。
◆
木場の話は部長が話したものよりすごく悲しい話だった。
木場の壮絶な過去に、匙なんてボロボロ涙を流して、号泣していた。
匙は木場の手を取り言う。
「木場! 俺はなぁぁぁぁ、いま非常にお前に同情している! ああ! 酷い話さ! その施設の指導者やエクスカリバーに恨みを持つ理由もわかる! わかるぞ!」
おおっ、力強くうんうんとうなずき出した。
「俺はイケメンのお前が正直いけすかなかったが、そういう理由なら別だ! 俺も協力するぞ! ああ、やってやるさ! 会長のしごきをあえて受けよう! それよりもまずは俺たちでエクスカリバーの撃破だ! 俺もがんばるからさ! おまえもがんばって生きろよ! 絶対に救ってくれたリアス部長を裏切るな!」
言っていることはアレだが、こいつも熱いな! ていうか、いい奴だ。うん、悪い奴じゃない。匙を無理やり連れてきてかわいそうかなって思ったけど、結果的に良かった。
「よっし! いい機会だ! ちょっと俺の話も聞いてくれ! 共同戦線を張るなら俺のことも知ってくれよ!」
匙は気恥ずかしそうにしながらもランランと瞳を輝かせて言った。
「俺の目標は――ソーナ会長とデキちゃった結婚することだ! でもな、デキちゃった結婚ってモテない奴にとってみたらハードル高いんだぜ? デキちゃう相手がそもそもいないわけでさ……。でも、俺、いつか会長とデキちゃった結婚するんだ……」
――っ。
匙の告白を聞き、俺は心の奥底から込み上げてくるものがあった。そして俺の
「匙! 聞け! 俺の目標は部長の乳を揉み――そして吸うことだ!」
「…………ッ」
ぶわっ。
一拍あけ、匙の目からも大量の涙が流れだす。
「兵藤ッッ! おまえ、わかっているのか? 上級悪魔――しかもご主人さまのお乳に触れることが、どれほど大きな目標かということを」
「匙、触れれるんだよ。上級悪魔のおっぱいに、ご主人さまのおっぱいに俺らは触れられるんだよッッ! 実際、俺はこの手で部長の胸に何度かタッチした」
わなわなと手を震わせながら俺は言う。匙は驚愕の眼差しで俺の手を見つめていた。
「バカなっ!? そんなことが可能なのか!? 嘘じゃないよな!?」
「嘘じゃない。ご主人さまのおっぱいは遠い。けど、追いつけないほどの距離じゃない」
「吸う!? ……か、会長の乳をす、吸える……。ち、乳首だよな? 吸う場所は乳首なんだよな?」
「バカ野朗! おっぱいで吸えるところといったら、乳首以外にあるものかよ! そうだよ! 乳首に吸い付くんだ!」
「――ッッ!」
俺の力強い言葉に、匙は無言の男泣きをしていた。
「匙! 俺たちは1人ではダメな『兵士』かもしれない。だが、2人なら違う。2人なら飛べる! 2人なら戦える! 2人ならやれる! 2人ならいつかデキちゃった結婚もできるかもしれない! ご主人さまとエッチしようぜ!」
「うん。うん!」
そう、ご主人さまのおっぱいに惚れた男2人なら、やれないことなんてないんだ!
匙と手を取り合い、うなずきあった。
同志。戦友。言葉を並べてみてもこの関係を明確に表せるものはないだろう。
俺と匙はそのとき、魂で何かを通じ合い、感じ合い、繋がりあった。
「……あはは」
「……やっぱり最低です」
号泣し合う俺たちを横で木場と小猫ちゃんじゃ嘆息していた。見れば店内の色んな人が奇異な眼で俺たちを見ている。気にしない気にしない。
こうして、『エクスカリバー破壊団』が結成されたのだった。
<後書き!>
ほぼ原作ぱくってますが、
文章を原作ではなく、こん作品、二次創作の物語として読んでくれれば、原作通りにした理由が、分かる人にはわかるはず!