<エイジ>
「エイジ、よかった……本当によかった」
サキュバスたちとの契約を終えて帰ってきた俺の胸に、部長が抱きつきながら涙を流している。
「ええっと……」
「久しぶりだね、エイジ」
「お久しぶりです、神城さま」
戸惑っているとサーゼクスとグレイフィアが挨拶してきた。
「2人とも久しぶり……」
とりあえず、挨拶を返すが状況が分からない。
「エイジ! おまえ無事だったのか!?」
「よかった、無事だったんだね」
「エイジくん、お体はだいじょうぶですか?」
イッセーと木場、朱乃さんと続き、他のメンバーも近寄ってくる。
「えっと、いまどういう状況なんだ?」
サーゼクスがくすりと笑みを浮かべる。
「キミがサキュバスに襲われていたと知って、皆心配していたんだよ」
部長が俺の頬をなでながら言う。
「先ほどお兄さまとソーナに訊いたの。ゴメンなさいエイジ、私がしっかり依頼内容を確認していれば……」
サキュバスに襲われたことか~、まっ、契約完了したんだし、体のこともあるから全部話すか。
「リアス部長、安心してください。ほらきちんと契約を結んできたんですよ」
『え?』
対価である契約書と500件ものアドレスの書かれた巻物、特性の札、500万の札束、さらにそれらを持ってサキュバスたちと撮影した集合写真を見せると、サーゼクス以外が驚きの表情になる。
「エイジくん、キミって……」
木場が驚愕の表情になり、朱乃さんの顔は笑顔で固まり、アーシアと支鳥先輩もフリーズ、ゼノヴィアは苦笑し、小猫ちゃんは体を隠すように距離をとった。
「マジで!? 何人!? っていうか何百人とエッチしたんだよおまえ!?」
イッセーはきわどい衣装を美女たちの写った写真を食い入るように見つめた。
「規格外だとは思っていたけど……」
部長も泣き止んで対価の品物を手に取り震えた。
「ああ、あと部長」
「なに? なにかあったの?」
尻尾と翼を生やす。
『――っ!?』
細長い先端が可愛らしいハートになっている尻尾が現れた瞬間――サーゼクスを含め、部室の時間が停止した……。
◆
俺が生やした尻尾について、とりあえず部室のソファーに座って話し始めた。
「つまり悪魔の駒が何らかの暴走をして、体をサキュバス、いや、インキュバスに変えたのというのか?」
サーゼクスと向かい合いで座り、俺の両側には部長と会長が腰を降ろしている。
俺は尻尾を振りながら答える。
「いままで人間ベースの転生悪魔だったが、俺の体はインキュバスに体の造りが変わったみたいなんだ」
まあ、まだ不安定なんだがな。
「精気を吸うこともできたし、この羽と先端がハート型になっている尻尾はもはやインキュバスとしかいえないだろう?」
サーゼクスはぷっと笑いを漏らす。
「まさかインキュバスになるとは、エイジならサキュバス500人ぐらいでは枯れはしないと思っていたが、まさか、まさか、本物のインキュバスになるとは……アハハハハッ!」
「まったく、そんなに笑うなよ。俺もインキュバスになって戸惑っているんだからさ」
「すまないすまない。だがやはりキミは面白いね。妹の学園に入るように手回しして本当によかったよ」
あっ、そういえば!
「おまえに妹がいるなんて聞いてなかったぞ! しかもセラたんの妹も通っているなんて一言も言ってなかったよな!?」
「セラたんって……、レヴィアタンさまとも知り合いなの!?」
部長が驚いているようだが、それはあとだ。サーゼクスは当然のように言う。
「いや、確かに言ったぞ『美少女が多い元女子高の学園』だって、2人とも美少女だろう?」
「ああ、美少女だけど!」
両側の部長と会長の頬が赤らんだように見えるが今は、目の前のこの野朗だ!
サーゼクスは『それに』と言って俺の顔を見た。
「知ってしまっていたら、運命的な出会いができないだろう?」
ぐっ……それはそうだ……。
「まあ、キミがまさか妹の眷属悪魔になっていて婚約パーティーに乗り込んでくるとは思わなかったけどね。ライザー戦のときに久しぶりにキミの顔をみて笑いを堪えるのが大変だったよ」
そう言って笑うサーゼクス。
この野郎……!
尻尾の先端で差して尋ねる。
「で、なんでサーゼクスがここにいるんだよ?」
「ちょっ、エイジ! 言葉使い――」
「いや、いいんだよ、リアス。――もうすぐ授業参観だろう? 妹の授業参観にきたのさ。ああ、あと3大会議の場所がここになったので下見みと……」
雰囲気を変えて俺を真剣な表情で見る。
「キミがどちら側につくかを確認にきたんだが、その必要はなかったみたいだね」
俺も雰囲気を変えて真剣に言う。
「ああ。俺はリアス・グレモリーの眷属悪魔で、体も完全な悪魔になっているからな。悪魔側につくさ」
「キミが悪魔側を選択してくれて嬉しいよ」
サーゼクスは一拍おいて言う。
「エイジ、近々3大勢力のトップが会談のために集まるが、一応キミはどの勢力へつくか先にトップの3名と会談を開かないといけないよ。どっちつかずは一番場を混乱させるから、3大勢力は方針を示してくれるだけで、何かの対価を払うとも言っているから、悪魔側につくとしても3大勢力それぞれに対価を要求しないといけないよ」
俺は魔王クラスや神クラスだから、俺がふらふらするだけでもダメってわけか。
要求しろってのは、俺の要求を呑んだってことで、俺を信用するためか。
まっ、無償でどこかの勢力につくより、3大勢力が俺の要求を呑んだから身を固めたってほうが他も安心するんだろ。
「了解した。3大勢力すべてにそれぞれ要求するさ。あと悪魔側につくんだから、悪魔側に対して一番重い対価を要求しないと体裁が取れないとか言うんだろ?」
「その通りだ。無償で悪魔側につくとキミは言ってくれるが、それでは納得しない者、信用できない者がでてくるだろう。悪魔側への要求は大きいものにしてくれないとこちら側が困る」
そこでサーゼクスの真剣だった顔が一気に緩む。
「悪魔側への要求だがウチの妹との婚約でもいいよ」
「お兄さま!」
部長が真っ赤になって叫ぶ。
悪魔側につく代わりにリアス・グレモリーを妻にする。
それも魅力的ではあるんだが……。
「それはいい」
部長! ショックを受けたような顔をしないでください!
「ウチの妹では不満かい?」
分かっていやがるくせに問う魔王さま。絶対1回ボコボコにしてやる!
「リアス・グレモリーを政治の対価でもらいたくないんだよ。婚約するなら政治とか抜きで婚約するほうが幸せだろ」
部長が途端に真っ赤になって顔をふせた。
イッセーは「やっぱり焼き鳥男とは違うんだな! 見直したぞエイジ!」と感動しているみたいだけどわけが分からん。
「3大勢力への要求はそれぞれきちんと考えておくよ」
「わかった。これ以上難しい話をここでしても仕方がない。うーむ、しかし、人間界にきたとはいえ、夜中だ。こんな時間に宿泊施設は空いているだのだろうか?」
宿泊施設ねえ……、ラブホテルなら開いてるんじゃなねえかな?
と、思っていたら、イッセーが手をあげながら言った。
「あ、それなら、俺の家に泊まりますか?」
◆
「なるほど、エイジと妹が迷惑をおかけしてなくて安心しました」
「そんなお兄さん! エイジくんもリアスさんもとても礼儀正しい子ですわよ」
「ええ、エイジくんは今どき珍しい好青年ですし、リアスさんはイッセーにもよくしてくださる素敵なお嬢さんです」
イッセーの家のリビングで、伝説の魔王とイッセーの両親が挨拶を交わしていた。
っていうか好青年って……。
魔王さまの隣には部長。その後方にはグレイフィアさんが待機している。
その様子を少し離れたい位置から、イッセーとアーシア、そして俺が窺っていた。
一応魔王としての身分を隠し、部長の父親の会社の跡継ぎという設定だ。
「そちらのメイドさんは――」
「ええ、グレイフィアです」
イッセーの父親の問いにサーゼクスが答える。
「実は私の妻です」
『ええええええええええええええええッッ!』
部長と俺以外が全員驚きの声を出すが、グレイフィアは無表情のまま、サーゼクスのほっぺたをつねった。
ああ、そう言えば普段はただのメイドさんだったね。
「メイドのグレイフィアです。我が主がつまらない冗談を口にして申し訳ございません」
「いたひ、いたひひょ、ぐれいふぃあ」
静かに怒っているグレイフィアと、涙眼で朗らかに笑っている魔王さま。隣で部長が恥ずかしそうに両手で顔を覆っていた。
こいつらって結婚してかなり経つのに新婚みたいにイチャイチャするんだよな~。
「それでは、グレモリーさんも授業参観を?」
「ええ、仕事が一段落しているので、この機会に一度妹の学び舎を見つつ、授業風景を見学できたらと思いましてね。当日は父も顔を出す予定です」
「まあ、リアスさんのお父さんも」
「父は駒王学園の建設などにも携わっておりまして、私同様良い機会だから顔を出すようです。本当はリアスの顔を見たいだけだと思いますが」
「グレモリーさん! お酒はいけますかね? 日本の美味しいお酒があるんですがね」
「それは素晴らしい! ぜひともいただきましょう! 日本の酒はいける口なので!」
サーゼクスは妹の眷属悪魔の両親に挨拶と、一応の後見人である俺の隣人として挨拶がてら泊めてもらうことになったそうだが、すでに意気投合して酒盛りを始めてしまった。
そして俺が何故いるかというと、挨拶に同伴しているだけではない。
なぜか俺もイッセーの家に泊まることになっていたのだ。
◆
「そ、そんな……エイジと寝てはダメなんですか?」
宴が終わり、終身時間となっていた。
イッセーの部屋の前で悲しそうな表情を浮かべて部長が魔王さまに詰め寄り、イッセーが『てめぇ! いつも部長と一緒に寝てるのか!?』と叫んできたが、無視しよう。
「今夜は彼らと少し話しながら床につきたいんだ。悪いけど、リアス、今夜だけはエイジと兵藤一誠くんを貸しておくれ」
そうサーゼクスが俺らと話しながら眠りたいといい、すでに来客用の布団を2つ用意してくれていた。
「エイジ……」
俺に抱きついてくる部長! 嬉しいですけど! イッセーが号泣してますよ!?
学校では凛としている部長だけど、最近ほんとうに甘えん坊になってきた。
「1人で眠れる? 私が隣にいなくても平気? 私は平気じゃないわ。あなたが隣にいないというだけで――」
うん。最近毎晩裸で抱き合って眠っていたからね。
3大勢力の会談の前で本番はお預けくらっていたけど、本番以外なら結構激しいところまでしていたからね。
「お嬢さま、さあ、お部屋へ戻りましょう。今夜はお嬢さまと一緒に私もご厄介になりますからね。それではサーゼクスさま、おやすみなさいませ」
言いかけの部長の腕をグレイフィアが引いていく。部長が俺の体から離れていった。
「わかっているわよ、グレイフィア……」
名残惜しそうな部長の姿。その光景は子共と離ればなれになるしかない親子の別れのシーンそのものだ。
イッセーに向かってぺこりと頭を下げるアーシア。
「あ、あの、イッセーさん、おやすみなさい。私も残念ですが、今夜は自室で眠ります」
――なっ!?
「おまえアーシアといつも――」
驚きいてイッセーを見ると、イッセーは先ほど号泣していた姿がウソのように消え、得意げな表情を浮かべていた。
「ふっ、俺ももう子供じゃないってことだ。――最近ずっとアーシアと添い寝している!」
……添い寝? 添い寝だけか?
誇らしげに笑うイッセーに、同じく部長に手を出せないでいた自分がいたため『ヘタレ』と言うことは出来なかった……。
「さ、中に入ろうか」
◆
イッセーの部屋でサーゼクスは、いろいろ3大勢力のこととかアザゼルのことを語ったが、最後のブースデット・ギアの話は俺に衝撃を与えた。
『倍加の力をおっぱいにかける』
さすがサーゼクスだった。
まさか、おっぱいに――おっぱいに倍加の力をかけるなんて誰も思いつかないだろう。
イッセーが興奮して部長の大きな胸に倍加をかけてみたいと震えていたから、怒ってするならアーシアの美乳を大きくしたり、小猫ちゃんのぺったんおっぱいにしろと言って、そちら側へ意識を持っていかせたが……。
俺も正直どうなるかすごい気になっていた。
だが、それよりも明日……。
俺の家の住人がやっと帰ってくる。
悪魔側への要求を考えてみたが、結局あれしかなかった。