※この作品はR-18です。

ハイスクールD×D 世界を渡る転生者   作:上平 英

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第32話 開かずの教室の吸血鬼

 

<エイジ>

 

 

 授業参観のあとイッセーの家に集まり、授業参観で録画したビデオの鑑賞会が始まり、俺と部長とアーシアは羞恥プレイにさらされた。

 

 俺はセルベリアたちに、部長はサーゼクスのお父さんに、アーシアはイッセーの両親に、ビデオを鑑賞しながら賞賛されるという、何とも恥ずかしかった。

 

 イッセーも鑑賞会ではしゃぐ両親にようすに顔を赤くしていた。

 

 そんなことがあった日の翌日の放課後。

 

 俺は旧校舎一階の「開かずの教室」とされていた教室の前に立っていた。

 

 部員全員が集まっていた。なんでも厳重に封印されている部長の最後の眷属悪魔、『僧侶』が中にいるそうだ。

 

 先日、サーゼクスが部長と朱乃さんを連れて行ったのは、なんでも『僧侶』の封印を解くためだったらしい。

 

「――さて、扉を開けるわ」

 

 部長は扉に刻まれていた呪術の刻印を解いてから扉を開く。

 

「イヤァァァァァアアアアアアアッッ!」

 

 ――ッ! とんでもない声量の絶叫がなかから発せられる。部長は予想していたのか驚くこともなく、ため息をつくと朱乃さんと共になかへ入っていってしまった。

 

『ごきげんよう。元気そうでよかったわ』

 

『な、な、何事なんですかぁぁぁぁ?』

 

 声からして年下の男。声の位置から身長は低めだな。

 

『あらあら。封印が解けたのですよ? もうお外に出られるのです。さあ、私たちと一緒に出ましょう?』

 

 朱乃さんのやさしい声。いたわりを感じる。やさしく接してあげようって感じだが、しかし――。

 

『やですぅぅぅぅぅ! ここがいいですぅぅぅぅぅ! 外に行きたくない! 人に会いたくないぃぃぃぃっ!』

 

 かなりの引きこもりみたいだ。

 

 部屋の中に入ってみると、床にへたりと力なく座り込み、部長と朱乃さんから逃げようとしている。金髪と赤い双眸をした人形みたいに端正な顔立ちをした男がいた。しかも、駒王学園の女子の制服に身を包んでいた。

 

 イッセーがそいつを見て嬉しそうに叫ぶ。

 

「おおっ! 女の子! しかも外国の!」

 

 素晴らしいといわんばかりに喜ぶイッセーに苦々しく伝える。

 

「おい、イッセー。こいつは男だぞ。おまえ男の娘がいけるタイプだったのか?」

 

「え?」

 

 イッセーから距離をとる。

 

 部長も喜んでいたイッセーに告げた。

 

「さすがエイジね。イッセー、見た目、女の子だけれど、この子は紛れもない男の子よ」

 

「いやいやいや、どう見ても女の子ですよ、……え? マジで?」

 

「女装趣味があるのですよ」

 

 横から朱乃さんが言った。

 

「ええええええええええええええええええっ!?」

 

 イッセーは驚愕の叫び声を上げた。

 

「ヒィィィィィッッ! ゴメンなさいゴメンなさぁぁぁぁぁい!」

 

 謝る女装男子。イッセーは頭を抱えて、その場にしゃがみこんだ。ああ! その気持ちはすごくわかるぞ! というか……。

 

「どうしたの、エイジ。顔色が真っ青よ? しかも震えてるじゃない」

 

 部長が訊いてくる。――そうだ。俺の体は嫌な汗を出して力が急に抜け、足がふらついていた。

 

「お、俺は……男の娘とか性別が男なのに女みたいなヤツは苦手なんです……。ほら、俺の尻尾も力無しに萎えているでしょう」

 

「あら? それは大変ですわね。だいじょうぶですか?」

 

 朱乃さんが微笑みながら胸で俺の頭を受け止めて体を支えてくれる。ああっ、柔らかい乳パワーで俺の気力が少しずつ回復してきた。

 

「朱乃さぁん」

 

 俺は泣きながら朱乃さんの胸に顔を埋めた。

 

「よしよし、うふふ、エイジさんにも弱点があったんですねぇ」

 

 頭を撫でてくれる朱乃さん。

 

 顔だけ女装男子に向けると、イッセーが女装男子に鬼の形相で怒鳴っていた。

 

「女装趣味ってのがさらに残酷だ! 似合っている分、余計に真実を知ったときのショックがデカい! 引きこもりなのに女装癖かよ! 誰に見せるための女装ですか!?」

 

「だ、だ、だ、だって、女の子の服のほうがかわいいもん」

 

「かわいいもん、とか言うなぁぁぁぁ! クソッ! 野朗のクセにぃぃぃ! 俺の夢を一瞬で散らしやがってぇぇぇぇぇっ! お、俺は、アーシアとおまえのダブル金髪美少女『僧侶』を瞬間的にとはいえ、夢見たんだぞ!? 返せよぅ! 俺の夢を返せよぅ!」

 

「……人の夢と書いて、儚い」

 

「小猫ちゃぁぁぁぁん! シャレにならんから!」

 

 朱乃さんにパワーをもらっていると、部長に引き剥がされた。

 

「こら朱乃! 何してるのよ!」

 

「エイジさんを慰めていただけですわよ」

 

「それは私がやるわ!」

 

 部長が俺の頭を胸で挟む。結構強い力だ。普通だったら窒息してしまうが、俺ならだいじょうぶ! 尻尾も上に向いて左右に揺れている!

 

「と、と、と、ところで、この方は誰ですか?」

 

 女装男子が部長に訊く。部長は俺の頭を胸に押し付けながら言った。

 

「あなたがここにいる間に増えた眷属たちよ。『兵士』の神城エイジと兵藤一誠、『戦車』のゼノヴィア、あなたと同じ『僧侶』のアーシア」

 

 紹介されたようで、「よろしく」と3人は挨拶するが、俺の鼻と口は完全に谷間の間で塞がれているために言葉はでない。

 

「ヒィィィ、人がいっぱい増えてる!」

 

 対人恐怖症でもあるのか?

 

「お願いだから、外に出ましょう? ね? もうあなたは封印されなくてもいいのよ?」

 

 部長はやさしく言うが――。

 

「嫌ですぅぅぅぅ! 僕に外の世界なんて無理なんだぁぁぁぁぁっ! 怖い! お外怖い! どうせ、僕が出てっても迷惑をかけるだけだよぉぉぉぉっ!」

 

「ほら、部長が外に出ろって――」

 

「ヒィィィィ!」

 

 イッセーがたぶん少しだけ強引に手か何かを引っ張ったんだろう。女装男子の悲鳴が聞こえた。

 

 それと同時に俺の頭をなでていた部長の手がピタリと停止した。

 

 一ミリも動いていない。

 

「あれ? 部長?」

 

 部長の胸から顔を出して顔を見ると部屋の中にいた人物やものが、景気が停止していた。

 

 本当は見たくもなかったが、部屋で動いていた女装男子に訊いてみる。

 

「おまえがやったのか?」

 

「へ? 動けるんですか?」

 

 …………。なんとも気の抜けた返答だった。

 

「おまえが時間かなんかを止めたんだろ?」

 

「は、はい! っ! 怒らないで! 怒らないで!」

 

 突然、叫び始めた女装男子。俺の気力ゲージを表している尻尾が床に付く前に女装男子に話しかけた。

 

「別になにも悪さをするつもりもなさそうだし、怒りはしないから解除してくれないか?」

 

 フラフラになりながら頭を撫でてやる。

 

「す、すみません! 僕! 神器が上手く制御できなくて……! もう少しすれば解けると思うんですけど、すみません!」

 

 ああ、尻尾が床に――。

 

 そのぎりぎりの中で時間が元にもどった。

 

「あれ? いつの間にエイジが女装野朗の近くに?」

 

「おかしいです。何かいま一瞬……」

 

「……何かされたのは確かだね」

 

 イッセーとアーシア、ゼノヴィアが驚き、他のメンバーは納得とうなずいていた。

 

「さすがエイジね」

 

「ええ。やはり効きませんでしたね」

 

 部長と朱乃さんがうんうんとうなずいていたが、もう限界――。

 

「エイジ!」

 

 フラフラ~っと床に倒れる寸前でゼノヴィアに救われた。ゼノたんの胸……女の子の本物の匂い……。

 

「おまえ! エイジになにをしたんだ!」

 

「ええっ!? ぼ、僕はなにも――」

 

 ゼノヴィアの怒鳴り声に、驚きの声を上げる女装男子。

 

 そこに部長が説明を始めた。

 

「ゼノヴィア。エイジが倒れてたのはその子じゃないわ。……いいえ、その子のせいなんでしょうけど。その子が直接的にしたのは時間を止めたことだけよ」

 

「時間を止めた?」

 

 新加入メンバーが首を傾げるとていると、朱乃さんが説明し始めた。

 

「その子は興奮すると、視界に映したすべての物体の時間を一定の間停止することができる神器を持っているのです」

 

 結構強力な神器だな。

 

「彼は神器を制御できないため、大公及びサーゼクスさまの命でここに封じられてたのです」

 

 部長は女装男子をうしろからやさしく抱きしめ、俺たちに言う。

 

「この子はギャスパー・ヴラディ。私の眷属『僧侶』。いちおう、駒王学園の一年生なの。――そして、転生前は人間と吸血鬼のハーフよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『 停止世界 の 邪眼 (フォービトゥン・バロール・ビュー)』?」

 

 イッセーの問いに部長はうなずいた。

 

「そう。それがギャスパーの持っている神器の名前。とても強力なの」

 

「時間を停めるって、それ、反則に近い力じゃないですか?」

 

「ええ、そうね。でもあなたの倍加の力も、白龍皇の力も反則級なのよ?」

 

 そうだよなぁ。倍加とか半減とか反則すぎるよなぁ。

 

「問題は、それを扱えないところ。それゆえギャスパーはいままで封じられてきたのよ。無意識に神器が発動してしまうのが問題視されていたところなの」

 

「しかし、そんな強力な神器を持った奴をよく下僕にできましたね。しかも駒1つ消費だけで済むなんて」

 

 イッセーの言葉に部長は一冊の本を宙に出現させた。そしてペラペラとページをめくり、イッセーに差し出した。

 

「駒の消費が1つで済んだ理由はエイジのときと違ってきちんとギャスパーにあるわ。――『 変異 の 駒 (ミューテーション・ピース)』を使ったの」

 

「……ミューテーション・ピース?」

 

 イッセーに木場が説明を始めた。

 

「通常の『悪魔の駒』とは違い、明らかに駒を複数使うであろう転生体が、ひとつで済んでしまったりす特異な現象を起こす駒のことだよ」

 

「部長はその駒を有していたのです」

 

 と朱乃さん。木場がさらに続ける。

 

「だいたい上位悪魔の10人に1人はひとつぐらい持っているよ。『悪魔の駒』のシステムを作り出したときに生まれたイレギュラー、バクの類らしいけど、それも一興としてそのままにしたらしいんだ。ギャスパーくんはその駒を使った1人なんだよ」

 

 へぇ、そんな便利な駒が……サーゼクスに追加で頼んでおくか。

 

「問題はギャスパーの才能よ」

 

「部長、どういうことですか?」

 

「彼は類希な才能の持ち主で、無意識のうちに神器の力が高まっていくみたいなの。そのせいか、日々力が増していってるわ。――上の話では。将来的に『禁手』へ至る可能性もあるという話よ」

 

 イッセーが驚いた。まあ、禁手になれないで困ってるのに、何もしないで禁手になるほどの才能の持ち主に驚いているんだろう。てか、禁手か~……。

 

 時間停止の禁手は結構強そうだな~。しかも制御できないのは怖い。

 

 部長は困り顔で額に手を当てていた。

 

「そう。危うい状態なの。けれど、私の評価が認められたため、いまならギャスパーを制御できるかもしれないと判断されたそうよ。私がイッセーと祐斗を『禁手』にいたらせたと上の人たちは評価したのでしょうね」

 

 ああ……、たぶん俺の加入も評価を上げる一員になったとサーゼクスに訊かされたな。ていかサーゼクス、相手が男の娘だと最初から言っとけよ……。

 

「……うぅ、ぼ、ぼ、僕の話なんてして欲しくないのに……」

 

 イッセーのそばに置かれた大きなダンボールから声がした。イッセーはそれを無言で蹴った。

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!」

 

 悲鳴が聞こえてきた。当然、ギャスパーだ……。

 

「能力的には朱乃に次いで4番目なんじゃないかしら。ハーフとはいえ、由緒正しい吸血鬼の家柄だし、強力な神器も人間としても部分で手に入れている。吸血鬼の能力も有しているし、人間の魔法使いが扱える魔術にも秀でているわ。とてもじゃないけど、本来『僧侶』の駒ひとつで済みそうにないわね」

 

 そうなのか~……。ちなみに能力番付けは俺、部長、朱乃さんのトップスリーだ。

 

 それからギャスパーの紹介が行われた。

 

 なんでもデイウォーカーで日の光が平気……だけど本人は太陽の光が苦手ではなく、嫌い。

 

 授業に出ていない。ダンボールが自分の世界で満足。外の世界嫌い。

 

 さらに吸血鬼なのに血が嫌いで飲むのも苦手。飲まないといけないそうだが、あんまり飲みたくないそうで、レバーも嫌い。

 

「……へたれヴァンパイア」

 

 そんなギャスパーに小猫ちゃんが吐き捨てるような痛恨な一言を放った。

 

「うわぁぁぁぁん! 小猫ちゃんがいじめるぅぅぅぅ!」

 

 1年生同士だから容赦がないんだろ。小猫ちゃんが生き生きしている。

 

「とりあえず、私が戻ってくるまでの間だけでも、イッセー、アーシア、小猫、ゼノヴィア、あなたたちにギャスパーの教育を頼むわ。私と朱乃は3すくみのトップ会談の会場打ち合わせをしてくるから。それと祐斗、お兄さまがあなたの禁手について詳しく知りたいらしいから、このあとついてきてちょうだい」

 

「はい、部長」

 

「さてと――」

 

 部室の中のメンバーたちの視線が俺に集まる。

 

「だいじょうぶなの、エイジ」

 

 部長が俺の頭をなでてくださる!

 

「な、なんとか……」

 

 現在俺はソファーに寝転がり、うつ伏せで部長に膝枕されていた。

 

「おまえ、本当にだいじょうぶか?」

 

 膝枕されているのに嫉妬の視線ではなく本気で心配してくるイッセー。あはは、たぶんマジで体調が悪く見えるんだろう……いや、マジで悪いんだけど……。

 

「……ああ、部長のおかげで回復してきた」

 

「エイジくんにも弱点があったんだね」

 

 木場が言ってくるがそちらを向く元気もない。

 

 部長の匂いを嗅いだり、膝に顔を埋めて言う。

 

「前から苦手は苦手だったんだが、昔はここまで苦手じゃなかった……たぶんインキュバスになったのが原因だと思う……」

 

「いつもの元気のいい尻尾が落ち込んでいるところをみると、そうみたいですわね」

 

 朱乃さんが尻尾を優しくなでてくる。ありがとうございます! 少し元気になりました!

 

「本当は会談の準備の間だけでもエイジにギャスパーの神器の特訓を任せようと考えたけど、この様子を見ると無理そうね」

 

 残念そうな部長、俺は慌てて膝から頭を起こす。

 

「ぶ、部長! さっきは久々に見たのと体の変化にビックリしただけで、慣れれば別に――」

 

「ひぃぃぃぃっ!」

 

 ギャスパーの悲鳴。イッセーががぱっとダンボールを開けていた。

 

 女装した男……可愛いのに男……美少女なのに俺の嫌いな男……。

 

「あふぁ……」

 

 俺の全身から力が急激に抜けた。尻尾も力がなくぺたりと真下に垂れた。

 

 俺は崩れ落ちそうになったところで部長の胸に抱きとめられた。

 

「ちょっとこれはマズイわね」

 

「く……す、すみません部長……」

 

 部長は俺をやさしくおっぱいで包んでくれた……。ああ、視界いっぱいにおっぱい……女の子の匂い……。

 

 部長のおかげで尻尾も少しだけ元気になったよ。

 

「どうやら女性に抱きつくと気力が回復するみたいですわね」

 

「ええ、おそらく異常な女好きでインキュバスとなったエイジからしてみれば、男だけど美少女な男の娘は見るだけで気分が悪くなったり、体が拒絶反応を起こして行動を停止させようとするみたいね」

 

 朱乃さんと部長が冷静に分析してくる。そうなんです、マジで男の娘だけは……。

 

 部長は俺の頭をなでながら言う。

 

「エイジ」

 

「…………はい」

 

「この弱点はマズイわ。魔王クラスの実力者がただの男の娘に負けてしまうかもしてないのよ」

 

「そ、それはわかっています。だ、だから、お、男の娘を視界に納める前にこ、殺せば……」

 

「それはできるでしょうけど、同じ眷属悪魔のギャスパーを見れなくなるでしょ? 間違って殺されるのは論外、少しずつでいいから慣れなさい」

 

「う……は、はい……」

 

 部長には逆らえない……み、見たり日常会話ぐらいはできるようになろう……。

 

「あ、あの!」

 

「なにギャスパー?」

 

 ギャスパーが部長に声をかけたようだ。ダンボールに入っているか、出ているかわからないが、そんなの関係無しに部長を抱きしめて胸に顔を埋めた。

 

「羨ましいけど、こんなに弱ってるエイジ見るのは初めてだな」

 

「そうだね。いつも最強で無敵で弱点なんかないみたいだったのに」

 

「ああ、だが、弱っているエイジはレアだな」

 

 イッセーと木場とゼノヴィアの声が聞こえた。ぅぅ……苦手なんだから、しかたねぇだろ……。

 

 ギャスパーが部長に訊いた。

 

「そのヒト、僕の神器がまったく効かなかったんですけど、何者なんですか?」

 

「説明していなかったわね。この子は冥界で黒い捕食者って呼ばれている魔王クラスの実力者なの。実力差がありすぎて、ギャスパーの神器が効かなかったんでしょうね」

 

「そ、そそそそのヒトって、ブブブブブラック・プレデターさまなんですか!?」

 

 声を震わせて驚くギャスパーにイッセーが言った。

 

「戦っているときとか、普段でも強そうに見えるんだけど、いまの姿は魔王クラスの実力者には見えないよなぁ」

 

 うるせぇよ!

 

「とりあえず、エイジ。ミカエルとの会談の準備もあるだろうから、時間の合間でいいから男の娘を克服する努力をしなさい」

 

「……はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<イッセー>

 

 

「ほら、走れ。デイウォーカーなら日中でも走れるはずだよ」

 

「ヒィィィィッ! デュランダルを振り回しながら追いかけてこないでぇぇぇぇッ!」

 

 夕方に差し掛かった時間帯、旧校舎近くで吸血鬼が聖剣使いに追いかけられていた。

 

 傍目から見たら完全な吸血鬼狩りです。

 

 なんでもゼノヴィア曰く、「健全な精神は健全な肉体から」らしくて、ギャスパーを鍛えるために聖剣で無理やり追い回して走らせているそうだ。

 

「私と同じ『僧侶』さんにお会いして光栄でしたのに、目も合わせてもらいませんでした……ぐすっ」

 

 残念そうなアーシア。ちょっと涙目だ。

 

 家でよく「もう1人の『僧侶』さんに会いたいです」って、心待ちにしている様子だったしな。せっかくの出会いも相手が極度の人嫌いじゃ仕方ない。ま、アーシアよりも……。

 

「エイジよりはマシだと思うよ」

 

「そ、それもそうですね」

 

 アーシアはうなずいた。そう、現在のエイジの状態よりもマシだ。

 

 小猫ちゃんがニンニクを持ってゼノヴィアと共にギャスパーを追いかけていた。

 

「……ギャーくん、ニンニクを食べれば健康になれる」

 

「いやぁぁぁぁん! 小猫ちゃんが僕をいじめるぅぅぅぅ!」

 

 1年生同士、仲がいいのだろうか……? 唯一、小猫ちゃんがいじれるキャラだとも聞いたが……。いじめている? てか、小猫ちゃんは「ギャーくん」と呼んでいるのか。

 

「おーおー、やってるやってる」

 

 と、そこへ生徒会メンバーの匙が現れる。

 

「おっ、匙か」

 

「よー、兵藤。解禁された引きこもり眷属がいるとかって聞いてちょっと見に来たぜ」

 

「ああ、あそこだ。ゼノヴィアに追いかけ回されているのがそうだぜ」

 

「おいおい、ゼノヴィア嬢、伝説の聖剣豪快に振り回してるぞ? いいのか、あれ。おいっ! てか、女の子か! しかも金髪!」

 

 嬉しそうな匙。だと思うよね。

 

「残念、あれは女装野朗だそうです」

 

 それを聞き、心底落胆した様子の匙。ガックリしてる。

 

「そりゃ詐欺だ。てか、女装って誰かに見せたいためにするものだろう? それで引きこもりって、矛盾がすぎるぞ。難易度高いなぁ」

 

「だよな。意味のわからん女装癖だ。似合っているのがまたなんとも言えん。ほら見ろよ。女装男子の登場でエイジなんて見る影もないぞ」

 

 匙が気づいていないようなので、俺はいつもの存在感をまったく感じさせずに真っ白になっているエイジを指差した。

 

「うおっ!? こ、これが、本当にあの神城なのか?」

 

 うん。見えないよな。顔面蒼白で気配もなく棒立ちしている置物みたいだもんな。

 

「ああ。なんでも、もともと男の娘が苦手だったそうなんだが、インキュバスになったことでさらに酷くなったそうなんだ。男の娘を視界に入れるだけでも気力が抜けていったり、触れただけで行動不能になったりはさすがにヤバイから、こうしてギャスパーの特訓を遠目から見させて男の娘に対して耐性をつけてるんだ」

 

 匙は置物のようになっているエイジを珍しそうに上から下まで眺めた。

 

「へぇ~。神城に弱点なんてあったんだな。おっ、これがインキュバスになった証の尻尾なのか。――っておい兵藤……」

 

「ん? どうした?」

 

「神城の尻尾って灰色なのか?」

 

「灰色? いや、エイジの尻尾は濃い黒、漆黒みたいな色だぞ」

 

 そうだ。キレイな黒だったはず――って色が抜けてらっしゃるぅぅぅぅ!? しかも、呼吸も小さくなってるぅぅぅ!?

 

 俺は急いでゼノヴィアに向かって叫んだ。

 

「ゼノヴィア! 急いでチャージしてくれ!」

 

「わかった!」

 

 ゼノヴィアが追いかけっこからはずれてエイジの頭を胸で挟んだ。

 

「おおっ! なんて羨ましいんだ!」 

 

 匙が叫んだ。ああ。俺も激しく同意する!

 

「よしよし、エイジ」

 

 ピク……。

 

 エイジの尻尾が少しだけ動いた。

 

 ゼノヴィアはエイジの頭を胸に抱きながらやさしく背中をなでた。

 

「ふむ。弱っているエイジか。コカビエルのときは慰められる側だったが、慰める側もいいものだな」

 

 エイジの尻尾が少しずつ黒くなり始めた。

 

 そして灰色から黒に変わったところで復活した。

 

「ぜ、ゼノたん……」

 

 なんとも弱弱しい声。

 

「そうだ、私だ。だいじょうぶだ。私は正真正銘の女だ」

 

「ああ……ゼノたん…………」

 

 すごく情けない姿。いつものエイジとは思えない弱っているエイジ。

 

「おい、あれってマジで神城か?」

 

「ああ。俺もあそこまで男の娘に弱いとは思わなかった」

 

 信じられないものでも見たような匙。あ、そういえば――。

 

「そういえば、なんでおまえジャージと軍手装備なんだ?」

 

「そりゃあ、花壇の手入れだよ。一週間前から会長の命令でな。ほら、ここ最近学校行事が多かっただろう? それに今度魔王さま方もここへいらっしゃる。学園をキレイに見せるのは生徒会の『兵士』たる俺の仕事だ」

 

 えっへんと胸を張って堂々としているが、それっとつまり雑用じゃ……? 、ああ。こいつの気持ちを折っても仕方ないから黙っておこう。

 

 ザッザッ……。

 

 そんな話をしていたら、ここへ近づいてくる誰かの気配。俺がそちらへ視線を向けたとき――。俺は目を疑った。

 

「へぇ。魔王眷属の悪魔さん方はここで集まってお遊戯してるわけか」

 

 浴衣を着た悪そうな男性――。俺はそいつに見覚えがあった。

 

「アザゼル……ッ!」

 

「よー、赤龍帝。あの夜以来だ」

 

 全員が突然現れたそいつを怪訝そうに……いや、エイジだけまだ泣いている子共みたいにゼノヴィアの胸に頭を埋めていた。

 

 アーシアが俺のうしろへ隠れ、俺も彼女を守るようにブースデッド・ギアを出現させ、匙も驚愕しながらも神器である右手の甲にデフォルメ化したようなトカゲの頭を出す。

 

 ゼノヴィアも剣を構えたが、その胸にはまだエイジがくっ付いていた。少しはシリアスにしろよ! って、そんなに余裕がないのか!? コカビエルとヴァーリは簡単に一方的に倒したのに!?

 

「ひょ、兵藤、アザゼルって!」

 

「マジだよ、匙。俺はこいつと何度か接触している」

 

 俺のマジな反応で理解したのか、匙も戦闘の構えを作りだしていた。

 

 アザゼルは俺たちの姿勢に苦笑する。奴は殺気どころか、戦闘をする気配すらうかがわせなかった。

 

「やる気はねぇよ。ほら、構えを解きな、下級悪魔くんたち。ここにいる連中が集まったところで俺に勝てないのはなんとなくでもわかるだろう? 俺だって、下級悪魔相手にいじめなんかするつもりはない。ちょっと散歩がてら悪魔さんのところに見学だ。聖魔剣使いはいるか? ちょっと見にきたんだが」

 

 と、奴は言うものの、誰も構えを解くことはしなかった。堕天使の言うことなんか信用できるものかよ! てか、木場狙いか! あと、エイジもいい加減立ち直れ! あれ? 集まったところで勝てないって、魔王クラスのエイジも楽勝なのか?

 

「木場ならいないさ! 木場を狙っているならそうはさせない!」

 

 木場がレアな禁手となったから、オファーでも出すつもりか?

 

「……ったく、コカビエルにも勝てなかったくせに俺と勝負なんかできるわけねぇだろうにさ。――そうか、聖魔剣使いはいないのかよ。つまんねぇな。じゃあ、神城はいるか?」

 

 へ? なにを?

 

「神城もいねぇのか? 会談のときにいいもんくれたからその礼と会談で要求されたことでもしにきたのに」

 

「えっと、気づいてないのか?」

 

「ん? なんだ?」

 

「エイジならそこにいるぞ」

 

 俺はゼノヴィアの胸、正確にはエイジを指さす。

 

 アザゼルはゼノヴィアの胸に抱きついているエイジを見ると目を大きく開いて驚いた。

 

「ど、どうしたんだこいつ? なんか最初あったときと全然様子が違うんだが?」

 

 やっぱりこいつも存在に気づいてなかったのか!

 

 エイジはいま気づいた様子でゼノヴィアの胸から顔を出した。

 

「あぁ……アザゼルか……」

 

「お、おう。どうしたんだ? やけに元気がなさそうだが?」

 

 エイジの様子に驚いているアザゼル。

 

「すまんがいまは俺のことを放っておいてくれると助かる……。俺に、なにか話があるなら後日でいいか?」

 

「あ、ああ。いいぜ」

 

 アザゼルがうなずくのを確認するとゼノヴィアの胸の中に戻り、ゼノヴィアも片手で剣を構えながら、空いたほうの手でエイジの頭を抱きしめた。

 

「ほんとにどうしたんだこいつ?」

 

「い、いろいろあったんだよ!」

 

 俺はそれしか言えなかった。――まさか、男の娘が苦手すぎて弱っているなんて言えなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからアザゼルはギャスパーの神器と匙の神器について情報と、ギャスパーの神器をどう特訓すればいいのか、アドバイスをしてくれた。

 

 アザゼルが立ち去ってから、顔を見合わせて反応に困っていたが、匙が息をついたあとに動きだす。

 

「……とりあえず、その新顔くんに俺の神器を取り付けてみるか。その状態で神器を使ってもらって練習でもしようぜ。その代わりに今度おまえらに俺の花壇を手伝ってもらうからな」

 

 匙の提案にうなずき、ギャスパーの神器の修行が開始された。

 

 匙が【 黒 い 龍脈 (アブソリューション・ライン)】の舌をギャスパーに接続し、余分な力を抜き取る。アザゼルの言ったように吸引は可能だった。……マジで神器に詳しいんだな、あの総督さん。

 

 その後、俺たちが投げるバレーのボールをギャスパーが視界に映した瞬間、停止させていき、エイジは尻尾が灰色に変わり機能停止する前にゼノヴィアのおっぱいで回復させるという羨ましい特訓をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日の夜。

 

 3大勢力の会議で重要なポジションにいるエイジ以外が依頼解禁になって、俺の悪魔家業の仕事にギャスパー同行させたが、依頼に連れて行ったギャスパーが依頼人に襲われそうになって神器の力を暴走させて、時間を止めて、また部屋に引きこもったてしまった。

 

『ぼ、僕は……こんな神器いらないっ! だ、だって、皆停まっちゃうもんだ! 怖がる! 嫌がる! 僕だって嫌だ! と、友達を、な、仲間を停めたくないよ……。大切な人の停まった顔を見るのは……、も、もう嫌だ……』

 

 部屋のなかですすり泣くギャスパー。l

 

 家から追い出され、どちらの世界でも生きられないギャスパーは路頭に迷った。そのときヴァンパイアハンターに狙われ。一度命を落した。そこを部長に拾われたらしい。

 

 けど、強力な力を有するギャスパーを当時の部長では使いこなすこともできず、封印を命じられていた。そして、解禁されて現在にいたる。

 

「困ったわ……。この子をまた引きこもらせてしまうなんて……。『王』失格ね、私」

 

 落ち込む部長。部長は悪くない。ギャスパーも悪くないさ。悪いのはむしろ俺だ。期待をされて仕事に付き合わせたのに、俺は何もできなかった。

 

「部長、サーゼクスさまたちとの打ち合わせがこれからあるんでしょう?」

 

「ええ。でももう少しだけ時間を延ばしてもらうわ。先にギャスパーを――」

 

「あとは俺に任せてください。なんとかしてみます」

 

 俺の申し出に部長も強く異を唱えることはできなかった。打ち合わせも大事だからだ。

 

 3大勢力のボスたちが会合するんだ。それのセッティングは大切だろう。

 

「だいじょうぶです。せっかくできた男子の後輩です! 俺がなんとかします!」

 

 と、胸を張って宣言する。強がりだ。本当は自身があまりない。この手の繊細そうなタイプは苦手だからな。だけど、この件はエイジを頼ることはできないし、たまには俺も格好つかせてもらうぜ。

 

「……イッセー。わかったわ。お願いできる?」

 

「はい!」

 

 俺の勢いある返事を聞いて、部長は微笑んでうなずいた。

 

 部長は名残惜しそうに心配そうにギャスパーの部屋の扉を一瞥し、この場をあとにした。

 

 部長を見送ったあと、俺は深呼吸し、扉の前に座り込んだ。

 

「おまえが出でくるまで、俺はここを一歩も動かないからな!」

 

 いろいろ考えてみたが、バカな俺にはこれしかできない! 座り込み!

 

 …………。

 

 持久戦。と、息巻いて一時間ほど座り込んでみたが、変化はなし。出てくる気配もない。

 

 ……こうやって、黙って座り込むだけじゃダメか。そう感じて語りかけることにした。

 

「……怖いか? 神器と……俺たちが」

 

『…………』

 

 俺は扉越しに話しかける。

 

「俺も最強のドラゴンが宿った神器を持っている。でも、おまえみたいにヴァンパイアとか、エイジや木場みたいにすごい生き方をしてきたわけでもない。普通の男子高校生だったんだよ」

 

 どこまで通じるかわからない。だけど、俺の正直な気持ちを話そう。

 

「俺は……正直、怖い。ドラゴンの力を使うたび、体のどこかが違う何かになっていく感じがするんだ。悪魔のこともよくわからないし、ドラゴンってのもどういうものかもわからない。だけど、前に進もうと思う」

 

 それしかないからな、俺には。

 

『……どうしてですか? も、もしかしたら、大切な何かを失うかもしれないんですよ? せ、先輩はどうして、そこまで真っ直ぐ生きていられるんですか……?』

 

「……うぅん……。俺はバカだから、難しいことはわからないんだ。ただ――」

 

『ただ?』

 

「――部長の涙を二度と見たくない。レーティングゲームをやったときさ、俺のせいで負けたんだ。俺が自分の実力を過信して、エイジに敵の『女王』と『僧侶』を押し付けて、敵の王と一対一で戦っている部長の元に行って、記憶がないぐらいにボコボコにやられてさ。俺が目の前で敵にボコボコにされるのに耐えられなくなった部長がエイジがまだ残っていたのに投了して、俺たちは負けたんだ。情けないったらありゃしねぇ。敵の『騎士』にすらまともに勝てないのに、『王』なんて倒せるはずねぇのに。俺は1人で先走って部長の元に向かって、時間稼ぎにもならないどころか、俺がキッカケで負けちまったんだ」

 

 俺は拳をぎゅっと握りしめた。あのときのことは――いま思い出しても悔しい。

 

「結局、部長はエイジが救う始末。しかも俺がボコボコにした『王』を一撃で倒しちまうし、俺自身は何も守れなかったんだ。情けねぇよな。まったく……。それが、何も守れなかった俺自身が嫌で毎日修行して、一日でも早く自分の神器を使いこなせるように頑張っているんだ」

 

 ギィ……。

 

 鈍い音を立てながら、扉が少しだけ開かれた。

 

「なあ、ギャスパー」

 

「……はい」

 

「弱いままじゃ何も守れないんだぞ。神器を怖がっているだけじゃあ、いざというとき大切な人や仲間を守れないんだぞ。――それでもいいのか?」

 

「……で、でも、僕じゃ、ご、ご迷惑をかけるだけです……。引きこもりだし、人見知り激しいし……神器はまともに使えないし……大切な人なんて守れるわけが……」

 

 俺はギャスパーの顔をおさえると、両目を覗きこんでやる。

 

 ここに神器があるのか。時間停止する能力。

 

「俺はおまえのことを嫌わないぞ。先輩としてずっと面倒みてやる。……まあ、悪魔としてはおまえのほうが先輩だろうけどさ。でも、実生活では俺が先輩だから、任せろ」

 

「――っ」

 

 ギャスパーは目をパチクリさせるがお、俺は続ける。

 

「俺ひとりじゃ守れない。力を貸してくれ。俺と一緒に部長を支えよう。おまえが何かに怖がるなら、俺がそれを吹っ飛ばしてやる。伝説の龍の力を使いこなしてな」

 

 ニカッと笑ってみるが、ギャスパーはコメントに困っている様子だ。

 

「俺の血、飲むか? アザゼルの野朗が言ってたことが真実なら、俺の血を飲めば神器を扱えるかもしれない」

 

 あのとき、アザゼルはそう言っていた。それで済むなら安いものだ思う。

 

 だが、ギャスパーは首を横に振る。

 

「……怖いんです。生きた者から直接血を吸うのが。ただでさえ、自分の力が怖いのに……これ以上何かが高まったりしたら……僕は…僕は……」

 

「うーん、神器に翻弄される自分が嫌か。でも俺はその能力がうらやましいけどな」

 

「――っ」

 

 俺の一言に心底驚いた表情をギャスパーが浮かべる。え? 何その反応……。

 

 俺はいかにギャスパーの時間停止の能力が素晴らしいか俺なりに説明して、俺の野望を教えた。

 

 そう。サーゼクスさまに提案された赤龍帝の譲渡の力を部長のおっぱいに使うことだ。

 

 俺の真っ直ぐな想いを耳にして、ギャスパーは驚くような表情を見せるが、じんわりと瞳を潤ませる。

 

「……す、すごいです、イッセー先輩。強大な神器を持っていながら、そこまで卑猥に前向きに向かい合えるなんて……。ぼ、僕にはとうてい及ばない思考回路ですが、なぜだか少しだけ夢と希望を感じました。イッセー先輩の煩悩って勇気に溢れているんですね」

 

「そうだろうそうだろう! 強大な神器なんだ! ようは使いようだ! 俺は性欲を満たすために神器を使うね! 籠手に宿っているドラゴンにも宣言した! 俺は部長の乳を吸い! そして、新たな目標としてギフトを部長の乳に譲渡する! いや、朱乃さんのおっぱいに譲渡してもいい! うはっ! 夢が広がるなぁぁぁぁ!」

 

「ぼ、僕もなんだか少しだけ勇気が湧いてきたような気がします。本当に少しだけだけど……」

 

 と、いつの間にか俺がギャスパーと話しこんでいると木場が現れた。

 

「さすがイッセーくん。ギャスパーくんとすぐに談笑できるなんてね」

 

 おお、丁度いい。

 

「木場、話がある」

 

「なんだい、イッセーくん」

 

「俺はおまえとギャスパーは男だ」

 

「そうだね。でも、そんなことを訊いて突然どうしたの?」

 

「俺はグレモリー眷属の俺たち3人でおこなえる連携を考えた」

 

「それは……興味がそそられるね。どういうのかな?」

 

 おっ、木場も食らいついてきた。よし、俺のプランを話そう。

 

「まず、俺がパワーを溜める、そして、それをギャスパーへ譲渡して周囲の時間を停める。その間、俺は停止した女子を触り放題だ」

 

「――っ。………………また、エッチな妄想をしていたんだね。それはそうと、それだけなら僕の役目はないんじゃないの?」

 

 俺のプランに木場は軽く言葉を失っていたが、冷静に突っ込んでくる。

 

「いや、ある。おまえは禁手化して、俺を守れ。もしかしたら、エッチなことをしている間も敵が来襲してくるかもしれない。これは大事な連携だ。俺が溜めて、ギャスパーが停めて、俺が相手を触り、おまえが俺を守る。完璧な陣形だ」

 

 エイジの奴は――あいつはこんなことしなくても触れるから作戦なんかいらないだろうな、クソッ! うらやましいわけじゃ……いや、うらやましいんだけど!

 

「イッセーくん、僕はイッセーくんのためならなんでもするけど……一度、真剣に今後のことを話そうよ。――力の使い方がエッチすぎるよ。ドライグ、泣くよ?」

 

『木場はいい奴だなぁ』

 

 涙声で訴えるな、ドライグ! 俺は宿主なんだから、おまえは俺のエロ妄想に尽力してくれよ!

 

「木場、てめえ! そんな憐憫な眼差しで俺を見るな! イケメンめ! おまえはいいさ! エイジほどでもないだろうが、女の子を喰い放題だろうけどな! 俺は食べることすらままらないんだよ!」

 

「……キミのことだから、気づいたら気づいたでそっちにハマりこみそうだし、アーシアさんは甘やかしそうだから言うのを止めておくよ……。覚え立ては怖いと言うからね」

 

 アーシア? 木場が意味深なことを言っているが、まあいい。

 

「よし。男同士、(はら)を割って話そう。エイジがいないが……。――第1回『女子のこんなところがたまらない選手権』! まずは俺からだな! 俺は女子のおっぱいと足を見るね!」

 

 それから俺たち男3人は真夜中の旧校舎で思う存分語り合った。

 

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