<エイジ>
俺とヴァーリは戦場の真ん中まで移動すると、左右に離れた。
ドドドドドドドンッ!
離れたところでヴァーリが魔術師風の敵に一騎当千の活躍を見せていた。夜の空に光の軌跡を描きながら、魔術師の集中砲火をまったく気にもせずに宙を舞い、大質量の波動弾を校庭に放っていた。
俺は地上に脚をつけて魔術師たちの攻撃をさばいていた。必要最低限の力で避けながら、防御しながら魔術師たちを集める。
チラリとヴァーリがこちらを見た。おそらく俺の力量が見たいのだろう。
ふふふっ、それなら存分に見せてやろうじゃないか! インキュバスの能力が戦闘に使えることを! 男は普通に滅殺だか、インキュバスが女に相手の戦闘にどれだけ有効かを見せてやろう!
俺は様々な魔法が飛び交うなか両手を広げた。
「さあ、俺の新たな力! そして黒い捕食者の名がダテではないことを証明しよう!」
ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュンッ!
俺は高速で移動して近くにいた魔術師から駆逐していく。
男は手から出した魔力弾を至近距離で放って消滅させ、女は瞬間移動しながら魔術師ローブの上からや、服の中に尻尾を侵入させて胸とオマンコ、尻の穴はもちろん、全身の性感を刹那の間に刺激し、過剰な快楽を脳へ送られた。
快楽を脳へ送られた女は、一瞬の間に感じた快楽によって脳内麻薬を過剰なまで分泌させられ、一瞬でアヘ顔になり、全身の穴を緩ませながら地に崩れ落ちていった。
他人からは俺が現れ消えるたびに男が消え、女が崩れ落ちるように見えているはずだ。
「いやぁぁぁぁあッッ!」
「あひぃぃぃぃいいッ!」
「あうんぅぅぅぅッ!」
ヴァーリのところからは破壊音が、俺のほうからは艶のある女の断末魔が響いた。
俺が夢中になって女のオマンコに尻尾を突っ込んで気絶させながら倒していたときだった。
ドッガァァァァァアアアアアンッ!
アザゼルが堕ちていた。え? なにが起こったの? 夢中になりすぎて全然状況がわからないんですけど?
「エイジ!」
と、リアスが旧校舎の玄関に登場した。イッセーも少し怪我しているみたいだったがだいじょうぶそうで、ギャスパーもきちんといた。
少し離れた位置にいる部長に大声で言う。
「よかった! 救出は成功したんですね!」
「ええ! こっちは作戦成功だけど……」
アザゼルのほうに部長は視線を向けた。俺もアザゼルのほうを見ると、ヴァーリに話しかけていた。ってかアザゼル、結構ダメージ受けてるな。
「……チッ。この状況で反旗か、ヴァーリ」
「そうだよ、アザゼル」
まばゆい輝きを放ちながら、リアスたちの前にヴァーリが降りた。その傍らには肌の露出が激しいスリットの深く入ったドレスに身を包んだ女がいた。
「和平が決まった瞬間、拉致していたハーフヴァンパイアの神器を発動させ、テロを開始させる手筈でした。頃合いを見てから私と共に白龍皇が暴れる。3大勢力のトップの1人でも葬れれば良し。会談を壊せばそれで良かったのです」
女が説明してくる。ってヴァーリが裏切り者かよ。しかもイッセーが女にすげぇ厭らしい顔を向けてる。余裕もないのによく欲情できるな。
「いやらしい視線を感じるわ。――その子が赤龍帝なのですか、ヴァーリ」
「ああ、残念ながら、そうだよ。本当に残念な宿主なんだ」
「残念残念言うな! 俺だって懸命に日々を生きてんだ! ……って、なんでおまえとアザゼルが対峙している? つーか、その姉ちゃん誰だよ?」
アザゼルとヴァーリのやり取りを見てまだ状況理解できないのかおまえは……。
「エイジまで残念そうな顔で見るなぁぁぁ!」
女は哀れむような視線でイッセーに見た。
「なるほどね。本当に残念な子みたいね。ヴァーリ、殺すの?」
「どうしようか迷っているのが本音だ。正直、俺は彼にそこまで期待をかけているわけじゃないんだ」
「……まったく、俺もやきが回ったもんだ。身内がこれとはな……」
自嘲するアザゼル。
「いつからだ? いつから、そういうことになった?」
「コカビエルを本部へ連れ帰る途中でオファーを受けたんだ。悪いな、アザゼル。こちらのほうがおもしろそうなんだ」
「ヴァーリ、『白い龍』がオーフィスに降るのか?」
オーフィス? 確か無限龍のオーフィスだったか? そいつかボスなのか?
「いや、あくまで協力するだけだ。魅力的なオファーをされた。『アースガルドと戦ってみないか?』――こんなことを言われたら、自分の力を試してみたい俺では断れない。アザゼルは、ヴァルハラ――アース神族と戦うことを嫌がるだろう? 戦争嫌いだもんな」
ってヴァルハラってセルベリアの故郷じゃん!? それにヴァーリってマジで戦闘狂なんだな。
「俺はおまえに『強くなれ』とは言ったが、『世界を滅ぼす要因だけは作るな』とも言ったはずだ」
「関係ない。俺は永遠に戦えればいいんだ」
「……そうかよ。いや、俺は心のどこかでおまえが手元から離れていくのを予想していたのかもしれない。――おまえは出会ったときから今日まで強い者との戦いを求めていたものな」
「今回の下準備と情報提供は白龍皇ですからね。彼の本質を理解しておきながら、放置しておくなど、あなたらしくない。結果、自分の首を絞めることになりましたね」
と女がアザゼルを嘲笑した。
苦笑するアザゼルを尻目にヴァーリは自身の胸に手を当て、イッセーに向かって言う。
「俺の本名はヴァーリ。ヴァーリ・ルシファーだ」
ルシファー?
「死んだ先代の魔王ルシファーの血を引く者なんだ。けど、俺は旧魔王の孫である父と人間である母との間で生まれた混血児。――『白い龍』の神器は半分人間だから手に入れたものだ。偶然だけどな。でも、ルシファーの真の血縁者でもあり、『白い龍』でもある俺が誕生した。運命、奇跡というものがあるなら、俺のことかもしれない。――なんてな」
ブンッ!
俺が話しに聞き入っていると目の前の女が切りかかかってきた。
魔術師じゃないのかよ!
そこからヴァーリが寝返った分の敵を倒すために断片的にしか話を訊けなかったが、ヴァーリの隣にいた女はカテレア・レヴィアタンと、セラフォルーがレヴィアタンになる前の旧魔王の血筋のものらしく、しかも旧魔王はほとんど、オーフィスがトップであるテロ組織の『
しかもアザゼルは人工神器なるものを使い擬似禁手化して、黄金の全身鎧に身を包みカテレアと戦闘を開始し、リアスとギャスパー。イッセーとヴァーリはそれを観戦していた。
敵の数が減ってきたところで、加勢に来ていた木場とゼノヴィアに雑魚敵を任せて、そろそろアザゼルたちに加勢に行こうかと思っていたら、腕を触手のように変化させたカテレアにアザゼルが左腕を捕らえられ、自爆のカウントダウンに入っていた。
「アザゼル!」
おまえが死んだら3大勢力の会談が破綻して、部長の処女が貰えなくなる!
「ゼノたん! 木場! ここは任せたぞ!」
「ああ!」
「え? わ、わかったよ!」
俺はインキュバスの切り札を持ってカテレアへ向けて高速で接近した。
バシュッ!
俺がアザゼルとすれ違う瞬間――。アザゼルが自分の左腕を切り落とした。
「ッ!? 自分の腕を!?」
「なっ!? 神城!?」
驚くカテレアと驚愕のアザゼル。
「切り落として逃げれるならもっと早くしろや!」
俺はカテレアの胸にダイブした。
「なに勝手に捕まりにいってるんだ!?」
「おまえを助けてやりにきたんだろうがっ!」
カテレアがニヤリと笑みを浮べて触手を俺の腰を何十にも巻きつけてきた。
「アハハハハハッ! アザゼルは無理だったが、黒い捕食者! おまえだけでも道連れにしてやる!」
自爆用の術式に魔力を溜めていくカテレア。結構魔力が多いな。オーフィスから何かもたったって言っていたし。
俺の背後でリアスとイッセーの叫び声が聞こえた。
「エイジッ!」
「エイジッ!」
どんどん集まっていく魔力! もう爆発寸前だ!
「くっ、仕方がない! り、リアス。すみません」
「エイジ! 何を言ってるの!」
涙を流しながら叫ぶリアス。って、死ぬ前の言葉じゃありませんよ!?
「かなりヤバイ状況なので、封印していたインキュバスの真の能力を解放します!」
「へ?」
間の抜けた声が聞こえたが、それどころじゃなかった。
「ふっ、何をするつもりか知らないけど、あと10秒もしない内に爆発――っ!」
チュュュウッ!
『なっ!?』
驚きの声がいくつも聞こえた。まあ、そうだろう。カテレアの唇を奪っているんだから。
「うぼっ!? うぅっ!」
カテレアの目が大きく見開き、自分が触手で捕らえているのも忘れて、触手にしていないほうの腕で俺を押しのけようとしてくるが、俺は唇を離さないっ!
ジュルルルルっ!
カテレアの唾液ごと爆発に使用するはずだった魔力を吸引する。
くっ! だが、まだ吸引率が間に合わないな。やはり切り札を使用するか。
俺は尻尾を持上げる。
パカッ。
尻尾のハートが2つに割れて、間から無数の尻尾を生やした。
シュルルルルゥゥゥ……。
「――っ!」
カテレアの体に細い無数の尻尾が絡み付きカテレアの体を締め上げる。
カテレアの大きな胸が醜く歪み、何本もの尻尾がスリットから侵入し、蠢く。
カテレアの口から甘い悲鳴が漏れ、体が痙攣し始める。
「あぶぅんっ! ど、どこに入ってっ――んんっ!? あふぁ……だ、ダメぇぇぇ……」
「お、おお、これは……」
「なかなか……」
後でイッセーとアザゼルの息を飲む声が聞こえたが、まだまだ、これからだ!
吸精ならぬ吸魔!
黒歌たちとのセックスと依頼を受けたセックスで何度も修行してやっと精気と魔力を吸い分けることに成功したインキュバスの奥義!
無数に増やした尻尾を体を拘束し、さらにオマンコとアナルから何本も尻尾を侵入させ、体内から魔力を吸い上げる。
ジュブブブブブブブブブブブッッ!
さらに尻尾が高速振動し始め急激に魔力を吸い上げる。さらに尻尾にはかなり強い媚薬となる体液が分泌され、性感も刺激されているので、絶頂状態となり体の力が抜け落ちて抵抗できなくなる。魔力を抜かれることでさらに虚脱感が生まれ、なす術もなく一方的に倒されてしまう極悪な絶技なのだ!
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あぁああああああああああッッ!」
カテレアの体から完全に魔力が抜け落ち、体から完全に力が抜け、触手からも解放される。
抵抗できないまで魔力を搾り取った俺はカテレアを解放する。
唇を離し、尻尾をもとの一本に戻す。
「ごちそうさま」
そう言った瞬間――カテレアの体は地面へ崩れ落ちた。
◆
アヘ顔状態で気絶したカテレアを抱えてアザゼルの元へ移動する。
「おい、神城。あれがインキュバスの能力か?」
アザゼルが訊いてきた。俺は自身を持って答える。
「ああ。通常のサキュバスは精気しか吸い込むことしかできないが、俺はその技をさらに次の段階へ進め、魔力や気。あらゆる力を吸いとれるようにしたんだ」
「さっきのカテレアの魔力は魔王クラスに近かったんだぞ。それをすべて吸い込めるっておまえ、どれだけ力を隠しているんだ?」
「さあな。それよりも左腕はだいじょうぶなのか?」
「ああ。別に心配ねぇよ」
そこにリアスたちが近づいてきた。
「エイジ!」
「エイジ先輩!」
リアスが目に涙を流しながら抱きついてきた。
「本当に……心配したんだからっ!」
「死んじゃうかと思いました!」
ギャスパーも涙目だ。ふっ、カテレアからたっぷり吸いとったから見ても平気だぜ。
イッセーはというと……別の意味の涙を流していた。
「エイジぃぃぃぃっ! おまえは毎回毎回ッ! なんてうらやましいことをしているんだぁぁぁぁああっ!」
そう言って叫ぶイッセーの気持ちに呼応するかのように赤龍帝の籠手の宝玉が光り輝いていた。
そこにヴァーリが問いかけてきた。
「しかし、運命ってのは残酷だとは思わないか?」
アザゼルは即座にヴァーリに向かって構えをとったが、ヴァーリは関係ないと話し始めた。
「俺のように魔王プラス伝説のドラゴンみたいな思いつく限りの最強の存在がいる反面、そちらのようにただの人間に伝説のドラゴンが憑く場合もある。いくらなんでもこの偶然は残酷だと俺は思うな。ライバル同士のドラゴン神器とはいえ、所有者2名の間の溝はあまりに深すぎる」
おお、イッセー。ぼろくそに言われてるのに、言われていることに気づかずにポカンとしてる。
「キミのことは少し調べた。父は普通のサラリーマン。母は普通の専業主婦で、ためにパートに出ている。両親の血縁はまったくもって普通。先祖に力を持った能力者、術者がいたわけでもない。もちろん、先祖が悪魔や天使に関わったこともない。本当に何の変哲もない。キミの友人関係も特別な存在はいない。キミ自身も悪魔に転生するまで極普通の男子高校だった。――ブースデット・ギア以外、何もない」
ヴァーリは哀れむような表情で、イッセーを嘲笑う。
「つまらないな。『ああ、これが俺のライバルなんだ。まいったな』って。せめて親が魔術師ならば、話は少しでも変わったかもしれないが……。そうだ! こういう設定はどうだろうか? キミは復讐者になるんだ!」
ヴァーリは思いついたことを話した。
「俺がキミの両親を殺そう。そうすれば、キミの身の上が少しはおもしろいものになる。親を俺のような貴重な存在に殺されれば晴れて重厚な運命に身を委ねられるとは思わないか? うん、そうしよう。どうせ、キミの両親は今後も普通において、普通に死んでいく。そんなつまらない人生よりも俺の話した設定のほうが華やかだ! な?」
「殺すぞ、この野朗」
ヴァーリの話しにイッセーが殺気を放ちながらつぶやいた。
「……おまえの言うとおり、俺の父さんは朝から晩まで家族のために働く極普通のサラリーマンだ。俺の母さんは朝昼晩と俺たち家族のためにうまい飯を作ってくれる普通の主婦だ。……でも、俺をここまで育ててくれた。俺にとって最高の親なんだよ」
イッセーの力が静かに高まっていく。
「……殺す? 俺の父さんと母さんを? なんで、てめえなんかの都合に合わして殺されなくちゃいけないんだよ。貴重だとか、運命だとか、そんなの知るかよッ!」
イッセーがヴァーリを睨む。
「やらせるか」
左腕を掲げた。
「てめえなんぞに俺の親を殺されてたまるかよォォォォォォォォォッッ!」
『Wwlsh Dragon Over Booster!!!』
音声が聞こえたと思ったら、イッセーの神器が真っ赤なオーラを解き放ち始め、イッセーの体が赤い全身鎧に包まれた。
「――っ。見ろ、アルビオン。兵藤一誠の力が桁違いに上がったぞ。怒りという単純明快な理由が引き金だが、これは……ハハハハ、心地よい龍の波動だな」
『神器は単純で強い想いほど力の糧とする。兵藤一誠の怒りは純粋なほど、おまえに向けられているのさ。――真っ直ぐな者、それこそドラゴンの力を引き出せる真理のひとつ』
「そうか。そういう意味では俺よりも彼のほうがドラゴンと相性がいいわけか」
バカのほうが相性がいいのか。
「だが! 頭が悪いのはどうだろうか! 兵藤一誠! キミはドライグを使いこなすには知恵が足らなさすぎる。これは罪だよ」
「さっきからベラベラ俺がわからないことを言ってんじゃねぇぇぇぇぇっ!」
「そう! それこそ、バカというやつなんだ!」
イッセーの背中部分の噴出口からオーラが噴きだして、イッセーがヴァーリに向かって飛び出し戦いの幕があがった。
戦いはやはりイッセーが劣勢。龍殺しの剣を装備しているが当たらなければ意味はないし、イッセーの力は倍加、ヴァーリの力は半減だが、ヴァーリは半減させた力の一部を吸いとっているようで力が上がっていく。
しかもイッセーに剣の才能はないから攻撃が当たることはなく、呆気なくカウンターをとられていた。
このままじゃ、イッセーが何もできずに負ける、と思っていたら、イッセーは剣を籠手のなかに収納したままヴァーリの兜を殴りつけた。
ヴァーリには予想外の攻撃方法だったらしく、イッセーの攻撃がヒットし兜を破壊させた。
さらに半減させた魔力の噴出口で、神器の本体である翼に譲渡をかけて、吸いとる力と吐きだす力を一気に高めて暴走させた。
そのコンボに慌てて距離をとろうとしたが、イッセーは逃がさないとヴァーリの腹部をアスカロン入りの籠手で殴りつけた。
だがそこまでしてもヴァーリとイッセーの力の差は開いたままだ。
そこでイッセーはヴァーリの鎧の欠片から宝玉を抜き取り、自分の右手の籠手の宝玉を叩き割り、ヴァーリの宝珠を叩き込んだ。
「ま、マジでやるのか!?」
白龍皇の力を取り込む気なのか!?
「うがあああああああああああああああああッッ!」
イッセーの口から絶叫が響く。
「ぬがあああああああああ! あ、あ、あ、ああああああああああああああああああああああああああっっ!」
おいおい、いくらなんでもやべぇんじゃないか!?
俺たちが溜まらず、止めに入ろうとしたところで、イッセーが叫んだ。
「俺の想いに応えろォォォォォォォッッ!」
『Vanisihing Dragon Power is taken!!』
音声が鳴り終わるとイッセーの右手が白い籠手になっていた。
「……へへへ、『
の 籠手 』ってとこか?」
『あり得ん! こんなことはあり得ない!』
ヴァーリの龍、アルビオンが驚愕の声音を出していた。
「いや、可能性は少しだけあった。俺の仲間が聖と魔を融合して、聖魔剣なんてものを創りだした。それは神がいないためにバランスは崩れているから、実現可能になったらしい。まあ、お偉いさん方の言葉を借りるなら。システムエラーとか、プログラムバグとかいう状態か? それをちょっと利用したのさ」
『……「神器プログラム」の不備について、実現させたというのか? いや、しかし、こんなことは……。思いついたとしても実際に行うのは愚かだ……。相反する力の融合は、何が起こるかわからない。それがドラゴンの関わるものだとしたら、死ぬかもしれなかったんだぞ? 否、死ぬほうが自然だ』
「ああ、無謀だった。――だが、俺は生きている」
イッセーの言葉にドライグの嘆息する声が聞こえた。
『だが、確実に寿命を縮ませたぞ。いくら悪魔が永遠に近い時間を生きれるとしても――』
「一万年も生きるつもりないさ。だが、やりたいことは山ほどあるから、最低でも千年は生きたいけどな」
パチパチパチ。
ヴァーリがイッセーに向けて拍手を送った。
「おもしろい。なら、俺も本気を出そう! 俺が勝ったら、キミのすべてとキミの周りにあるものすべても白龍皇の力で半分にしてみせよう!」
ヴァーリが空中に漂い、腕を大きく広げる。光の翼も大きく伸びていく。
「半分? 俺の力ならともかく、俺の周囲を半分にするってどういうことだ?」
イッセーの問いかけヴァーリは哄笑をあげる。
「無知は怖い! 知らずに死ぬのも悪くないかもしれないな!」
『Half Dimension!』
宝玉の音声と共にまばゆいオーラに包まれたヴァーリが眼下に広がる木々へ手を向ける。
グバンッ!
木々が一瞬で半分の太さになった。ま、まさか――。
グバババババンッ!
さらに周囲の木々が圧縮されるかのように半分になっていく。やはりか!
「イッセー!」
「なんだ、エイジ!」
「ヴァーリが本気になったら世の中の女性のおっぱいが半分にされてしまうぞ!」
「な、なんだと!?」
驚愕のイッセー。そりゃそうだろう。おっぱい好きの巨乳好きであるイッセーにとってそれは世界の終わりを意味する。そして俺もおっぱいが半減させられてしまうのは嫌だ!
「イッセー! よく聞け! ヴァーリを倒さないと、リアスたちはもちろん。桐生さんいわく最近すごく成長しているアーシアのおっぱいが平たい何もない平原になるんだぞ!」
イッセーの表情が無表情になる。
そしてギギギ首だけ動かして信仰者で停止させられているアーシアのほうに視線を向けた。
「ふ……ふざけんなァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
イッセーが憤怒の表情でヴァーリを睨む。
「貴様ッッ! アーシアのォォォォォ! 俺のアーシアのおっぱいを平原にするつもりかァァァァアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
『BostBostBostBostBostBost!!!!!』
イッセーの鎧の各所にある宝玉から音声が幾重にも鳴り響いた。
「許さないッッ! 絶対にてめえだけは許さないッッ! ぶっ倒してやるッッ! ぶっ壊してやるッッ! ヴァーリィィィィィィィィッッ!」
『BostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBostBost!!!!!!!!!』
イッセーの周囲が弾け飛んだ。立っいた地面も大きく抉れ、クレーターと化し、旧校舎の窓が全部割れ、外壁が崩れていった。
「さすがイッセー! おっぱいのためならどこまでも力を出す男!」
「アッハッハッハッハッ! なんだそりゃ!? マジかよ! 女の胸が小さくなるって理由でドラゴンの力が跳ね上がりやがった!」
褒め称える俺とゲラゲラと爆笑するアザゼル。
イッセーは指をヴァーリに突きつけた。
「アーシア・アルジェントに手を出してみろッ! 二度と転生できないぐらい徹底的に破壊してやらぁぁぁぁぁっ! この半分マニアがぁぁぁぁぁっ!」
イッセーの叫びに夜空の雲が割れる。隠れていた満月が姿を現す。
「今日は驚くことばかりだ。まさか女の乳でここまで力が爆発するとはおもしろい!」
ヴァーリがイッセーに向かって飛び込んでいくが、そのヴァーリよりもイッセーは俊敏に動き、ヴァーリを捕らえると――。
「これは部長おっぱいの分!」
ヴァーリの腹部を右拳で殴る。
『Divide!!』
同時に流れる音声。白龍皇の半減の力を使用したようだ。ヴァーリを覆うオーラが激減した。
「ぐはっ!」
吐瀉物を口から吐きだすヴァーリにさらにイッセーは追撃をかける。
「これは朱乃さんおっぱいの分!」
顔面への一撃でヴァーリの兜が割れた。
「これは成長中のアーシアおっぱいの分!」
光の翼が発生している背中の噴出口を破壊した。
「これはゼノヴィアおっぱいの分!」
勢いよく、空中高く蹴り上げる。
「最後だッ! これは半分にされたら丸っきりなくなっちまう小猫ちゃんのロリおっぱいの分だぁぁぁぁぁあああああああッッ!」
イッセーが止めと猛スピードでタックルをかました。
「ガハッ!」
吐血するヴァーリにイッセーが言い放つ。
「小猫ちゃんはなー! 小さいおっぱいを気にしてんだぞ!? それを半分!? アーシアの成長し始めたおっぱいを平原にだと!? 俺が許さない! おっぱいを奪うことを許さない! もともと小さいおっぱいがもっと小さくなる苦しみがおまえは理解できるのか!? この半分マニアめッ!」
憤怒するイッセーに対してヴァーリは嬉々とした笑みを浮かべていた。
「……おもしろい。本当におもしろい」
『ヴァーリ、奴の半減の力に対する解析は済んだ。こちらの力の制御方法と照らし合わせれば対処できる』
「そうか。これであれは怖くないな」
解析できれば対処できるのか? 俺もやっておこうかなぁ。
「アルビオン、いまの兵藤一誠ならば白龍皇の『
『ヴァーリ、この場でそれは良い選択ではない。無闇に『覇龍』となればドライグの呪縛が解けるかもしれないのだ』
「願ったり叶ったりだ、アルビオン。――『割れ、目覚めるは、覇の理に――』」
ヴァーリが何かを唱えようとしたところでアルビオンが怒鳴る。
『自重しろ、ヴァーリッ! 我が力に翻弄されるのがおまえの本懐か!?』
イッセーがトドメとばかりに一撃を放とうとしたところで、空から何者かが降りてきた。
「ヴァーリ、迎えに来たぜぃ」
爽やかそうな顔つきの男性だった。そいつがヴァーリに話しかける。
「
ヴァーリは口元の血を拭いながら立ち上がった。
「それは酷いんだぜぃ? 相方のピンチだっつーから遠路はるばるこの島国までやってきたのによう? 他の奴らが本部で騒いでいるぜぃ? 北の
「……そうか、もう時間か」
「なんだ、おまえは?」
イッセーが乱入してきた男を指さして訊いた。
「――闘戦勝仏の末裔だ」
アザゼルが答えた。
「ソッコーで把握できる名前で言ってやる。――奴は孫悟空。西遊記で有名なクソ猿さ」
「そ、そ、孫、悟空ぅぅぅっ!?」
イッセーが驚きの声をだした。
「正確に言うなら、孫悟空の力を受け継いだ猿の妖怪だ。しかし、まさか、おまえまで『禍の団』入りとは世も末だな。いや、『白い龍』に孫悟空か。お似合いでもあるな」
「あとは豚と河童と三蔵法師だな! がんばって仲間を探せよ!」
ゴンッ!
あだっ!
「いまはふざけるところじゃないでしょ」
リアスに頭を殴られた。
「ハハハハッ! さすが黒い捕食者。この状況でも余裕だな!」
猿が大きな声で笑い声を上げた。
「俺は仏になった初代とは違うんだぜぃ。自由気ままに生きるのさ。俺っちは美猴。よろしくな、黒い捕食者、赤龍帝」
美猴は棍を手元に出現させるとくるくると回し、地面に突き立てた。すると地面に黒い闇が広がり、美猴はヴァーリを抱えてその影に沈むように消えた。
「待て! 逃すか!」
と、イッセーが捕まえようとするが――。
カッ!
イッセーの神器は解除され、つけていたリングも崩れ去り、ヴァーリはイッセーに強くなるよう言ってから完全に気配を消した。
◆
戦闘を終えて俺たちが校庭に足を踏み入れたとき、3大勢力の軍勢が入ってきて、戦闘後の処理を行っていた。
サーゼクスが俺たちを捉えると、手をあげる。
「無事だったか。良かった。――アザゼル、その腕はどうした?」
片腕のアザゼルを見てサーゼクスがアーシアに手を向ける。アーシアはそれに応じて、アザゼルの傷口に回復の神器を当てた。淡い緑色の光がアザゼルの腕の傷を癒すが、失った腕までは治らない。
「カテレアに捕まって自爆されそうになってな。仕方なく切り落とした」
「ん? カテレアは生きているようだが?」
サーゼクスが俺が脇に抱えているカテレアを見て疑問符を浮べた。
アザゼルが苦笑しながら言う。
「神城の奴が俺を助けようとしてな。俺が腕を切り取ったと同時にカテレアに飛びついて、カテレアの自爆に使おうとしていた魔力をすべて吸いとったのさ」
「切り損もいいところだよな」
俺がつぶやいたあと、サーゼクスが謝罪した。
「そうか。彼女の件は悪魔側に問題があった。その傷に関しては――」
サーゼクスの謝罪を切るように、アザゼルは「いらない」という意思を見せた。
「俺も……ヴァーリが裏切った」
「……彼は裏切ったか」
「もともと、力にのみ興味を注いでいた奴だ。結果から見れば、『ああ、なるほどね』と納得はできる。――だが、それを未然に防げなかったのは俺の過失だ」
いつものアザゼルではない。やはりヴァーリに裏切られたことにショックを感じているようだ。
ミカエルがアザゼルとサーゼクスの間に入る。
「さて、私は一度天界に戻り、和平の件と『禍の団』についての対策を講じておきます」
「すまないな、今回このようなことになって。会談の場をセッティングした我々としては不甲斐なさを感じている」
「サーゼクス、そう責任を感じないでください。私としては3大勢力が和平の道を共にすすめることに喜んでいるのですよ? これで無益な争いも減るでしょう」
「ま、納得できない配下も出るだろうがな」
「それは仕方がありません。長年憎しみ合ってきたのですから。しかし、これからは少しずつでも変わっていきましょう。――問題はそれを良しとしない『禍の団』ですけどね」
「それについては今後連携を取って話し合おう」
「では、私は一度天界へ帰ります。すぐに戻ってきますので、そのとき正式な和平協定を結びましょう」
と、この場をあとにしようとするミカエルと木場の目が合った。
「ミカエルさま、例の件、お願いします」
と木場が頭を下げた。
「あなたから進言のあった聖剣研究のことも今後の犠牲者を出さぬようにすると、あなたからいただいた聖魔剣に誓いましょう。大切な信徒をこれ以上無下にすることは大きな過ちですからね」
「やったな! 木場!」
「うん、ありがとう、イッセーくん」
イッセーと木場のやり取りを微笑ましくみていたミカエルにアザゼルが言う。
「ミカエル、ヴァルハラの連中への説明はおまえがしておけよ。下手にオーディンに動かされても困るからな。あと、
「ええ、堕天使の総督と魔王が説明しても説得力がないでしょうから、私が伝えておきます。『神』への報告は慣れていますから」
それだけ言い残すとミカエルは大勢の部下を連れて天へと飛んでいった。
アザゼルが堕天使の軍勢を前に言い放つ。
「俺は和平を結ぶ。堕天使は今後一切天使と悪魔とは争わない。不服な奴は去ってもいい。だが、次に会うときは遠慮なく殺す。ついてきたい者だけ俺についてこい!」
『我らが命、滅びのそのときまでアザゼル総督のためにッッ!』
怒号となった部下たちの忠誠。かなり慕われているようだな。
アザゼルは「ありがとよ」と小さく礼を言うと、堕天使たちに指示を出し、堕天使たちはその指示に従い転移の魔法陣を展開させて消えていった。
最後に残ったアザゼルがサーゼクスに手を振る。
「後始末はサーゼクスに任せる。俺は疲れた、帰るぞ」
そして魔法陣を展開させようとしたところでこちらのほうを向いて言った。
「そうだ、赤龍帝。当分、ここに滞在する予定だからそっちのリアス・グレモリーの『僧侶』ともども世話してやるよ。制御できないレア神器を見るのはムカつくし、神城の要求でアドバイザーを送る手筈だったしな」
「え?」
間の抜けた声を出してアザゼルと俺を見るイッセー。
「赤は女を。白は力を。――どちらも驚くほどに純粋で単純なもんだ」
アザゼルはそれだけ言うと、口笛を吹きながら去っていった。
◆
西暦200××年7月――。
天界代表天使長ミカエル、堕天使中枢組織『神の子を見張る者《グリゴリ》』総督アザゼル、冥界代表魔王サーゼクス・ルシファー、3大勢力格代表のもと、和平協定が調印された。
以降、3大勢力の争いは禁止事項とされ、協調体制へ――。
この和平協定は舞台となった俺たちの学園から名を採って『駒王協定』と称されるようになった。