第37話 夏休みの計画
<エイジ>
夏になりました。高校生活2回目の夏休みに突入しました。
皆さんはいかがお過ごしでしょうか? 俺は現在ひじょ~うにっ! ヤバイ状況です……。
右側に裸のリアスがいつものように、俺の腕を枕にすやすやと寝息を立てているところまではいいんですが……。
「ぅん……」
左側になぜかゼノヴィアが寝ているんです! かわいらしい水色のパジャマ姿で、俺の腕枕している腕がおっぱいの下を通ってヘソへ、抱きしめるような状態で、手を少し動かすだけで悩ましげな吐息が漏れるんです!
しかも、いま、タオルケットのなかをもぞもぞと動きながら、俺の足元からこちらへ迫ってくる何かが……。あっ! さっきペニスになにかがあたった! てか、この柔らかさはおっぱい! しかも、感触からいって朱乃さん!?
ぷはっ。
タオルケットのなかから朱乃さんが登場した。やっぱり、朱乃さんだった!
「――っ」
なにやら朱乃さんの顔が赤い――って! 俺って寝るとき裸じゃん!? 足元からってことは……。
朱乃さんは目を伏せながら顔を赤くしてつぶやく。
「お、男の子のって以外に大きいんですわね……」
や、やっぱり! 俺の息子を見たんですね!
俺が朱乃さんの顔を見ると、朱乃さんは微笑んだ。
「うふふ。おはよう、エイジくん」
「お、おはようございます」
姫島朱乃先輩。オカルト研究部の副部長で、3年の先輩で、学園のお姉さま的な存在。
いつものポニーテールのせいか、いまのほどいた状態の黒髪が艶っぽく感じていた。
朱乃さんは薄い生地で出来ている浴衣姿で、朱乃さんの体の感触がすごく伝わってくる!
ちゅっ。
朱乃さんが俺の首筋へキスをしながら抱きつき、足を絡めてきた。
朱乃さんのショーツの感触がペニスの上に感じた。わき腹をやさしく朱乃さんの指がなぞりあげていく。
「エイジくんの体って、すごいのね。無駄な肉がないくろいに絞り込まれてて。たくましくて……。でも、ゴツゴツしているわけじゃなくて……。うふふ、男の人の肌って、想像以上に気持ちいいのね。それともエイジくんの体だから? エイジくん。私の体は気持ちいいかしら」
身動きできない俺の耳にダメ押しともいえる息が吹きかけられる! ああっ……!
「ふふっ、興奮しているんですね。ビクビクしているのを感じますわ」
そりゃあもう! 朱乃さんの太ももに挟まれた俺の息子が興奮してますから!
「うふふ、うれしい。この体、もっと楽しんでくれてもよろしいんですよ? 私もエイジくんの体をもっと深く知りたいわ。――と言っても怖いお姉さんが隣で寝ているから限界があるのかしら。でも、バレるかバレないか、この瀬戸際が楽しくもあるわね」
朱乃さんが少しだけ身を起こして、俺に覆い被さる。俺を見下ろす朱乃さん。黒い髪がパラパラと俺にかかった。
朱乃さんの顔がどんどん俺に近づいてきて、唇が触れ合った。
ちゅっ。
「このまま時間が止まってしまえばいいのに……。なんてロマンチックなこともいいけれど、やっぱり――」
唇を交わし、朱乃さんのショーツに亀頭が触れたところで、その声は聞こえてきた。
「朱乃。何をしているのかしら? いつこの部屋に入ってきたの?」
――っ!
俺は恐る恐る視線だけ隣に移す。紅髪のお姉さまが不機嫌極まりない半眼で朱乃さんを睨んでいた。お、起きてたんですか?
朱乃さんは俺の頬にキスしている様子を見せつける。
「スキンシップですわ。私のかわいいエイジくんと素敵な朝を始めようと思ったものですから侵入してしまいました。だって、独りのベッドは寂しいもの」
朱乃さんの一言でリアスの眉がつり上がる! キレちゃった!?
「『私の』? あなた、いつエイジの主になったの?」
ぶるぶると全身を震わせながらリアスは言う。
「主じゃなくて先輩ですわ。後輩をかわいがるのは先輩のつとめでしょう」
リアスが朱乃さんに顔を近づけて怒りのこもった声音で言う。
「先輩ならイッセーや祐斗をかわいがればいいじゃない」
「誰をかわいがるかは私の勝手でしょう?」
「く……、ここは私にとって聖域に近い空間なの。昔からいた黒歌たちならしかたがないとしても、他の者まで入れるわけにはいかないわ! ここは私とエイジの部屋なの!」
俺の部屋なんだけど……。って、ゼノヴィアに気づいていないのか? 朱乃さんが来る少し前に侵入してきたんだが。
「あらあら。お嬢さまは意地悪ですわね。エイジくんに他の女を抱くことを許しているのに私はダメだなんて――私に取られるのが怖いのかしら」
「……一度、あなたと話し合わなくてはいけないようね」
リアスの体が紅いオーラに包まれた! 臨戦態勢!?
「あら、話し合うという割には攻撃的なオーラが漂いますわね」
笑む朱乃さんも薄く黄金のオーラを纏い始めた! こっちもか!?
「話し合いよ。あくまで」
バチバチと火花を散らしながら睨み合うリアスと朱乃さん……ああ、朝のベッドでのバトル……そういや、昔は黒歌たちもやってたなぁ。
「ぅん……、もう、朝か……」
と、ゼノヴィア起床! や、やばい! この天然マイペースの介入はマズイ!
「ゼノたん、まだ眠っててもいいよ……」
俺はゼノヴィアの頭を胸で抱きしめた。こ、このまま眠ってくれ!
「ん、エイジ……。ふむ、わかった。まだ眠っていよう」
俺の胸でゼノヴィアの寝息が聞こえてきた。よ、よかった眠ってくれた……。
ぼふっ! ぼふっ! ぼふんっ!
音のするほうへ振り向けば、今度はリアスと朱乃さんの枕投げ合戦が開始されていた。
「だいたいね、朱乃はすぐに私の大事なものに触れようとするからイヤなのよ!」
リアスの勢いよく枕を投げ、朱乃さんの顔面にヒットする! 顔に当たって枕が下に落ちても、朱乃さんはニコニコ顔だった――と思ったら、目を見開いた!?
「あら、ちょっとぐらい良いじゃないの! あなたは本当にケチだわ、リアス!」
落ちた枕を拾い上げて、リアスの顔面にぶつける! も、もろだ……。
顔から枕を払いのけるリアス。ちょっと涙目だった。
「私が決意するたびに毎回毎回邪魔に入って!」
「あなたの手が遅いからでしょう!」
枕を投げあう2人。
「ここは私とエイジの家なの! お兄さまも朱乃も私とエイジの間の邪魔ばかりするんだもの! もういや!」
「サーゼクスさまのご意向を無視する気!? 魔王さまよりエイジくんなのね! ――私にもエイジくんを少しは貸しなさいよ!」
「ダメ! 絶対にダメなんだから!」
2人のケンカは朝食の準備を済ませたレイナーレが起こしに来るまで続き、ゼノヴィアは結局最後まで見つからずに、自然に部屋を出て、自分の部屋へ着替えに帰っていった。
◆
朝食の席。
最近住人が増えて手狭に感じていた空間は、ものすごく広い空間へと変貌していた。
晩餐間などで使用する大きなテーブルに、もとから住んでいた自分とリアスを含む7人と朱乃さんとゼノヴィアの合計9名が座っていたが、部屋はまったく窮屈ではなく、リビングもかなり広い空間で、家具も一級品で各種最新のゲーム機まで用意されていた。
「それにしても、すごい家になったな~」
食後のお茶を飲みながらしみじみとつぶやいた。
レイナーレが家の図面を取り出した。
「7階建てで地下4階まであります。一階は客間とリビング、キッチン、和室。二階はご主人さまとリアスの部屋と黒歌の部屋、3階はセルベリアとノエルと私の部屋、4階は姫島朱乃と、ゼノヴィアの部屋と書斎や物置など。5階は時雨の部屋と武器庫と空室が1室、6階以降は空き部屋となっていて、いまのところゲストルームとなっています」
レイナーレは図面を捲りながら説明を続ける。
「屋上には空中庭園もあり、地下1階は広いスペースの部屋。トレーニングルームにも出来ますし、映画鑑賞などもできます。大浴場も設備しています。地下2階は丸々室内プールです。温水も可能です。地下3階は書庫と倉庫になっています。地下4階は空間を広げて大規模な修行ができる広大なフィールドになっています」
リアスが部屋の隅に設置された物を指差しながら言う。
「エレベーターもあるから地上7階から地下4階までスムーズに乗り降りできるわ」
エレベーター……。どこの豪邸だよ……。
「ああ、それと、隣のイッセーの家もついでに改築したの。あっちは6階建てよ。日当たりとかも考えて家との間の距離は少し離したけどね」
そう言われて部屋の外を見ると、確かに大きなマンションのような家が少し離れたところに見えた。
と、そこで朱乃さんと目が合った。
朱乃さんはいつも部室で見せていた笑顔とは違い、特別なヒトに見せるような親しみのある華やかな笑顔を浮かべて俺へ向けて微笑んでいた。
ぎゅっ。
いたっ!? 見ると横でリアスが俺の尻尾を抓っていた!
し、嫉妬してくれるのは嬉しいけど尻尾は……。リアスは優雅にお茶を飲むと全員を見ながら言った。
「これから隣のイッセーの家へ行くわ。そこで、オカルト研究部のみんなと黒歌たちとの顔合わせをしましょう。夏休みの件も伝えないといけないし。ちなみに黒歌のことは前もって説明済みだから。だいじょうぶよ」
「じゃあ、出かける用意でもするかな」
◆
イッセーの家に入り、リビングで全員集まった。やっぱりすごく大きくなっているな。
リビングにはオカルト研究部の部員と俺の配下……悪魔になったから眷属や下僕か? が全員で14人が集まっているが、まだまだスペースに余裕があった。
とりあえず、オカルト研究部のメンバーが先に1人ずつ自己紹介を行い、次に黒歌たちが自己紹介を始めた。
「元はぐれ悪魔でいまはエイジの使い魔。白音……小猫の姉の黒歌にゃん」
「エイジの使い魔!? ていうか、小猫ちゃんのお姉ちゃん!? ほ、本当に?」
「ほんとにゃん」
「でもおっぱいが――」
「失礼です」
「げふっ!?」
イッセーが驚きの声を上げて、黒歌の巨乳と小猫ちゃんのぺったんおっぱいを交互に見て、小猫ちゃんに殴られ沈められた。
次にセルベリアが立ち上がって自己紹介を始めた。
「私は北欧出身のヴァルキリー。セルベリア・ブレスです」
「ヴァルキリー……やっぱりアース神族だったのね」
「ええ。元ですがね。エイジさまが北欧を訪れたときに知り合い、忠誠を誓いました」
と、セルベリアはそれで自己紹介を終えた。
次にノエルが自己紹介を始める。
「私はノエル・ヴァーミリオンです。人間で、元エクソシストで教会本部で仕事していました。数年前に、ある仕事をしている最中にエイジに助けられて。色々あっていまは一緒に暮らしてます」
まるで軍人のように自己紹介するノエルを見て、ゼノヴィアが呆れたようにつぶやいた。
「まさか、『魔銃ベルヴェルク』の神器所有者で、教会からいなくなった凄腕のエクソシストがエイジの仲間になっているなんて思いもしなかった」
「えっと、それは色々あったんです……」
と、自己紹介を終え、時雨に移る。
「香坂、時雨。……人間。趣味は、刀集めと……、エイジとえ――」
「そ、そこまでな!」
慌てて時雨の口を手で覆う。この娘ってすごい天然というか世間知らずで、あまり羞恥心がないから、時々驚くようなことを突然、口走るんだよな!
「と、とりあえず、時雨は口下手だけど、いい娘だからよろしく」
と、強制終了! 最後、レイナーレな!
「大半は知っていると思うけど、私は堕天使レイナーレ。兵藤一誠を一度殺して、神城エイジが悪魔になるきっかけを与えて、アーシアも殺そうとした堕天使よ」
「それはもういいですよ。レイナーレさん。イッセーさんと出会えてお友達も増えましたし」
「ああ。俺も悪魔になってハーレムの夢がもてたから、もうぐちぐち言わない」
とアーシアとイッセーが言い。レイナーレは深く頭を下げる。
「ありがとう」
そして顔を上げてメイド服に手を当てて言う。
「いまはご主人さま……、エイジさまのメイドとして働いているわ」
と、全員の紹介が終わった。
リアスが全員を見て言う。
「じゃあ、これから今回全員を集めた本来の目的を話すわよ」
「本来の目的ですか?」
イッセーが訊ねると、リアスはうなずいて口を開いた。
「夏休みは冥界に帰るの」
「冥界に帰る!?」
ショックを受けたような顔のイッセー、どうしたんだ?
「ええ。毎年、夏休みには故郷に帰るんだけど、あなたたちは私の眷属で下僕の悪魔なのだから、主同伴は当然。一緒に故郷へ行くの」
「あ、そ、そういうことですか」
安心したようなイッセー。捨てられるとでも勘違いしたのか?
「エイジは私の眷属悪魔だから、冥界に帰る私に同伴することになるわ。当然、エイジの眷属であるあなたたちも冥界へ行くでしょう?」
リアスが黒歌たちに尋ねる。黒歌たちはうなずく。
「当然にゃん♪」
「もちろんです」
「はい」
「うん」
「メイドですので」
リアスは確認を取ると、黒歌とレイナーレにカードを渡した。
「これは身分証明書みたいなものよ。これを持っていれば冥界にどうどうと入れるわ」
「にゃ」
「ありがとうございます」
黒歌とレイナーレはリアスからカードを受け取った。
「エイジとセルベリアたちは、すでにお兄さまからそれぞれ通行証が発行されているのよね?」
「はい。もらってます」
と、次にリアスはアーシア、ゼノヴィアを見て微笑む。
「そういえばアーシアとゼノヴィアは初めてだったわね」
部長の問いにアーシアはうなずく。
「は、はい! 生きているのに冥府にいくなんて緊張します! し、死んだつもりでいきたいと思います!」
アーシア! あまり意味がわからないよ! 楽しい旅行なのに楽しい旅行らしくないよ!
「うん。冥界――地獄には前々から興味があったんだ。でも、私は天国に行くため、主に仕えていたわけなんだけれど……。悪魔になった以上は天国に行けるはずもなく……。天罰として地獄に送った者たちと同じ世界に足を踏み入れるとは、皮肉を感じるよ。ふふふ、地獄か。悪魔になった元信者にはお似合いだな」
沈んでいるゼノヴィアに元信者で経験者のノエルが言う。
「大丈夫ですよ。慣れれば気にならなくなりますから」
「……そうなのか?」
「ええ。大丈夫です」
と、経験者が慰めていた。
「8月の20日過ぎまで残りの夏休みをあちらで過ごします。こちらに帰ってくるのは8月の終わりになりそうね。修行やそれら諸々の行事を冥界でとりおこなうから、そのつもりで」
リアスはそう俺たちにスケジュールを申し付けてくれた。今年の夏も冥界か~。いや、今年は冥界メインか。去年の夏は冥界で賞金首を狩りながら、学園の女生徒たちの処女を食べていたからな~。
「あー、でも、俺、夏休みやりたいことがあったんですけど」
と、イッセーが言った。まあ、突然聞かされたことだしな。なにか先約があるのは当たり前か。
「あら、イッセー。どこか行く予定でもあったの?」
「はい。海やプールに行こうかなーって」
「アーシアと?」
と、俺が尋ねるとイッセーは手をぶんぶん振った。
「ち、ちげぇよ! 元浜と松田とだよ!」
「……そうか」
アーシアががっくり落胆しているが、イッセーは気づいていないようだ。ってか、気づけよ! それにそれ以前にアーシアをデートに誘ってやれよ!
「海は冥界にはないけど、大きな湖ならあるわ。プールだって、この家だって私の家にもあるのよ? 温泉もあるし、それではダメなの?」
と、部長が尋ねるとイッセーはいやらしい顔つきになった。
「……いやらしい妄想禁止」
小猫ちゃんが半眼でイッセーに突っ込んだ。あれ? ツッコミが弱いな? 元気もないぞ?
「イッセーくん、想像以上にスケベな顔だったよ」
「先輩は想像力が豊かで楽しそうです……うらやましいなぁ……」
木場が爽やかに言い、ギャスパーは心底うらやましそうにつぶやいた。ちなみに俺はギャスパーを視界に納めれるぐらいまで克服し、いまのようにダンボール着用状態ならまったく、平気なのだ!
「おまえらはこの夏、女の子とデートしないのかよ?」
「僕は修行があるからね」
と木場が言い。
「僕はいいです。……ひ、引きこもりなんで、インドア派だし、お家でネットしながらかわいい服を着られればいいんで……」
とギャスパー。
イッセーの視線が俺へ来る。
「…………おまえは? 桐生に去年は女生徒を大食いしたって聞いたけど? 今年はしないのかよ?」
かなりうらやましそう、というか……、血の涙を目に溜めて、拳が白くなるほど力が込められている。
「今年は冥界に行くって訊いてたしな。誘ってくる子はいたけど全部断ったよ。今年の夏は冥界で賞金稼ぎの仕事か、修行だよ」
「く、そうか……」
とイッセーは血の涙を止め、力を抜いた。若干嬉しそうなのは気のせい――。
「――ふっ、大食い阻止だな」
気のせいじゃなかったようだ。
とりあえず、ソファーの背もたれに体を任せた。
「悪魔の仕事も修行で休みだし、久々にゆっくり冥界ライフを楽しむさ」
「エイジ……」
「エイジくん……」
申し訳なさそうなリアスと朱乃さん。え? なんでそんな暗い顔に?
「どうしたんですか?」
訊ねると、書類の束を朱乃さんが渡してきた。えっと……なんだ?
書類を受け取ってパラパラ目を通していくと……。
「え?」
と俺の口から間の抜けた声が漏れてしまった。
部長が遺憾そうに言う。心の底から遺憾そうに、申し訳なさそうに……。
「あなたに、依頼の予約が3,000件もきてるの……」
朱乃さんも書類のトータル部分に指差しながら言う。
「夏休みが始まる少し前に、エイジくんが悪魔の仕事で、そっち系の仕事を受けていることが冥界に広まったみたいなの。しかも、この前サキュバスたちからお墨付きの許可証も貰って、インキュバスになったでしょ?」
「は、はい……」
「伝説のインキュバスで、しかも、冥界で大人気の黒い捕食者に、この世のものとは思えない女の喜びを感じさせてもらえるって広まって、いきなり依頼件数が跳ね上がったの……」
…………。
「で、でも、3,000件は多すぎでしょ?」
そう言うと部長は首を横に振った。
「いいえ、3,000件は現時点で、予約打ち切りにしたから3,000件なの。……グレモリーに寄せられた本当の依頼件数は10,000件以上よ」
「ま、マジですか?」
確認するように2人に訊く。
「ええ。大マジよ」
「はい。大マジですわ」
と、うなずいた。
「それでエイジには、修行と平行して急遽仕事をやってもらわなくちゃいけなくなったの」
「ええ。冥界と人間界両方を魔法陣で移動しながら」
2人はハンカチを取り出して涙を拭き取り、俺に抱きついた。
両方から抱きしめてくる。ああ、おっぱい最高です……。
「ゴメンなさい、エイジ。こんな大事になるなんて……!」
「私もあなたの人気を甘く見ていましたわ! まさか、依頼件数が1人で1,000件も超えるなんて思いもしなかったの……!」
俺はとりあえず、2人を抱きしめ返して、笑顔を浮かべた。
「だいじょうぶですよ! 夏休みは2ヵ月あるんですから修行と平行しながら3,000件きちんとこなしてみせますから!」
と言ったが内心は動揺しまくりだった……。3,000件か~……。
「3,000件もエロい仕事がやれるのか!? うらやまし――」
「代わってくれるか、イッセー?」
「代われるものなら代わりたいっ! あ、いや……、やっぱり3,000人は……3,000件は……」
イッセーは苦悩し始めた。
「すすすす、すごいです! さすが黒い捕食者っ! 人気者です! 尊敬します!」
と、言ってくれるギャスパー。だけど、限度があるだろ。限度が……。
「エイジくん。尻尾が床に堕ちてるよ」
う、うるさい木場! 縮みあがっているわけじゃないんだからな!
「さすが、エイジだにゃん!」
「ええ。さすがエイジさまです」
「あははは……」
「さすが」
と、自分のことのように誇る黒歌とセルベリア、時雨。ノエルは乾いた笑顔で俺の身に起こるであろう事を心配してくれているようだ。
「え、えっとさすがです」
レイナーレも困惑しながら褒めてきた。
「ふふ、さすが私が見込んだ男だ」
そこにゼノヴィアまで褒めてきた。いや、これは褒められてもあまり嬉しくないんだけど……。
そんな混沌な状況をかき消すように笑い声が響いた。
「アザゼル」
「アハハハハッ! すげぇな神城! 夏休みだけで3,000件もエロい仕事をしなきゃいけないなんて、しかも、本当は10,000件以上だって!? アハハハハハッ! さすが黒い捕食者! 食べまくりだな!」
「少し前にこっそり家に入ってきて、リビングの一角に腰をおろして様子を眺めていたアザゼルがなんのようだよ」
『ッ!?』
かなり不機嫌な声音で言うと、リアスたちとレイナーレは面食らったように驚いた。ちなみに俺の眷属はレイナーレ以外、アザゼルの侵入に気付いていた。
アザゼル笑いながら言う。
「俺も冥界に行くぜ」
「ど、どこから、入ってきたの?」
部長が目をパチクリさせながらアザゼルに訊く。
「うん? 普通に玄関からだぜ?」
平然と答えるアザゼル。
「……気配すら感じませんでした」
木場が気持ちを正直に口にした。
「そりゃ修行不足だな。俺は普通に来ただけだ。神城とその眷属、レイナーレ以外は家に入る前から気づいていたぞ。それよりも冥界に帰るんだろう? なら、俺も行くぜ。俺はおまえらの『先生』だからな」
まあ、確かに説明するのが上手いし、先生とか講師とかに向いてるよなこいつ。
アザゼルは懐からメモ帳を取り出すと、開きながら読み上げる。
「冥界でのスケジュールは……リアスの里帰りと、現当主に眷属悪魔の紹介。と、新鋭若手悪魔たちの会合。それとあっちでおまえらの修行だ。俺は主に修行に付き合うだけだがな。おまえらがグレモリー家にいる間、俺はサーゼクスたちと会合か。面倒くさいもんだ」
嘆息するアザゼル。マジでめんどくさそうにしている。
「ではアザゼル――先生はあちらまで同行するのね? 行きの予約はこちらでしておいていいかしら?」
リアスの問いにアザゼルはうなずく。リアスも先生つけるみたいだな~。
「ああ。よろしく頼む。悪魔のルートで冥界入りするのは初めてだ。いつものは堕天使のルートだからな」
「アザゼル」
「なんだ、神城」
「俺も先生つけたほうがいいか?」
「おまえは俺から学ぶことなんかねぇだろ? それにおまえに先生って呼ばれるのは、なんかヤダ」
こ、こいつ……!
「じゃあ、アザゼルでいいな」
「昼間学校で会ったときは一応、敬語と先生つけろよ」
「了解」
さてと……冥界か~。いや、2ヶ月で3,000件かぁ~。