※この作品はR-18です。

ハイスクールD×D 世界を渡る転生者   作:上平 英

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第39話 若手悪魔、集合です!

 

<ヴェネラナ・グレモリー>

 

 

 我が家に娘と、娘の眷属とエイジさんの眷属の皆さんが到着した次の日。

 

 私はエイジさんが秘めている才能に畏れおののいていた。

 

「本当に、エイジさんが書斎の本をすべて読破したの?」

 

「は、はい、奥さま。何でも【風読みの眼鏡】という本を2倍から50倍の速度で読めるようになる魔道具を使用して、午前中の間にすべてお読みになられました」

 

「冥界の文字も? 彼は幼い頃から冥界で賞金稼ぎをしていたそうだから、ある程度は読めると思っていましたが、書斎には翻訳が難しい本もあったはずよね?」

 

「ええ、そうなんです。若さまも読めない部分を訊いてこられましたが、すぐに文字を覚えてしまわれました……。その他、計算や魔法学や悪魔学や政治方面でも優れていました。グレモリーの歴史もしきたりもすでに覚えられました」

 

 教育係りに指名した悪魔からの報告を聞いて、信じられないと思う反面、冥界で有名になり、魔王クラスといわれている黒い捕食者なら当然だと思う自分がいた。

 

 教育係りに使命した悪魔は深々と頭を下げてきた。

 

「もはや自分に教えられることなど、なにもございません。若さまがすでに習得している知識は専門家レベルです」

 

「まさか、そんなに?」

 

「はい。読むだけではなく、すべて読んだ本を完璧に理解されています。しかも一度で。知勇に飛びぬけて優れている若さまのような人物を覇王や覇者という者なんでしょう。一介の悪魔である私は、若さまの力に引き込まれてしまいます。――ああ……、姫さまもすごい方を連れてきたものですな」

 

 興奮したような、感激しているような教育係りの悪魔。私が選んだ一流の教育係りにそこまで言わせるなんて……。

 

 私はミリキャスと勉強しているという彼の元へと会いに向かった。

 

 部屋のドアを少しだけ開いてなかを覗くと、エイジさんが私のところに報告にきた教育係りの悪魔の代わりにミリキャスに勉強を教えていた。

 

 すごく丁寧な教え方で、楽しく授業を行うその姿は様になっていた。まるで、熟練の教育者ね。

 

 ミリキャスが問題を解きながらエイジさんに訊いた。

 

「お兄さまはなぜそんなに勉強がお出来になるのですか?」

 

 私も気になっていたこと。さすが私の孫ね、いい質問だわ。

 

 エイジさんは「うーん」と唸るとゆっくりと答えた。

 

「きちんと勉強していないと、好きな女の子に恥をかかせるかもしれないから、かな」

 

 ――っ。

 

「好きな女の子に?」

 

「うん、そうだよ。ミリキャスはいま好きな女の子はいるかい?」

 

「いいえ。そういうのはまだわかりません」

 

「じゃあ、将来だな。未来の自分が勉強やマナーが出来ていないと、好きな女の子を満足にエスコートすることも出来ないだろう? 俺は、自分が不甲斐ないせいで女性に迷惑がかけることが一番嫌なんだ。つまならい勉強も、将来の自分のためと思えば辛くはないし、むしろ将来が楽しみになるのさ」

 

「お兄さまはお姉さまのために勉強するんですか?」

 

「違うよ。全部俺のため。自分自身が納得いくためにがんばるんだよ。ミリキャスもグレモリー家のため以前に、まずは自分の将来のためって考えて勉強したほうがおもしろいよ」

 

「おもしろいですか?」

 

「ああ、おもしろいさ。それに、何が自分の役に立つかは分からないけど、色んな知識は持っていて困ることはまずないし、ミリキャスはこんないい環境で勉強させてもらえるんだ。いまのうちにたくさん勉強しておけば将来が楽になるだろう。――さっ、続きを始めようか?」

 

「はい! お兄さま」

 

 ミリキャスが元気よく返事をして問題を再び解き始めた。

 

 ふふふ、勉強は将来の自分のためですか。まだ17歳ほどなのに自分の考えと理論を持っているんですね。

 

 私はゆっくりとドアを開けてなかに入った。

 

「おばあさま!」

 

 とミリキャスが笑顔で迎え入れてくれる。エイジさんも私に軽く頭を下げる。

 

「エイジさん、ミリキャス。お勉強ははかどっているのかしら?」

 

「はい!」

 

「ええ」

 

 と、返事を返すミリキャスとエイジさん。私はエイジさんのほうへ近づく。

 

「ふふふ、まさか午前中の間に冥界の勉学を学び終わってしまうなんてね。ミリキャスにも勉強を教えていたみたいだし」

 

 そう言うと、エイジさんは苦笑した。

 

「もともと基礎はサーゼクスさまとセラフォルーさまに教えてもらっていましたし、幼い頃から冥界で賞金稼ぎの仕事をしていましたから」

 

 そういえば黒い捕食者のアニメは、幼少期から青年期のいままで続いていたわね?

 

「エイジさんは何歳ぐらいから冥界で賞金稼ぎのお仕事を? といいますか、なぜ冥界で賞金稼ぎという危ない仕事をされていたのですか?」

 

 気になったので訊ねてみる。

 

「そうですね。だいたい8歳ぐらいですね」

 

 8歳!?

 

「8歳のときに両親が交通事故に遭って亡くなって、身内もいなかったので施設へ入れられそうになったんですが、自分は施設に入るのが嫌で逃げ出してしまったんです。そのあとすぐに怪我していた黒歌を拾って冥界に渡ったんです」

 

『はぐれ』悪魔の黒歌……、なぜ主を殺したのか事情はすでに訊きましたし、今は『はぐれ』ではなくエイジさんの使い魔でしたわね。昨夜の夕餉の席でも危険な気配は感じませんでしたし、小猫とも険悪という雰囲気ではありませんでした。小猫も、黒歌が近くにいるのに恐れている様子もありませんでしたね。

 

「冥界に渡ってからは、賞金首の悪魔や堕天使を倒しながら生活費を稼いでいました。人間界と違って、冥界は子供でも仕事は出来たのが幸運でした。サーゼクスさまとは賞金稼ぎを始めてから1年ほど経った頃にお会いして、それが縁で人間界に家と仮の保護者として戸籍をお借りして、人間界に自宅を持ち、再び人間界の学校に通えるようになりました」

 

 微笑みながら、思いだすようにエイジさんは話しますけど、かなり壮絶な人生ね……。ミリキャスも若干引いていますし……。

 

「それからは人間界と冥界を行き来しながら賞金稼ぎとして働いていました。今年の春にリアス……リアスさまと出会い、転生悪魔になるまでは。――と、今は転生悪魔ではなくインキュバスですね」

 

 本当に壮絶な人生ね。賞金稼ぎなんて危険な仕事を幼い頃から行い、人間から転生悪魔になって、滅びたはずのインキュバスになるなんて。まあ、それよりも、きちんと2人きりのときとかは『リアス』と普通に呼んでいるのね。ふふっ、同じ家に住んでいるのに、まだ処女だったみたいだから心配したけど、だいじょうぶみたいね。

 

 ああ、そういえば――。

 

「あなたは娘の、リアスの眷属悪魔になったことに後悔はないのですか? 『兵士』の駒1個でイレギュラーで転生したことから、あなたは同意していないときにリアスが勝手に眷属化させたのでしょう?」

 

 そう、魔王クラスの者が、勝手に格下の上級悪魔相手に勝手に眷属にされたのだから、憤りがあってもおかしくはないはず。

 

 私の問いにエイジさんは笑みを浮べて答え始めた。

 

「後悔などありませんよ。勝手に眷属に、というか転生悪魔にされたときは戸惑いましたし、転生悪魔にした悪魔が最低な者だったらすぐに逃げていました。でも、リアス・グレモリーの人なりをみて、自分自身から彼女の眷属悪魔になり、彼女を支えたいと思ったんです。ふふっ、まあ、一言で言えば惚れたんでしょうね。彼女に」

 

 嬉しそうに微笑む姿は独特の色気が感じられました。ふふっ、さすが転生悪魔から大勢のサキュバスたちを屈服させてインキュバスとなった者ですね。女を惑わすような色気が強いですわ。

 

「母親として、その言葉はすごく嬉しいですわ」

 

 ふふっ、しかもグレモリー家に彼と一夜を共にしたいという依頼が、もうすでに2万件ほど寄せられていましたし……。まあ、本来グレモリー家の者が行う仕事ではありませんが……。インキュバスの彼ならば仕方がないでしょう。避妊も完璧に行っているようですし。彼を通して上流階級の悪魔の方々と数多くの大きなパイプをいくつも作れましたから。魔王のひとりであるセラフォルー・レヴィアタンさまとも仲がよいみたいですから、許しましょう。

 

 ふと、時計を見る。もうそろそろですね。

 

「もうすぐリアスが帰ってきます。今日は若手悪魔たちが魔王領に集まる恒例の行事があるものですから」

 

 リアスと変わらない年齢の若手悪魔が一堂に会する。ふふふ、名門、旧家といった由緒正しい上級悪魔の跡取りたちと、上級悪魔や魔王の皆さんに彼がグレモリーの眷属であると見せつけないとね。

 

 ああ、やはり私は悪魔ね。彼が欲しくてたまらないわ。魔王クラスの実力者で知にも優れている。どうやってもグレモリー家に取り込みたいわ。もしリアスがダメだったら私が誘惑しましょうか? うふふ、赤龍帝も手に入りましたし、これからの冥界は本当に退屈しないわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<イッセー>

 

 

 部長たちとグレモリー城観光ツアーから帰ってきてすぐ、エイジと合流して例のグレモリー家専用列車で魔王さまがいらっしゃる領土へ移動した。ちなみに、エイジの眷属さんたちは部外者ということでグレモリー家のお城で留守番してる。

 

 途中、宙に展開する巨大な長距離ジャンプ用魔法陣を何度か潜り抜けて、列車は進んだ。

 

 列車に揺られること3時間。到着したのは――都市部だった。

 

 駅もホームも近代的だよ! 自動販売機だってあるじゃん! 多少デザインが俺の住む世界とは違うけど、遠くに見える建物も最先端の様相を見せている!

 

「ここは魔王領の都市ルシファード。旧魔王ルシファーさまがおられたと言われている冥界の旧首都なんだ」

 

 と、木場が説明してくれる。ここはルシファーさまがいた都市なわけね。ちなみに俺たちの格好はエイジ以外は駒王学園の夏の制服だ。俺たち眷属のユニフォームみたいなもんだが、エイジは元から着ていたコスチュームのほうが馴染むらしく、部長もエイジがこちら側についたことを知らせるために、あえて冥界で知られている格好を許したそうだ。

 

「このまま地下鉄に乗り換えるわよ。表から行くと騒ぎになるからね」

 

 木場がそう言う。地下鉄もあるのか! 本当、人間界と変わらないところも多いな!

 

「キャーッ! リアス姫さまぁぁぁぁっ!」

 

 突然、黄色い歓声が聞こえてくる。見ればホームにいた悪魔の方々が俺たち――部長を見て憧れの眼差しを向けていた。おおっ、部長は人気者なのか?

 

「部長は魔王の妹。しかも美しいのですから、下級、中級悪魔から憧れの的なのですよ?」

 

 朱乃さんがそう説明してくれた。マジか! 部長は冥界じゃチョー有名人ってこと?

 

「まあ、それよりもいま人気なのは――」

 

 と、朱乃さんが続けて言おうとしたところで、

 

「キャーッ! ブラックさまよ! ブラック・プレデターさまぁぁぁぁっ!」

 

 先ほどより大きな歓声が響いた。見れば女性の悪魔さんがたが熱い視線をエイジに送っている! 写真を撮ろうとしている悪魔もいるじゃん! それに比べて、男はまったく歓声をあげていないが……。

 

「うふふ、エイジくんは――、というか黒い捕食者は冥界の女性の憧れですからね。創作の世界のエイジくんはもちろん、魔王クラスの実力者で女性にやさしく大事にしてくれると有名で、仮面をとった素顔も美形だったことで、いま冥界の女性たちのあいだで一番有名なんですよ」

 

 朱乃さんが再び説明してくる。そ、そういや、エイジって冥界ではものすごい有名人だっていってたな。女性悪魔たちが熱狂しまくってる。まあ、名前と正体が知れてから1万件以上も依頼が来るほど人気者だもんな。

 

 まあ、うらやましいとは思ってるけど……、悲鳴みたいな歓声と獲物を前にした肉食獣ばりの獰猛な目つきはさすがに怖いな。

 

「ヒィィィィ……。悪魔がいっぱい……」

 

 俺の背中でギャスパーが悪魔の多さと声に反応して慌てふためいていた。引きこもりに辛い日が続いてますな。

 

「困ったわね。これ以上騒ぎになる前に急いで地下の列車に乗りましょう。専用の列車は用意してあるわよね?」

 

 部長は連れ添いの黒服男性の1人に訊く。俺たちのボディーガードらしく、グレモリー城から何人もついてきてくれていた。

 

「はい。ついてきてください」

 

 こうして俺たちはボディーガードさんのあとに続いて、地下鉄の列車へと移動したのだった。

 

「リアスさまぁぁぁぁっ!」

 

 部長は男性からも大人気のようで苦笑しながらも男の群れに手を振っていた。

 

「エイジさまぁぁぁぁっ!」

 

 部長に次いで女の子からエイジを呼ぶ声がいくつも聞こえた。ってエイジって名前知られてるんだ!? あ、まあ、婚約パーティで正体ばらしながら名前を叫んでたな。ああ、エイジの野郎、堂々と歓声に応える姿が様になってるし、手を振られた女の子も顔を真っ赤にして喜んでる。ううっ、イケメン&気遣い&力は反則だな……。俺もエイジみたいにモテモテになれるのかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地下鉄から乗り換え、さらに揺られること5分ほど。

 

 着いたのは――都市で一番大きい建物の地下にあるホームだった。

 

 若手悪魔、旧家、上級悪魔のお偉いさんが集まるという会場がこの建物にある。ボディーガードの人たちはエレベーター前までしか随行できないようで、そこで待機となった。

 

 俺たちは部長を先頭に地下からエレベーターに乗り込む。広いエレベーターだ。

 

「皆、もう一度確認するわ。何が起こっても平常心であること。何を言われても手を出さないこと。――上にいるのは将来の私たちのライバルたちよ。無様な姿は見せられない」

 

 部長の言葉はいつも以上に気合が入っていて、凄みがあった。

 

 エイジは優雅というか堂々としていたが、俺もアーシアも生唾を飲んで気持ちを落ち着かせていた。よし! 緊張しまくりだけど、俺の他にも『兵士』がいるんだろうし、無様なところは見せないぞ!

 

 かなり上に上がったところで、ついにエレベーターが停止し、扉が開く。

 

 一歩をそこへ踏み出すと、そこは広いホールだった。エレベーターから出ると、そこには使用人らしき人がいて、部長や俺たちに会釈してきた。

 

「ようこそ、グレモリーさま。こちらへどうぞ」

 

 使用人のあとに続く俺たち。通路に進んでいくと、一角に複数の人影が――。

 

「サイラオーグ」

 

 部長はその人影の1人を知っている様子だった。

 

 あちらも部長を確認すると、近づいてくる。男性だ。見た目、俺たちと同い年ぐらい。

 

 黒髪の短髪で野生的なイケメンだった。活動的な格好をしていて、すごく体格が良くて筋肉質だな。プロレスラーみたいだ。でか、武道家系悪魔さん? 瞳は珍しい紫色だね。

 

 どことなく、顔の面影は部長――いや、サーゼクスさまに似ているような気がする。

 

「久しぶりだな、リアス」

 

 部長とにこやかに握手を交わしていた。おおっ、若手悪魔さん? やはり、上級悪魔なんだろうか? とりあえず、下級悪魔の俺でも迫力ある魔力の波動を感じ取れる。

 

 その人の眷属らしき悪魔たちはこちらに視線を送っていた。……強そうな悪魔の皆さまばかりなんですけど……。

 

「ええ、懐かしいわ。変わりないようで何よりよ。初めての者もいるわね。彼はサイラオーグ。私の母方の従兄弟でもあるの」

 

 部長はその悪魔さんを俺たちに紹介してくれる――って、従兄弟!?

 

「俺はサイラオーグ・バアル家の次期当主だ」

 

 バアル! バアルって、魔王に次に偉い『大王』じゃなかったけ!? 部長のお母さんはバアル家出身の悪魔だったのかな?

 

 驚く俺をよそに部長はバアル家の次期当主さんと会話を再開させる。

 

「それで、こんな通路で何をしていたの?」

 

「ああ、くだらんから出てきただけだ」

 

「……くだらない? 他のメンバーも来ているの?」

 

「アガレスもアスタロトもすでに来ている。あげく、ゼファードルだ。着いた早々ゼファードルとアガレスがやりあい始めてな」

 

 心底嫌そうな表情だ、このイケメンさん――サイラオーグさんだったけ?

 

 つーか、何をやり合い始めたの?

 

 疑問に感じる俺だが――。

 

 ドオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

 建物が大きく揺れ、巨大な破砕音が聞こえてくる! ええっ!? 何事!? 近くから聞こえてきたんですけど!?

 

 部長はそれが気になったのか、躊躇いもなく音のしたほう――大きな扉へ向かった。

 

「まったく、だから開始前の会合などいらないと進言したんだ」

 

 サイラオーグは嘆息しながらも自分の眷属らしき者たちと部長のあとに続く。

 

 何々!? 何なの? 俺たちは疑問と不安にかられながらも主の部長のあとを追うしかなかった。

 

 開かれた大きな扉の向こうには――破壊さら尽くした大広間があった! テーブルも椅子も装飾品も全部破壊されている!

 

 中央には両陣営に分かれた悪魔の皆さま方が睨み合っていた! 武器を取り出していて一触即発の様相だ!

 

 一方は邪悪そうな格好の魔物や悪魔さんたち。もう一方は比較的普通そうな悪魔の一行さんたち。ただ、両チームともおそろしいほどに冷たく殺意に満ちたオーラを放っていた。

 

 怖い! すんごい怖い! なんてオーラの質と量だよ! 俺らよりも上に感じるぞ! 

 俺の視界に広間の隅でテーブルを無事に保ったまま、優雅にしている悪魔眷属の者たちも映った。やさしげな表情の少年悪魔を中心に……不気味そうなフードを被った者たち。

 

「ゼファードル、こんなところで戦いを始めても仕方なくて? 死ぬの? 死にたいの? 殺しても上に咎められないかしら」

 

 睨み合う2チームの片方。女の悪魔がクールに言ってくれる。「殺す」とか怖いこと言っているな……。

 

 おおっ、でも、すっげえ美少女! 俺と同い年ぐらいかな? メガネをしていて――冷たく鋭い視線が怖い。やっぱ怖いや。オーラから伝わる魔力の波はすごく冷たいし……。

 

 青色のローブを着ていて、肌の露出は少ない。それがちょっと残念。

 

「ハッ! 言ってろよ、クソアマッ! 俺がせっかくそっちの個室で一発しけこんでやるって言ってやってんのによ! ――って!?」

 

 顔に魔術的なタトゥーを入れてて、緑色の髪も逆立っている。上半身裸で体にも魔術的なタトゥーが入ってて、ズボンにも装飾品をジャラジャラつけてる、ヤンキーみたいなっていうかヤンキー悪魔の言葉が途中で止まった。

 

 それもそのはず、目の前でいがみ合っていた相手がいきなり姿を消したのだから驚くだろう。

 

 ――って、どこに消えたんだ?

 

 部長も会場の悪魔たちもいきなり消えた美少女悪魔さんを探すが、俺たちのすぐ近くにいた。

 

 いや、マジで……。少し離れたところに位置する窓際で発見した。

 

「お久しぶりです、シーグヴァイラ。またお会いできて嬉しいです」

 

「こ、これは、か、神城さまっ。わ、私もお会いできて嬉しいです」

 

 そう。いつの間にか窓側に移動して先ほどの美少女悪魔を、これまたいつの間にか移動したエイジが口説いていたのだ! いったいいつの間に!?

 

 全員の視線が集まる中、先ほどまで殺気を冷たいオーラを放っていたはずの美少女悪魔さんは、恋する乙女のように頬を赤らめてうっとりとエイジにあいさつしていた。これには先ほどのヤンキー悪魔も声が出ない様子だ。

 

「これから新人悪魔同士の会合があるのでしょう。先ほどの無礼で下品な輩は忘れて、化粧を直してきてはどうでしょう? なにもせずともお美しいですが、化粧をしたあなたも美しいですから」

 

 と、美少女悪魔さんの頬をエイジが手でやさしく触れながらキザぽっく言う。す、すげえ……マジで様になってる!

 

 うっとりと頬を赤らめた美少女悪魔さんは嬉しそうに微笑むとうなずいて化粧室へと眷属悪魔さんたちを連れて広間から出て行った。

 

 美少女悪魔さんが出て行ったところで部長の元へとエイジが戻った。

 

「……うまく場を収めたわね」

 

「どうやら、まだ収まっていないようです」

 

 部長がエイジを褒めたが、エイジは苦笑して首を横に振った。

 

「おい貴様ぁぁぁぁっ! 下級悪魔風情が何、俺の邪魔してやがるんだぁぁぁっ!」

 

 と、ヤンキー悪魔が突っかかってきた! ヒィ! ま、マジでヤンキーだ! しかも、眷属の悪魔たちもお怒りのようだ!

 

「無駄なものに関わりたくはなかったのだが、こうなってしまえば仕方がない」

 

 襲い掛かってきそうな雰囲気の中、サイラオーグさんが首をコキコキと鳴らして前に出た。

 

 ちょっとちょっと! 危険ですよ、そっちは! 自分が狙ってた美少女悪魔がエイジとすごくいい雰囲気というか、メロメロにされたところ見て、ヤンキー悪魔がマジ切れしてんだから!

 

 俺は彼を制止しようとするが、部長が俺を止める。

 

「イッセー、彼――サイラオーグをよく見ておきなさい」

 

「え? は、はい。でもどうしてですか? 従兄弟だから?」

 

「――彼が若手悪魔ナンバー1よ」

 

 ヤンキー悪魔とその眷属たちの視線がサイラオーグさんに集まった。

 

「グラシャラボラス家の凶児ゼファードル。これ以上やるなら、俺が相手をする。いいか、いきなりだが、これは最後通告だ。次の言動しだいで俺は拳を容赦なく放つ」

 

 サイラオーグさんの迫力のある一言! すっげえ凄みだ! 俺もピリピリとプレッシャーを肌に感じたよ!

 

 その一言にヤンキー悪魔は青筋を立てて、怒りの色を濃くする。

 

「バアル家の無能が――」

 

 ドゴンッ!

 

 激しい打撃音! ヤンキーは言葉を全部言い切る前に――サイラオーグさんの一撃で広間の壁に叩き飛ばされていたっ!

 

 ガラッ……。

 

 壁からヤンキーが落ちる。――すでに気を失ったようで、床に突っ伏していた!

 

 ――1撃!

 

 あんなに強い魔力を放っていたヤンキーをたった拳の一撃で!?

 

「言ったはずだ。最後通告だと」

 

 迫力あるサイラオーグさんの言動に、

 

「おのれ!」

 

「バアル家め!」

 

 ヤンキーの眷属が主をやられた勢いで飛び出そうとなるが――。

 

「主を介抱しろ。まずはそれがおまえらのやるべきことだ。俺に剣を向けてもおまえたちにひとつも得はない。――これから大事な行事が始まるんだ、主をまずは回復させろ」

 

『――ッ!』

 

 その一言にヤンキーの眷属たちは動きを止めて、倒れる主のもとへ駈け寄っていった。

 

 それを確認したあと、サイラオーグさんは自分の眷属に言う。

 

「スタッフを呼んでこい。広間がメチャクチャすぎて、これではリアスと茶も出来ん」

 

 俺はサイラオーグさんのひと挙動ひと挙動に惹かれてしまっていた。

 

 この人、強い! そして、かっけぇぇぇぇっ! これが若手悪魔ナンバー1の男!

 

 俺は生まれて初めて年の近いカッコイイ男と出会ったかも。

 

 サイラオーグさんがエイジに手を差し出した。エイジが握手を求められてる!

 

「先ほどの動き。この俺にもまったく見えなかった。さすが魔王クラスの実力者だな」

 

「まあ、それほどでも。――先ほどのパンチもなかなかでしたよ」

 

 エイジがサイラオーグの握手に応える。って、マジでサイラオーグさんにも動きが見えなかったの!? マジでどれだけ強いんだよエイジ!

 

「あ、兵藤! 神城!」

 

 と、そこに聞き覚えのある声が。振り返れば、そこには見知った駒王学園の制服に身を包んだ人たち。

 

「匙じゃん。あ、会長も」

 

「ごきげんよう、リアス、兵藤くん。……神城くん」

 

 匙とソーナ会長も広間に到着したようだ。って、エイジの格好見てなんか目が輝いていたような……。そういやコカビエルと戦う前にもこんな感じだったなぁ。

 

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