<木場>
ゲームが開始してから数分。僕――木場祐斗とゼノヴィアは立体駐車場に入っていた。
薄暗い駐車場を警戒しながら進んでいく。お互い、任務で密偵が多いせいか、この手の進行は得意だ。
僕が先に進み、物影から見定めてから、ゼノヴィアを呼んで進む。これを何度も繰り返して、徐々に駐車場のなかを進んでいった。
2階の駐車場から、専用の通路を降りて、一階に行く作戦だ。エレベーターも機能しているが、乗っている間に襲撃されるのは怖い。
一番確実な方法で進むしかないだろう。
2階から通路を進んで、1階の駐車場へ足を踏み入れたときだった。
――前方に人影。
見れば、メガネをかけた黒髪長髪の女性が1人――。
知っている。会長の『女王』、「生徒会副会長」
そう、彼女は長刀の使い手と聞く。かなりの有段者とも。
「ごきげんよう、木場祐斗くん、ゼノヴィアさん。ここへ来るとはわかっていました」
淡々と話す真羅先輩。その横から2人――。長身の女生徒と日本刀を携えた細身の女性。長身の女性が
由良さんは体術に秀でており、巡りさんは悪霊退治を生業としていた一族の出。
なるほど、立体駐車場に3名を配置したか、ソーナ会長。いい読みです。こちらを手堅くしましたか……。僕たちが攻撃の本命だと読まれていたのだろう。
僕は手元に聖魔剣を創りだす。ゼノヴィアも空間から剣を取りだした。
「それがエイジくんに創ってもらった剣かい?」
そう。ゼノヴィアの手には聖剣デュランダルではない剣が握られていた。
僕の問いにゼノヴィアはうっとりと剣を胸に抱いた。
「ああ、そうだ。これがエイジが私のためだけに創りだしてくれた龍殺しの剣。真・リュウノアギトだ」
真・リュウノアギト――名前の通り本当に龍の骨……そう、龍のアギトを加工して制作されたもののようで、イッセーくんが持っている龍殺しの聖剣アスカロンと同等レベルのオーラだ。
「だけど、そんな大剣をまともに振れるのかい? 『戦車』といっても見た限りじゃ振り回すこともかなりキツイ気がするんだけど」
僕の問いにゼノヴィアは得意げな笑みを見せる。
「無論だ。この剣は特殊でな。製作者であるエイジと使い手である私にはこの剣の重さはそこらの剣と一緒なんだ。だが私たちでないモノなら――」
ゴォウッ!
――っ! 空気が裂ける音! その音でかなりの重量を有していることがうかがえる!
「この剣の本来の重さに加え、私の魔力強化しだいで最大300kgまで重くした超重量の剣戟を味わうことになるだろう」
なんて剣なんだ! こんな剣を創りだせるなんて、やっぱりすごいなエイジくんは!
『リアス・グレモリーさまの「僧侶」1名、リタイヤ』
――っ! アナウンスから聞こえてきたのは仲間の敗北だった。アーシアさんとは考えにくい。方法はわからないが、ギャスパーくんがやられたか。
「冷静ですね」
真羅先輩がそう口にする。
「ええ、こういうのに慣れておかないと身が保ちませんから」
僕はいたって冷静に返した。心中でははらわたが煮えくり返っている。仲間をやられた悔しさは僕だって持っているからね。
ギャスパーくん。おそらく、力を発揮できずにやられたのだろう。僕がキミの分まで力を振るおう。
「まったく、あいつは体の鍛えが足りないから」
横でゼノヴィアも嘆息していた。彼女も冷静――だと思っていたんだが、その目は座っていた。
「だが、かわいい後輩をやられたのでね。仇は討たせてもらうよ」
彼女から凄まじいまでのプレッシャーが放たれる。味方である僕にもピリピリ伝わってくるよ。意外に彼女も身内に甘い。ああ見えてもギャスパーくんをかわいがっていた。彼の敗北の報せは彼女にとって。許し難いものだろう。
お互いに獲物をかまえ。じりじりと間合いを詰めながら――飛びだした!
ギィィイイイィィンッ!
僕と真羅先輩の剣が交える。その勢いに剣から火花が散り、激しい金属音を奏でた。
バギンッ!
隣で剣同士のモノではない音が聞こえた。見ればゼノヴィアの剣の一撃で巡さんが吹き飛んでいた!
しかも巡さんの剣も無残に破壊され、巡りさん自身も重傷を負ったようで、光になって消えていた!
『ソーナ・シトリーさまの「騎士」1名、リタイヤ』
アナウンスが巡さんの敗北を伝えた! おそらくゼノヴィアの大剣を剣で受け止めたのだろう。普通の大剣だったら耐え切れたかもしれないし、力を受け流せたかもしれない。だけど、ゼノヴィアの大剣は普通じゃない。重量+剣を振るスピードでとんでもない威力が生まれているんだ。あれを受け流すことなど並みの悪魔にはできないだろう。僕でさえも無理だと思う。
「なっ!」
「そんな!?」
驚愕する真羅先輩と由良さん。
そこに再びアナウンスが鳴り響く。
『ソーナ・シトリーさまの「兵士」1名、リタイヤ』
おそらくイッセーくんと小猫ちゃんだな。
「次はおまえだ!」
そのまま由良さんに切りかかるゼノヴィア。
ゴォウッ! ゴォォウッ! ゴォォォウッ!
…………もう、剣を振っている音じゃないよ……。
「きゃああああああああああっ!」
まるで台風のような剣戟に巡さんは逃げるだけで精一杯だ! まるで反撃を許さない剣戟! 相手の逃げ場を奪い、追い詰める剣戟!
「……マズイですね」
真羅先輩がつぶやいた。――っ。真羅先輩は僕から距離を取ろうとする。逃がすか!
僕の速さの剣戟! 聖魔剣を振りかぶり居合い切りのように一瞬で間合いを詰めて叩き切る!
僕が居合い切りのモーションから飛び出した――その瞬間だった。
「――神器、『
真羅先輩の前に装飾された巨大な鏡が出現する!
――っ! ダメだ! もう止められないっ!
僕の剣がその鏡を切り裂く。
ズォオオンッ!
「――ッ!?」
割れた鏡から波動が生まれ、僕を襲う!
僕の体から鮮血が噴きだす!
「この鏡は破壊されたとき、衝撃を倍にして相手に返します。――私はカウンター使いです。本来パワータイプのゼノヴィアさんの攻撃でカウンターを取りたかったですが。仕方がありません」
冷笑を浮べる真羅先輩。――っ。確かにスピードタイプの僕よりゼノヴィアのあの凄まじい攻撃を倍にしたほうが効果はあるな。
「がはっ!」
僕は剣を床に突き刺し、倒れるのを何とか防いだ。それにしてもかなりのダメージをくらった……。
――やられた! 聞いていた能力とは違う。変化と成長を遂げ新たな能力を得たか!
「だいじょうぶか、木場!」
ゼノヴィアが大声で聞いてくる。ハッキリいってマズイ。僕は元々防御力は低い。かなりダメージで素早い動きはもちろん、リタイヤ寸前だ。
止めを刺される――。と思っていたら真羅先輩は背を向けて駐車場から逃げていった。
巡さんは真羅先輩の逃亡をサポートするようにゼノヴィアに立ち向かっていた。
だが、ゼノヴィアの攻撃は一撃必殺の剛剣にして早さと技術も兼ね備えていた。すぐに追い詰められて撃破された。
アナウンスが鳴り響くなか、ゼノヴィアはこちらにやってきた。
「だいじょうぶか、木場」
「いや、かなりのダメージを受けたみたいだ。このままだったらリタイヤしてしまう」
情けない。修行したのにまるで修行の成果をだす前にやられてしまうなんて。
先ほどドラッグストアで取ってきた治療グッズを展開する。
「僕は何とか体を動かせるまで治療してから追う。ゼノヴィアは先に行ってくれ」
「それはダメだ」
ゼノヴィアは首を横に振った。治療グッズを手にとって僕の治療を始めた。
「私が治療を手伝う。ダメージを負っているおまえがやるより、私がやったほうが早く戦線に復帰できる」
「それは……」
「私は味方をそう簡単に見捨てないんだ」
僕の治療を始めるゼノヴィア。僕はおとなしく治療を受けた。
◆
<イッセー>
匙との殴り合いになって数分。
俺と奴はいまだに拳を放ち合っていた。どう見ても匙のほうが有利だ。俺は――すでにボロボロ。ラインを束ねて手甲のようにした匙が俺を殴りつけてくる。俺もアスカロン入りの籠手で殴るが、警戒されていてラインとの連携で避けられてカウンターを取られる。
何度も殴り倒された。だけど、それでも俺は立ち上がる。足だってもうガクガクいっている。
力も吸われているからだんだんと体から力がなくなってきた。
匙が俺の体を殴るたびに心身に響く。
「勝つんだっ。今日、俺はおまえを倒して、夢の第一歩を踏むッ!」
眼前のあれはなんだ? 俺ほどではないとしてもダメージを負っているのに、あれはなんだ?
そのとき俺の脳裏にタンニーンのおっさんに修行中言われた言葉が再生される。
『小僧。よく聞け。一番怖い攻撃とは「こもった一撃」だ』
『こもった一撃?』
『ああ、おまえがいまから参加するレーティングゲームは、様々な者たちが様々な思いで戦っている。欲のため、道楽のため、家のため、女のため、富のため、そして夢のため。いろんな思いが交錯している。なかにはゲームに一生をつぎ込んだ者もいるぐらいだ。そんな地獄の釜のように入り乱れた参加者のなかで、一番おそれなければいけない一発がある。それが「こもった一撃」だ』
『それ、必殺技? 神器とか? 魔法?』
『――違う。小僧、拳を握ってみろ。おまえのそこには何が握られている?』
『………………わからない』
『そこに「こめる」のさ。夢を、あるいは魂を。そいつの一生をその拳に「こめる」。こいつが何より危険でな。他の攻撃など覚悟する時間があればある程度どうとでもなる・でも、それだけはダメだ。「こもった一撃」は体の芯に届く。これが効く。おそろしいまでに効く。魔力と科学があるこの冥界でもその一撃のダメージを明確に表すことができなくてな。でも、食らった者はそれがわかる。――ああ、これはヤバい、とな。その一撃を放てる相手は紛れもなく本物であり、強敵だ。絶対に手を抜くな。相手が格下でもそれが放てるなら話は別だ。一撃でも食らえば戦況が一変するぞ。あれは通る。あれはどんな防御をしても体の芯に届くのだ』
いまならわかるよ、おっさん。匙の一発は俺に通る。俺の芯に届いて確実にダメージを与えてくる!
『この気迫。神器に眠る「
ドラゴン系神器ってのは怖いな。ドライグ。
「兵藤ォォォォッ!」
ダメージを食らっているはずなのにまったくそれをみせず、匙は攻撃の手を休めない。
俺も応じて、打撃合戦を始めるが、本当に体がヤバい。
「ひとつ聞かせろォッ! どうなんだよ! 主さまのおっぱいはやわらかいのか!? マシュマロみたいって噂は本当か!? 女の人の体は崩れないプリンのごとくというのはマジなのか!?」
匙は嫉妬に燃えた瞳で殴りかかってくる!
こちらの隙を見てラインを飛ばし、後方のベンチに接続して力の限り振り回してくる! 俺は腕をクロスさせて防いだが、大ダメージを受けた!
「おっぱいをもんだとき、どう思ったんだよ! ちくしょぉぉおおおおおっ!」
なんだか、夢を語った一撃よりこっちのほうが激しくないか!? ていうか、俺もそんなにおっぱいもめてないぞ! いや、アーシアのは寝ているときにもんでしまったことはあるけど……。
って! さらに家具屋にラインの複数を伸ばして、そこから大型家具をしこたま引っ張って宙で弧を描くように俺の真上に持ってきた! あのまま家具を振り落とす気か!
マジでヤバいぞ! 神器は動いてくれないし、体のダメージも酷い!
だが、諦めるわけにはいかない!
俺は振り落とそうとする匙の考えを逆手にとって、全力で匙目掛けて走りだす! まるで自殺行為だ! 家具かひとつでも当たれば即リタイヤ! だが、それでも負けられない!
俺は何とか匙の攻撃をかいくぐり、家具を振り下ろすことに集中していた匙のあご目掛けてアッパー気味の一撃を入れた!
ドゴッ!
匙がうしろに倒れそうになったが、寸前で堪えた! バカな!? アスカロン入りの籠手で殴ったんだぞ!?
「俺だってもみたい! もみたいんだよぉぉぉぉっ!」
ぶわっ! ついに匙は悔し涙を垂れ流した!
「乳房すら見たことなんてないんだぞ! 乳首なんて一生拝めるかわからないんだ! それをおまえは自由気ままに見やがってぇぇぇぇぇっ! 神城の奴もだ! 何人何百人、いや、何千人入れ食いすれば気が済むんだぁぁぁぁぁ!」
魂の叫び! 涙が血の色に見えるのは幻覚か!?
「神城の弱点が男の娘だからって理由で女装させられる気持ちが分かるか!? 女性ものの下着を自分で着ることになった俺の辛さが分かるか!? しかも修行で男の娘を克服してると分かって、急遽作戦変更になって女装セットを記念に渡された俺の気持ちが分かるかぁぁぁぁっ!」
マジか……。こいつそんなことまで修行していたのか!
ゴンッ!
匙を殴り飛ばすが、奴はすぐに立ち上がる! クソ! なんて気合だ!
「でもな兵藤! 一番はそれじゃない! 先生だ! 先生なんだよ! 俺は先生になっちゃいけないのか!? なんで俺たちは笑われなきゃいけない!?」
そして――匙は俺に吼えた。否、これを見ている多くの者たちに向かって――。
「俺たちの夢は笑われるために掲げたわけじゃないんだッ!」
「ハァ……ハァ……っ、俺は笑わねぇよ! 命をかけてるおまえを笑えるわけねぇだろうがよッ!」
向かってくる匙を俺は――殴った! カウンターを取るような一撃は入った!
だが、それでも匙は立ち上がる。まるで効いていないみたいに倒してもすぐに立ち上がる。
「今日! 俺は! おまえを超えていくッッ!」
匙のその叫びは、俺の心にまでズドンと重く響いた。
匙の拳が俺に襲いかかる。何十発も打ち込まれ、顔は腫れ上がって右目はもう見えない。歯も折れ、口からポタポタと血を垂れ流した。だけど俺は倒れるわけにはいかない! 倒れても必死こいて立ち上がる!
……クソッ。神器も動いてくれないし、体からは力が少しずつ抜かれている……。このままじゃ負ける……。
どうすりゃ、勝てるんだ……。
俺も殴り返しているのに、アスカロン入りの拳で殴っているのに……。ダメージは確実に負っているはずなのに……。
「来いよ、兵藤。来いよ! 兵藤ォォォォォッ! 終わりじゃないだろう!? まだまだ俺は余裕だぞ! こんなんで終わりなんかにするつもりはないだろう!? 俺たちバカにできることなんざ、突っ走ることぐらいなもんだろ!」
匙はそう吼えるが――もう俺の体は動かない……。
禁手に至れれば、いや、神器が動いてくれれば……。
……どうすれば禁手に至れるんだ? ……どうすれば匙に勝てるんだ?
俺が倒れそうになった寸前――。
「イッセー先輩!」
今にも飛びだしてきそうな小猫ちゃんが俺の狭くなった視界に映りこんだ――。
……そうだ! もう俺は負けるわけにはいかないんだ! 俺は部長のためにもどうしても負けるわけにはいかないんだ!
ぐっと倒れるのを堪える!
禁手に至れる方法は確か劇的な変化だったよな、ドライグ。
『ああ。その通りだ』
劇的な変化。俺を劇的な変化させるもの……そうか――!
俺は匙から一気に距離を取り、小猫ちゃんの前に立った。
「小猫ちゃん」
「どうしたんですか?」
「一生のお願いだ。――乳首をつつかせて欲しい」
「なっ!?」
「兵藤! いきなり何を言って――」
「黙れ、匙!」
「――っ!」
俺の怒鳴りに言葉を止める匙。すまないな、サシの勝負だが、負けるわけにはいかないし、戦闘に加わせるつもりもないから許してくれよ。
「頼む、小猫ちゃん。この方法なら俺が禁手に至れる可能性があるんだ」
「で、でも、この戦いは冥界全土に放そ――」
「頼む! 小猫ちゃん! 俺は……! 何もできないまま、実力を出せないまま匙に負けたくないんだ!」
俺は深く頭を下げる!
「………………」
小猫ちゃんは無言だ。頼むからつつかせてくれ! いまここに女の子の乳は小猫ちゃんのしかないんだ!
「………わかり……まし……た」
小声だがはっきり聞こえた声!
「本当に、いいの!?」
「こ、今回限りです……」
と胸をこちらに向けてくる小猫ちゃん! 嬉しいけど、それじゃあ、まだダメなんだ!
「ゴメン小猫ちゃん。おっぱいをだしてくれないか? このままつついてもあまり効果ががないような気がするんだ」
「なっ!?」
真っ赤になって驚く小猫ちゃん。それはそうだろう服を脱げなんて言われたら……。だけどこれしか方法はないんだ!
「おい兵藤、……それってセクハラなんじゃないか?」
匙が後方でつぶやいたが、止めるようなことはしない。こいつのスケベ心が俺を止めるのを良しとしないんだろう。おっぱいが見れるかもしれないと思ってんだろうな。だが、残念。きちんと隠すから見せないぜ!
「小猫ちゃん、頼む!」
「う、ううぅぅ……」
小猫ちゃんはがばっと上着を捲る。かわいいブラジャーだ! 試合前に見たシマパンとセットになっていたようで、ブラジャーもピンクと白のシマシマだった!
ブラジャーを両手でずらしながら手でおっぱいを隠す! ほとんど手で隠れている小さなおっぱいだけど、感動だ!
俺のなかで何かが変化していくのを感じる!
どっちの乳首をつつく……。すごく悩むところだが、……ボリュームがいまいちだし。巨乳好きの俺が片方だけつついても禁手に至れない可能性がある。
「は、早くつついてください……」
小猫ちゃんが両手を外した! かわいらしい小さなピンク色の乳首! 感動! 感動だぜ!
俺は両手の人差し指をそれぞれの小猫ちゃんの乳に標準を合わせる。これでいい。これで打ち損じはない。
ボロボロの体だったが、状況が俺に信じられない活力を与えてくれていた!
そして、生唾を飲み込んだあと、一気に乳首目掛けて指を――ずむっ
むにゅっ。
小さいが確かにある弾力性、やわらかさ、肌の質感、これが女の子のおっぱい!
激しくさせず、あくまでやさしくおっぱいに指を陥没させていく。
ブブッ。
俺の指で形を変える小猫ちゃんのおっぱいを見て、鼻血が噴き出た。――そのときだった――。
「……にゃぁん」
小猫ちゃんがわずかに声を漏らす――っ。俺はそれを聞き逃さなかったッ!
俺のなかで何かが革命的に弾ける――。
広がる。広大なものが――俺の脳裏を支配していく。
止まらない涙のなか、俺には見えた。
――宇宙の始まりが。
『なんてことだ! ――至ったッ。本当に至りやがったぞォッ!』
ドライグが俺のなかで笑い、産声をあげた。
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!!!』
宝玉に光が戻り、それどころか、いままでにない質量の赤い膨大なオーラを解き放ち始めた! そのオーラが俺の全身を包み込んでいく!
「……最低です。やらしい赤龍帝だなんて……」
床に崩れ、落ち落ち込みながらも小猫ちゃんが突っ込んでくれた。ゴメンね! 俺はやらしい赤龍帝だったみたい!
そして――。全身を覆うオーラは鎧と化して、俺を包み込んでいた。
「
ドゥゥゥゥンッ!
俺の放つオーラで周囲が吹き飛ぶ! 俺を中心に小さなクレーターができあがっていた。……よし、体中に力が溢れてる! これが――禁手!
『相棒、おめでとう。しかし、酷い。俺は本格的に泣くぞ、そろそろ』
ドライグが賛辞を送ってくれる。そして涙声だった。
「ああ、ありがとうよ。そしてエロくてゴメン! で、首尾はどうよ?」
『時間にして30分の間、禁手状態を維持できる。鍛錬の成果が出たな。弱いおまえの初めての禁手状態にして、まずまずの制限時間だ』
マックスの倍増しで何回だ?
『マックスで放てば5分消費すると思ってくれ。最大で5回。他の行動も含めると6回は無いに等しい。譲渡も同様だ』
うまくこの力を使えば、15分は戦えるかな。短期決戦で広範囲の攻撃はできないけど、アスカロンと攻撃力と防御力が跳ね上がったいまの俺なら匙に勝てる!
「マジで至ったのか!?」
驚愕する匙。右腕につけられたライン以外が禁手に至ったオーラで弾けとんだ! 右腕のラインは特別みたいで吹き飛んでいないが十分だ。っていうか、匙の奴、鼻血でてるけど、見たのか!? クソッ! ただ見しやがって!
「待たせたな、匙。これが俺の本気だ! 俺はおまえを倒す! ――この一撃に俺もすべてをこめる! おっぱいつついた男の力をみせてやるぜぇぇぇぇッ!」
俺は拳を振り上げて匙へ突っ込む! 鎧の背部にある噴出口から魔力が噴き出し、爆発的な速度が生みだされる!
「――っ。早い!?」
ガダンッッ!
匙の顔面を俺の一撃が完全に捉えた! そのまま振り抜き吹っ飛ばすッ! これが俺の「こもった一撃」だぁぁぁぁああああああああああっ!
ガシャァァァンッ!
遠くの背後にあった店に突っ込む匙。ピクリとも動かない。
光になって消えていく匙……。
「俺の……、勝ちだ」
『ソーナ・シトリーさまの「兵士」1名、リタイヤ』
こちらは8人。相手側は4。数では大きく勝ったが、まだ油断できない。それに俺がこの状態でいられる状態もあと20分と少しあるが、俺の体力や体は匙にやられてもうボロボロだった。いつ禁手が解けるか分からない。
「……イッセー先輩」
小猫ちゃんが俺の右腕を指さす。そう、匙が消えても右腕についたラインだけは消失しない。鎧に包まれても、このラインだけは消えることがなかった。アスカロンで断ち切ると血が噴き出した。
「ううっ……」
一気に目眩に襲われるが、何とか堪えた。
「だいじょうぶですか?」
「ああ、何とかね」
心配そうな小猫ちゃんになんとか言葉を返した。
そのとき、通信機に連絡が入る。
『オフェンスの皆、聞こえる? 私たちも相手本陣に向けて進軍するわ』
部長からの通信。そうか、部長もついに動くのか。序盤から中盤も終わり、一気にラストスパートだ! 俺は大きく深呼吸したあと、小猫ちゃんに言う。
「行こう」
小猫ちゃんもうなずき、俺たちは最後の決戦におもむいた。