※この作品はR-18です。

ハイスクールD×D 世界を渡る転生者   作:上平 英

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第55話 取材とテレビ出演 

 

<エイジ>

 

 

 体育際の練習が始まり、賑わいをみせていた頃の放課後。オカルト研の部室で各若手悪魔のレーティングゲームの記録映像をチェックしていた。

 

 アザゼルが巨大モニターの前に立って言う。

 

「おまえら以外にも若手たちはゲームをした。大王バール家と魔王アスモデウス家のグラシャラボラス家、大公アガレス家と魔王ベルゼブブのアスタロト家、それぞれがおまえらの対決後に試合をした。それを記録した映像だ。ライバルの試合だから、よーく見ておくようにな」

 

『はい』

 

 アザゼルの言葉に皆が真剣にうなずいた。

 

「まずはサイラオーグ――バアル家とグラシャラボラス家の試合よ」

 

 記録映像が開始され、数時間が経過する。

 

 …………。うん。サイラオーグの一方的な優勢だった。

 

 サイラオーグの魔力ではなく、圧倒的な身体能力一点での戦い。駒を全て失ったグラシャラボラス家の『王』とサイラオーグが一騎打ちをしているときに見せている徒手空拳は我流ながらも、基本に忠実で威力もあった。

 

「……凶児と呼ばれ、忌み嫌われたグラシャラボラスの新しい次期当主候補がまるで相手になっていない。ここまでのものなのか、サイラオーグ・バアル」

 

 木場が険しい表情で目を細めた。……忌み嫌われたって、だからグレてあんなヤンキー悪魔になったんじゃねぇの?

 

 ギャスパーがゲームを見てイッセーのうしろに隠れて震えていた。イッセーも表情が険しい。

 

「リアスとサイラオーグ、おまえらは『王』なのにタイマン張りすぎだ。基本、『王』ってのは動かなくても駒を進軍させて敵を撃破していきゃいいんだからよ。ゲームでは『王』が取られたら終わりなんだぞ。バアル家の血筋は血気盛んなのかね」

 

 アザゼルが嘆息しながら言う。リアスは恥ずかしそうに顔を赤くしていた。まあ、いまは弓っていう遠距離攻撃を覚えさせているから正面からのタイマンはないだろう。もちろん、ソーナ会長は特例だ。

 

「そういや、あのヤンキー悪魔って、どれぐらい強いんですか?」

 

 イッセーがリアスに訊ねた。イッセー、いちおう上級悪魔なんだから、ヤンキー悪魔はないだろう……。

 

「今回の六家限定にしなければ決して弱くはないわ。といっても、全次期当主が事故で亡くなっているから、彼は代理ということで参加しているわけだけど……」

 

 リアスの返答に朱乃さんが続く。

 

「若手同士の対決前にゲーム運営委員会が出したランキングでは、1位がバアル、2位がグレモリー、3位がアガレス、4位がアスタロト、5位がシトリー、6位がグラシャラボラスでしたわ。『王』と眷属を含み平均で比べた強さランキングです。それぞれ一度手合わせして、一部結果が覆ってしまいましたけれど」

 

「しかし、サイラオーグ・バアルだけは抜きんでている――というわけですね、部長」

 

 イッセーの言葉にリアスはうなずく。

 

「ええ、彼は怪物よ。『ゲームに本格参戦すれば短期間で上がってくるのでは?』と言われているわ。逆を言えば彼を倒せば、私たちの名は一気に上がる」

 

「もしかして、ライザーより強い?」

 

「両者がやってみないとわからないけれど、私の贔屓目で見てもサイラオーグのほうが強い気がするわ」

 

 まあ、そうだろうな。ライザーのメンタル的にもサイラオーグに降参するだろう。何度もぶっ飛ばされて泣きながら投了宣言するライザーが簡単に思い浮かんだ。

 

「ま、グラフを見せてやるよ。各勢力に配られたものだ」

 

 アザゼルが術を発動させ、宙に立体映像的なグラフを展開させた。

 

 そこにはリアスやソーナ会長、サイラオーグなど、6名の若手悪魔の顔が出現し、その下に各パラメータみたいなものが動きだして、上へ伸びていく。

 

 ご丁寧にグラフは日本語だ。グラフはパワー、テクニック、サポートウィザード。ゲームのタイプ別。あと1個は『キング』と表示されていた。

 

 おそらく『 王 (キング)』としての資質だろう。リアス、ソーナ会長、アガレスの姫さんがそこそこ高めで、現時点ではソーナ会長のほうがリアスより上。サイラオーグはかなり高めで、グラシャラボラスは一番低かった。

 

 リアスのパラメータはウィザード――、魔力が一番伸びて、パワーもそこそこ伸び、テクニック、サポートは真ん中よりも少し上の平均的な数値だった。

 

 サイラオーグはサポートとウィザードは若手のなかで一番低いが、パワーが高く部室の天井までに伸びていた。極端すぎるが、それだけパワーが凄まじいってことだろう。

 

 まあ、これは修行前の数値なんだろう。俺の見立てじゃリアスの実力は武器を使ってサイラオーグと同じぐらいだし。

 

「ゼファードルとのタイマンでもサイラオーグは本気を出しやがらなかった」

 

 アザゼルが言うと、イッセーが恐る恐る訊ねた。

 

「やっぱ、天才なんスかね、このサイラオーグさんも」

 

 アザゼルは首を横に振った。

 

「いや、サイラオーグはバアル家始まって以来の才能が無かった純血悪魔だ。バアル家に伝わる特色のひとつ、滅びの力を得られなかった。滅びの力を強く手に入れたのは従兄弟のグレモリー兄弟だったのさ」

 

 ――っ。

 

「でも若手最強なんでしょう?」

 

「家の才能を引き継ぐ純血悪魔が本来しないものをしてな、天才どもを追い抜いたのさ」

 

「本来しないもの?」

 

 イッセーの問いに俺が言う。

 

「――凄まじい修行。そうだろう? アザゼル」

 

 アザゼルはうなずいた。

 

「そうだ。サイラオーグは、尋常じゃない修行の果てに力を得た稀有な純血悪魔だ。あいつには己の体しかなかった。それを愚直なまでに鍛え上げたのさ」

 

 やっぱりか……。

 

「奴は生まれたときから何度も何度も勝負の度に打倒され。敗北し続けた。華やかに彩られた上級悪魔、純血種のなかで、泥臭いまでに血まみれの世界を歩んでいる野朗なんだよ」

 

 通りで他の悪魔と立ち振る舞いが自信が違ったのか。

 

「才能がない者が次期当主に選出される。それがどれほどの偉業か。――敗北の屈辱と勝利の喜び、地の底と天上の差を知っている者は例外なく本物だ。ま、サイラオーグの場合それ以外にも強さの秘密はあるんだが」

 

 丁度、試合映像が終わった。

 

 サイラオーグ・バアルの勝利だ。

 

 最終的にグラシャラボラスのヤンキーが物陰に隠れ、怯えた様子で自らの敗北を宣言することで戦いが終わった。まんま先ほど俺が想像したライザーと同じだな。

 

 そして、今度俺たちが戦う相手はディオドラで、そのあと戦うのがサイラオーグだとアザゼルから聞かされた。なんでもグラシャラボラスの次期当主候補が今回のゲームで再起不能になったらしい。

 

 まあ、それにしても……。

 

「サイラオーグ・バアル。――実におもしろい男だな」

 

「なんだ? 戦ってみたくなったのか?」

 

 アザゼルが訊いてきた。俺は首を横に振る。

 

「いや、戦いたいというより、鍛えてみたい」

 

『――っ』

 

 部室にいた面々が驚き顔になった。ん? なんでだ?

 

「おまえなぁ。対戦相手の男を鍛えたいと思うまえに、イッセーと木場とかをまず鍛えろよ」

 

 アザゼルが呆れたように嘆息した。イッセーが半眼で、木場が苦笑した。

 

「そうだぞ。部長たちばっかり鍛えて、俺らは強くしないっておかしいぞ」

 

「そうだね。以前、僕が修行させて欲しいって頼んだときも断ったのに、サイラオーグさんはいいってのは……」

 

 2人は不満そうに言うが、なあ。

 

「そりゃあ、短期間での強化の話だったからだ。長期的な目でならゆっくりと修行をつけれる――が、おまえらは俺に弟子入りする必要もないだろ?」

 

 驚いた顔になる2人に俺は告げる。

 

「まずはイッセーだが、おまえはいま、神器の扱いに慣れることが先決だろう? 俺は神器持ちじゃないから修行の仕方などわからないし、神器研究大好きアザゼルに習うほうがいい。それにイッセーには『倍加』があるんだし、基本的な筋トレ、スタミナを上げるだけで飛躍的強くなれる。そういうトレーニングは1人でも十分できる」

 

 今度は木場。

 

「木場は神器持ちのところはイッセーと同じ。あと、おまえにはきちんとした師匠がいるんだ。俺に弟子入りするのは不義理。とりあえず、いま習っている流派の剣をまずは極めろよ」

 

 と2人に言うと、しぶしぶ納得したようでうなずいた。

 

「ギャスパーもアーシアも神器関係で俺が伸ばすよりも、まずは神器の扱いを覚えることが専決だからな」

 

 リアスが苦笑しつつ俺に訊いてきた。

 

「じゃあ、なんでサイラオーグを鍛えたいなんて思ったの?」

 

 皆、興味津々といった表情になった。

 

「それはまあ、サイラオーグがどこまで昇るかみて見たいって興味が湧いたんです。彼に師匠がいないのであれば俺が立候補して直々に育てたいですね。彼なら俺の武術を冥界に広めてくれそうですし」

 

 そうだ。俺の培っている武術を純粋に冥界に広めてくれそうで将来が期待できるんだ。こいつならどんなにキツい特訓でも耐えてくれそうだし!

 

「……おまえ、武器の扱いだけじゃなくて、武術までなのか……?」

 

 アザゼルが驚きというより、呆れのはいった声でつぶやいた。

 

「だから純粋格闘スタイルのサイラオーグは俺から見たら、最高の素材だな。下地は十分できているようだし。武術を教え込んだら、どれだけ強くなるか……」

 

「……弟子にしたいならレーティングゲームが終わってから弟子にしなさいよ」

 

 わかってますよ、リアス。リアスは深呼吸をひとつしたあとに言う。

 

「さてと、まずは目先の試合よ。今度戦うアスタロトの試合映像も研究のためにこのあと見るわよ。――対戦相手の大公家の次期当主シーグヴァイラ・アガレスを倒したって話だもの」

 

「大公が負けた!?」

 

 イッセーが驚の声をあげる。まあ、大公が負ければ驚くか。

 

「私たちを苦しめたソーナたちは金星、先ほど朱乃が話したランクで4位のアガレスを打ち破ったアスタロトは大金星という結果ね。悔しいけど、所詮対決前のランキングはデータから算出した予想にすぎないわ。いざ、ゲームが始まれば何が起こるかわからない。それがレーティングゲームよ。――けれど、アガレスが負けるなんてね」

 

 部室の片隅で人一人分の転移用魔法陣が展開した。

 

 ――っ! この醜悪な魔力と気配は!

 

「――アスタロト」

 

 朱乃さんがぼそりとつぶやいた。やはりか……。一瞬の閃光のあと、部室の片隅に現れたのは爽やかな薄っぺらい笑顔を浮べる優男だった。

 

 そいつは開口一番に言う。

 

「ごきげんよう、ディオドラ・アスタロトです。アーシアに会いにきました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部室のテーブルにはリアスとディオドラ、顧問としてアザゼルも座っていた。

 

 俺たち他の眷属は部室の片隅で状況を見守るが、俺だけは奴の正体に気づいているので、アスタロトの下種に軽く殺気を放っていた。

 

 アーシアは困惑した表情をしていた。不安げなアーシアの手をイッセーが無言で握ってやっていた。

 

「リアスさん。単刀直入で言います。『僧侶』のトレードをお願いします」

 

「いやん! 僕のことですか!?」

 

 僧侶で勘違いしてる身を守るように悲鳴をあげているギャスパーはイッセーにツッコミもらっていたし、無視する。

 

「僕が望むリアスさんの眷属は――『僧侶』アーシア・アルジェント」

 

 ディオドラは躊躇いも無く言い放ち、アーシアのほうへ視線を向けた。

 

 ピリッ……!

 

『――っ!』

 

 ああ……。こいつが駅でアーシアに求婚してから、秘密裏に調査してこいつの裏側を知っていたから、殺気が漏れてしまった。部屋の全員が驚きの表情で俺を見てるな。

 

 まあ、それはいまはいい。

 

 俺はリアスの裏に立って笑顔という仮面をつけて言う。

 

「申し訳ありませんがお断りします。即刻出て行ってくださいますか? ……下種野朗……」

 

 あ、小声で本音が漏れてしまった。まあ、聞こえていなくても聞こえていてもいいか。

 

 ディオドラは爽やかな笑顔のまま俺を睨むと、リアスのほうを向きなおした。

 

「あなたではなく、いまは王と話しているので。――こちらが用意するのは――」

 

 自分の下僕が載っているのであろうカタログらしきものを出そうとしたディオドラへリアスが言う。

 

「ゴメンなさい。この子が言ったとおり、私はトレードをする気はないの。それはあなたの『僧侶』と釣り合わないとかそういうことではなくて、単純にアーシアを手放したくないから。――私の大事な眷属悪魔だもの」

 

 真っ正面から言うリアス。イッセーが感激したように震えた。

 

「それは能力? それとも彼女自身が魅力だから?」

 

 ディオドラは淡々と訊いた。

 

「両方よ。私は、彼女を妹のように思っているわ」

 

「――部長さんっ!」

 

 アーシアは口元に手をやり、グリーンの瞳を潤ませた。心底うれしかったんだろう。

 

「一緒に生活している仲だもの。情が深くなって、手放したくないって理由はダメなのかしら? 私は十分だと思うけれど。それに求婚した女性をトレードで手に入れようというのもどうなのかしらね。そういう風にアーシアを手に入れようとするのは解せないわ、ディオドラ。あなた、求婚の意味を理解しているのかしら?」

 

 迫力ある笑顔で問い返すリアス。求婚の意味などこいつは始めから分かっていない。というかわかるつもりない。

 

 ディオドラは笑みを浮かべたまま言う。

 

「――わかりました。今日はこれで帰ります。けれど、僕は諦めません」

 

 ディオドラは立ち上がり、アーシアの元へ寄ろうとする。俺はその進行方向をふさぐように立ちふさがる。

 

「……どいてくれませんか?」

 

 笑顔のまま言うディオドラに笑顔で返す。

 

「申し訳ありませんが、それはできません。即刻おかえりください」

 

「――っ」

 

 少しプレッシャーをかけながら言うと、ディオドラは近づくのは諦めたようだが、その場でアーシアへ向かって言った。

 

「アーシア。僕はキミを愛しているよ。だいじょうぶ、運命は僕たちを裏切らない。この世のすべてが僕たちの間を否定しても僕はそれを乗り越えてみせるよ」

 

 運命……。こいつ……。いますぐ殺してやろうか?

 

 俺が動こうとしたとき、アザゼルのケータイが鳴った。いくつかの応答のあと、アザゼルはおれたちに告げた。

 

「リアス、ディオドラ、ちょうどいい。ゲームの日取りが決まったぞ。――5日後だ」

 

 寿命が延びたなディオドラ……。

 

 その日はそれで終わり、ディオドラは帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディオドラが帰ったあとの部室。イッセーとアーシアだけを先に帰宅させてもらい、他のメンバーとアザゼルが部室残っている状態で口を開いた。

 

「皆に集まってもらったのは他でもない。ディオドラ・アスタロトのことです」

 

 俺が口頭でそう言うと、リアスが訊ねてきた。

 

「そういえば、エイジはディオドラに敵意をずっと送っていたわね。ディオドラに何か裏があるの?」

 

 俺はうなずき、話し始めた。

 

「俺はディオドラの体に染み付いた臭いと、教会内で密かに流れている噂を元に奴の調査を行なったんです」

 

「調査――ですか?」

 

「教会内の噂?」

 

 朱乃さんとゼノヴィアが眉を潜める。

 

「ああ、教会の『聖女』や信仰にあつい女性が消えるという噂です」

 

『――っ』

 

 ここまでの話でリアスとアザゼル、それに朱乃さんが気づいたようだ。

 

「そこで判明したことを簡潔に述べると、ディオドラ・アスタロトは下種野朗のなかでも最低だということでした」

 

 俺は全員の顔をみてから説明を続けた。

 

「――奴は教会に通じた女が好きで、熱心な信者や教会本部になじみが深い女ばかりを誘惑して手篭めにするクソ野郎で、奴の眷属や屋敷でかこっている女たちも元信者や聖女と呼ばれていた女ばかり。しかも、やり方は様々。狙った女を堕とすためなら、本当になんでもする下種なんです」

 

 これからが一番重要な話だ。

 

「アーシア。――アーシア・アルジェントが『聖女』から『魔女』にされて追放されるシナリオも、ディオドラがアーシアを手に入れるために考えた計画だったそうです」

 

『――っ!?』

 

 皆が驚き顔になった。俺はさらに調査結果を言う。

 

「さらにレイナーレたち一部の堕天使がアーシアを連れ去ったとき、俺たちが介入しなければ、奴が神器を抜き取られて死亡したアーシアを悪魔の駒で下僕悪魔にする手筈だったそうなんです」

 

「――っ!」

 

 ゼノヴィアがあまりの怒りに唇を噛みしめた。そして他の部員たちもそれぞれ怒りを瞳に宿らせた。

 

「奴は始めからアーシアを妻にする気などない。奴が目的なのはアーシアの体だけ」

 

 俺が告げるとリアスは冷静に心を落ち着かせるように大きく息を吐いた。

 

「ありがとう、エイジ。黙って調査したことは少し嫌だったけど。ディオドラの本性を知れたわ。これで、絶対にアーシアを渡せなくなったわ」

 

「ええ、アーシアちゃんをそんな男にあげられませんわ」

 

「ああ。私の友人を、教会の女性の敵を許すわけにはいかない」

 

 朱乃さんもうなずき、ゼノヴィアも殺気を振りまきながら決意を固めた。

 

 木場も小猫ちゃんもしっかりうなずいた。

 

「こりゃあ、アーシアはもちろん、イッセーにも下手に話せないな」

 

 アザゼルが納得という風につぶやいた。

 

「ディオドラのことは試合の直前ぐらいにイッセーに話すつもりです。いずれは嫌でも知ることになるだろうし、イッセーにレーティングゲームで思う存分怒りを解放して欲しいですから」

 

 俺の言葉に2人を退出させたことに、皆納得した様子だ。

 

「それもそうね……。いま教えても無茶な修行をしたりしそうだし……」

 

 リアスはあごに手を当てて考え込んだ。

 

「試合前に言ったほうが気合も入るだろうからな」

 

 とアザゼルも賛成した。

 

 とりあえず、ディオドラを滅殺することが決定した。

 

「ちなみにどこから情報収集した情報なんだ?」

 

 アザゼルっ! 余計な質問を……!

 

「そうね。ディオドラの評価を確実に落とす情報ですもの。エイジ、いったいどこから情報を集めたの?」

 

「……………」

 

 リアスの問いに俺は苦笑いのまま固まった。……どうしよう? 言おうかなぁ?

 

「何か言えないような情報もとなの?」

 

 リアスが怖い笑顔を浮べた。こ、これは正直に言うしかないか……。

 

「じ、実は……」

 

「実は?」

 

 朱乃さんがかわいらしく首を傾げた。

 

「実はディオドラのかこっている女たちなんですが……。ほとんどが俺のお得意さまでして……」

 

『――っ』

 

 部室の空気が凍った気がした。俺は説明を続ける。

 

「調査していくうちに、俺の契約取りのお得意さまにディオドラが囲っている女たちの多くが含まれていることが分かりまして……。契約取りにいったときに、聞いてみたらディオドラの本性やらアーシアをいま狙っていることなどを教えてくてました」

 

 アザゼルが怪訝そうに訊ねてきた。

 

「その情報。当てになるのか? っていうか、ディオドラの奴、おまえが自分の女たちと寝ていることを知ってんのか?」

 

「確実に知らないだろうなぁ」

 

 俺がそうつぶやくと、今度はリアスが訊いてきた。

 

「なんでそう言えるの?」

 

 ん~。下種がどう思われてもしったことでもないし、正直に答えるか。

 

「えっと、他言無用でお願いしますよ?」

 

 俺は全員に確認を取ってから言う。

 

「ディオドラなんですが、……実は下手なんです」

 

 俺の言葉で皆がポカンとなった。

 

「……あいつはセックス大好きみたいなんですけど、まったく気持ちよくなれないそうで……。そこで欲求不満な彼女たちは俺を呼び出して欲求不満を解消しているそうなんです」

 

「……マジか?」

 

 アザゼルが訊ねてきた。俺はうなずく。

 

「あっちのほうは平均的らしいそうですが、自分勝手だから嫌われているみたいなんですよ。まあ、他に行くところないから嫌々付き従っているようですが……。俺が呼ばれるときはディオドラの屋敷から離れた場所で呼ばれて、最初は4,5人だったんですが、いまでは屋敷の女の子たちのほとんどとがお得意さまになってるんです」

 

 まあ、ほとんどじゃなくて、実際のところは全員なんだけどな……。俺の言葉を訊いてアザゼルは大声で爆笑した。

 

「ハハハハハハハハハハハっ! マジか! マジでか!? あいつ、自分の女が他の野朗に寝取られてんのに気づきもしないで他の女に求婚してんのか!? アハハハハハハハハっ! その話を聞くと奴が哀れに思えてきたぜ! ハハハハハハハっ!」

 

 大爆笑のアザゼルと違い、こちらは別な反応。リアスたちはニコニコ笑顔で笑顔をうかべ、小猫ちゃんは半眼で俺を睨んだ。

 

 今夜はリアスたちにお説教かなぁ……。

 

 あ、あとアザゼルにもう1つ言っておかないといけない情報があるんだった。

 

 まあ、不確定情報だからリアスたちに言えないけど、アザゼルには伝えておいて損はないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リアスたちにこってり色々としぼられてから数日後。イッセーが白龍皇のヴァーリにディオドラを警戒するように言われたそうだ。

 

 ディオドラの試合映像を観戦したとき、ディオドラは1人でアガレスの姫さんの眷属を圧倒して見せたことと、わざわざヴァーリが警告してきたことから、奴はおそらくあれを使ったのだろう。まあ、確証はないからまだ報告はしないが……。『禍の団』に所属しているヴァーリが警告してきたことと、短期間で簡単に強くなれる方法を考えれば大体の予想はつく。

 

 十中八九、俺の予想どおりだろうが、まあ、どちらにしろ血祭り決定だな。

 

 ちなみにその日の夜。他にもリアスから報告があった。

 

 その報告はまさかの冥界のテレビ出演が決まったことだった。

 

 まったく、面倒そうだなぁ……。

 

 俺がベッドに寝転がっていると、リアスが腕を絡めてきた。

 

「どうしたのエイジ? テレビ出演が嫌なの?」

 

「……まあ、いままで創作のなかでテレビとかでていましたからね。ご本人登場でどうなるか……」

 

 期待を裏切りそうでかなり怖いんだけど……。

 

「うふふ、エイジくんならだいじょうぶですわよ」

 

 リアスの反対側、俺のもう片方側に寝転んだ朱乃さんも腕を絡めてきた。

 

 リアスも朱乃さんも微笑んで言う。

 

「「まあ、皆が想像していたのより、エッチなヒトだったぐらいに思うでしょうけど」」

 

 って、息ピッタシでそんなこと言われても……。とりあえず、2人の胸に挟まれている腕から幸せを感じながら、ため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、テレビ出演の収録の日。

 

 俺たち眷属悪魔は専用の魔法陣で冥界にジャンプした。

 

 到着したのは、都市部にある大きなビルの地下。

 

 転移用魔法陣のスペースが設けられた場所で、そこに着くなり、待機していたスタッフの皆さんに温かく迎えられた。

 

「お待ちしておりました。リアス・グレモリーさま。そして、眷属の皆さま。さあ、こちらへどうぞ」

 

 プロデューサーの人に連れられ、エレベーターを使って上層会へ

 

 廊下を歩いていると、その先から見知った人が10人ぐらい引き連れてやってきていた。

 

「サイラオーグ。あなたも来ていたのね」

 

 そう、リアスが声をかけたのはサイラオーグだった。イッセーがサイラオーグの『女王』にだらしない顔になっていたが、無視だ。

 

「リアスか。そっちもインタビュー収録か?」

 

「ええ。サイラオーグはもう終わったの?」

 

「これからだ。おそらくリアスたちとは別のスタジオだろう。――試合、見たぞ」

 

 サイラオーグの一言にリアスは顔を多少しかめた。

 

「お互い、新人丸出し、素人臭さが抜けないものだな」

 

 サイラオーグは苦笑する。まあ、こいつなりの励ましの言葉か。

 

 サイラオーグの視線がイッセーに移る。

 

「どんなにパワーが強大でもカタにハマれば負ける。相手は一瞬の隙を狙って全力でくるわけだからな。とりわけ神器は道の部分も多い。何が起こり、何が起こらされるかわからない。ゲームの相性も大事だ。おまえらとソーナ・シトリーの戦いは俺も改めて学ばせてもらった。――だが」

 

 ポンっとサイラオーグはイッセーのカタをたたく。

 

「おまえとは理屈なしのパワー勝負がしたいものだよ」

 

 ふむ……。やっぱりおもしろい男だな。とサイラオーグは俺にも視線を向けてきた。

 

「神城エイジ。もちろん魔王クラスといわれるあなたとも」

 

 だが、そのあとすぐにサイラオーグは肩をすくませた。

 

「まあ、今回の大会で大きなハンデを背負っていては満足に――」

 

 俺は闘気を解放して黙らせる。そして驚きの表情の浮かべているサイラオーグに告げる。

 

「あまりなめるなよ、サイラオーグ・バアル。魔力制限やハンデを背負っているといっても、俺にはおまえと同じように長年の修行で得た肉体と技術がある。余計なことを考える前に修行しろ」

 

 サイラオーグは驚きの顔からうれしそうな、好戦的な顔になってうなずいた。うわっ、こいつ120%バトルマニアだ……。コカビエルやヴェーリレベルだよ……。

 

「これは失礼したな。――だが、おもしろい。それでこそ魔王クラスとよばれる男だ。ハハハっ、これは本当に楽しみだな」

 

 サイラオーグは眷属を引き連れて楽しそうに去っていった。

 

 サイラオーグとのあいさつ後、一度、楽屋に通され、そこに俺たちは荷物を置いた。

 

 アザゼルは他の番組に出演らしいのでついてきていない。イリナは家で黒歌たちと留守番。

 

 今回はあくまで俺たちグレモリー眷属のみの取材だった。

 

 その後、スタジオらしき場所へ案内され、中へ通される。まだ準備中で、局のスタッフたちがいろいろと作業をしていた。

 

 先に来ていたであろうインタビュアーのお姉さんがリアスにあいさつする。

 

「お初にお目にかかります。冥界第一放送の局アナをしているものです」

 

「こちらこそ、よろしくお願いしますわ」

 

 リアスも笑顔で握手に応じた。

 

「さっそくですが、打ち合わせを――」

 

 と、リアスとスタッフ、局アナのお姉さん交えて番組の打ち合わせを始めた。

 

「……ぼ、ぼ、ぼ、ぼぼぼぼぼぼ、僕、帰りたいですぅぅぅ……!」

 

 イッセーの背中でギャスパーが震えだした。そのイッセーも緊張しているようで固まっていた。

 

「眷属悪魔の皆さんにもいくつかインタビューがいくと思いますが、あまり緊張せずに」

 

 スタッフの方が声をかけてくれる。

 

「えーと、姫島朱乃さんとゼノヴィアさんはいらっしゃいますか?」

 

「私が姫島朱乃ですわ」

 

「私がゼノヴィアだ」

 

 朱乃さんとゼノヴィアが呼ばれ、2人とも手をあげる。

 

「お2人には質問がそこそこいくと思います。お2人とも、人気上昇中ですから」

 

「マジっスか!」

 

 イッセーが驚きの声をあげると、スタッフはうなずく。

 

「ええ、朱乃さんには男性ファンが、ゼノヴィアさんは男性ファンに加えて女性ファンが増えてきているのですよ」

 

 まあ、前回のシトリー戦は冥界全土放送で、かなり活躍していたからな。俺が2人に視線を向けると微笑んでくれる。うん、すっごくかわいいです!

 

「えっと、もう一方、兵藤一誠さんは?」

 

「あ、俺です」

 

 イッセーも人気なのか? イッセーが手をあげたが、しかし、スタッフは首をかしげる。

 

「……えっと、あなたは……」

 

 わからないのかよ!

 

「あの俺は『兵士』の兵藤一誠です。いちおう、赤龍帝で……」

 

 おそるおそる言うイッセー。自分で自己紹介かよ。笑えるな。スタッフがそこで手をポンとした。

 

「あっ! あなたが! いやー、鎧姿が印象的で素の兵藤さんがわかりませんでした」

 

 確かに! って顔になるイッセーだが……。よく思い出せ、イッセー。おまえが鎧姿になったのは匙との最後の場面で、パイリンガルまでだったということを……。

 

 鎧姿よりも完全におまえの素の存在感が薄すぎることに、気づけ……。

 

「兵藤さんには別スタジオで収録があります。何せ、『乳龍帝』として有名になってますから」

 

「乳龍帝ぇぇぇぇっ!?」

 

 驚愕の声を出すイッセーにスタッフは嬉々として続ける。

 

「子供にすごく人気になっているんですよ。子供たちからは『おっぱいドラゴン』と呼ばれているそうですよ。シトリー戦でおっぱいおっぱい叫んでいたでしょう? あれが冥界の全お茶の間に流れまして。それを見た子供たちに大ヒットしているんです」

 

 俺は笑いを堪えきれずに大声で笑う。

 

「――っ! あははははははははっ! マジかよ! 赤龍帝じゃなくて、乳龍帝か! 新しい呼び名がついたな! あはははははっ!」

 

「てめえ! エイジ! 笑ってんじゃねえよ!」

 

 真っ赤になって怒鳴るイッセーに謝りながら言う。

 

「ゴメンゴメン。あははっ。うん。なんというか、乳龍帝か。だが、これからのドライグは歴史に乳龍帝という名を刻むことだろうな。――ニ天龍……。乳龍帝と白龍皇か……くくく……。片方がすごく残念だ」

 

 やべぇな、笑いが抑えられない……! 俺に釣られてリアスたちも大笑いしないまでも口もとを抑えて堪えているし。

 

『うっ、うおおおおおおんっ……』

 

 突然、イッセーの腕に籠手が現れたと思ったら、ドライグの泣き声が聞こえてきた。

 

『ニ天龍と称された俺が……赤龍帝と呼ばれ、多くの者に畏怖されたこの俺が……。うおおおおおおおおおんっ、うおおおおおおおおおんっ……」

 

 ……マジ泣きしているようだ。…………ゴメン、笑いすぎたな。

 

 と、スタッフはそんなこと無視して今度は俺のほうを向いてきた。

 

「黒い捕食者の神城エイジさんですね?」

 

「ああ。そうだよ」

 

「あなたも別スタジオで収録です」

 

 まあ、イッセーがなったぐらいだし、冥界で創物扱いの俺も別スタジオになるだろうとは予想していたからな。

 

「わかっ――」

 

 俺がうなずこうとしたら、スタッフの言葉はまだまだ続いていた。

 

「兵藤一誠さんとスタジオ収録後に、休憩をはさんで別スタジオにてリアス・グレモリーさまと一緒にレーティングゲームでの雑誌の取材が5件と、黒い捕食者としての雑誌取材が13件。それぞれの雑誌に使用する写真撮影などが予定されていています」

 

「…………」

 

 俺は無言でリアスを見た。リアスは両手を合わせてかわいくゴメンというポーズをとった。

 

 …………今日中に帰れるよな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 収録語、俺たちは楽屋でぐったりしていた。

 

 皆、緊張していたらしく楽屋に着くなり壁にもたれたり、テーブルに突っ伏していた。

 

 番組は終始リアスへの質問で、シトリー戦はどうだったか? これからどうするのか? 注目している若手はいるか? との質問ばかりだった。

 

 リアスはグレモリー家の次期当主として、高貴な振る舞いで、笑顔で淡々と答えていた。

 

 その後、俺に質問がいくと、会場の女の子たちが歓声をあげてくれた。はい。きちんとだらしないところは見せずに笑顔で対応しました。ゼノヴィアのときは男女両方から歓声があがり、朱乃さんのときは男性ファンが「朱乃さま」と叫んでいた。

 

 そして――イッセーのときは子供たちから「ちちりゅーてー!」「おっぱいドラゴン」って声をかけられていた。それを聞いたイッセーのなんともいえない気持ちをあらわしたような表情は本気で笑いそうになった! まあ、がんばって堪えたけどさ。

 

「ところでイッセー、別のスタジオで何を撮ったの?」

 

 俺とリアスとは違って先に別スタジオで収録を終えたイッセーにリアスが楽屋のお菓子をつまみながら訊いた。

 

「内緒です。スタッフの人にも本放送まではできるだけ身内にも教えないでくれっていわれたんで」

 

 イッセーは「ニヒヒ」と悪戯っぽく笑いながら言った。

 

「わかったわ。放送されるのを楽しみにしましょう」

 

 リアスも楽しげに期待している様子だった。

 

 俺とリアスは休憩が終わり、別スタジオで収録へ移動するために、朱乃さんとイッセーたちは帰るために席を立とうとしたときだった。

 

 楽屋のドアがノックされ、入ってくる者がいる。

 

 髪を縦ロールにしている美少女だった。

 

「エイジさまはいらっしゃいますか?」

 

「レイヴェル・フェニックス。どうしてここに?」

 

 俺と視線があうレイヴェル。一瞬、パァっと顔が輝いたように見えたが。すぐに不機嫌な表情に変わる。

 

 手に持っていたバスケットをこちらへ突きだす。

 

「こ、これ! ケーキですわ! この局に次兄の番組があるものですからついでです!」

 

 俺はバスケットを受け取り、中身を確認する。

 

 おいしそうなチョコケーキが入っていた。……うん。この感じからいって。

 

「パーティのときに言っていたレイヴェルの手製のケーキかい?」

 

「え、ええ! そうですわ! ケーキだけは自信がありますのよ! お、覚えていてくれたんですね」

 

「まあね。ありがとう。でも、お茶の約束のときでも良かったのに」

 

「ぶ、無粋なことはしませんわ。アスタロト家との一戦が控えているのでしょう? お時間は取らせませんわよ。ただ、ケーキだけでもと思ったのです」

 

 ふふ、いい子だし、かわいらしいな。俺は【王の財宝】からナイフとフォークを取りだしてチョコケーキを切って一口食べる。便利だよね、【王の財宝】。

 

「うん。おいしいよ、レイヴェル。ありがとう、家でもゆっくり食べさせてもらうよ」

 

「本当ですか?」

 

「ああ、本当。お茶も今度ちゃんと別にしような」

 

 ナイフとフォークをしまってそう言うと、レイヴェルは目を潤ませ。顔を最大級に紅潮させていた。

 

「……エイジさま、今度の試合、応援してます!」

 

 バッ! レイヴェルは俺たちに一礼したあと、その場を足早に去っていく。

 

 そういえば、初心な子だったなぁ。俺が微笑ましく笑みを浮かべていると、うしろから尻尾を引っ張られた! 痛いです! うしろを振り返るとリアスが怖い雰囲気のリアスたち!

 

「さあ、取材にいきましょうか。エイジ」

 

「私もついていきますわ。――エイジくんが他の女の子に手を出さないために」

 

「うむ。それなら私もついていこう」

 

「先輩は監視していないとすぐに女を増やしますね」

 

 と、リアスだけでなく、朱乃さんとゼノヴィア、小猫ちゃんも取材についてくることに……というか、尻尾を引かれて連行されました……。

 

 ちなみにレイヴェルのチョコケーキは【王の財宝】に収容した! これで長時間の取材とお説教でも腐ることもないし新鮮のままだ!

 

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