<エイジ>
ディオドラ・アスタロトとのレーティングがいよいよ始まると思っていたら、変な場所に飛ばされました……。
リアスたちもいないどころか、周りは殺気をだしてる悪魔たちに囲まれてました。
俺以外には殺気をだしている悪魔たちしかいません。
うん、まさに孤立無援です。
俺は1人なのに対して、少なくても2,000人以上の悪魔が囲んでいる。
「え~と……」
いや、どういう状況? ディオドラとのレーティングゲームは?
俺が頭をかいてリアスたちの位置と無事を確認していると、周りを囲っていた悪魔の1人がご親切にも説明してくれた。
「俺たちは『禍の団』の旧魔王派だ。黒い捕食者、おまえを討ち取らせてもらう」
……『禍の団』って、テロリスト集団だったよな? 裏でディオドラが繋がっているかもしれないとは予想していたけど。
ん~……、それにしても旧魔王派かぁ。確か現悪魔政府に不満を持っている連中だよな。
今行なわれている新人悪魔のレーティングゲームは、魔王はもちろん、政治家、貴族、それにその他勢力からの来賓が観戦に来ているんだし、テロリスト集団にとって最高の襲撃イベントになる。現にレーティングゲームの会場にこいつらがいるってことは、レーティングゲームそのものが乗っ取られた?
手引きしたのは……。
「ディオドラか。やっぱりあいつはおまえらとグルなのか?」
「ああ、ディオドラ・アスタロトは最初からこちら側だ。今頃おまえの仲間も別働隊が襲撃しているはずだ」
これはご丁寧に。やっぱりあのクズ悪魔は裏切り者だったか。
それにしても別働隊ね。
え~と……、確かにリアスたちの方も1,000人ぐらいの悪魔がいるみたいだが、十分対処可能なレベルだし、なぜかオーディンの爺さんも近くにいるようだから大丈夫だろう。
逆にここでこいつらをし止めずにリアスたちの元へ行くほうが面倒なことになりそうだ。まだディオドラもいることだし。
説明してくれた悪魔の男はおかしそうに笑い始めた。
「ふふふふっ、いかにおまえが魔王クラスの実力者といわれていようと力の大半を封じられ、この数を相手になど出来ないだろう。――黒い捕食者。ここがおまえの死場所だ」
「まったく……、随分と面倒なことになったようだな」
素直な感想が口からもれた。ああ、まったく。まったく面倒だ。
あ~……、【王の財宝】、【千の顔を持つ英雄】はもちろん他の能力も使用不可能。中級悪魔程度の魔力制限付きで、2,000以上の上級から中級、下級までの悪魔たちと、紛れ込んでる魔女なんかとのバトル。
まあ、傍から見ればかなりのハンデだけど――。
「おまえら程度にこのハンデでも足らないだろうな」
ただ、面倒なだけだ。
「――なに?」
おおう、周りの皆さんから迸る魔力。あきらかに怒気を孕んでいる。
俺は向けられてくる怒気を受け流して肩をすくませる。
「でも事実だ。おまえらと俺ではこれでもまったく足りない。おまえらは俺に対する認識が甘すぎる」
そして、魔力ではなく、闘気を、殺気を体に纏う。
「――っ!」
悪魔たちの顔が強張る。まるで時間を止められているかのように口を噤み、動きを止める。
「俺は魔力を封じられようと、能力を封じられていようとも、今までに培った経験と技術がある」
最近はまったく戦うところがなかったから、魔王クラスだとか、強い印象は薄くなっていると思うが、ここらで認識を変えさせるか。
構えをとって、悪魔どもに向って鼓舞する。
「それに、インキュバスと完全に転生した俺は、戦闘で女に対しては最強で最凶の能力を持っている。この場で襲い掛かってくる女は十二分の覚悟を持ってかかって来い! 男は死ぬ覚悟を持って挑んで来い!」
「な、なめるなぁぁああああああ!」
お互いに殺気をぶつけ合い、俺と『禍の団』の戦闘――いや、一方的な蹂躙劇が始まった。
◆
「くらえぇええええっ!」
「死ねぇえええええっ!」
「覚悟ぉおおおおおっ!」
とかいう悪魔たちの叫び声と共に、周囲360度、さらにその後方からいくつも魔法陣が空に浮び、魔力の弾が無数に飛んでくる。
――ああ、本当に甘い。こんな攻撃で俺を捕らえられるとでも思っているのか?
俺は素の身体能力で地面を蹴って、敵陣のなかへ突っ込む!
ドォオオオンッ!
俺がさっきまでいた地面が爆せる。
「――どこに!?」
いくつもの動揺の声が周りから上がる。やっぱりこいつらは雑魚だ。俺の速度に追いついていない。
「なっ!?」
「いつの間に!?」
突然現れたように見えたのだろう悪魔たちが驚愕の表情を浮かべていたが、関係無しに拳を顔に叩き込んで絶命させる!
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!
マシンガンのように打ちだす拳には中級悪魔程度の魔力しか込められていないが、その密度は高く、さらに速度と技術を持って威力を一点に収束させて打ち出しているため、拳に直接当たらずとも突き抜けた衝撃が、『禍の団』の悪魔たちの頭部がはじけ飛ばす!
頭部をなくしたり、避けたが完全に避けきれずに虫の息になっている悪魔たちを見下ろして言う。
「とりあえず、いまので数十人は始末したな」
「――っ! この化け物がぁあああ!」
「仲間の仇だ!」
などと突っ込んでくる悪魔に無慈悲に拳を叩き込んで絶命させ、インキュバスの能力を解放する。
バッ!
背中に大きな羽根が生え、尻尾が生える。
「死ねぇえええっ! ――うぐっ!?」
後ろから襲い掛かってきた女悪魔を尻尾で絡める。
「何だこれは!?」
もがく女悪魔を無視して他の女悪魔や魔女を無数に分裂させた尻尾で絡めとり、空中に持上げる!
「キャアアアア!?」
「なに!? なんなの!?」
空から女の叫びが聞えるが、テロリストに下手な慈悲は不要。女だということで生かしてやるが、戦闘不能にはさせてもらうし、痛い目にはしっかりあってもらう。
倒した悪魔たちが持っていた槍をニ振り掴む。
ブゥウウウウウッンッ!
槍をくるくると高速で回して腕に掴む。――うん。なまっていない。
「全員覚悟しろ!」
周りにいる悪魔から、槍で貫き、払い、叩いて絶命させる!
さらに続けて尻尾のほうで空中に浮べた女悪魔や魔女を官能的に締め上げる!
「くぅうううんっ!」
「クソっ! このっ! ちゃんと闘え!」
「服のなかまで触手が――」
「いやっ!? なんで!? なんで気持ちいいのぉおおお!?」
空中でいくつも聞える艶っぽい厭らしい声。尻尾をロープのように使って縛り上げ、快楽で脳を犯しながら吸性と吸魔を行なう!
そして女たちからギリギリまで魔力を吸いとり、理性を失う限界まで、戦闘不能になるまで追い込んでいく!
あははははっ! 空から振り落ちる愛液の雨……! 戦陣の空気!
丁度いいからインキュバスの能力も使って暴れさせてもらおう!
あははははっ! ああっ! それにしても久々の戦闘だ!
思う存分に自分を振るう!
それぞれの得物を持って襲い掛かってくる悪魔たち。
剣で切りかかってくる者、手甲で殴りかかってくる者、槍で突いてくる者、戦斧を持って攻撃してくる者など様々な悪魔たちが襲い掛かってくる。
さらに少し離れた位置では無数の魔法陣が展開されて魔力の収束を感じる。
味方は相変わらず1人なのに、相手側は転移魔法陣から次々と仲間を送り込み、倒しているのに人数は減らないどころか、増えていく。
孤立無援の状態で、まさに絶体絶命だろうが――。
「――まったく負ける気がしないな」
剣を向けてくる悪魔の一撃を踏み込むことでかわし、さらに同時に胸を貫く!
「このっ! ――キャ!?」
胸を刺し貫いた槍を捨て、手甲で殴りかかってくる女悪魔の手を取り、柔術と合気道の応用で捕らえて拘束する。
「いまだ!」
「チャンスとでも思ったか?」
「――なっ!?」
「――ぐぅっ!」
女悪魔を捕らえる隙を狙って悪魔が槍を突いてきたが、その切先をこちらの槍で切っ先で弾くように逸らし、戦斧を持っていた悪魔の腕を貫かせた。自分の槍はそのまま槍で突いてきた悪魔に向けて放ち、胸を刺し貫く。さらにその槍を高速で引き抜き、反対方向にいる戦斧を持っていた悪魔の首に石突きをめり込ませてへし折った。
「ああ、あああああぁあああああああああっ!」
目の前で起こる惨劇に恐怖で悲鳴を上げる女悪魔の服の間から手を差し込んでおっぱいを掴む。
ほう、これはなかなか――。
「や、やめてっ!」
恐怖の悲鳴を上げる女悪魔の体の感触を楽しみつつ、続いて向ってくる悪魔を倒す。
女悪魔のおっぱいを掴んでいる手に、空中でイキ狂って愛液や潮を噴き出させながらアヘってる女達から吸いとった魔力を、インキュバスの能力で強い媚薬に変換させ、捕らえた女悪魔の肌にすり込みながら揉んだ。
「あ、ああっ!? い、いやぁあああああ! 胸が! 胸がおかしくなる! やめ、やめてぇええええええっ!」
腕のなかで悶える女悪魔のおっぱいを揉みながら、トドメとばかりに乳首を摘み上げて、ペニスに変身させた尻尾でオマンコを刺し貫き、絶頂させる。
「あひぃいいっ! あひぃいいいいい……ッ!」
だらしないアヘ顔を浮べながら全身から様々な体液を漏らす女悪魔を地面に捨てて、さらに魔力を魔法陣に収束させていた悪魔たちへ槍を投擲し、再び敵陣に突っ込んでいく!
様々な武器を向けてくる悪魔たちから武器を奪いながら倒したり、無手で両手両足を叩き折ったり、女の性感を媚薬とテクニックで過剰に刺激させて脳をショートさせて次々と倒していく!
尻尾の激しい愛撫で戦闘不能となった女たちを放して、替わりに次々に女悪魔や魔女を捕らえて、魔力や精気を吸いとり、性感を刺激させて戦闘不能にさせていく!
あははははっ! 久しぶりに武を振るうのも楽しいな!
剣を振るって肉を切断し、骨を両断し、剣圧を固めて飛ばして一閃にて数十の命を奪う!
槍を払って体を叩き潰し、高速で回転させて魔弾をかき消し、肉体を貫き、投擲して数十の命を消し飛ばす!
斧で地面を割り、命を刈り取る剣風を起こし、武器ごと命を奪い取る!
拳と脚を使って潰し、捻じ曲げ、へし折り、肉体を砕いて圧倒する!
向ってくる女悪魔や魔女を無数の尻尾で縛り、貫き、体のなかをのた打ち回らせ、媚薬を浴びせ、飲ませ、一方的な激しい愛撫で犯して、狂わせ地面に落としていく!
「中級悪魔程度の魔力しか出せなくても! 能力の大半を封じられていようとも関係ないんだよぉおおおおおおっ!」
ここに戦力が集まればリアスたちの負担も減るし、どちらにしろこいつらを放っておく事もできない。
常にリアスたちの無事を確認しながら、俺はまだまだ出てくる敵を滅ぼすために、存分に自分を振るう!
◆
俺――アザゼルはレーティングゲームのバトルフィールドで旧魔王派どもをある程度片づけていた。いや、もうほとんど片づけられていた。
「骨のない連中にゃ」
「まったくもって統率も取れていないし、兵士の質も悪いな」
「あんまり強くなかったですね」
「雑魚……ばかり」
「皆さんが強すぎなんですよ!」
エイジの眷属たちがほとんどのテロリストを片づけているからだ。
いや、マジでこいつら強くないか?
特に黒歌っていう猫又と、セルベリアとかいう青みがかった銀髪で軍服姿の爆乳女って下手すると俺よりも強いんじゃね?
黒歌の奴なんてオーディンでも壊せない結界を、時間があれば空間を操る仙術で破壊できるとか言ってるし。セルベリアって奴は巨大な槍と盾を振るって、単なる槍の一撃で数十人を一瞬で消し飛ばしてるし、盾は何人もの上級悪魔が魔力を収束させた、魔王クラスに近い魔弾を完璧に防いじゃってるし……。
ノエルって奴も『魔銃ヴェルベルク』を完璧に使いこなして遠距離から無双してる。時雨って奴も様々な武器で次々に悪魔たちをしとめていっているし、元俺の勢力にいた堕天使レイナーレとかいう奴も援護がすごくうまい。自身の戦闘能力も高めで、サポートに秀でてる理想的な支援役だ。元は中級の堕天使だったようだが、今は上級、それもおそらく幹部クラスの実力は持っているだろう。
まったく、あいつ自身もそうだが、あいつの女たちも化け物ばっかりだな。
ゴォオオオオオッ!
……ああ、それに1番は奴だな。
遠くに見える神城。
1人で敵のなかに放り出されたとは聞いたが、まさに無双していた。
ていうかありゃなんだ!?
空中に何十人いや、ヘタすると100人ぐらい空中に『禍の団』の女たちが吊るされていて、アヘっていやがった!
地上ではエイジの奴が敵から武器を奪ったり、無手での格闘で倒しまくる。
あいつってマジでいまハンデ付けてんのか?
正直、あの状態でも勝てる気がしないんだが……。
ほんと怖ろしいな……。
まあ、それはそれとして――、空中で触手に縛られてる女たちは眼福だな! 地面で男たちが無残に倒されていっているぶん混沌としているが……。
いや、だがいまはそれよりも気になることがあったんだ!
俺はとある場所へ向って宙を飛んで向う。
――俺が開発した人工神器の核でもある宝玉に宿ったドラゴン、ファーブニルが、オーディンの力で部下と黒歌たちを連れて、このフィールドに入ってからずっと反応を見せていたのだ。
フィールドの1番隅っこに人影をひとつ視認する。宝玉がさらに輝きを増した。
俺はその人影の前に降り立つ。……腰まである黒髪の小柄な少女。黒いワンピースを身に着け、細い四肢を覗かせている。
少女は端正な顔付きだが、目線をフィールドの反対側を注視していた。
……俺は目を細め、静かに言う。
「――おまえ自身が出張ってくるとはな」
少女は俺の声に反応し、こちらへ顔を向けた。薄く笑う。
「アザゼル。久しい」
「以前は老人の姿だったか? 今度は美少女さまとは恐れいる。何を考えている? ――オーフィス」
そう、こいつは『
以前会ったときはジジイの姿だったが、今回は黒髪少女かよ。まあ、こいつにとっては姿なんてものは飾りに過ぎないか。いくらでも変えられる。
こいつ自身が出張ってくるってことは、今回の作戦はそれほどこいつにとって重要でデカいのか?
だが、先ほど見つめていたフィールドの場所は中央の神殿ではなく、――神城が戦っていたところだ。
「見学」
「高み見物ね……。それにしてもボスがひょっこり現れるなんてな。ここでおまえを倒せば世界は平和か?」
俺は苦笑しながら光の槍の矛先を突きつけるが、奴は首を横に振った。
「無理。アザゼルでは我を倒せない」
ハッキリ言ってくれる。だろうさ。俺だけじゃおまえを倒しきれない。それはわかっている。だが、おまえをここで倒せば『禍の団』に深刻な大打撃を与えるのは確実なんだよな。
「では、2人ではどうだろうか?」
バサッ!
羽ばたきながら、舞い降りてきたのは――巨大なドラゴン!
「タンニーン!」
元龍王のタンニーン!
こいつもゲームフィールドの旧魔王派一掃作戦に参加していたのだが、一仕事を終えてこちらに向ってきたようだ。それに黒歌たちももうすぐこちらへ向かってくるだろう。全員でかかればオーフィスといえど倒せるはずだ。
タンニーンは大きな眼でオーフィスを激しく睨む。
「せっかくの若手悪魔が未来をかけて戦場に赴いているというのにな。貴様が茶々を入れるということが気に入らん! あれほど、世界に興味を示さなかった貴様が今頃テロリストの龍王だと!? 何が貴様をそうさせたと言うのだ!」
俺もタンニーンの意見にうなずき、さらに問いただす。
「暇つぶし――なんて今頃流行らない理由は止めてくれよな。おまえの行為ですでに被害が各地で出ているんだ」
そう、こいつがトップに立ち、その力を様々な危険分子に貸し与えた結果、各勢力が被害をもたらしている。死傷者も日に日に増えてきた。もう無視できないレベルだ。
何がこいつを突き動かし、テロリスト集団の上に立たせた? 俺にはそれだけがわからなかった。いままで世界の動きを静観していた最強の存在が何故いまになって動きだしたのか?
そのオーフィスの答えは予想外のものだった。
「――静寂な世界」
…………。
一瞬、何を言ったか理解できなかった。
「は?」
俺は再び問い返す。するとオーフィスは真っ直ぐこちらを見つめて言った。
「故郷である次元の狭間に戻り、静寂を得たい。ただそれだけ」
――っ!
そ、それが理由だってのか? 次元の狭間。簡単に言うなら、人間界と冥界、人間界と天界の間にある壁のことだ。世界と世界の分け隔てる境界。そこは何も無い「無の世界」と言われている。
オーフィスはそこから生じたのは知っていたが……。
「……ホームシックかよと普通なら笑ってやるところだが、時限の狭間ときたか。あそこは確か――」
俺の言葉にオーフィスはうなずいた。
「そう、グレートレッドがいる」
次元の狭間は現在、奴が支配している。なるほど、オーフィスは奴をどうにかして次元の狭間に戻りたいのか。
まさか、それを条件――グレートレッドを追いだすのを条件に旧魔王派の悪魔や異端児に懐柔されたってのか?
――そうか、ヴァーリの目的!
俺の思考が何かをだそうとしたとき、オーフィスがある一点を見つめて、俺に向って訊いてきた。
「あの者はなにもの?」
「なんだ? 奴が気になるのか?」
オーフィスは俺が返した問いにうなずいた。
「教えてやる義理は無いが、教えてやる。あいつは神城エイジ。魔界では黒い捕食者と呼ばれている転生悪魔だ」
「転生悪魔?」
首を傾げるオーフィス。
「まあ、その疑問もわからないことでもない。いまの奴は完全なインキュバスだからな」
「インキュバス……」
オーフィスが少しだけ笑った気がしたが見間違いか?
「いくらおまえが最強といわれている存在だとしても、奴も規格外の化け物だ。さらにあいつの眷属も強いからな。ここでおまえを倒せないこともないぞ」
タンニーンが牙を剥きながら威嚇するが、オーフィスはまったく気にもしないで神城が戦う様子を見ていた。
一体どうしやがったんだ?
俺が疑問に思っていると、オーフィスの横に魔法陣が出現し、何者かが転移してくる。
そこにあらわれたのは貴族服を着た1人の男。
そいつは俺に一礼し、不適に笑んだ。
「お初にお目にかかる。俺は真のアスモデウスの血を引く者。クルゼレイ・アスモデウス。『禍の団』真なる魔王派として、堕天使の総督である貴殿に決闘を申し込む」
……ハハハ、こいつはまた……。首謀者の1人がご登場ってわけだ。
俺は頭をポリポリとかきながら、つぶやく。
「旧魔王派のアスモデウスが出てきたのか」
ドンッ!
確認するやいなや、そいつは全身から魔のオーラを迸らせた。色がドス黒いな。こいうもオーフィスの力を得たか。
「旧ではない! 真なる魔王の血族だ! カトレア・レヴィアタンの敵討ちさせてもらうッ!」
カトレアは死んでいないし、正確に倒したのは神城の奴なんだがな……。まあ、この様子じゃ聞いていないだろう。
「まあ、いいぜ。タンニーン、おまえはどうする?」
「サシの勝負に手を出すほど無粋ではない。オーフィスの監視でもさせてもらおうか」
こいつも根っからの武人だね。ドラゴンにしておくのが勿体無いぐらいだ。
「頼む。さて、混沌としてきたが、俺の教え子どもは無事にディオドラの元にたどり着いている頃かな」
俺が不意に口にしたことだが、オーフィスはそれを聞き、首を横に振る。
「ディオドラ・アスタロトにも我が蛇を渡した。あれを飲めば力が増大する。倒すのは容易ではない」
「ハハハハハハハハハハッ!」
俺はオーフィスの言葉に爆笑した。わかってねぇ! わかってねぇよ、オーフィス!
「なぜ、笑う?」
怪訝に首をかしげるオーフィスに俺は告げた。
「蛇か。そりゃ、けっこうだ。だが、残念なことにそれじゃ無理だな」
「なぜ? 我が蛇、飲めばたちまち強力な力を得られる」
「それでも無理だ。先日のゲームじゃ、ルール上、力を完全に発揮できなかったがな」
タンニーンとの修行、あれがいかなるものか、ディオドラ・アスタロトは身を持って知ることになるだろう。
修行相手が龍王だ。元龍王とはいえ、いまだ現役の伝説のドラゴンが1人の小僧を追いかけ回したんだぞ? 加減をされていたとはいえ、普通なら死ぬ。死んで当たり前だ。
――だが、あいつは耐えきった。生きて生還し、
その意味をおまえらはまだわかっていないし、もうひとつ忘れているのさ。
神城が鍛えたリアス、朱乃、ゼノヴィアの実力を! あいつら自身は自覚は無いようだが、あいつらの戦闘能力は最上級悪魔に匹敵するほどだ!
元々才能があったとしても、エイジの奴がたった2ヵ月足らずでリアスたち3人を強化するとは誰も思っていなかっただろう!
俺も思っていなかった!
俺はファーブニルの宝玉を取り出し、例の人口神器の短剣をかまえた。
「さて、ファーブニル。付き合ってもらうぜ。相手はクルゼレイ・アスモデウス! いくぜ、禁手化ッッ!」
次の瞬間、俺は黄金の全身鎧に包まれていた。
イッセー、おまえを制限するものはここのどこにも無い。
――暴れてみせろッ!
と、俺がカッコ良く決めようとしたところで乱入する転移用魔法陣があった。
その紋様は――。そうか、おまえ自らが出張るか。
輝く魔法陣から現れたのは、紅髪の王――サーゼクス。
「サーゼクス、どうして出てきた?」
俺の問いに奴は目を細める。
「今回結果的に妹を我々大人の政治に巻き込んでしまった。私も前へ出てこなければな。いつもアザゼルばかりに任せていては悪いと感じていた。――クルゼレイを説得したい。これぐらいしなければ妹に顔向けできそうにないんでね」
ったく、こいつは……。
「……お人好しめ。――無駄になるぞ?」
「それでも現悪魔の嘔吐して直接聞きたかった」
俺はかまえていた槍を一度引いた。
サーゼクスを視認した途端、クルゼレイの表情が憤怒と化す。
「――サーゼクス! 忌々しき偽りの存在ッ! 直接現れてくれるとはッ! 貴様が、貴様さえいなければ我々は……ッ!」
見ろ。これが現実だ。奴らにとって、おまえの存在は最大級に忌むべきものなんだよ。
「クルゼレイ。矛を下げてくれないだろうか? 今なら話し合いの道も用意できる。前魔王の血筋を表舞台から遠ざけ、冥界の辺境に追いやったこと、いまだに私は『他の道があったのでは?』と思っていならない。前魔王子孫の幹部たちと会談の席を設けたい。何よりも貴殿とは現魔王アスモデウスであるファルビウムとも話して欲しいと考えている」
サーゼクスの言葉は真摯だ。それゆえ、クルゼレイの感情を逆撫でる。
――無駄だ、サーゼクス。
もともと、こいつらにおまえたち現魔王の言葉は届かない。おまえは甘いんだ。
激昂するクルゼレイ。
案の定クルゼレイは憎悪をあらわにして叫び、典型的な雑魚の親玉の発想を思わせる話をはじめ、結局説得は無駄となり、サーゼクスは戦う道を取らざるえなかった。
オーフィスの蛇で強化されたクルゼレイだったが、現魔王であるサーゼクスには敵わず、滅びの魔力によって消滅させられた。
まったく後味の悪い……。
◆
<イッセー>
俺たちがたどり着いたのは――最深部にある神殿だった。その内部に入っていくと、前方に巨大な装置らしきものが姿を現す。
壁に埋め込まれた巨大な装置で、あちらこちらに宝玉が埋め込まれ、怪しげな紋様と文字が刻まれていた。
これ、何かの術式魔法陣を形作っているのか?
と、俺はその中央を見て、叫んだ。
「ディオドラァァァァアアアアッ!」
装置の真ん中に、血が付着していた服から着替えたのだろう新品の服を着た、やさしげな笑みを浮かべたディオドラが立っていた。
片腕を叩ききったはずだか、両手はしっかり生えていて、怪我をしている様子も無い。
だが、いまはそれよりも――。
「やっと来たんだね。待っていたよ」
こいつをぶん殴りたくて仕方がない! 俺は禁手のカウントダウンを始めていた・カウントが終了したら。俺はディオドラをぶん殴る! 全力で! 全速で! あの野郎の顔面をぶち抜いてやるっ!
「ディオドラさん……」
「やあ、アーシア。よく来たね。キミを待っていたんだ」
何事もなかったようにアーシアに笑顔を向けるディオドラ。――この野郎っ!
「この装置を動かすのはキミが必要だからね。さあ、こっちへおいで」
「…………」
少し様子が変だな? やっぱり眷属全員に見捨てられたことが効いているのか?
「薄汚い赤龍帝や黒い捕食者のおかげで全ての予定が狂ってしまったよ。あの堕天使の女――レイナーレが一度アーシアを殺したあと、僕が登場してレイナーレを殺し、その場で駒を与える予定だったんだ。まったく、ほんとうだったら僕の眷属に加えたあとアーシアを犯して楽しむ計画がここまで送らされるなんて! ほんとうにキミたちは僕の障害だよ! ほんとうに邪魔だ!」
笑みを取り繕うことも出来ない様子で狂気の向けてくるディオドラ。
「黙れ」
自分でも信じられないほどの低い声だった。
なんとなく、子悪党かなって思っていた。俺の直感っていうのかな。曖昧な表現だけど、ライザーと会ったときと同じ感覚をこいつから感じていたんだ。
とんでもない。
子悪党どころか、こいつは遥かに超越した外道! いや、鬼畜だった!
こんなクソ野郎がアーシアに愛を語っていたのかよ!
ヴァーリが俺の親を殺すと言ったとき以上に――怒りを抑えることができなかった。
俺が我慢の限界に達しようとしたときもディオドラは下劣極まりない言動を止めない。
「僕から放れていこうとしている奴らは後回しにして、まずはアーシアを犯そう。なあ、赤龍帝。アーシアはまだ処女だよね? 僕は処女から調教するのが好きだから、赤龍帝のお古は嫌だな」
こいつだけは――。
「あ、でも、赤龍帝から寝取るものまた楽しいのかな?」
絶対にぶん殴らないと気が済まない――。
「キミの名前を呼ぶアーシアを無理矢理抱くのも良いかもしれ――」
「黙れェェェェェェェェッ!」
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!!』
俺のなかで何かが勢いよく弾け飛んだ!
「ディオドラァァァァァァァァァァッァッ! てめえだけは! 絶対に許さねぇッ!」
膨大な赤いオーラに包み込まれて、俺は赤龍帝の力が宿った全身鎧を身に纏った。
俺の想いに神器が呼応したのか、2分と経たずに禁手と化した!
「部長、皆、アーシアを頼みます。――それと、絶対に手を出さないでください」
「イッセーさん」
待っててアーシア、すぐにあいつの口を塞いでくるから。
「イッセー。全員で倒すわ――と、言いたいところだけれど、いまのあなたを止められそうもないわね。アーシアは私たちに任せなさい。――その代わり手加減してはダメよ」
部長は最高の一言を発してくれる。ええ、そのつもりですよ。
「ドライグ、聞えるか」
『なんだ、相棒』
「今回だけ、好きにやらせてくれ」
『……わかった』
俺の姿を見て、ディオドラは楽しげに高笑いしていた。
その全身がドス黒いオーラに包まれていく。
「アハハハハ! すごいね! これが赤龍帝! でも、僕もパワーアップしているんだ! 「戦車」の女に切り落とされた腕もすでに完全に再生した! まったく最高だよオーフィスの『蛇』は! この力を使えばキミなんて瞬殺――」
ゴォォォォオオオオオッ!
俺は背中の魔力噴出口から火を噴かし、瞬間的なダッシュで間を詰める!
ドゴンッ!
そのまま奴が言い切る前に俺は打拳をディオドラの腹部に鋭く打ち込んだ。
「……がっ」
ディオドラの体がくの字に曲がる。その顔が激痛に歪んだ。
俺の速度に反応できなかったようだ。打ち込んだ拳をそのままねじり込み、中身を潰そうとした。
ごぼっ……。
ディオドラが内容物を血と共に口から吐きだした。
俺は拳を引きながら、訊く。
「瞬殺がどうしたって?」
ディオドラは腹部を押さえながら、後ずさりしていく。
「くっ、こんなことで! 僕は上級悪魔だ! 現魔王ベルゼブブの血筋だぞ!」
ディオドラは手を前に突きだすと、魔力の弾を無数展開した。
「キミのような下級で下劣で下品な転生悪魔ごときに気高き血が負けるはずがないんだッッ!」
ディオドラの放つ無限にも等しい魔力弾の雨が俺へ向ってくる。
俺は避けもせずにその雨のなかを1歩1歩歩みだした。弾を手で弾いたり、跳ね返したりしながら、詰め寄っていく。鎧に被弾しても俺は気にせず前進していった。
ありがとうよ、タンニーンのおっさん。あのしごき、効果があったなんてもんじゃねぇよ。相手は上級悪魔でドーピングして強くなっているはずなのに、攻撃がまったく怖くない。
『そうだ。龍王との修行はおまえを相当鍛え込んだ。シトリーとの一戦はその修行を生かしきれなかったが、禁手に至れた。この制限なしのいまならば修行の成果を、力を出し切れる』
ああ、ドライグ。匙との勝負ではほとんど使えなかったけど、いまなら違う。
それにこいつ相手なら殺意全開でぶん殴れるぜ。
『単純なパワー勝負なら、現在のおまえはかなりのものだよ』
奴の眼前まで迫ったとき、ディオドラは魔力の攻撃を止めて、距離を取ろうとした。
ゴオッ!
俺は背中の魔力噴出口を瞬時に噴かして、すぐにディオドラに追いついた。 その瞬間奴は幾重にも防御障壁を作りだす。
「ヴァーリの作った障壁よりも薄そうだな」
バリンッ!
俺の拳が防御障壁を難なく壊して貫いていく。
ゴンッ!
顔面への一撃! やっと入れてやった! これほど気分が晴れる一撃はない!
殴られた勢いでディオドラの体が床に叩きつけられる。奴は顔から血を噴出させて、涙を溢れさせていた。
「……痛い。痛い。痛いよ! どうして! 僕の魔力は当たったのに! オーフィスの力で絶大なまでに引き上げられたはずなのに!」
俺はディオドラの体を引き上げ――オーラのこもった拳を打ち込む! 腹部に一撃!
「ぐわっ! がはっ!」
さらに顔面に一撃! またまただッ! オーラを右手に終結させて、莫大な量でディオドラに叩き込もうとする!
「こんな腐れドラゴンに僕がぁぁぁぁっ!」
ディオドラは左腕を前方へ突き出し、分厚そうなオーラの壁を発現させる。
ガンッ! バチッバチッ!
俺の拳がオーラの壁にぶち当たり、勢いを相殺されそうになった。
こんなもの――。こんなのもがどうしたってんだッ!
「アハハハハハハハハッ! ほら見たことか! 僕のほうが魔力は上なんだ! ただのパワーバカの赤龍帝が僕に敵うはずがないんだよっ!」
にんまり笑うディオドラの前で俺は赤龍帝の力を容赦なく振り込んだ!
「――そのパワーバカのパワーを見せてやろうか?」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』
ゴォォォォォオオオオオオオオオッ!
背中の魔力噴出口から膨大なオーラが噴きだして、拳の勢いが増していく。
ビキッ! 壁に少しだけひびが生まれる。そして――。
バリンッ! 壁は威力が増大した俺の一撃にはかない音を立てて消失していった。
「わりぃな。パワーバカだから、こんな風に力押ししかできねぇや。でもいまのおまえ相手なら十分か」
「ひっ」
一瞬で顔色を変えたディオドラに、
「俺ん
俺は真っ正面から叫びながら拳を繰り出した!
グシャッ!
前に突きだしていたディオドラの左手を叩き折り、その勢いで顔面に拳をぶち込んだっ!
ゴスンッ!
顔面に鋭く突き刺さる俺の拳! ディオドラは拳の一撃に怪しげな魔術装置の壁へと吹っ飛び、背中から激突していた。
床に落ちたディオドラはおろおろと地を這いずりながら叫んだ。
「ウソだ! やられるはずがない! アガレスにも勝った! バアルにも勝つ予定だ! 才能のない大王家の跡取りなんかに負けるはずがない! 情愛が深いグレモリーなんか僕の相手になるはずがない! 僕はアスタロト家のディオドラなんだぞ!」
ディオドラが手を上へ突き上げると、俺の周囲に魔力で作りだした鋭い円すい状のものが幾重にも出現させる。
鋭い切先がすべて俺に向き、そのままミサイルのように射出してきた!
――全部は
身を屈め、あるいは横にジャンプし回避するが、それにも限界がある。いくつかのトゲトゲを拳と蹴りで弾き飛ばすが――。切先がうねりはじめ、意思を持ったかのように俺の体にまとわりついてきた!
ザシュッ!
鎧の隙間を探すようにぬって、1番装甲が薄い部分を破壊して俺の体を貫いてきた!
クソ……痛ぇぇぇっ! 切先に魔力を集結させて、鎧に小さな穴を開けたのか。
だが、まだだ! 俺を射抜くトゲトゲを両手で全部まとめて一気に体から引き抜いた!
抜いた勢いで血が床にしたたり落ちる。
もう一度、同じ攻撃をしようとするディオドラに俺は背中のブーストを噴かして瞬時に詰め寄り、蹴りを放った。
メキッ……。
鈍い音が神殿にこだまする。俺のキックはディオドラの右大腿部をぶち抜き、骨を粉砕したようだ。
「ちくしょぉぉおおおおおおっ!」
苦痛に顔を歪ませるディオドラがこちらに手を向け、魔力を急激に集めだした。最大に高めた魔力の波動を撃ちだすつもりなんだろう。
俺も奴に手を突きつけた。手にドラゴンのオーラを集めていく!
ドシュゥゥゥウウウウウウウッ!
俺の右手から赤い選考が走り、ディオドラの手からも極大な魔力弾が撃ちだされる。
ドオオオオッ!
お互いの一撃が宙でぶつかり合い、攻め合うが――。
こんなもので――。俺が止められるものかよッ!
「いけぇぇぇぇぇぇっ!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』
神器から増加された力が流れ込み、俺のドラゴンショットのパワーを底上げしていく!
ドンッ!
ドラゴンショットはディオドラの魔力をふっ飛ばして、奴のすぐ横をかすめていく。
奴の横を通り過ぎたドラゴンのオーラは魔術装置ごと神殿の一部分を大きく抉り、壁を突き抜け、外にまで達していた。
それでも奴はもう一度魔力を練り込もうとするが――。
ドゴォォオオオオオンッ!
俺は勢いよく拳を床に叩きつけた。神殿そのものが大きく揺れる。
奴は床にできた巨大なクレーターを見て、目元をひくつかせていた。
ディオドラは――ガチガチと歯を鳴らし、震え上がっていた。わざと外した。当てても良かったんだけどな。……クソ。甘ちゃんだよな、俺……。
歩み寄り、もう一度奴を引き上げる。
俺は鎧のマスク部分を収納し、素の状態でにらみつける。全身から赤いオーラを激しく発しながら、
「二度と、アーシアに近づくなッ! 次に俺たちのもとに姿を現したら、そのときこそ、本当に消し飛ばしてやるッ!」
ディオドラの瞳は――怯えの色に染まっていた。
『相棒。そいつの心はもう終わった。――そいつの瞳はドラゴンに恐怖を刻み込まれた者のそれだ』
……そうかよ、ドライグ。俺はディオドラを放した。奴はガチガチと震えるだけだ。
「イッセー、トドメを刺さないのか?」
と、ゼノヴィアが真・リュウノアギトとデュランダルまでだしてその切っ先をディオドラに突き立てて訊いてくる。
その瞳は凶悪なほど、冷たいものとなっていた! まずいな。こいつ、殺意がマックスになってやがる! ていうか、なんて膨大なオーラだよ! それと真・リュウノアギトのオーラをこちらに向けないで! そいつの龍殺しのオーラはドラゴン属性の俺には怖すぎるから!
「アーシアにまた近づくかもしれない。いまこの場で首をはねたほうが今後のためじゃないのか?」
ゼノヴィアは本気だ。俺か、部長が応じればすぐさまディオドラの首を飛ばしてミンチに変えるだろう。
だが、俺は首を横に振った。
「……こいつもいちおう現魔王の血筋だ。いくらテロに加担したといって、殺したら部長や部長のお兄さんに迷惑をかけるかもしれない。もう十分に殴り飛ばしたさ」
部長も俺の言葉に眉をしかめ、瞑目していた。部長自身も激怒していたけど、ディオドラの処分は上に任せると心中で決めているのだろう。
ゼノヴィアは心底悔しそうにしていたが、真・リュウノアギトを勢いよく壁に向って振った。
ゴォォォオオオオオオンッ!
……おいおい、少しでも憂さを晴らしたかったんだろうと思うが、壁に大穴つくるなよ……。
「……わかったよ。イッセーがそう言うなら私は止める。――だが」
「ああ、そうだ」
俺とゼノヴィアは拳と剣、それぞれをディオドラに向けた。
「「もう、アーシアに言い寄るなッ!」」
俺たちの迫力ある声にディオドラは瞳を恐怖で潤ませながら何度もうなずいた。
俺たちはディオドラを解放すると、アーシアのほうへ戻った。
「イッセーさん!」
「アーシア、終わったよ」
俺は抱きついてきたアーシアの頭をやさしくなでてやる。
「もうディオドラにも手を出させない。これからも約束通り必ず守るよ」
終わったことに安堵したのか、アーシアはうれし泣きをしていた。
あとは先生たちが事を納めるまで、神殿地下で待機していればいいだろう。
と、考えていたら、部長が冷静な声を発した。
「まだ終わりじゃないみたいよ、イッセー」
「え?」
呆ける俺とアーシア、それに木場とギャスパー。小猫ちゃんが神殿の1点を指差した。
「部長、あそこに隠れています」
隠れている? まさか、まだ伏兵がいたのか!?
急いで俺たちがかまえを取って小猫ちゃんが指差した1点を警戒すると、ただの壁だったところが変化し、そこから軽鎧とマントを身につけたはじめてみる顔の男が現れた。
「まさか私の存在に気づく者がいるとはな」
……なんだ、この体の芯から冷え込むようなオーラの質は……。
部長がその男に訊く。
「あなたはいったい何者?」
「お初にお目にかかる。忌々しき偽りの魔王の妹よ。私の名前はシャルバ・ベルゼブブ。偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く、正統なる後継者だ。先ほどの偽りの血族とは違う。ディオドラ・アスタロト、この私が力を貸したというのにこのザマとは。先日のアガレスとの試合でも無断でオーフィスの蛇を使い、計画を敵に予見させ、アーシア・アルジェントを捕らえるのにも失敗。下僕にも見捨てられ、おまけにアーシア・アルジェンとの神器を反転させるための装置まで破壊されるとは、貴公はあまりに無能で愚考が過ぎる」
――旧ベルゼブブ!
こんなときにボスの登場かよ!
ディオドラは旧ベルゼブブの末裔――シャルバ・ベルゼブブに懇願するような顔となった。
「シャルバ! 助けておくれ! キミと一緒なら、赤龍帝を殺せる! 旧魔王と現魔王が力を合わせれば――」
ビッ!
シャルバの手から放出した光の一撃がディオドラの胸を容赦なく貫いた。
「クズが。おまえがいたところで何の足しにもならん」
嘲笑い、吐き捨てるようにシャルバは言う。
ディオドラは床に突っ伏すことなく、塵と化して霧散していった。あの消え方はまさか、光の力なのか?
いや、いまはそんなことより――、こいつはヤバイ……。
感じる圧力はあきらかにディオドラよりも強くて、魔力の質もドス黒い……。
――勝てるのか?
と、俺のそんな弱気な考えを霧散させるように、部長がシャルバのほうへ1歩足を進めた。
シャルバは部長を憎悪に満ちた瞳でにらむ。
「さて、サーゼクスの妹君。いきなりだが、貴公には死んでいただく。理由は当然。現魔王の血筋をすべて滅ぼすため」
冷淡な声だ。よほど現魔王に恨みがあんだな。
主張と家柄、そして魔王の座を取り上げられて、冥界の端に追いやられたそうだし、恨みは相当ももんだろう。
「グラシャラボラス、アスタロト、そして私たちグレモリーを殺すというのね」
部長の問いかけにシャルバは目を細める。
「その通りだ。不愉快極まりないのでね。私たち真なる血統が、貴公ら現魔王の血族に『旧』などといわれるのが耐えられないのだよ」
シャルバは嘆息した。
「今回の作戦はこれで終了。私たちの負けだ。まさか、ディオドラがまったく役目も果たせずにやられるとは思ってもみなかった。――いや、やはり現魔王などといわれているだけの存在だということか。まあ、今回は今後のテロの反省点としよう。クルゼレイもサーゼクスに殺されたようだが問題ない。――私がいればヴァーリがいなくても十分に我々は動ける。真のベルゼブブは偉大なのだから。さて、去り際のついでだ。――サーゼクスの妹よ死んでくれたまえ」
「直接現魔王に決闘も申し込まずにその血族から殺すなんて卑劣ね」
「それでいい。まずは現魔王の家族から殺す。絶望を与えなければ意味がない」
シャルバの言葉に、部長は紅いオーラを全身から迸らせた。
ものすごいオーラだ! シャルバも顔に緊張の色をみせた!
「ほう、なかなかの魔力だな。現魔王の妹ということだけはあるようだ」
「シャルバ・ベルゼブブ! 私たちがここであなたを滅してあげるわ!」
現魔王の血族グレモリー眷属VS旧魔王の血族シャルバとの一戦が幕を開けた。
◆
シャルバとの戦いの火蓋が切られてからすぐ、部長の指示が次々に飛んだ!
「アーシアは後方で回復! イッセーとギャスパーも後方でアーシアを守りながら神器や魔法で援護! さらに祐斗も後方で防御に徹して! 小猫は他に敵が潜んだりしていないか、転移してこないか仙術で索敵して、敵の転移を妨害できるなら妨害もお願いするわ!」
「「「「「はい」」」」」
指示された通りに配置に着く!
部長の指示がさらに飛ぶ!
「オフェンスは私、朱乃、ゼノヴィアよ! ゼノヴィアは近接で! 朱乃はゼノヴィアと連携して中距離から魔力を使用して攻撃! 新装備も使っていいわ! 私は2人が戦っている間に力を溜めるわ! 皆! シャルバを消し去るわよ!」
「「「「「はい!」」」」」
全員で改めて返事を返す! すげえ! 部長はもうシャルバを倒す作戦考えついたのか!?
陣形をとる俺たちにシャルバを全身から魔力を迸らせながらかまえを取って、狂気と憎悪孕んだ瞳で叫び声を上げた。
「偽者の魔王の妹の分際で、調子に乗るなぁぁあああああああああッ!」
――っ! なんてドス黒い魔力だよ!
全員が激戦となるだろうシャルバとの決戦を前に緊張しているなか、ゼノヴィアがゆっくりと前に、シャルバへ向って歩いていった。
お、おい、ゼノヴィア!?
「丁度いい。いままでの怒りを全てぶつけさせてもらうぞ、旧魔王の血族」
完全に眼が据わってる!? いや、それよりそんな相手を挑発するような物言いは――。
「私を旧などとよぶなぁぁああああああああっ!」
俺の予想していた通りに怒りで顔を歪めるシャルバ……。いつもと違うゼノヴィア。ぶち切れ寸前なんだね。
両手に持った真・リュウノアギトの龍殺しのオーラと聖剣デュランダルのオーラが増大してゼノヴィアの体を包み込む!
いまのゼノヴィアは色んな意味でものすごくヤバい……!
放れているのに龍殺しのオーラと聖剣のオーラで恐怖を感じる!
ビュオッ! ガキンッ!
――っ! ゼノヴィアの姿が掻き消えたかと思ったら、シャルバの正面に現れ、シャルバの
「――くっ!」
ブウンッ! と空を切るゼノヴィアの一撃! あの野郎あのタイミングで避け――。
バキッ!
シャルバの軽装に傷がついた!? 当たっていないのに!?
「な、なに!?」
シャルバからも驚きの声が漏れた。俺が混乱していると、隣でアーシアを守るような陣形をとっていた木場が疑問に答えるようにつぶやいた。
「剣圧――おそらくゼノヴィアは龍殺しのオーラと聖剣のオーラを、それぞれ剣に纏わせて斬撃に乗せて圧縮して、カマイタチのように飛ばして攻撃してるんだ」
そういえばディオドラのときも剣を振った先に突き抜けて攻撃が発されていたな。ゼノヴィアの攻撃に感嘆するように見つめる木場。
さらに朱乃さんの声が響く。
「私もいますわよ? お忘れなく」
「――っ!」
いつの間にか空中に無数に展開されている雷光の槍! シトリー戦でみせたという、手に持って雷光の槍として振るったり、空中に設置して相手を貫ける魔法だとは知っていたけど、ここまでの数をだせたのか!? 軽く100は超えてるぞ!?
「うふふっ、どこまで耐えられます?」
ドSな笑顔で微笑みながら朱乃さんが雷光の槍を射出し始める! さらに時間差で放たれる雷光の槍と連携するように、ゼノヴィアも切りかかった!
「この――、うぐっ!」
シャルバも切りかかってくるゼノヴィアに反撃しようとしていたが、朱乃さんの雷光の槍がそれを邪魔し、さらに動きを停めたところをゼノヴィアの剣が振るわれる!
朱乃さんとゼノヴィアの連携でシャルバがどんどん追い詰められていく!
ていうか俺たち後方に回った連中の仕事する必要がまったくない! ゼノヴィアの木場とは違う、俺に近い圧倒的な力による高速移動でシャルバの攻撃をかわして切りかかり、朱乃さんが雷光の槍を放ってシャルバの動きを邪魔をしたりと、シャルバの体力を確実に削っていく!
追い込まれていくシャルバに、さらに追い討ちをかけるように、我らの部長が動く! 紅いオーラを、身の丈近くある、弓に添えられた滅びの魔力を纏った矢に収束していく!
ものすごい魔力! 完全にシャルバを超えている!
そこに部長の指示が俺に飛んでくる。
「イッセー! 『
「はい!」
『Transfer!!』
最大強化した赤龍帝のオーラがさらに部長の力を高める!
「なんだこのオーラはッ! ――っ! 滅びの魔力とドラゴンの魔力だと!?」
最大級の危険を感じ取っただろうシャルバは表情を強張らせた。最初の余裕なども吹き飛び表情には死の恐怖をみせていた。
「ゼノヴィア、朱乃。小猫は補助を」
「「はい」」
部長の冷静な声でゼノヴィアが後方に跳び、朱乃さんが無数の雷光の槍で逃げ場を封じ、小猫ちゃんは両目を瞑って両手を広げ、耳と尻尾をピクピクと動かした。
小猫ちゃん、かわいいけどなにをやってるの?
かわいらしい小猫ちゃんを観察していると、シャルバが驚愕の表情を浮かべて叫んだ。
「なに!? 転移魔法が発動しないだと!?」
「仙術でこの空間での転移や転送を防がせてもらいました。もはや逃げ場はありません」
仙術ってそんなこともできたの!?
部長が冷淡な声でシャルバに告げる。
「あなたを生かしておけば再び障害になる。私の家族や現魔王の家族に手を出させないために、この場で消し飛んでもらうわ!」
部長の言葉にぶち切れるシャルバ。怨嗟の声を上げながら全身にオーラを纏わせていく。
「おのれおのれおのれおのれッ! 偽りの魔王の妹ごときが! あの憎たらしいヴァーリと同じ薄汚いドラゴンごときが! なぜ正統な血族である俺が――」
「あなたはやりすぎなのよ。――死になさい。シャルバ・ベルゼブブ」
部長の弓から矢が放たれる!
ズギュウウウウウウウウウウウッッ!
矢が螺旋を描きながら空気を、空間を切り裂きながら一直線にシャルバへ向って飛んでいく!
怒りと憎悪に周りが見えていないシャルバは矢から逃げずに正面から対抗してきた!
「がががががぁあああああっ!」
シャルバは両手を突き出し、幾重にも障壁を張って矢を受け止めようとする。
だが、滅びの魔力とドラゴンのオーラが一点に収束された矢を止めることは叶わない。
シャルバの障壁を次々に突き破って、どんどんシャルバへと迫っていく!
「クソッ! クソッ! こんなはずでは! こんなはずではなかったのに、何故――」
ドォォォオオオオオオオオオンッッ!
シャルバは最後まで憎悪と怒りをあらわにしたまま、部長の矢の一撃によって神殿ごと滅ぼされた。
あははは……、俺らの部長はすげえな……。
シャルバ完全退場……。リアスが容赦ない。まあ、実際力があれば、危険人物のシャルバを殺せるときに殺すよな。襲われてるんだし。
朱乃さんの新装備……orz