※この作品はR-18です。

ハイスクールD×D 世界を渡る転生者   作:上平 英

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第66話 戦後処理と暗躍する影

<イッセー>

 

 

「よ、匙」

 

 俺は戦場の中心で大の字になって気絶している友人を起こしていた。

 

 すでに黒いドラゴンから、元の姿に戻っていた。

 

「んあ、兵藤か……。戦いは?」

 

 意識は戻ったようだが、体は動かないようだ。俺はアーシアを呼び寄せて、回復をするように促した。

 

 上半身だけ起こす匙に俺は言う。

 

「終わったよ。いろいろ……本当にいろいろあったが、俺たちの勝ちだ」

 

 俺の言葉に匙は苦笑した。

 

「……そうか。俺、意識がほとんど無くてさ……。でも、おまえの声は聞えた。うれしかったよ。身を焼かれそうな辛いところに声が聞えてきてさ。心強かった」

 

「ハハハハ、任せろよ。しかし、あんな風に暴れてちゃな」

 

「マジか。俺、暴れてた?」

 

「ああ、バッチリな。でもおかげでロキに大ダメージを与えられたよ。すっげー良いサポートだったぜ」

 

 それを聞いて、匙は安堵した様子だった。

 

「……ならいいや。でもよ」

 

 匙は戦いのあとを見渡した。採掘場跡地はボロボロ。大きなクレーターが何個もできていてもとの姿は無かった。本当、戦争の跡地だよな。

 

 他のメンバーは勝利に歓喜していた。皆ほとんど怪我も負わなかったしな。

 

 ヴァーリチームはあれから姿を見せない。おそらく生きているだろうがここには戻ってこないだろう。

 

 ボロボロのロキは捕らえられたあと、セルベリアさんとロスヴァイセさんに北欧の魔術でいろいろと術封じをかけられていた。

 

 ミョルニルってハンマー、レプリカなのにすげー威力だったな。俺が倍加しなくてもあの威力だったし。

 

「おまえ、こんな戦いを何度もしてたんだな。神とか魔王とか、二天龍とかさ」

 

 匙が感心したように言うが、

 

「だけど俺ってまともに活躍したことねえんだよなぁ……。確かに俺のところは毎回事件が起きるけど、ほとんど部長やエイジたちが対処するからまともに活躍したのって数回ぐらいなんだよ」

 

「そうなのか?」

 

 意外そうに訊いてくる匙にうなずく。

 

「ああ、今回のだってほとんど俺は活躍できなかったよ。2天龍が出張るまでもなく、部長や黒歌さんたちが活躍してフェンリル倒すし、ロキは朱乃さんが倒してくれたし」

 

「ひ、姫島先輩がロキを倒したのか!?」

 

「まあ、驚くのもわかるけど。あれは――すごかったな……。元から大ダメージを負って弱っていたといっても神なのに、朱乃さんが一方的にロキをいたぶって……最後はミョルニルで、な」

 

「…………す、すまん兵藤……。俺はまだ話しについていけないみたいだ……」

 

「あははは、俺だってついていけないから安心しろ」

 

 本当についていけていないからな。

 

「治りました!」

 

 アーシアが微笑む。匙が治ったようだ。

 

「アーシア、他の人も見てやってくれ。俺はほとんど怪我もしてないし回復はいいから」

 

「はい、わかりました」

 

 俺の言葉にアーシアは仲間のもとへ駆け寄っていく。

 

 そのとき、バラキエルさんが朱乃さんに話しかけているところを発見した。

 

「本当に成長したんだな……」

 

 バラキエルさんはなにやら感傷に浸っているようだ。対する朱乃さんはつんっとした態度で腕を組んでつぶやく。

 

「かなりの修行を積みましたので当たり前です。……それよりも私はまだあなたを許したわけじゃないんですからね!」

 

「…………ああ、わかってる……」

 

 う~ん……、やっぱり前みたいな険悪な雰囲気じゃないよなぁ。部長もやれやれって感じで肩をすくませてるし……。

 

 そのあとバラキエルさんはすぐに後方支援として他の場所で待機している味方のもとへ転移魔法陣で先に送った。

 

「よし、兵藤一誠まだ動けるな? 戦後の処理だ。この土地を直すぞ」

 

 俺はタンニーンのおっさんの言葉に、大きくうなずいた。

 

「ああ! 何もできなかった分、戦後処理ぐらいさせてもらうぜ!」

 

「良い心がけだ。では、とりかかるか」

 

 俺はさっさく戦後処理に取り掛かる!

 

 ……ああ、それにしても今回は何もできなかったなぁ。

 

 ほとんど部長や朱乃さんが活躍していたし……、赤龍帝の力だけに頼るのはダメなのかな?

 

 それともアザゼル先生が言うように神器を理解して禁手を進化させたほうがいいのか……匙の黒い龍を見て神器にはまだまだ可能性が残されてることが十分理解できたけど、これからどうやって鍛えていけばいいんだろ?

 

 ……死ぬのを覚悟してエイジを頼って修行をつけてもらう?

 

 …………ダメだ……。ライバルに頭を下げて、ライバルを倒すために修行つけてもらうなんて嫌だ……。

 

 かなりの確立で死ぬことになりそうだし、そもそもエイジは神器持ってないしな。

 

 ……ん? エイジ? …………。

 

「ああああああ~~っ!」

 

「ど、どうした兵藤一誠?」

 

 突然声をあげる俺に同じく戦後処理をしていたタンニーンのおっさんが聞き返してきた。

 

 俺は頭を抱えながら地面にヒザをつく。

 

「せっかく活躍するって言ってきたのに、実際はほとんど活躍できてなぇじゃん!」

 

 俺が今回したことってなんだ!? え~……と、一番初めにロキと戦ったぐらいか? まあ、相手にもされずに終わったけど。

 

 あとヴァーリを助けようとして親フェンリルに反撃食らってフェニックスの涙を消費して、朱乃さんに止め用としてミョルニル渡しただけじゃねぇかぁぁぁっ!

 

「まあ、それは仕方がないだろう。ロキの想像も超えてリアス・グレモリーや姫島朱乃を始めとして強者が大勢いたのだ。それに元々、多対一の戦闘では明確に誰かが活躍したといえるものでもないからな」

 

「だ、だけど……」

 

 エイジに俺が守るって言ったのに、逆に俺が守られるなんて……。

 

「まあ、それだったら次回こういうことが起きたときに活躍できるように修行したらどうだ?」

 

 落ち込む俺にタンニーンのおっさんが声をかけてきてくれる。

 

「くっ……、ありがとう、おっさん。少し元気がでたよ」

 

「そうか。だったら作業に戻れ。朝までには終わらせるぞ」

 

「…………」

 

 その後、俺はヴァーリのが空けた穴なんかを埋めるため、朝方近くまで作業をしていたんだ。

 

 クソ! ヴァーリのバカ野朗ォォォォォォッ! おまえも手伝ってから帰れよォォォォォッ! いったいどこ行きやがった!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Vali Lucifer>

 

 

「久しぶりの『覇龍』は堪えた。できれば使用の回数を控えたいところだ。このままでは俺が保たないだろう。――で、そちらはどうだ、アーサー」

 

「支配を司るこのエクスカリバーの力でなんとかできそうですよ。――フェンリルを。制限付きなのでフェンリルの力はだいぶ下がってしまいますが……。しがし、牙が目的でロキとの戦闘の最中にフェンリルを奪おうとして、無事成功したのはよかったですが、結果3匹も捕まえることになるとは……」

 

「……それは俺も想定外だった。まあ、親子3匹のフェンリルは使えるだろう。増えても困ることはない」

 

「まったく物好きですね」

 

「ヴァーリ、曹操から連絡がきたぜぃ」

 

「美猴、奴はなんと言ってきた?」

 

「要約すると『こちらは独自に動く。邪魔だけはするな』だそうだぜぃ」

 

「曹操、お互い何もないことを祈ろうじゃないか。かかってくるのであれば遠慮なしだ」

 

「しっかし、リアス・グレモリーは怖ろしいねぇ。眷属もバケモノぞろいだが、それをまとめる本人も単なる上級悪魔の枠を超えてるぜぃ。駒王学園で初めて会ったときは全然強そうじゃなかったのによぉ」

 

「まったくだな。この短期間で急成長を遂げていた。リアス・グレモリー、ゼノヴィア、姫島朱乃、それにまだ発展途上だろう搭上小猫の4人は要注意だな。……それを鍛えた神城エイジももちろん」

 

「それにしても姫島朱乃さんが持っていた武器も素晴らしかった。私も機会があれば専用の武器を製作してほしいものです」

 

「あの武器って黒い捕食者が創った武器だったのかよぉ。あいつの眷属といい、どれだけの戦力をもってんだ?」

 

「ふふふ、俺がいつか神城エイジに本気をださせるさ」

 

「そういや、なんで親フェンリルに『覇龍』を使ったんだ? あの爆乳の一撃で胴体に穴開いてたんだし、『覇龍』使わなくても勝てただろぉ?」

 

「ああ、そのことか。……まあ、確かに勝てただろうが、赤龍帝である兵藤一誠に『覇龍』がどういうものか見ていて欲しかった……からなのかもしれないな」

 

「なんだそりゃあ?」

 

「自分でもよくわからないんだ。もしかしたら何もできない自分が許せずに『覇龍』を使ったのかもしれない」

 

「本当によくわからねぇなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Boss×Boss>

 

 

『通信報告で悪いが、今回も身内が助けられたようだ。アザゼル』

 

「まあな。今回こそは危ないと思ったが、思いのほかおまえの妹とその眷属が強くて助かったよ」

 

『ああ、聞いているよ。シャルバを倒したことは聞いていたが、まさか悪神ロキを倒せるまで力をつけているなんてね。うちのリーアたんは本当に成長した』

 

「感傷にふけるのはいいが、サーゼクス。例の件を言わなくていいのか?」

 

『昇格の話があるという件か?』

 

「まえから昇格の話がでていた神城はもちろん、朱乃にゼノヴィア、イッセーに木場がその話が浮上しているんだろう?」

 

『うむ。コカビエル襲来、三大勢力会談テロ、旧魔王派のテロ、これらをリアスたちは防いでいる。昇格の功績としては十分だろう。さらに今回のロキ襲撃を防いだ件も大きな功績だ。5名の昇格は確実といっていいだろうが……』

 

「なんだ? 何か問題でもあるのか? 成績には問題ないと俺は思うがな。神城は当然として、朱乃はバラキエルの娘で、弱っているところで戦ったとはいえ、悪神ロキを倒しているし、ゼノヴィアの飛びぬけた戦闘能力を有し、イッセーは赤龍帝で人気者。木場は特異な聖魔剣を持っている。さすがにメンツを下級悪魔という枠に入れたままはできないだろう」

 

『……ああ、まったくその通りだ。……その通りなのだが……』

 

「早すぎるか?」

 

『ああ、それもある。特にイッセーくんなど半年前まではただの人間だったのだ。昇格すれば話題となり、敵の的となって狙われる。彼は赤龍帝という名も背負っているからな。正直こちらとしては力を付ける意味でももう5年、いや、3年は待ちたいところなのだが、世論と流行が彼らを強く後押ししているのだよ』

 

「ハハハハ、魔王は大変だな。で、おまえの心情としては?」

 

『……イッセーくんと祐斗くんにはまだ昇格して欲しくないね。力もまだ付いていないし、精神面などで不安もあるから』

 

「そういや木場は精神病院に入院してたな」

 

『私もまさか彼が精神を病ませて入院するとは思いもしなかったよ。普段の彼はいつも冷静沈着で何事にも余裕を持っていたからね。彼の師匠も驚いていたよ。まあ、だから彼にはまだ昇格は早いと思うんだ』

 

「まあ、そうだな。正統派すぎて絡め手に弱そうだし。だけど、戦闘面では合格なんだよな」

 

『まあね』

 

「だったら、イッセーは何で昇格して欲しくねぇんだ? 精神面は不安定だが、それが良い意味に働いて強くなったりするし、禁手といい問題はないだろ」

 

『私もそれはわかっている。だが、私の心情としては彼にまだ「おっぱいドラゴン」でいてほしいのだ』

 

「ま、そうだな。もう少し様子見するのも必要だろう。――ああ、そういや結局神城の奴は上級悪魔に昇格するか、最上級悪魔に昇格するか決まったのか?」

 

『……一応いままでの功績や悪魔としての成績や実力なども考慮して最上級悪魔の昇格試験を受けさせることになったんだが……』

 

「なんだ?」

 

『ウチのリーアたんまで最上級悪魔の昇格の話が出たんだ……』

 

「なっ!? ……あ、まあ、それも当然か。てか、昇格の話で暗い声出してたのもそれが理由かよ」

 

『まさかウチのリーアたんにまで最上級悪魔への昇格の話がくるなんて……。確かにシャルバを倒したのはリーアたんで、眷属も魔王クラスのエイジを始め、赤龍帝や聖魔剣などと上級悪魔に昇格予定のメンバーで、実は小猫まで昇格の話が浮上したりと、眷属全員が上級悪魔以上なんてものすごい眷属だし、その眷属をまとめる『王』なんだから最上級悪魔になるための試験を受ける資格は、昇格する資格は十分あると思うが! まだ早い……、まだ早いんだ! まだリーアたんは二十歳にもなっていないんだよ!? リーアたんに最上級悪魔という肩書きは重いと思うんだ……』

 

「……はぁ、しかたねぇんじゃねぇか? 眷属に最上級悪魔や上級悪魔がいたらトップはそれと同等かそれ以上じゃないと示しもつかねぇだろ」

 

『それは私も理解しているよ。だけど、私のリーアたんが遠くへ行ってしまうような気がしてならないんだ……』

 

「……あー……、まあ、おまえがすごいシスコンなことはわかったから、英雄派についての話に移ろうぜ。このあともいろいろ忙しいし」

 

『そうだったな。すまない。――それで、何かわかったのか?』

 

「生きて捕らえて俺のもとで調査していた神器所有者が――変死したよ」

 

『――っ。全員か?』

 

「ああ。原因はオーフィスの蛇だ」

 

『やはり飲んでいたのか』

 

「いや、違う。所有者自信は飲んでいなかった。――神器に絡めせるタイプの新しい蛇だった。その新型蛇を使って神器を激しく刺激していたみたいだ。おそらく、所有者ではなく、神器自体の潜在能力を強制的にひき出していたんだろう。しかも神器の攻撃力ではなく、禁手に関連する謎が多く不確定要素も多い部分を刺激するように仕掛けられていたようだ。1番繊細で危険なところだ。下手をすれば神器が壊れる。強力な術のオンパレードで実験してやがるな。新型蛇の残りカスを調べたが、所有者が死ぬか、禁手に至ると役目を終えて停止するように作られていた。禁手使いの増加なんて、諸々含め俺たちが現状やろうと思っても真似できない芸当だ」

 

『……それらが禁手使いを増やす手段か。神器がバーストして壊れると所有者は死ぬ。どちらにしても禁手に至らなければ死んでもいいという算段か』

 

「禁手使いのバーゲンセールも怖いが、1番警戒すべきは――俺たちが知らない新たな神滅具が誕生することだ」

 

『……荒れそうだ。神器の対策か。考えてみれば、敵に回して1番厄介なのは特異な能力の多い神器かもしれない』

 

「単純なパワータイプなら問題は解決しやすいんだがな。パワータイプを容易に封殺できる能力が多いのが痛い。神器はおもしろいが、だからこそ怖いんだ」

 

『――神の置き土産、か。いままで私たちを陰で支え、特殊能力のひとつに過ぎなかったものがこうして我らの前に立ちふさがろうとするとは……』

 

「まっ、神城が創りだすアイテムや異空間の倉庫に入ってるアイテムもかなり危険な代物ばかりなんだけどな」

 

『そのことについても報告は聞いているよ。確かに危険視すべきことだが……まあ、彼が創りだすアイテムは基本女性専用のもので、その女性専用の特別仕様だからね。悪用される心配はほぼないし、異空間に存在する数々のアイテムも彼はまったく使用しないで、文字通り本当の便利な倉庫と使用しているようだからね。彼が本気で世界を滅ぼそうと思わない限り大丈夫だろう』

 

「まあ、正直言うと、あいつとあいつの女共に手が世界を滅ぼそうとしたら誰も止めれないってことなんだろ」

 

『……その通りだ。悪魔や堕天使、天使に連なる3大勢力の他に、アース神族のヴァルキリーやダークエルフ、日本の妖怪からヴァンパイヤと、他にも彼を慕っている者は多いんだ。もしウチのリーアたんが彼を転生悪魔にして悪魔側につかせなかったら、4つ目の大勢力になっていただろうね』

 

「ハハハハ、まったくだな。俺のところにもあいつを支持する堕天使が多くいるぜ。あいつがどこの勢力にもつかずに新しい勢力でもつくるものなら女たちをほとんど持っていかれてた」

 

『まさに捕食者だね。彼は』

 

「まったくだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<エイジ>

 

 

「あー、もうすぐ修学旅行だ」

 

 オカルト研究部の部室でイッセーが見事にだらけていた。ロキとの戦いも終えて、もうすぐ行く予定の修学旅行に夢中のようだ。

 

 ロキの襲撃を食い止め……、俺は後方支援部隊で人手も足りていてほとんど何もしなかったな。

 

 まあ、無事に会談を終えたオーディンは、良い収穫を得たとミョルニルのレプリカを持って帰っていった。

 

 ヴァーリは戦いの最中にフェンリルを3匹も奪ってどこかに消えたという話だ。かなり大きな問題にはなったそうだが、製作者のロキを捕らえたことでフェンリルに関する事柄が明らかにされるだろうから新たに対抗策が生まれるだろうと話していた。

 

 リアスたちの話を訊く限りではヴァーリは最初からフェンリルが目的だったらしい。あんな獣もらってどうするって、まあ、牙や爪が目的なんだろうな。良い武器の素材にもなるし、仲間にできれば力強いだろうから。

 

 まっ、何か危害を加えるなら滅ぼすまでだよな。

 

 アザゼルは今日ここにいない。

 

 役目を終えて帰還するバラキエルの見送りに行くそうだ。まあ、すぐに朱璃さんを受け入れる準備をしたら引き取りに戻ってくる予定だから、アザゼルと朱璃さんだけがいまは見送りに行っている。

 

「イッセーさん、ここのところ忙しかったですから、次こそは旅行のお買い物に行かなくてはダメですね」

 

 アーシアが修学旅行のしおりを見ながら誘いをかけていた。

 

 俺もソファに座ってしおりを開く。そういや行き先は京都だったな。八坂の屋敷にでもあいさつに行くか。

 

「エイジ、修学旅行にはどんな下着を着けていけばいいだろう? 女性誌には流行の下着を着けていくといいと書いてあったが、黒歌さんとセルベリアさんは大胆な下着がいいと言ったんだ」

 

 ゼノヴィアがしおりを拡げながら言ってきた。ゼノヴィアの言葉が聞えたのかアーシアが顔を真っ赤にしていた。イッセーも話が気になるようで、わかりやすいスケベな顔をして聞き耳を立てていた。

 

「りゅ、流行の下着に、だ、大胆な下着ですか……?」

 

「うん。皆で入る風呂ではまず下着から見事に着こなせていないとあとで笑われるそうだぞ。私もいままでそんなこと気にもしなかったが、最近は気を使っていてな。きちんと相手の好みの情報から自分に合う下着を調べたりしているんだ。わからないのであれば一緒に買い物に行こうか?」

 

「お、お願いします!」

 

 アーシアがバッと頭を下げた。ゼノたん……、本当に女の子らしくなったね。でも、穴あきショーツとかはまだアーシアや小猫ちゃんには早いから、教えないでね。 

 

「白が一番よ! それこそ主とミカエルさまが『良し!』と唸ってくださる下着本来の姿だと思うの!」

 

 イリナがハイテンションに言う。実際にミカエルが白パン見て『良し!』と唸ったら大事件だぞ。

 

「イリナ、白の下着にもいろいろな種類があるんだぞ。その辺も考慮しないと困るのはイリナ自身だぞ」

 

「そ、それは……、そうね。私も年頃の女の子なんだし周りがオシャレしているのにしないのはダメよね」

 

「わかってくれたか。じゃあ、今度の休みに修学旅行用の下着を買いに行こう」

 

「……ええ、同行させてもらうわ」

 

 どうやら教会トリオは修学旅行用に下着を買いに行くそうだ。……う~ん、でも信仰に厚くて俗世NGだったイリナも結構変わったな。神の不在も関係するだろうけど、最近お兄ちゃんと慕う以上の親愛といった感情を感じるんだよなぁ。よくゼノヴィアに勧められて女性誌も読み始めたりしてるし……。

 

 どこかでフラグ立てたか? 心当たりは、まあ、あるけど。コカビエルの件で看病したり、家に住むようになってから修行あとにマッサージしたり、慰めたりと……。でも、手を出したら堕天しそうだから困りものだよなぁ。

 

 もしものときように堕天せず自由にデートしたり、性行為できる空間や簡易結界でも創るかな? 天界のシステムがまともに機動していないいまなら割と簡単そうだし。

 

 ああ、そういや木場のことを忘れていたな。あいつって確かまだ精神病院に入院してるんだっけ。あと2、3日で退院してそのままイッセーの家に下宿するらしいな。それにギャスパーも下宿しないとかするとか。兵藤家の男率が上がってきたな。これが学園に知れ渡ったらイッセー×木場とか+ギャスパーとか腐な女子とか、いろんな妄想の糧になるんだろうな。

 

「もう、終わりだわ!」

 

 悲鳴をあげる女性の声。部室の中央からだ。

 

 見れば銀髪の女性――ロスヴァイセさんが号泣していた。

 

「うぅぅぅぅっ! 酷い! オーディンさまったら、酷い! 私を置いていくなんて!」

 

 オーディンに置いていかれたそうだ。あー、でも、オーディンが帰るときにセルベリアに何か話していたから理由はあるんだろうな。まだ知らされていないようだけど。

 

「リストラ! これ、リストラですよね! 私、あんなにオーディンさまのためにがんばったのに日本に置いていかれるなんて! どうせ、私は仕事がデキない女よ! 処女よ! 彼氏いない歴=年齢ですよ!」

 

 もう、やけっぱちになっているな。

 

「もう、泣かないでロスヴァイセ。この学園で働けるようにしておいたから」

 

 リアスがロスヴァイセの肩に手を置く。

 

「……グスン。ほ、本当に?」

 

「ええ。希望通り、女性教諭ってことでいいのよね? 女子生徒ではなくて?」

 

「もちろんです……。私、これでも飛び級で祖国の学び舎を卒業しているもの。歳は若いけれど、教員として教えられます」

 

 そういえば北欧のヴァルキリーのなかでも成績優秀の期待の新人だったっけ、ロスヴァイセさんって。

 

「けど、私、この国でやっていけるのかしら……? かといって国に戻っても『どのツラ下げてオーディンさまのあとから帰還したのか?』って怒られるでしょうし、あげくの果てに左遷されそうだし……っ! うぅ……せっかく安定した生活が遅れそうな職に就けたのに!」

 

 相当落ち込んでいるな。護衛するべき主神がボディガード残して先に帰還してたら、どのツラ下げてってことになるよな。普通なら。

 

 俺がそんなことを考えていると、部室にある転移用の魔法陣が光り輝いた。

 

「セルベリアさん!?」

 

 転移用の魔法陣から出てきたセルベリアにロスヴァイセが驚く。

 

「ここにいたか。ロスヴァイセ」

 

「は、はい!」

 

 ロスヴァイセさんはビシッと敬礼せんばかりに姿勢を正して返事する。そういえばヴァルキリーって戦乙女ゆえに上下関係というか階級などに厳しかったな。

 

「これからおまえはオーディンさまの護衛任から解かれ、我が主で勇者もある神城エイジさまの下でヴァルキリー見習いとして働くことになったのは知っているな」

 

「……………へ?」

 

 ロスヴァイセはまったく身に覚えがありませんと間抜けな声を漏らす。「知っていたんですか?」と、俺にロスヴァイセさんを始めとして周りのメンバーも視線を送ってくるが、俺は知らない。何か話していたのは知っているが、内容は知らないから首を横に振る。

 

 部室の様子を見てセルベリアは小さなため息を漏らし、再び説明を始めた。

 

「詳しい経緯などは省くが、今回のロキ襲来でロスヴァイセはまだまだ弱く、オーディンさまのボディガードには実力ということが証明されたのでな。これからの成長具合も考慮してエイジさまの、もとい私の下において再び戦乙女見習いとして修行を積んでもらうことになったのだ」

 

「へ!? そ、そんなことオーディンさまは一言も……」

 

「まあ、あえて言わなかったか、嫌がらせか悪戯の両方だろうな。きちんと書状も発行されているから安心しろ」

 

「そ、そうだったんですか……」

 

 こちらの預かりとなると書状があるので、オーディンよりあとに帰ってもそこまで問題にならずに、本国に帰ることができると喜んでいるのだろう。安心したような表情が見て取れた。……見て取れたのだが……。

 

「ちなみにオーディンさまのボディガードを解任されたことは事実で、修行のために残るわけなので給与や手当てはでないそうだ。……いよいよヴァルキリーの財政が厳しくなってきたようだな」

 

「なっ!? ただ働きなんですか!?」

 

 そ、それはいくらなんでも酷いぞ……。

 

 セルベリアも困ったような表情で言う。

 

「まあ、おまえが見習いから再び一人前のヴァルキリーとして認められたら本国から給与や手当てもでるだろうし、そのまま本国からエイジさまのヴァルキリーと就職すれば……うむ、一生金に苦労しないだろうが……」

 

 まあ、夏休みに黒歌たちが高ランクはぐれ悪魔を狩ってくれていたし、【王の財宝】にも貴金属や金塊や宝石などといった本当の財宝もあるからな。金には困らないだろうね。

 

「そ、それは本当ですか!?」

 

「ああ」

 

「不束者ですがこれからよろしくお願いします!」

 

 ロスヴァイセさんが俺の元へ来て頭を下げた。うん。ものすごい変わり身。不束者ですがって日本で覚えたの? たぶんオーディンやアザゼルだな

 

「ああっ、まさかもう再就職先も決まるなんて! しかもオーディンさまのようなセクハラ爺さんではなく、歴代の勇者のなかでも飛びぬけた実力と人気を誇る方に仕えられるなんて! うふふふっ、これって実は勝ち組路線に乗ったんじゃないですか!?」

 

 今度は随分とハイテンションで上機嫌だね。

 

 だけど、再び待ったがかかる。

 

「残念だがその勝ち組路線は見習いを卒業してからだぞ」

 

「な、んですって……?」

 

「まずは再び正式な戦乙女になってからだ」

 

「……ああ、そうだった。私、見習いに戻されたんだった。……アハハ、また収入0に……」

 

 崩れ落ちるロスヴァイセに待ってましたとリアスが動いた。

 

「それなら見習いを卒業するまで私のところでアルバイトしない?」

 

「アルバイトですか?」

 

「ええ、さっきの教諭の話よ。修行は夜からでしょうから問題ないでしょ?」

 

「……そうですね。私も昼間はいろいろと忙しいですし」

 

 そういえば料理教室と編み物教室に通い始めたんだよね。家事ができるレイナーレとゼノヴィアが読んでる女性誌に影響されて。

 

「で、でもセルベリアさんの修行は相当厳しいものになるでしょうから、教師との両立は――」

 

 躊躇うロスヴァイセにリアスは書類を取り出して見せた。

 

「ちなみに教諭になって、私の眷属になると、こんな特典やあんな特典が付くのよ?」

 

 書類に目を通したロスヴァイセさんが驚愕の表情になっていた。

 

「ウソ! 保険金がこんなに……。こっちのは掛け捨てじゃない!」

 

「そうなの。さらにそんなサービスもこのようなシステムもお得だとは思わない? これでもアルバイトなのよ?」

 

「すごいです! アルバイトなのにこんなに手厚いだなんて! あ、悪魔ってこんなに貰えるんですか……っ! 基本賃金から違うわ! ヴァルハラと比べても好条件ばかりです!」

 

 ――本格的な戦乙女の買収にはいった!

 

 リ、リアス、すっかり保険屋のお姉さんになっているような……。まあ、悪魔ってのはそもそも欲を持った者への交渉を生業としているから、仕方がないか。

 

「まだまだあるわよ。私の眷属になるならこういうのも得られるわ」

 

「……グ、グレモリーといえば、魔王輩出の名門で、グレモリー領の特産品は好評で売り上げもとても良いと聞いています。で、でも私は神城さまの見習いヴァルキリーになってセルベリア先輩の下で修行をしないと――」

 

「あなたが仕えることになるエイジは悪魔だし、いまはアース親族とも協力体制にあるんだから、別にあなたが悪魔化しても別に問題ないでしょう? それにエイジも私の眷属悪魔扱いなんだから。まあ、簡単にいうと上司の上司にあたる立場かしら? その関係図であなたが私、エイジ、あなたの順で並べば大丈夫でしょ」

 

「ううっ、そ、そう言われると大丈夫のような……」

 

 もう一押しだな……。

 

「あとあなたの住む家もきちんと手配するわよ。8畳以上の個室で部屋のなかにもトイレ、バス付きのうえ、万能メイドのサポートも付いてきて家賃も格安。衣食住がほぼ満たせてお金にも余裕ができるわよ」

 

 勧誘を続けるリアスが止めとばかりにポケットから、紅い駒を取り出した。それにしてもリアスが提示した物件に心当たりがあるのだが?

 

「――そんなわけで、私の眷属にならない? あなたのその魔術、『騎士』としての特性を得ることで魔術の移動砲台要員になれると思うの。ただ駒の消費がひとつで済めばいいのだけれど」

 

 皆、リアスの申し出に驚いていた。まあ、最後の駒だし仕方ないよな。

 

 有望株で魔術を使える戦乙女は確保しておきたいだろう。ちょうど移動型の魔術使いがいなかったし。朱乃は武器を使えば中距離で、雷光の槍で遠距離からの高火力の固定砲台として戦ってもらったほうがいいからな。

 

「……どこか運命を感じます。私の勝手な空想ですけど、それでも冥界の病院であなたたちに出会ったときから、こうなるのが決まっていたのかもしれませんね」

 

 ロスヴァイセさんは紅い『悪魔の駒』を受け取った。その瞬間、まばゆい紅い閃光が室内を覆い――ロスヴァイセさんの背中に悪魔の翼が生えていた。

 

 ……あれ? 眷属化が『兵士』の駒3つ分の消費で済んだのか? 正直戦乙女で魔術に長けているから『戦車』でギリギリだと思っていたんだけど……。ん~、リアスが成長したことで駒の消費が減ったのかな? 『王』が強ければ眷属化に使用する駒の消費が減るそうだし。

 

 銀髪の元ヴァルキリー――ロスヴァイセさんが俺たちに一礼する。

 

「皆さん、悪魔に転生しました、見習いヴァルキリーのロスヴァイセです。何やら、冥界の年金や健康保険が祖国よりもとても魅力的で、グレモリーさんの提示してくださったアルバイトの条件もよく、将来的に一人前のヴァルキリーとしての定職先の安心度もかなり高いので、悪魔になってみました。どうぞ、これからよろしくお願い致します」

 

 若干、洗脳されたかのような表情になってるな……。

 

「というわけで、皆、私――リアス・グレモリーの最後の『騎士』は彼女、ロスヴァイセとなりました」

 

 リアスが笑顔で改めてそう紹介していた。

 

「ま、いいんじゃないか。私も破れかぶれだったしな」

 

 と、ゼノヴィアが茶を飲みながら言う。まあ、ゼノたんも最初は神の不在を知ったショックで悪魔になったからな。

 

『よろしくお願いします!』

 

 皆もロスヴァイセさんを快く迎え入れていた、が……、将来的にセルベリアと共に俺の戦乙女となるのだろうか? いや、美人だし器量もいいし、性格も真面目そうで拒否する理由もないけど、勇者の戦乙女に就職って、普通の就職じゃない永久就職だぞ? だからもう少し考えて欲しいような気もしないではないが、まあ、見習い扱いだからいまはいいか。

 

「ああっ! これでオーディンさまのセクハラに悩まされずに済む! しかも見習いに戻されたといってもお給料はいままでよりも多そうだし、手当ても充実! 見習いを卒業したあと、戦乙女としての就職先もいま一番人気の勇者さまですからね! 一気に勝ち組路線に入っちゃいましたよ!」

 

 満面の笑みを浮かべるロスヴァイセさん……、俺はあなたの将来を結構真面目に心配して悩んでいたんですけど、必要なかったみたいですね……。

 

 でも、これで眷属は全部埋まったな。

 

 リアス、朱乃さん、木場、アーシア、ゼノヴィア、小猫ちゃん、ギャスパー、ロスヴァイセさん、イッセー、俺。10人全部そろった。

 

 集団戦用にフォーメーションとか考えたほうがよさそうだな。あ、イッセーの考えたギャスパー、木場、イッセーのふざけたフォーメーションじゃない、エロくないやつな。

 

 そんな風に考えていると俺へ朱乃さんが弁当箱を差しだしてきた。

 

「エイジ、これ、食べてみてくれる?」

 

 肉じゃが? これって確か……。俺は【王の財宝】から箸を召喚して肉じゃがを食べる。

 

 ちょうどいい塩梅の味が口のなかに広がる。

 

「……うん、美味しいです。……家庭の味ってやつですね」

 

 ああ、本当に美味い! やさしい味付けで箸が止まらない! いつものレイナーレのご飯も美味しいんだけど、これは懐かしい感じがして美味しい!

 

 俺が食べる横で朱乃さんがうれしそうに微笑んでいた。

 

「良かった。エイジに喜んでもらって。――っと、口に」

 

 ん? 食べ方は魔王2人とそのメイドに厳しく躾けられたから綺麗なはずだけど。確認するように口元に手を伸ばそうとすると、朱乃さんの顔が近づいてきた――。

 

 ……え? この場でキス? え?

 

 ちゅっ。

 

 戸惑っている間に朱乃さんの唇が口元に触れた。

 

 ぺろっ。

 

 唇が離れる瞬間に舌で口元を舐められる。

 

「ああああああああああああああああああああぁぁぁぁっ!」

 

 イッセーが旧校舎を揺らさんばかりに絶叫する。あ、え……、ここでするの?

 

「うふふ。大好きですわ、エイジ」

 

 うしろにまわって首に腕を絡めてくる朱乃さん。顔は見えないけど笑顔であることを感じ取れた。

 

「クソぉぉぉぉっ! うらやましいぃぃぃぃっ!」

 

 とりあえず血涙流しながら叫ぶイッセーは無視して……。

 

「朱乃……、部室では自重しなさい」

 

「ふむ、見せ付けられるのはなんだか悔しいな。私もしようかな」

 

 と、リアスが少し不機嫌になりながら注意し、ゼノヴィアは朱乃さんに便乗しようと身を乗り出してきた。

 

「あ、朱乃さん、すごく大胆です……」

 

「わ、私もあ、甘え……、で、でも堕天しちゃうかもしれない……。ああっ、どうすればいいんでしょうかミカエルさまぁぁぁ……」

 

 アーシアは顔を赤らめ、イリナは自分の世界に入っていた。

 

「さすがはエイジさま。あ、それでは私は用事があるので帰らせていただきます」

 

 セルベリアは感心するようにうなずいたあと、何かを思い出したように転移用の魔法陣を使って部室から消えた。用事って習い事だろ……。

 

 小猫ちゃんは……、

 

「…………」

 

 顔を真っ赤にしてこちらの様子をうかがっていた。な、なんだろ? 少し前までは他の女の子とイチャついたら不機嫌になるか逆に擦り寄ってきていたのに、最近はビクビクしてる。たまに朝布団のなかに潜り込んできて抱き枕にするのは変わらないけど、こちらから抱きつくとビクッと体を震わせて湯気が出るかと思わんばかりに顔を赤らめるんだよなぁ。それにしては逃げないし、襲われ待ちのように思ってしまう……。

 

 いまも小猫ちゃんの視線が股間辺りにいったりしてるし、黒歌ともこそこそ何かをしているようだし……。

 

「おおおおおおおおおおおおおおっ! 俺もモテてぇぇぇっ! モテてぇんだよぉぉぉぉっ! 何でエイジばっかりモテやがるんだぁぁぁぁっ!」

 

「い、いいい、イッセー先輩! お、おおお落ち着いてください!」

 

「ギャスパーぁぁぁぁっ! クソぉっ! 何でおまえは男なのに……男なのにかわいいんだぁぁぁぁっ!」

 

「ひいっ! な、ど、どうしたんですか……?」

 

 血走った瞳のイッセーが暴走したのか、ダンボールのなかで震えていたギャスパーを引っ張り出して肩に手を置いた。イッセーの行動に涙を浮べて怯えるギャスパー。

 

「もう俺にはおまえしかいない! 乳はないし、男だが、かわいいし性転換すればおまえは立派なかわいい女の子だ! ギャスパー! 女になってくれ!」

 

「い、いやですぅぅぅっ! じょ、女装は趣味ですけど、本物の女の子になりたくないですぅぅぅっ!」

 

「頼むギャスパー! 俺にはおまえしか――っげぶぁっ!?」

 

「まったく! 何をやっているんですか、あなたは! スケベで変態だとは聞いていましたが、ここまで変態だとは思いませんでしたよ!」

 

「ロスヴァイゼぇざぁん、あ、ありがどうございまずぅぅ……」

 

 ……暴走したイッセーは新入り『騎士』の強烈な一撃を後頭部にもらって沈み、ギャスパーは無事救出された。

 

 部室の床に沈むイッセー。これが童貞をこじらせた性欲過多でオープンスケベの高校2年生の成れの果てか……。

 

 ……本当にモテない男だったらサキュバスを紹介するが、こいつの場合アーシアの想いを無視してるから放置だな。

 

 というか、迫るなら男の娘のギャスパーじゃなくてちゃんとした女で一途なアーシアに迫れよな。一緒に住んでるんだろ……。

 

 はぁ……、好意を無視してたらその誰かにアーシアを持っていかれるぞ、イッセー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Dad>

 

 

 事件も終わり、俺――アザゼルは日本の土産を買う予定のバラキエルの買い物に付き合っていた。

 

 他のバカどもがバラキエルに、帰ってくるついでにと頼んだらしい。ったく、どいつもこいつも……。ま、総督の俺がこれだから仕方ねぇか。

 

 デパート内のベンチで休んでいると、買い物袋を幾つも手に持つバラキエルが帰ってきた。

 

「……うむ。頼まれていたものはこれで全部か」

 

「お疲れ」

 

 俺の横にバラキエルが座る。クタクタっぽいな。こういう無骨な武人に買い物はしんどいものだろう。しかし、一度頼まれたことは完遂しちまうんだよな。

 

「バラキエル、ほれ、これ」

 

「なんだ、この包みは?」

 

「いいから、開けてみろよ」

 

 バラキエルが開けると、そこにはひとつの弁当箱。

 

「……弁当?」

 

「言っとくが朱璃からじゃねぇぞ」

 

 ここにくる途中、朱乃に渡されたものだ。父に渡してくれってな。神城の影響と母親が戻ってきたおかげで随分と前向きになったみたいだ。

 

「これは――」

 

 弁当箱を開けると――色彩豊かで見事な和の料理が入っていた。

 

 バラキエルは俺のほうに視線を向ける。俺は苦笑しながらうなずいて「食えよ」と手で促した。

 

 箸を取り、おそるおそる煮物の芋を口に運ぶ。

 

 その瞬間――バラキエルの頬から涙が一筋伝った。

 

「……肉じゃが……朱璃の味だ」

 

 夢中でそれをがっつき始めた。無言で、ただただ箸を進める。

 

 俺は親友に言ってやった。

 

「朱乃のこと、俺やリアスたちに任せろよ。問題ないさ。あいつが惚れた男は女に対しては誠実で、女を守るためなら何でもするいい奴だからよ」

 

 バラキエルは箸を止め、目元を手で覆う。涙混じりに震える声で俺に言ってくる。

 

「彼が……朱乃を大事に……守ってくれると信じたい」

 

「ああ、だいじょうぶだ。奴はいままでもちゃんと朱乃を守ってるし、これからも守るさ。おまえも朱璃を失わないようにきちんと守れよ」

 

「ああ……、ああっ。早く受け入れる体制を整えて迎えに行くさ。絶対に……今度こそは守ってみせる」

 

 バラキエルは涙を流しながら力強くうなずくと食べるのを再会した。口いっぱいに肉じゃがを頬張りながら。

 

 いままで拒絶していた娘が作った愛した女の料理に、もう二度と食べられないと、会うこともできないと思っていた愛した女が戻ってきたんだ。

 

 今度こそ俺もこの幸せを失わせないようにしないとな。

 

 神城。おまえの前じゃ言えなかったけどよ。

 

 ――ありがとう。俺も救われた気がしたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Heros>

 

 

「曹操、そろそろ勘付かれた頃だと思うよ」

 

「ああ、そうだろうな。そう、それでもいいんだ。人材も集まってきた。では、次の段階へいこうか」

 

「そうだね。ものはそろいつつある。頃合だよ」

 

「――さて、最初の交渉相手は誰にするか?」

 

「協力態勢を外堀から剥がしていく。――乗るかな?」

 

「乗るさ。今時全面戦争など流行らない。だから旧魔王派は潰れたんだ。まずは交渉だ。手堅くいくぞ、ジークフリート」

 

「了解。魔王と魔物、そしてドラゴンを退けるのは――」

 

「いつだって、英雄と勇者だ」

 




 これにて悪神ロキ編終了! 次回は原作8巻のグレイフィア訪問とグレモリー家の試練を1話予定しています。

 その後は、修学旅行編ですね。

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