※この作品はR-18です。

ハイスクールD×D 世界を渡る転生者   作:上平 英

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第77話 決戦! グレモリー眷属VS英雄派 IN京都 後編

<イッセー>

 

 二条城を中心に展開された広大な仮想フィールド。それぞれが英雄派と相対し、エイジや匙、九重たちが九尾の御大将を救おうとしているなか。俺は英雄派のリーダー格らしい『黄昏の聖槍』を使う曹操を相対していた。

 

 少し間合いをあけてお互いの出方を窺う。油断は即死亡。武器の相性と肉体の強度の関係からお互い防御力はあまり関係ない。いい一撃が入ればどちらも死亡、もしくは大怪我だ。

 

 ――うかつには動けない。

 

 そんな曹操を相手にどう戦おうかと苦慮しているときだった。

 

 ドドドドドドドッ!

 

 戦場の一部で連続した破壊音が鳴り響いた。見れば空中に無数に展開されている様々な魔法陣から地上の一点に向けて魔法攻撃の雨が注がれていた! あれは――『絶霧』使いか! まさか魔法攻撃を受けている場所に木場が!?

 

「木場さん!」

 

 アーシアから悲鳴混じりの叫びが聞えてくる!

 

 ――木場! 木場の安否が気になって叫ぼうとしたときだった。

 

「――大丈夫だよ」

 

 風に乗って、声が聞えてくる。――木場の声?

 

 降り注がれていた魔法攻撃の雨が止み、舞い上がった土煙が突然起こった一陣の風によって晴れると――。

 

 五体満足でイケメンスマイルを浮べている木場が! 制服はボロボロになっているようだが、怪我らしい怪我は見当たらない! あの魔法攻撃の雨をどうやって防いだんだ?

 

 俺が疑問に思っていると、魔法攻撃を行なっていた『絶霧』使いのゲオルグが訊ねた。

 

「すごいね。僕の魔法を防ぐなんて。その剣に秘密があるのかい? 見たところ聖魔剣じゃないようだけど」

 

 聖魔剣じゃない? 木場の手元を注目して見ると、確かに聖魔剣ではない剣がふた振り。双剣で戦ってたのか?

 

 木場は両手に持った剣を構えながら言う。

 

「イリナさんの『封印の剣』を参考にして『魔剣創造』で創造した『魔法吸収の剣』と『魔法無効化の剣』だよ。どうやら僕は最近、禁手化したことで創れるようになった聖魔剣の威力ばかりに気を取られていたようでね。『魔剣創造』の特性や能力を忘れていた。僕の元々の持ち味は『騎士』のスピードと、どんな属性の剣でも創造できるという対応能力だったのに。――まあ、思い出せたキッカケはキミたちの昼間の襲撃の際、イッセーくんがアンチモンスターの光対策で僕に闇の剣を創りださせるという指示だね」

 

 ちらりと俺の方へ顔を向ける木場。イケメンスマイルでウインクを送られる。お、俺のおかげ?

 

「つまり対魔法用の剣を創造して俺の魔法に対応したわけか。これは聖魔剣を使っていたときよりも手こずりそうだ」

 

「言っただろう? 僕を舐めないで欲しいと」

 

「ふふ、舐めたつもりはなかったんだが。結果的にはキミを舐めたことになったようだ。すまなかったね」

 

 そう言って笑むゲオルグと木場。

 

 仕切りなおしと構え直し、木場はゲオルグの魔法攻撃を両手に持った剣で無効化しながら接近しようと試み、ゲオルグは木場を近づかせないように短距離の転移で移動しながら魔法を放っていった。

 

「封印の剣!」

 

 イリナの声。木場とゲオルグから目を離してそちらに向ければ――。

 

 聖剣でできたドラゴンに追われながらジャンヌと戦っているイリナが。

 

 一見、聖剣のドラゴンに追われながらジャンヌと戦っているイリナが不利そうだけど……。

 

「ちょっと、それは反則でしょー!」

 

 ジャンヌのほうが悲鳴を上げていた。ていうか、イリナの攻撃を防戦一方で避けている。

 

「ちょっ、危なっ! なんなのよ、その剣! 神器を封印する剣だって聞いていたけど、物質透過能力があるなんて聞いてないわよ!」

 

「平和が1番! 聖人の魂を受け継ぐ人でも容赦できないわ! さあ、観念しなさい!」

 

 あー……、そういや『封印の剣』で斬られた相手は短時間でも神器を封印されるんだっけ? 神器使い相手が神器を封じられるのは武器を取り上げられるのと等しいし、やられる側といては確かに反則だわな。しかも、あの剣って物理攻撃が効かないっていうか、文字通り物質を通り抜けるし。

 

「お姉さん、天使ちゃんにはおとなしく『断罪の聖龍』とだけ戦ってくれたらうれしいんだけどな~」

 

「それは謹んで遠慮させてもらうわ! 元々私は対人が得意だし、あんな大きなのまだ倒せないから! それよりも直接あなたを倒させてもらうわ!」

 

「や~ん! 天使ちゃん、怖~い!」

 

 そう言いながらも隙あらばイリナに斬りかかるジャンヌ。イリナは片手に出現させた光の剣でそれらをいなし、片手で『封印の剣』を振るっていた。

 

「そろそろ限界かい!?」

 

 ジークフリートの楽しそうな声。見ればゼノヴィアがデュランダルを支えに片膝をついていた!

 

「ハァ……ハァ……」

 

 肩で息を吐くゼノヴィア。見るからに疲労の色が濃い。それに戦闘服のあちこちが破けて血が流れていた。

 

「アーシア!」

 

「はい!」

 

 俺の意図を読んだアーシアが、ゼノヴィアに向って回復のオーラを飛ばす! ジークフリートはそれを邪魔せず六本の剣をゼノヴィアに向けて笑んでいる。

 

 と、緑色のオーラに包まれたゼノヴィアが立ち上がった。

 

「ありがとう、アーシア」

 

 そうお礼を言いつつ、ジークフリートにデュランダルを向けるゼノヴィア。――だが、突然剣を下げた。

 

 まるで戦意を失ったようなゼノヴィアの行動にジークフリートが訝しげに訊ねる。

 

「諦めたのかい?」

 

「いや」

 

 ゼノヴィアは首を横に振る。空間を歪めてそのなかにデュランダルをしまう。

 

「?」

 

 疑問符を浮べるジークフリートだが、ゼノヴィアが新たに出現させた魔法陣に合点がいったようだ。

 

「なるほど、武器を変えるのか」

 

 ゼノヴィアがうなずき、魔法陣から武器を取り出す。

 

「やはりデュランダルはまだ使えないようだ。戦いのなかで慣れていくかとも思ったんだが。おまえ相手では慣らす暇もない。ここは元々私にあっている剣を使わせてもらうとするよ」

 

「うん。そっちのほうが僕も楽しめそうだ」

 

「……根っからの戦闘狂だな」

 

「それはお互い様だろう?」

 

「ふっ、違いないな。私も戦うのは好きだ」

 

 そう笑んで魔法陣から真・リュウノアギト改を取り出すゼノヴィア。

 

 両手に構えて――。

 

「おまえの禁手よりもインパクトで劣るが、私も隠しだねを見せよう」

 

 真・リュウノアギト改にオーラを込める! いつもの破壊とか龍殺しなどの物騒なオーラとは別の類のオーラ! 刀身全体にオーラをまとわせ、両手を離す! オーラをまとったままゼノヴィアの胸の前、空中に浮いている真・リュウノアギトが光り輝き――。

 

 ――2つに別れた。

 

「ハハッ! 双剣に分離もできるのか!」

 

 目を輝かせるジークフリート。ゼノヴィアはふた振りの双剣となった真・リュウノアギト改を構える。

 

「私は双剣のほうが得意なのでね。強化するときに追加してもらった機能だよ。一撃の威力は下がるが、手数は倍。しかも、長剣のサイズといっても重さは普通の剣とそう変わらないが、相手にとっては超重量級の剣となる。それに加えて――」

 

 ゼノヴィアが双剣の力を解放する! 離れているこちらまで感じられる龍殺しのオーラ! 龍殺しの双剣!

 

 ゼノヴィアは双剣を構えて言う。

 

「おまえの神器は龍タイプ。その6本の龍の腕にこの龍殺しのオーラは猛毒だろう?」

 

「ああ、確かに」

 

 ジークフリートはうなずく。……りゅ、龍でもある俺のもうひとつの弱点だよな。いつも見てるだけで背筋が寒くなる。

 

 ジークフリートは6本の腕でそれぞれ剣を構える。楽しそうに笑い――。

 

「まあ、当たらなければいいだけさ。それより、おもしろくなりそうな戦いを楽しませてもらうよッ!」

 

 ゼノヴィアに向って飛び出した! ゼノヴィアは高速で突っ込んでくるジークフリートを見据えて双剣を構えている。その場で受け止める気か!?

 

 キィィィンッ!

 

 金属音と衝撃波を放ちながら2人はつばぜりあう! すげえっ! 6本の剣を2つの剣だけで防いでる!

 

「怯むどころか笑うとは、想像以上の戦闘狂だな!」

 

 ゼノヴィアは力任せに剣を振るい、ジークフリートごと剣を弾く! ジークフリートはひらりと後ろへ飛んで地面へ着地する。

 

 今度はゼノヴィアが双剣で斬りかかっていった。……その顔も楽しそうだった。うん、キミも十分戦闘狂だよ。

 

「おげぇぇぇぇぇ……」

 

 戦場から聞えてくるそんな声。

 

 …………。……この声は――ロスヴァイセさんだよなぁー。

 

「あぅぅ……気持ちわるぅ……」

 

 案の定近くの電柱に手をついて吐いているロスヴァイセさん。と、ヘラクレスは?

 

 ゴッ!

 

 倒壊した家屋が盛り上がり――ヘラクレスが現れる。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……。クソが……」

 

 荒い息を吐きながら肩を上下させるヘラクレス。目立った怪我は見受けられないが、疲労の色が目に見えて濃い。

 

 ヘラクレスは息を整えながら再びミサイルの発射態勢に移る!

 

「うう……」

 

 ロスヴァイセさんも青い顔をしながら槍と盾を構える!

 

 お互いが力をそれぞれの武器へと集めて狙い――。

 

「食らいやがれぇぇええええええ!」

 

「貫けっ!」

 

 攻撃をぶつけ合う!

 

 ヘラクレスからは無数のミサイルが。ロスヴァイセさんからは蒼いオーラの光線が放たれる。

 

 ドドドドドドドッ!

 

 ロスヴァイセさんの光線がミサイルを撃ち落としながらヘラクレスへと向かった!

 

「――むんっ!」

 

 ヘラクレスが両手をクロスさせて光線を受け止める! 凄まじい勢いの光線! ヘラクレスの巨体が後ろへ飛ぶ!

 

 と、撃ち落されずに残ったミサイルがロスヴァイセさんに向った! ロスヴァイセさんは盾を構えて――。

 

「――くっ!」

 

 ドドドドドドォォオオンッ!

 

 巻き起こる大爆発! 見るからに凄まじい威力の攻撃を受けてロスヴァイセさんの安否が心配になるところだが……。

 

「ふぅ……」

 

 土ぼこりが晴れたあとには先ほどと変わらずに立っているロスヴァイセさんが。……す、すげぇな。どれだけ防御力が高いんだよ、あの盾。

 

「う~……、気持ちわるぃ……。み、水ぅ……」

 

 魔法で水を出して飲んでいるロスヴァイセさん。……使い手のほうは随分と防御力が低そうだ。特に肝臓の。

 

 ゴッ!

 

 崩壊して瓦礫の山になっているところからまたぶっとい腕が生えてくる。瓦礫をどかしながらヘラクレスが現れる。

 

「ハァ……ハァ……。へへっ、さっきよりも防げたぜ」

 

 そう笑って首をゴキゴキと豪快に鳴らすヘラクレス。さっきからずっと攻撃の撃ちあいをやっていたのか? 瓦礫に埋もれる→出る→撃ちあい→瓦礫に埋もれる。の、ループ。

 

「いい加減、潰れてください……」

 

「ハッハッハッ、いいじゃねぇか! さあ、もう一発撃ちあおうぜ!」

 

 再び構えるヘラクレス。ロスヴァイセさんはうんざりしているようだが再び構えた。

 

 …………。

 

 ……こっちは即死攻撃同士で殺伐としてんのに他は楽しそうだな、おい。

 

 曹操が肩に槍をトントンさせる。

 

「これは想像以上だな。頭角を現しているデュランダル使い以外は禁手で相対すれば高い確率で、さほど時間もかからずにこちらが勝つ……と、読んでいたんだが。どうやら戦力を読み間違えていたようだ」

 

 うんうん、と感心している曹操。そりゃあ、よかったな。

 

 オオオオオォォォォンッ!

 

 突然聞えてきた九尾の御大将の咆哮! 見れば九尾の御大将の巨体がどんどん小さくなっていた!

 

 もしかして――。

 

「ちっ、予想より大分早いな」

 

 曹操が舌打ちしながらそう言うと、九尾の御大将は九尾のバケモノから完全に美女へと戻っていた! エイジと九重が両側から九尾の御大将を支えている。

 

『兵藤、こっちは片付いたぜ。九尾の御大将の妖力も散らし終えたし、心も神城と九重が取り戻した』

 

 匙からの連絡! よっしゃ! 第一目標である九尾の御大将を救い出せたぞ!

 

『了解! おまえの意識のほうは大丈夫か?』

 

『かなり疲れたが、大丈夫だ。そっちの援護にまわるか?』

 

『……いや、いくらなんでもあの聖槍はヤバい。体が炎だからって、俺と同じで龍で悪魔のおまえが光のオーラをあれだけ当てられたら消滅しちまう』

 

『そ、それは……』

 

 匙の龍王モードは物理攻撃が効きにくくなるけど、光に対しては未知数なところがあるからな。それを考えると、聖剣使いのジャンヌや魔剣と聖剣を使っているジークフリートの相手も止めておいた方がよさそうだ。下手に援護なんてすると集中攻撃を浴びそうだし。

 

 うーん……、じゃあ、ロスヴァイセさんか木場の援護か……。

 

 俺が必死にそんな作戦を考えているときだった。

 

「そろそろ潮時かな」

 

 曹操が肩に槍をトントンさせるのを止めた。

 

「……潮時? 逃げんのか?」

 

 俺が訊くと曹操は肩をすくませた。

 

「九尾の御大将が完全に解放されてしまったからね。乱れていた力場も正常になりつつあるし。このままこの場にいたら、今度は捕まってしまいそうだからね」

 

「……俺たちがこのまま逃がすと思ってるのか?」

 

 俺は構えをとる! 昼間あったときよりも確信している。こいつらの存在はヤバい! このまま逃がしたら、とんでもないことになる!

 

『相棒、鎧の再生が終わったぞ』

 

 ドライグからの報告。いいタイミングだぜ、ドライグ!

 

「好き勝手やってくれた分、おとしまえをつけさせてやる!」

 

 そう言って翼を羽ばたかせ背中のブーストを勢いよく噴出させる!

 

「――それは遠慮させてもらう」

 

 トンッ。

 

 曹操が軽やかに後方へとジャンプした。――逃がすか!

 

 ゴオオオオオオオオオォォォォオオッ!

 

『JET!』

 

 曹操を追って猛スピードで突っ込む! 左の拳を突き出して顔面を狙う!

 

「――おっと」

 

 最小の動きで俺の左の拳をかわす曹操! だけど、バカ正直な攻撃が避けられることは最初からわかってる。俺は突き出した左の拳を開いてドラゴンショットを放つ!

 

「――っ!」

 

 これには曹操も驚いたようだが――曹操は超反応を見せて避けてしまう! これも避けるのかよ!?

 

「――ハハッ! 隙あり、だな」

 

 そう笑んだ曹操。ドラゴンショットを避けた動作でそのまま俺の懐へ入り――。

 

 ――それも予想済みだよッ!

 

『JET!』

 

 全力で逆噴射をかけて猛スピードで後ろへ下がる!

 

 聖槍が俺の腹部の鎧をかすめる! よし、ギリギリかわせ――。

 

 ズンッ!

 

 突然伸びてきた聖槍を俺の腹部に突き刺ささった! な、なんだと……!? 確かに間合いから外れていたはずなのに!? 驚愕しながら曹操を見ると、聖槍を持っていた部分の位置が中央から端へと変わっていた! この野郎ッ! 当たらないと思って投げるように持ち手をスライドさせながら突いてきやがったのか!

 

 ハハッ、確かに聖槍にとって俺の鎧の防御力はそこまで高くないからな。そこまで力を込めなくても鎧を貫けるのなら、肉体に刺されば大ダメージを与えられるのなら、突き方を変則的にしようが関係ないか……。

 

 ズブッ!

 

 逆噴射をかけていたため俺の体が後方へと飛び、聖槍が抜ける。俺はそのまま後方へと飛び続け――。

 

 ヤバい……痛みで、着地が……。

 

 ドゴォオンッ!

 

 まともに着地できずに地面へと叩きつけられてしまった。

 

「ごふっ!」

 

 着地の衝撃と聖槍のダメージで大量の血が口から吐き出される!

 

「イッセーさん!」

 

 アーシアの悲鳴混じりの叫びが聞えてくる。

 

 パァ。

 

 俺の体を緑色のオーラが包み込む。今回は一撃目よりも刺さりが甘かったせいか煙はすぐに収まった。助かったぜ、アーシア。

 

「ふむ、フェニックスの涙には劣るものの。なかなかの回復力だな」

 

 アーシアを見つめながら曹操が感心した様子で笑んでいる。

 

 ……まったく、何してんだ、俺。……なんでこんな情けない様を見せてんだよ……。俺だけじゃねぇか、まともに戦えてねぇの。匙やエイジ、九重も目的を達成したり、他の眷属の仲間も英雄派の禁手使い相手でも戦えてるのに……。仮にも俺は『王』なのに……。

 

 アーシアの回復のオーラを受けて俺が起き上がっても、曹操は俺に視線を向けない――。

 

 奴は俺をそこまで脅威とは感じていないんだろう。曹操が畏れているのは俺の将来性や可能性であって、今の俺じゃない。曹操が始めから畏れていたのはエイジだけだ。曹操は始めからエイジばかりを気にしていた。

 

 ……その理由はわかる。俺なんかよりもエイジが強いんだし警戒して当然だ。

 

 ――だけど……。

 

 ……俺は、赤龍帝なんだろう? おっぱいドラゴンだって、冥界ではやし立てられてさ……。

 

 …………。――悔しい。

 

 俺は鎧のなかで震え、悔し涙を流し続けていた。……なんで俺は弱い? 肝心なときにいつもこれだ。

 

 どうしても一歩力が足りない。……努力しても努力しても、どうして手が届かない奴が多いんだよ……。

 

 これが俺の限界なのか……? なんで俺は……。

 

 俺はその場に膝をつき、悔しさのあまりに地面を叩いた。仲間は戦えているのに、目的を達成できているのに……。赤龍帝の俺だけが戦えていない。

 

 聖槍使い相手だからって関係ない。純粋に弱い自分が悔しい……。

 

 いや、諦めたくない! ここで終わりなんて嫌だ! まだ俺は戦える!

 

 ……でも、曹操に手が届かない……。何度いっても負けるイメージしか浮ばない。逆に周りの足手まといになってしまう。それがたまらなく悔しくて……俺は……。

 

『泣いてしまうの?』

 

 ――っ。俺の内に語りかけてくる誰か。この声は――。

 

 ……エルシャさん?

 

『ええ、そうよ。どうして泣いているの?』

 

 俺の内側から語りかけてきたのは神器の内部にいる先輩のエルシャさんだった。

 

 ……俺、悔しくて……。どうしてこんなに自分が弱いのか……。肝心なときにまったく役に立てないんです。

 

『そう、それは悔しいでしょうね。けれど、忘れたの? 以前、堕天使の総督が言っていたことを――。あなたは可能性の塊だと――』

 

 そのとき、アザゼル先生に以前言われたことが蘇る。

 

 ……歴代赤龍帝と比べて才能は最低だけど、可能性の塊。

 

<おっぱいドラゴン! けっこうなことじゃねぇか。ドラゴンでもそんな新しい2つ名を得られたのは随分久しいことなんだぞ? 身体能力、魔力がヴァーリや他の伝説のドラゴンに劣っていたとしても違う側面からおまえだけの方法で赤龍帝の力を使いこないして強くなっていけばいい。これからも努力と根性、そして意外性から活路を見つけていけよ>

 

 そうだ、先生はそう俺に言ってくれた。

 

 俺は、俺だけの側面から俺だけの方法で赤龍帝の力を使いこなす……。

 

 ――俺はおっぱいドラゴンだから!

 

『そうよ、それがあなた。現赤龍帝であり、おっぱいドラゴン。私とベルザードが見た可能性! さあ、今こそ解き放ちましょう! あなたの可能性を!』

 

 カァァァアアアッ!

 

 俺の懐から光が漏れる。取り出してみると、宝玉が赤く光り輝いていた。

 

 こ、これは……。

 

『その宝玉を天にかざして。呼びましょう!』

 

 よ、呼ぶ? 怪訝に思う俺にエルシャさんは高々と宣言した。

 

『そう、あなただけのおっぱいをッ!』

 

 刹那――、パアアアアアアアアッ!

 

 宝玉がいっそう輝き、この一帯全体を照らすほどの光量となった!

 

「……なんだ?」

 

 曹操もその光に気づき、こちらに顔を向けていた! 離れた戦場で戦っていた仲間や英雄派たちまでも!

 

 宝玉から光が照らされ、何かを映しだしていく。それはしだいに人の形を成していき、ひとり、ふたりと増えていった。

 

 な、なんだ、これ……。疑問に思う俺にエルシャさんが答える。

 

『その宝玉はこの京都で様々な人の間を巡ってきた。あれはその者たちの残留思念が人の形になったものよ』

 

 つ、つまり、俺のせいで痴漢になった皆さんの残留思念ってことですか……?

 

 残留思念の皆さんは総勢千人を超えそうな規模だった! この宝玉はどんだけ京都で痴漢作用していたんだよ! 謝る人が多すぎるだろっ!

 

『おっぱい……』

 

『お、おっぱい』

 

『おっぱいーん』

 

『大変なおっぱい……』

 

 ……残留思念が突然おっぱいおっぱい口走り始めた。おいおいおいおい! 変態の見本市になってませんか!?

 

「「「「おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい」」」」

 

 残留思念の大群が呪詛のようにおっぱいおっぱいとつぶやきながら、のろのろとおぼつかない足取りで動き出していく。何かの陣刑を取っていった。

 

「「「「「「おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい」」」」」」

 

 これはひどいっ!

 

 それしかいえない光景だった。おっぱいおっぱい言いながら残留思念が――儀式めいた様相で円形に並んでいく。

 

「……おっぱいゾンビか?」

 

 曹操がそうつぶやいた。そうですね! ゾンビのように見えますね!

 

 残留思念――おっぱいゾンビは円形を形作ると、今度は人の形を崩して地面に融けていった。そして、円形に光が走り出し、中央に紋様が刻まれていく。広大なひとつの魔法陣となっていった。

 

 ――おっぱいゾンビが魔法陣に!

 

 衝撃的な出来事の連続で俺は何がなんだか分からなくなってきたが、エルシャさんが語りかけてくる。

 

『準備は整ったわ。――呼びましょう』

 

 な、何をですか? もうわけの分からないことだらけで思考が麻痺しかけてます!

 

『――あなただけのおっぱいよ!』

 

 俺のおっぱい――。そう言われて最初に脳裏を過ぎったのは紅髪のお姉さま――。

 

『さあ、叫んで! 召喚(サモン)、おっぱい! ――と!』

 

 さっきから状況がぶっ飛びすぎてついていけないけど、叫ぶしかないか!

 

「――召喚ッ! おっぱいぃぃぃぃぃッ!」

 

 パァァァァァァァアアアアアアアアッ!

 

 魔法陣が輝きだした! 紋様に刻まれた文字には「おっぱい」と書かれているし、おっぱいを形にした象形文字まで魔法陣に描かれている!

 

 呼び出すのか! ま、まさか、いま俺が脳裏に思い描いたあの人を――。

 

 魔法陣の中央に何かが出現しようとする。一瞬の閃光が辺りを照らす! 現れたのは――。

 

「……あ、あれ?」

 

 何も現れないぞ? あの……、エルシャさん?

 

『呼び続けなさい』

 

 は、はい……。

 

「召喚ッ! おっぱいぃぃぃぃっ!」

 

 再び閃光が辺りを照らす! しかし、何も現れない! どうこと!?

 

『呼びかけが弱いのよ! もっと、心の底からおっぱいを求めて叫ぶのよ!』

 

 俺の呼びかけが弱いから……ッ! ……わかりました。

 

 俺は息を吸い込み、背中を逸らして、ブレスを吐くように力を溜めて呼びかける!

 

「召喚ッ! おっぱいぃぃぃぃいいいいいっ!」

 

 おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱいッ!

 

「召喚、召喚、召喚、召喚ッ! 召喚ッ! おっぱいぃぃぃいいいいいいっ!」

 

 おっぱいを渇望する俺の魂の叫び! その叫びに呼応するかのように魔法陣が強く光り輝く! まばゆい輝きを放ち、当たり一帯を閃光で照らす!

 

 感じるのは確かな手応え! 魔法陣から現れたのは――光り輝くおっぱいだった。

 

 おっ、おっぱいぃぃぃぃいいいいいいっ!?

 

 魔法陣の中央に光り輝いてるおっぱいが浮んでる! なんだ、ええっ!?

 

 当惑している俺にエルシャさんが言う。

 

『乳翻訳を使うのよ!』

 

 乳翻訳!? そうか! あの乳と話すのか!

 

「乳よッ! その言葉を解放しろ! 乳翻訳ッッ!」

 

 エルシャさんの指示通りに空中に浮いているおっぱいに乳翻訳をかける! すると――。

 

『私はおっぱいの精霊。あなたが私を呼び出したのですか?』

 

 おっぱいが言葉を発した! 呼び出されたことについても驚いていないようだ!

 

「――ていうか、おっぱいの精霊だと!?」

 

 わけがわらない! どういうことだ!? 俺は部長のおっぱいを召喚するつもりだったのに、なんでおっぱいの精霊が召喚されたんだ!?

 

『私はすべてのおっぱいを司りし神――乳神さまに仕える精霊です。あなたの頑ななまでのおっぱいへの渇望に応じて召喚されたのです』

 

 そんなバカな! そんなバカなことが起こりうるのか!?

 

「え、エルシャさん!」

 

 事情を知っているだろうエルシャさんに訊こうとするが――。

 

『まさか異世界の神を呼び出してしまうなんて。あなたの可能性はそこまで……』

 

 なにやらエルシャさんも予想外なことだったらしい! 内側で驚いてるよ! ど、どうすりゃいいんだ!?

 

 当惑している俺にエルシャさんは真面目に語りかけてくる。

 

『――つつきなさい』

 

「え……?」

 

 我が耳を疑った。いま、信じられない言動が聞えてきた。

 

 しかし、エルシャさんは再び言う。

 

『あの光り輝くおっぱいをつつくのです』

 

「つ、つつくんですか?」

 

『そうよ。つつくの。搭城小猫のおっぱいをつついたように。――ポチッと』

 

「ポチッと!? いやいや、つついてどうするの!?」

 

 何を言ってんですか、この人! 本当に女性で歴代最強の赤龍帝なの!? このお姉さん錯乱しているとしか思えないよ!

 

 驚愕する俺なんてお構い無しにエルシャさんは続ける。

 

『あなたの可能性を開く最後の決め手。それが乳首をつつくことなの。あなたにとって女性の乳首はスイッチ――。あなたの可能性という名の扉を開くためのスイッチなの』

 

 ダメだ。頭がおかしい。この展開はさすがに俺の想像を超えている。エルシャさん、俺にとっての乳首は決して覚醒ボタンってわけじゃないんですよ!?

 

『――いえ、覚醒ボタンだわ。理解しなさい。私は近くで見ていて確信を得ているのよ』

 

 酷い! 酷すぎる! しかし、説得力があるのはなぜだ!?

 

 そう思っているのも束の間、突然、おっぱいが輝きを増した!

 

 パァァァァアアアアアアア……ッ!

 

 キラ☆ キラ☆ キラ☆

 

 ……エルシャさん、あれは……?

 

『おっぱいの精霊があなたの可能性を開くために力を集めているのよ』

 

 ……え?

 

『おっぱいを司る乳神に仕える精霊……。その精霊が京都で集めた力を媒介にあなたを覚醒させるつもりなのよ』

 

 ゴメンなさい。意味がわかりません。ていうか、京都で集めた力って宝玉のあれだよね!? ああ、俺の理解不能なことが起こりすぎて涙が出てくるんですけど!

 

『あれをつつくことであなたは変わる。劇的な変化を遂げるわ。あなたのなかの「悪魔の駒」はあと一押しで力を解き放つ。その一押しが――』

 

 スイッチ――。乳首を――。

 

 ブハッ。

 

 鼻血が噴き出る。わかった。俺はやっと理解できた。この状況を飲み込んだよ。

 

 俺は魔法陣の中央に浮んでいるおっぱいの元へと歩み寄る。

 

 ――すごい。

 

 何てきれいなおっぱいなんだ。……あれ? このおっぱいって――。

 

『あなたが思い描いているあなたの理想のおっぱいです』

 

 おっぱいの精霊がそう教えてくれる。俺の理想のおっぱい……。つまり、部長のおっぱい。

 

 ブブッ。

 

 鼻血が噴出する。ありがとう、おっぱいの精霊。

 

『さあ、乳龍帝。つつきなさい』

 

 ブルンとおっぱいが震えると――ピンク色の乳輪と乳首が淡い桃色の輝きを放った。

 

 ――キレイだ。

 

 なんだか、難しいことを考えるのがバカらしくなってきたぜ……。

 

 これが、おっぱいの魅力、可能性か……。

 

 光り輝くおっぱいってキレイなんだな。

 

 俺は籠手の指部分だけ鎧を解いて、両手人差し指の照準を輝く乳首に向けた。

 

 ……思い出すぜ。禁手になったときのことを。あのときは小猫ちゃんの乳首で覚醒した。

 

 そして今度はおっぱいの精霊の乳首で何かを得ようとしている。

 

 ――すごい。女性のおっぱいはすごい。女性のおっぱいがあれはなんでもできるような気がしてきた。今なら世界中から元気じゃなくておっぱいの力を集めておっぱいドラゴン球もつくれるような気がしてきた。

 

 覚悟はいいか、ドライグ?

 

『ハハッ! もちろんだ、相棒! 一思いにやっちまえ! 乳神という異世界の神の精霊まで呼び出したおまえだ! 後先考えずに目の前にある乳をつついちまえ!』

 

 ……すごいハイテンションだ。ていうか、もうこれは自棄だな。もうここまできたら自棄になるしかないんだろう。ゴメン! ゴメンよ、相棒! あとでアザゼル先生と一緒に心のケアをするからね! いまはあの乳をつつかせて! 俺、あの乳をつつかなきゃいけないんだッ! つつかなければいけないものがあるんだよッ!

 

「いくぜ!」

 

 俺は宣言し、鼻血を噴出させながら、乳首をつついた。

 

 ずむずむっと。極上の柔らかさ、乳首のコリッとした感触、指が乳に埋まっていく光景。それらすべてが全身を駆け巡り、脳みそに最高の快楽を与えてくれる。

 

『……ぁふん……』

 

 最後にトドメの桃色吐息ぃぃぃぃっ! この声は部長の声ッ! クソッ、ここまで再現してくれたのか、おっぱいの精霊さまっ! 最高だぜぇぇえええええっ!

 

 カッ!

 

 おっぱいがまばゆい閃光を放ち始める!

 

 おっぱいが輝きを放ちながら天高く昇っていき、この空間全体を桃色に照らしていった!

 

 ……すげぇ。おっぱいが天に昇っていく! 光り輝きながらっ!

 

 俺は涙をこぼしながら、自然と手を合わせていた。

 

 ――ああ、乳よ!

 

 天高く昇っていたおっぱいは、その後、光と共にこの空間から消えていった。

 

『また会える日を楽しみにしていますよ、乳龍帝』

 

 ――そんな言葉を残して。

 

「……なんだったんだ、あれは?」

 

 曹操たちも仲間たちも呆然として、いまの現象にどうしていいかわからずにいた! ですよね! いきなりおっぱいゾンビが出現したかと思ったら、次は光り輝くおっぱいが召喚されたんだもんね!

 

 ――ドクン。

 

 突如、胸が脈打つ。

 

 ――ドクンッ。

 

 再び高鳴る。これは――。

 

『来たわね。さあ、行きましょうか!』

 

 エルシャさんが叫ぶと、鎧の各部分にある宝玉から、赤い閃光が溢れ出るっ……! 体の内側から熱くて……力強い何かが……湧き上がってくる……ッ!

 

 抑えられない! こんなにも神器の底に力が眠っていた? まさか、『覇龍』?

 

 いや、違う。いままでに感じたことのない力の波動だ。けど、どこか懐かしいものを感じる。ドライグ、これは――。

 

『ああ、俺も感じるぞ、相棒……。懐かしいものを思い出させてくれる。これは――本来の俺のオーラだ。激情に駆られ、「覇」の力に身を任せていたものじゃない。呪いでも、負の感情でもない。これは――俺が肉体を持っていた頃の気質だ。ただただ、白いあいつに勝ちたかった頃の――』

 

 ドライグの楽しそうな声音。

 

 何がドライグに起こったかわかりかねたが、赤いオーラが全身から迸り、俺と周囲を包み込んでいった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<エイジ>

 

 匙と協力して九重と八坂の精神世界に入り、八坂の精神を正常に戻して現実世界に戻ってくると――。

 

 おっぱいおっぱいと念仏のようにつぶやくおっぱいゾンビが二条城に溢れ、それがおかしな魔法陣に変化したかと思ったら、光り輝くおっぱいが召喚された。

 

 どうやらその光り輝くおっぱいというのはイッセーの可能性……つまり痴漢で力を集めていた宝玉が作り出した魔法陣で召喚した、覚醒のためのスイッチらしい。

 

 …………。

 

 ……自分自身でも何を言っているかわからないが、これは現在現実で実際に起こっているらしい……。

 

「……エイジよ。……妾はまだ捕らわれておるのか?」

 

 九重と一緒に両側から支えている金髪の美女。獣耳と9本の尻尾が生えている。この人こそ、九尾の御大将こと八坂だ。八坂は光り輝くおっぱいと向かい合っている赤い全身鎧姿のイッセーを見ながら問いかけてきた。

 

「現実世界のはず……だと思う……」

 

 そうとしか俺は答えられない。確かにここは現実世界のはずなんだが……。

 

 戻ってきてすぐに起こったおっぱいゾンビ出現とか、光り輝くおっぱい召喚でここが現実なのか不安になってる。

 

 と、魔法陣の真ん中で浮いている光り輝くおっぱいの乳首をイッセーが押した。……ポチッと。スイッチを押すみたいに。わざわざ鎧の腕部分を収納して素手で、押した。

 

 すると、何が起こるわけでもなく。光り輝くおっぱいは輝きを増して天上に昇っていった。

 

 ……これで終わり?

 

 今度は九重がつぶやく。

 

「あの赤龍帝はいったい何をしたのじゃ?」

 

「……俺も、知りたいよ……」

 

 いったい何がしたかったんだ? 乳首を押しただけで終わりなのか?

 

 見れば英雄派と戦っていた他の仲間たちまでも戦いを止めてイッセーの行動を見つめていた。敵である英雄派はイッセーが巻き起こすトンでも現象にまったく慣れていないのか、隙だらけの棒立ちで天上に昇っていくおっぱいを見ながら当惑しているようだった。

 

 そんな、誰もが当惑して動けずにいると――。 

 

「どうせ俺も変態ですよぉぉぉおおおおおっ!」

 

 イッセーが突然叫び声を上げた! な、なんだ!? 乳首をつついてからの間、何かあったのか?

 

「いくぜぇぇぇぇぇぇええっ! ブーステッド・ギアァァァアアアッ!」

 

 イッセーの声を共に、赤龍帝の鎧を包んでいた赤い閃光が極大のオーラとなって辺り一帯に解き放たれる!

 

 明らかにいつもより強い力! しかも、オーラの質が純粋なものへと変化している! あの乳首を押す行為はちゃんとした意味があったのか!

 

 イッセーが曹操を睨みながら叫ぶ!

 

「いこうせッ! 赤龍帝をッ! 俺たちの力をッ! グレモリー眷属の底時から、とくとぶっ放してやるぜェェッ!」

 

Desire!(デザイア)

 

Diabolos!(ディアボロス)

 

Determination!(デイターミネイション)

 

Dragon!(ドラゴン)

 

Disaster!(ディザイダー)

 

Desecration!(ディシクレイション)

 

Discharge!(ディスチャージ)

 

 鎧の腹部についているイッセーの可能性だという宝玉が数々の音声を鳴り響かせていき、壊れているかのように『D』を繰り返し始めた!

 

『DDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDD!!!!!!!!』

 

 イッセーが高らかに叫ぶ!

 

「モードチェンジッ! 『 龍 牙 の 僧 侶 (ウェルシュ・ブラスター・ビショップ)』ッ!」

 

 イッセーがその場で踏ん張りを利かせると、鎧の肩から背中にかけて赤いオーラが集まり形をなしていった。

 

 できあがったのは背中のバックパックと、両肩に装着された大口径のキャノン。

 

 ブゥゥゥゥン……。

 

 静かな鳴動が始まり、赤龍帝のパワーがキャノンの砲口に集まっていった。

 

 すごい魔力だ! 『僧侶』の駒にプロモーションした影響で魔力が底上げされているのか? いや、それだけじゃない! 以前にプロモーションしたときよりも遥かに魔力の量が多い! それにプロモーションするための認証カードの認証も必要していないようだ。

 

 砲口からとんでもない量のオーラがバックパックに溜まっていく! 

 

「……あれは、マズいな……」

 

 曹操がぼそりとつぶやいた。どうやらイッセーが溜めているパワーの量に危機感を覚えたようだ。

 

 って、あの凄まじいオーラが爆発したら味方の俺らもヤバいじゃないか!

 

 俺は急いで味方の位置を確認し、転移魔法陣を発動させる! イッセーと曹操が戦っている位置に近いゼノヴィア、イリナ、アーシア、ロスヴァイセ、木場をこちらへと移動させる!

 

 と、俺がこちらへと転移させたことをいち早く理解したゼノヴィアが、俺と九重に支えられている八坂を見て安心したように息を吐いた。

 

「九尾の御大将を助けだせたんだな」

 

「さすがお兄ちゃん!」

 

「本当によかったです」

 

「信じていたよ、エイジくん」

 

「……うぐっ、お、おめでとうございます……」

 

 アーシア、イリナ、木場、ロスヴァイセと八坂の無事を喜んでくれている。すごくうれしいのだけど、今はそれどころじゃない。

 

「皆! イッセーが特大の砲撃を今にもぶっ放しそうだから気をつけろ!」

 

 空を飛んでいる匙を含めてそう注意する! イッセーに直接注意できればいいのだけど、いま注意できる状況じゃない。

 

『――っ!』

 

 全員がイッセーから放たれるだろう砲撃を警戒して構えた瞬間――。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

「吹っ飛べェェェェェェェェェェッ! ドラゴンブラスタァァァアアアアアアアッ!」

 

 ズバァァァアアアアアアアアッ!!

 

 イッセーの肩に装備されたキャノンから極大の一発が放射されていくッ! おいおいおいおいっ! 倍加能力も加わってとんでもない威力になってるぞ! 覚醒したてだからって、こんなもんを仮想フィールドでぶっ放してんじゃねぇぇぇぇっ! エネルギーを放射するだけで精一杯みてぇだし、危険すぎるだろぉぉぉっ!

 

 英雄派のほうへ放出されていく大出量のエネルギーッ!

 

「おもしれぇ、受けてやるぜ、伝説のドラゴンさんよッ!」

 

 ロスヴァイセと戦っていた全身にミサイルを生やしている巨体の男が、曹操と砲撃の間に立ちふさがる! イッセーの一撃をその身で受けようとするが――。

 

「受けるなッ! 避けろッ!」

 

 曹操が叫び、槍の石突きで巨体の男をその場から吹っ飛ばした! 曹操自身も素早く砲撃を回避していた。他の英雄派のメンバーたちもそれぞれ砲撃が当たらないところへと移動したようだ。

 

 外したキャノンの一撃は、誰にも当たることなく遥か後方へと飛んでいき――。

 

 ドォォォォオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

 空間全体を震わせるほどの大爆発と共に背景の町並みが丸ごと巨大なオーラに包み込まれていく!

 

 ……エネルギーが広がって、町全体を激しい光が包んでいく!

 

 光の止んだ後に残ったものは――何もなかった。放たれた先の風景が消滅し、ゲームフィールドにまでダメージを与えたようで、空間が歪みだしていた! ……いくらなんでも閉鎖空間で撃つ攻撃じゃないぞ、おい……。

 

「凄まじい威力だな。私もあれぐらいの一撃を放ってみたいものだ」

 

 ゼノヴィアが何もなくなった町を見てそう言う。砲撃の威力に感心しているようでうんうんとうなずいている。……お願いだから止めてください。戦いごとに広大なさら地が増えるよ。

 

「…………」

 

「…………」

 

 八坂と九重は無言で固まっている。無理もない。あんな砲撃みたら誰だって思考が停止する。しかも破壊されたのは擬似空間とはいえ京都の町だ。……いまは声をかけられないな。

 

「……町が丸ごと吹き飛びやがった! おい! こんなの立て続けに放たれたらこの空間が保たんぞ!」

 

 巨体の男が砲撃の威力を見て驚愕の声音を出していた。

 

「擬似空間の町が歪む、か。ここはかなり強固に創られているんだけどね。……なんて威力だよ」

 

 いつの間にか6本腕になっているジークフリートが笑みを止めて、目を細めていた。……うん。本当に、擬似空間を強固に創ってくれていた英雄派に少しだけ感謝だ! もしもさっきの一撃をこの擬似空間が受け止められずに崩壊して、現実世界にまで影響を及ぼすことになったら……京都の住民の命やイッセーの精神もヤバかった。

 

「曹操ォォォォォオッ!」

 

 イッセーが曹操の名を叫び、背中のキャノンをパージした! パージされたキャノンは淡い光となって霧散していく。

 

「モードチェンジ! 『 龍 星 の 騎 士 (ウェルシュ・ソニックブースト・ナイト)』ッ!」

 

 バッ!

 

 イッセーがドラゴンの翼を羽ばたかせ、曹操に向う! 鎧の背中部分に存在する、以前よりも倍となったブーストを盛大に噴出させる! 空気を震わせながらイッセーは空を切るように飛んでいく!

 

「すごいスピードだ!」

 

 木場が驚きの声をあげる。イッセーは飛びながらさらに叫ぶ!

 

「――装甲パージッ!」

 

 イッセーが叫ぶと、赤龍帝の鎧の各所がパージされていく! 胴体から、腕から、足から、頭部から厚い装甲が外れていった!

 

 最低限の装甲だけになって飛んでいくイッセー。鎧の形状がさらに変化し、スリムなフォルムと化した。

 

「てめえに体当たりぐらいなら問題ねぇよァァァァッ!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

 イッセーが曹操を捉え、正面から突っ込んでいく!

 

「――速いッ!」

 

 曹操が槍のを前方に構える! イッセーを正面から受ける気か!

 

 ドンッッ!

 

 イッセーの体当たりが正面から曹操に命中する!

 

「ごふっ!」

 

 曹操が軽く吐瀉した。曹操を捕まえた状態でイッセーが飛び続ける!

 

「――やっと、捕まえたぜ。これなら、文句ねぇだろ?」

 

 イッセーがそう言うと、曹操はうれしそうに笑った。

 

「――まったく、キミは正面から本当に突っ込んでくるんだなッ! だが、その装甲の薄さで俺の槍は耐えられないだろうッ!? パワーアップ早々悪いが、これで終わりだっ!」

 

 確かに。曹操の言う通りだろうが――。

 

「モードチェンジッ! 『 龍 剛 の 戦 車 (ウェルシュ・ドラゴニック・ルーク)』ッ!」

 

 イッセーもそれは承知済みだったようだ。イッセーの叫びに呼応するように赤いオーラが再び全身を包み込み、パージした分の装甲を修復させていく。だが、オーラの形成はそれだけに留まらない。さらに鎧を分厚く、肉厚にさせた。

 

 イッセーの両腕に大量のオーラが集結していき、通常の籠手の倍――いや、5、6倍はあろうかという極太の様相を見せた。

 

 鎧が変化したことで神速が止まり、空中でイッセーと曹操が投げ出された。曹操がイッセーを捉え、光の刃がイッセーに向っていく!

 

 ガシュッ!

 

 ……イッセーは右の分厚い籠手を盾代わりにして、その槍の一撃を受けた。籠手に突き刺さる聖槍。どうやら貫く途中で止まっているようだ。

 

「――もっと出力をあげないと、この鎧は壊しきれないというのかッ! 上級悪魔なら瞬殺できる出力なんだぞッ!」

 

 そう叫ぶ曹操に、イッセーは大きくなった左の拳を構えた!

 

「おっぱいドラゴンなめんな、このクソ野郎ォォォォォォォッッ!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

 イッセーは極大な左の拳を曹操目掛けてぶっ放した! ――瞬く間に曹操が槍を籠手から抜き放ち、盾のようにしたが――。

 

「こんにゃろォォォォォッ!」

 

 ドンッッ!

 

 拳がインパクトした瞬間、籠手の肘部分に新たに生まれた撃鉄が打ち込まれた! 膨大なオーラを噴出させながら、拳の勢いが増し、曹操は勢いよく地面へと叩きつけられた!

 

 ぶ厚い鎧を装着したままイッセーが地に降り立った。そこは曹操が落下した衝撃で地が割れ、激しい土煙をあげていた。

 

 ……サァァァァ。

 

 イッセーの分厚くなっていた装甲が霧散して、風に乗って消えていく。

 

「……はぁはぁ……」

 

 イッセーが息を上げ、その場にひざをついた。どうやら先ほどの技は消耗が激しいらしい。

 

 疲労困憊なイッセー。

 

 ――だが、それにしても強くなった。

 

 おっぱいゾンビとかおっぱい召喚は置いておくとして。

 

 イッセーは本当に、強くなった。

 

 半年ほど前までは変態三人組のひとりだったのに。

 

 当初は2天龍の片割れ、白龍皇であるヴァーリに失望されていたのに。

 

 今では『黄昏の聖槍』使いで英雄派のリーダー格を殴り倒せるまでに成長している。

 

 本当に、どこまで強くなる気なんだ?

 

 イッセーの成長が、アザゼルのいう無限の可能性が少し楽しみになってしまう。

 

 と、イッセーが立ち上がるのと同時に、納まり始めた土煙のなかで曹操が立ち上がった。

 

 ……すごいな、あの攻撃を生身で受けて立てるのか。済んでのところで槍を盾にしたからと人間が耐えられるような一撃ではないんだけどな。

 

 地面に叩きつけられた衝撃で生まれたクレーターから曹操が上がっていく。

 

 鼻と口から血を流していた。それを拭い、首をコキコキ鳴らしながら言う。

 

「これは赤龍帝殿。先ほどは失礼した。驚くべき変化を遂げたようだ。十分な強さを土壇場で得るなんてね。槍で守らなければ死んでいたよ」

 

 いや、死んでおけよ、いっそ。ていうか、腕も無事なのかよ? 普通もう槍が持てなくなってるはずじゃないのか?

 

「『悪魔の駒』のルールを逸脱したキミだけの特性か……。まるでイリーガル・ムーブだな」

 

 チェスの用語で不正な手、ね。イッセーは知らないようだったが、曹操が丁寧に説明したようだ。さっきのモードチェンジ3連発のことを『 赤 龍 帝 の 三 叉 成 駒 (イリーガル・ムーブ・トリアイナ)』と名づけるんだと。

 

 まあ、強力な力を得たわけだが、それだけスタミナとオーラを消費するらしい。要修行だな。

 

 イッセーが息を吐き、曹操に言う。

 

「あんた、やりにくすぎるんだよ。ちょっと俺たちのことを舐めたかと思うと、今度は冷静に見てくるしさ」

 

「いや、キミを少しでも軽んじた俺が愚かだった。本当にすまなかった。強力な力に溺れず赤龍帝の深奥を知ろうと動いているキミはやはり強敵だ。反省をしなければいけない」

 

 曹操は肩に槍をトントンとすると続ける。

 

「――楽しい。ヴァーリと個人的に一戦して依頼の戦闘高揚かもしれない。やはり、伝説のドラゴンと戦うのは最高だな。俺が心底英雄の子孫だという証拠か」

 

 ……楽しいね。結構なバトルマニアのようで。と、イッセーが意外そうに曹操に尋ねる。

 

「昼間のエイジとの戦いは楽しくなかったのかよ?」

 

 そう訊ねられて曹操は俺の方へと視線をやり――。

 

「……正直、落胆したよ。悪魔に堕ちても英雄のなかの英雄だと思っていたのに。俺たちを捕らえられないなんて。まあ、武術のほうは噂以上に凄まじかったけどね」

 

 ふんっ、と軽く鼻を鳴らしてイッセーのほうへ顔を戻す。イッセーも「そ、そうか」とつぶやくだけだ。……あの野郎……ッ! 確かに捕まえられなかったけど、ボコボコにやられていたおまえが言う事じゃないだろうがっ!

 

「あんた、このまま全勢力と激戦をするつもりか?」

 

 イッセーの問いに曹操は首を横に振った。 

 

「冗談。元々この戦力では長期戦に向かないし、先ほども言っていただろう? 潮時だと。こちらはグレモリー眷属の力が計れただけで満足しているんだよ。それに各勢力が協力した兵力にはいくらなんでも勝てない。そちらに大損害を出せるだろうが、こちらは確実に全滅だ。不意打ちを狙った一点突破のほうが効率がいい。だからこの組織にいるのは割がいいわけさ」

 

 ……そういう理由もあって『禍の団』に所属しているわけか。まあ、戦争だったら数が重要だけど、テロを起すのなら少数精鋭のほうが色々と自由が利くよな。ある程度知名度がある組織に所属してれば報復とかを恐れて表立って襲ってくる敵も減るし。

 

「さてと、じゃあ九尾の御大将とそのご息女のお守りをしている神城がこちらに来ないうちに退かせてもらうとするか」

 

 曹操がそう言ったときだった。

 

 バジッ! バチッ!

 

 空間を震わす音が鳴り響く。空間を裂く音?

 

 音の方向へと視線を向ければ――空間に穴が生まれつつあった。

 

 曹操の逃げ道? いや、曹操も空間の穴を怪訝そうに見つめている。どうやら関係がないようだ。

 

「……まさか赤龍帝の膨大なオーラが真龍を呼んだ? いや、呼び出すための魔法陣は発動していない。九尾の御大将の意識も戻った今、それはありえない。……それに、裂け目から伝わっているのは闘気……ッ!」

 

 曹操が空間の裂け目を見つめながら、そうつぶやいたときだった。

 

 オオオオォォォォォォン。

 

 空間の裂け目から姿を現したのは――10数メートルほどの、体が細長い東洋タイプのドラゴンだった。

 

 緑色のオーラを発しながら夜空を幻想的に舞うドラゴン。あいつは――。

 

 曹操が叫ぶ。

 

「――西海龍童、玉龍かッ」

 

 やっぱり五大龍王の玉龍か。ってことは、あの人も来てるのか?

 

 玉龍の背に視線を向けてみると――小さな人影らしきものがひとつ。人影がドラゴンの背から飛び降りる。

 

 かなりの高さから降りたはずだが、人影は高さなどなかったかのようにスッと地上に降り立った。

 

「大きな『妖』の気流、それに『覇』の気流。それらによって、この都に漂う妖美な気質がうねっておったわ」

 

 年老いた声。幼稚園の年長児ほどの身長。金色に輝く体毛。黒い肌でしわくちゃの顔。法衣を着ていて、首から珠のひとつひとつが大きい数珠。サイバーなデザインのサングラスをかけていて、口には煙管。手には長い根。

 

 初めて会ったときと何も変わらない。

 

 かの西遊記で有名な闘戦勝仏、初代孫悟空だ。

 

 煙管を吹かしながら、初代孫悟空は不適な笑みを浮かべてる。

 

「おー、久しい限りじゃい。聖槍の。あのクソ坊主がデカくなったんじゃねーの」

 

 初代孫悟空が曹操にそう言う。早々は目を細めて笑んだ。

 

「これはこれは。闘戦勝仏殿。まさか、あなたがここに来られるとは。各地で我々の邪魔をしてくれているようですな」

 

「坊主、イタズラが過ぎたぜぃ。ワシがせっかく天帝からの使者として九尾の姫さんと会談しようと思っていたのによぉ。拉致たぁ、やってくれたもんだぜぃ。ったく、関帝となり神格化した英雄もいれば、子孫が異形の業界の毒なんぞになる英雄もいる。『覇業は一代のみ』とよく言ったもんじゃ。のぅ、曹操」

 

「毒、ですか。あなたに称されるのなら、大手を振って自慢できるものだ」

 

 ……随分と親しそう、というか、知り合いみたいだな。それにしても曹操が畏敬の念を持って初代孫悟空に接している。俺にはすげぇ態度が悪いのに。他の英雄派のメンバーは……さすがに初代孫悟空の登場に危機感を覚えてるのか、警戒レベルを最高にしてその場で硬直していた。

 

 と、俺たちもそろそろイッセーのところに行くか。もうあの危ねぇ砲撃も撃たなさそうだし。

 

 視線でそうやり取りをしてから、イッセーの元へ近づいていくと――。

 

「……誰だ、あの猿のような……じいさん?」

 

 イッセーがそんな疑問の声をあげた。かなり有名な御仁だが、まあ、実物は知らなくて当然か。

 

「あのヒトが西遊記で有名な初代孫悟空だ」

 

 歩みながらそう教えてやると、

 

「あ、エイジ。――って、しょ、しょ、しょ、初代孫悟空ぅぅぅぅうううっ!? あ、あの猿のじいさんが!?」

 

 イッセーは心底仰天して驚いた。信じられないと指まで指してる。俺は肩をすくませながら言う。

 

「このヒトたちがアザゼルが言ってた強力な助っ人なんだろうよ」

 

「そうだったのか!」

 

 初代孫悟空がイッセーのほうへと視線を送り、しわくちゃな口元を笑ませた。

 

「赤龍帝の坊や。よーがんばったのぉ。いい塩梅の龍の波動だ。だが、もう無理をしなくていいぜぃ? ワシが助っ人に来たからのぅ。あとはこのおじいちゃんに任せておきな」

 

 初代孫悟空は俺のほうを見て――。

 

「んん? なんじゃい。感じておった妖の気流が小さくなったと思っておったが。もう九尾の姫を救い出しておったのか」

 

 俺と九重に両側から支えられている八坂がうなずく。

 

「はい。エイジや九重、悪魔や天使の皆さん方のおかげで……」

 

「そりゃあ、よかったのぅ。元気そうで安心したわい」

 

 からからと笑う初代孫悟空。空中を飛んでいるドラゴン――玉龍もうれしそうな声をだした。

 

『ハッハッハッハ! じゃあ、俺の仕事は終わりか! オイラ、ここにはいるだけで疲れてたんだよなー! 確かに白龍皇の仲間の魔女っ子に手助けしてもらったけど、正直、もう闘うとか勘弁してほしかったんだわ! ハッハッハッハ! おわっ! ヴリトラだ! ヴリトラがいるぞ! どれぐらいぶりだぁ? おーい、ヴリトラー!』

 

 相変わらずテンション高いな……。てか、心なしか『龍王形態』の匙が困っているように見える。まあ、龍じゃないから言葉は伝わってこないけど。

 

 初代が煙管を吹かしながら言う。

 

「まったく。五大龍王のなかで1番若手だからといって落ち着きがなさ過ぎるのぅ。そんなに元気がありあまっとるなら現役を続けんかい。目立った戦いが終わった瞬間にいの一番で引退なんぞしおってからに」

 

 そう愚痴る初代孫悟空だが、玉龍のほうはヴリトラに夢中のようだ。こちらでは何を言っているか相変わらず聞き取れないが、確実に匙が困っているのは伝わってくる。……あいつ、悪魔事情や裏の世界についてイッセーよりも遥かに理解力があるからなー。玉龍に絡まれて戸惑っているんだろう。

 

「――まあ、よいか。敵は奴らだけのようじゃしのぅ」

 

 曹操へと向き直る初代孫悟空。曹操の周りに散らばっていた英雄派のメンバーが集結する。

 

「さてさて、赤いのには悪いがのー、てっとり早く曹操の子孫にお仕置きせんとなぁ」

 

 初代孫悟空が――曹操に歩み寄る。ジークフリートが6本の腕を展開させながら、初代孫悟空に突貫する!

 

「ジーク! 相手にするな! おまえでは――」

 

 曹操が制止させようとするが、ジークフリートは嬉々として立ち向かっていった!

 

「お猿の大将! あの孫悟空なら相手にとって不足は――」

 

「――伸びよ、棒よ」

 

 ドンッ!

 

 初代孫悟空が静かに漏らしたあと、手に持っていた棒が凄まじい速度で伸びていき、ジークフリートを難なく吹っ飛ばしていく。

 

「――ッ!」

 

 ドォォォォンッ!

 

 ジークフリートは一発で瓦礫の中に吹き飛ばされてしまった。初代孫悟空相手に特攻とか、本当に無茶するな、あいつ。

 

「ワシにとって不足じゃったようじゃの。若い魔剣使い、腰が入っとらん。走り込みからやり直せぃ」

 

 初代は一瞥すると、『絶霧』使いの青年が初代孫悟空へ向って手を突き出した。

 

「――捕縛する。霧よッ!」

 

 初代孫悟空を包み込むように霧が集まるが――。

 

「――天道、雷鳴をもって龍のあぎとへと括り通す、地へ這え」

 

 トンッ。

 

 初代孫悟空が呪文をつぶやき、棒で地面を一度叩くと、霧が嘘のように霧散していった。

 

「まだ神器の練り方が弱いの。そこの赤い龍のように対話したらどうじゃい?」

 

「――ッ! あの挙動だけで我が霧を……ッ! 神滅具の力を散らすか!」

 

『絶霧』使いは仰天しているようだが。相手が初代孫悟空じゃなぁ。神滅具といっても禁手状態でもないなら初代の拘束は無理だろう。

 

「槍よッ!」

 

 ギュゥゥゥゥンッ!

 

 隙を突いたかのように曹操が聖槍の切っ先を伸ばし、初代孫悟空を奇襲しようとするが――。

 

 初代孫悟空は指先ひとつで槍を止めてしまう。

 

「……良い鋭さじゃわい。が、それだけだ。まだ若いの。ワシの指に留まるほどでは他の神仏も滅せられんよ。――貴様も霧使いも本気にならんでワシにかかろうなどと、舐めるでないわ」

 

 初代孫悟空の一言を聞き、曹操は笑みを引きつらせていた。

 

「……なるほど、バケモノぶりは健在のご様子ですな……。周囲に広く認知されているのは若い頃の強さだと訊く。いまは如何ほどですかな?」

 

 曹操の問いかけに初代は不適に肩をすくませるだけだった。

 

 ジークフリートが瓦礫から立ち上がり、曹操に告げる。

 

「曹操。ここまでにしよう。初代孫悟空は『禍の団』のテロを何度も防いでいる有名人だ。これ以上の下手な攻撃はせっかくの人材が傷つくよ。僕も甘かった。――強い」

 

 それを聞き、曹操も槍を下ろした。

 

「まあ、元々退くつもりだったしな」

 

 バッ!

 

 英雄派メンバーが素早く一か所に集結し、霧使いが足元に巨大な魔法陣を展開し始める。転移魔法陣、逃げる気か! 曹操が捨て台詞を吐く。

 

「ここまでにしておくよ。初代、グレモリー眷属、赤龍帝、神城エイジ、再び見えよう」

 

 って、何を逃げようとしてやがる! まだ八坂を攫ったこと、九重を悲しませたこと、修学旅行を台無しにしたことについての落とし前をつけさせてないんだぞ!

 

 俺は八坂と九重を仲間たちに預けて飛び出す! 曹操を目指して一直線に飛翔する!

 

「――神城エイジ!」

 

 曹操が槍を構える。俺は曹操の目の前で左腕を突き出して言う。

 

「このまま無事に逃がすと思うのか?」

 

「……逃げさせてもらうさっ!」

 

 曹操が不適に笑んで槍を突き出してくる。俺の心臓を狙って放たれた槍。俺はそれを見切り、体勢を低くして滑り込むように懐へと入り込む!

 

「――っ!」

 

 曹操の表情が驚きのものへと変わる! 懐へと入り込んだ俺を上から睨むが、もう遅い。俺は左の拳を曹操の腹部目掛けて放つ!

 

 ドンッ!

 

「がはっ!」

 

 放った拳は曹操の腹部へ深くささり、曹操の体がくの字に折れた! 曹操の口から強制的に息が吐き出される!

 

 ――もう一撃ッ! 即座に左腕を引いて、右の拳を硬く握りしめる!

 

 ドンッ!

 

「ぐぅっ!」

 

 確かな手応え! 2度目の拳を受けた曹操の体が後方へ飛ぶ! とりあえずまずは2発だ。

 

「――曹操っ!」

 

『絶霧』使いの青年が飛び出し、曹操を体で受け止めた。『絶霧』使いの男が曹操に大声で呼びかける。

 

「曹操! 大丈夫か!? 曹操ッ!」

 

「……がはっ! ぐっ、はぁはぁっ……!」

 

 打撃をもらった腹部を手で押さえる曹操。内蔵にもダメージが伝わったのか、吐血していた。……それにしても、本当にタフだな。籠手の効果を使っていないとしても人間が耐えられるような一撃じゃないのに。

 

「よくもっ!」

 

「死にやがれぇええええええっ!」

 

 聖剣らしきレイピアを持った金髪の女と巨体の男が俺へと向ってきた。

 

 金髪の女はレイピアを突き出し、矢のように高速で斬りこんでくる!

 

 金髪の女から初撃に放たれた突きをギリギリまで引きつけ――かわす。

 

「――くうっ!」

 

 初撃をかわされた金髪の女はすぐに後方へ下がり――。

 

「――聖剣よ!」

 

 そう叫ぶ。最初から避けられることを読んでいたようだ。驚いた様子もなく、次の攻撃に移った。俺を囲むように全方位から数本の聖剣が生えてくる。これは木場の『魔剣創造』と同じ――望んだ聖剣を創造できる『聖剣創造』か。

 

「オオオオオォォォオオオオッ!」

 

 背後からする強烈な気配。巨体の男だな。背後からの同時攻撃か。空気の流れからして放とうとしているのは腕での攻撃か。ロスヴァイセと戦っていたときと今は姿が違っていたから、禁手前か禁手後で神器の能力が今は違うんだろう。さっきはミサイルを放つ攻撃をしていたから、おそらく今は近接系の能力。

 

 周囲から生える数本の聖剣と豪腕による連携攻撃が俺に襲い掛かる。

 

 ――が。

 

「――まだまだ俺を殺すには足りないな」

 

 俺は後ろへ下がりながら聖剣を出現させた金髪の女に手を伸ばし、英雄派の制服らしい服の襟首を掴んで引き寄せる!

 

「――ッ!」

 

 金髪の女は驚愕の表情を浮かべる。が、すぐに表情を引き締め、俺の背後に向って叫ぶ。

 

「私に構わないでやりなさい!」

 

「――ッ! ああっ! 全力でぶっ放してやるぜぇぇぇええええっ!」

 

 金髪の女の叫びにうなずき、巨体の男は豪腕を振り下ろす!

 

「――こっちも食えぇぇえええっ!」

 

 背後から振り下ろされる豪腕と共に金髪の女が叫び、周囲から生やした聖剣と手に持った聖剣を俺目掛けて突き刺してきた。おいおい、仲間もろともかよ。

 

 ドォォォンッ!

 

 巨体の豪腕が体に触れたと同時に爆発した! ほとんどない時間差で金髪の女の攻撃が放たれる!

 

 俺は避ける動作も見せずにそれらすべてを受け入れる。

 

「――ッ」

 

「――なんだと!?」

 

 金髪の女と巨体の男の表情が驚愕に染まる! それもそのばずだ。俺は爆発と聖剣を攻撃をほとんど同時に受けたというのに、全くの無傷なんだから。

 

「ふぅ」

 

 小さく息を吐く。突き刺さることも、傷つけることもかなわず衣装や素肌で止まっている聖剣たち。俺が少し動くだけで聖剣たちはガラスのように脆く、砕け散った。

 

「あ、ああ……、ああああ……っ!」

 

 襟首を掴まれている金髪の女が動揺を隠せず狼狽する。巨体の男の爆発を受けて制服がボロボロになっているのにも関わらず、恐怖に染まりきった顔で俺を見つめ、震える声でつぶやく。

 

「嘘……、嘘よ。聖剣……、聖剣が悪魔を傷つけもできずに砕けるなんて……」

 

 俺は片方の手でまだ砕けていない聖剣を掴む。……うん、悪魔ほど光のダメージを受けない。

 

「どうやら成功したらしいな」

 

 バリッ、バリバリッ。

 

 手で聖剣を砕く。砕いた破片を掌でさらに潰し、手を開く。砂へと変わってしまった聖剣の欠片が風に吹かれて飛んでいった。

 

 俺のそんな行動に驚き、戦場にいた者たちが俺へ視線を集める。俺は『絶霧』使いに支えられ、ジークフリートに守られている曹操に視線を向ける。

 

 背中へと意識を向け――。

 

 バサッ。

 

 ――翼を生やす。

 

 コウモリのような悪魔の翼ではなく、白い――天使の翼を。

 

「な、なぜ……」

 

 曹操が信じられないといった表情で俺の背中に生えた天使の翼を見つめた。俺は天使の羽を動かして言う。

 

「半年ほど前、俺は『悪魔の駒』で人間ベースの悪魔に転生したあと、『悪魔の駒』が暴走して完全な純潔悪魔へと、インキュバスの体へと変化した――と思っていたんだが、どうやらそれは違ったらしい」

 

 俺は天使の翼を引っ込め、今度は悪魔の翼を出現させる。

 

「……天使から悪魔に戻った? 天使と悪魔の両方になれるのか?」

 

 俺を観察するように見ながらそう訝しげにつぶやく『絶霧』使いだが――。

 

「――少し違う」

 

 首を横に振って続ける。

 

「俺はもっと異質な存在だ」

 

 そう言った瞬間、背中に生えていた悪魔の翼が消失し始める。黒い光の粒になって悪魔の翼だけでなく、尻尾まで消失し始める。

 

 そして、開いているほうの手を上に向けると紅い粒が集まっていき、ある形を形成していく。

 

 それは紅い――チェスの駒。

 

 ――『兵士』の駒だった。

 

 曹操は俺の手の上にあるものを見て、目を大きく見開いた。

 

「まさか『悪魔の駒』なのか!?」

 

「ああ、リアス・グレモリーに入れられていた『悪魔の駒』の『兵士』の駒だ」

 

「それが――」

 

 曹操が手に持っている『兵士』の駒に憎悪を込めた視線で睨む。が、すぐに視線は俺へと移された。俺の体を足元から頭まで見つめ、笑んだ。

 

「つまり今の神城エイジは純粋な人間だということか」

 

「……純粋とは違うがな。確かに人間だ」

 

「――ハハッ」

 

 俺の返答を聞き、曹操がいきなり笑い声を漏らした。な、なんだ、こいつ……?

 

「……曹操?」

 

 曹操の様子に『絶霧』使いが声をかける。曹操はその声が聞こえていないのか、起き上がり、俺へと近づき始めた。

 

 槍を肩でトントンさせながらうれしそうな顔を浮べて近づいてくる。どうしたんだ、こいつ……。

 

「あ……、ぅあ、あ……」

 

 ――おっと、そういや金髪さんを掴んだままだったな。金髪さんは攻撃をすることも忘れて完全に心折れて呆然としているようだ。聖剣で傷つかなかったり、簡単に聖剣を砕いたことがものすごく堪えたらしい。

 

 ……このまま隔離空間にでも転移させて捕まえるか? そう考えていると――。

 

「神城エイジッ!」

 

 曹操が聖槍を構えて正面から突っ込んできた! 仲間を捕まえていることもお構い無しに聖槍で突いてくる!

 

「――おっと」

 

 俺は聖槍をひらりとかわす。攻撃をあっさりかわされた曹操は笑んだまま――こいつ!

 

「――もらった!」

 

 体勢が崩れるのも構わずに聖槍から片手を外し、俺の掌にある『悪魔の駒』へと片手を伸ばした!

 

 曹操の手が『悪魔の駒』に触れる寸前――。

 

 ドンッ!

 

「がはっ!」

 

 俺は蹴りを曹操に叩き込み、無理矢理距離を離させた。……『悪魔の駒』を狙ったのか?

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 曹操はすぐに空中で体勢を整える。ダメージや疲労から荒い息を吐きながらも俺の手をロックオンし続けていた。

 

 ……これはもうしまったほうが良さそうだな。とりあえず『悪魔の駒』を『王の財宝』のなかへと収納する。曹操は完全に収納されるまで『悪魔の駒』を穴が空くほど睨み、いまだに人間(?)状態のままの俺へ視線を向けた。

 

「神城、エイジぃ……」

 

 狂気を孕んだ表情で俺を見つめる――というか、睨んだ。……それにしても、なんでこいつは嬉しそうなんだよ……?

 

 曹操が再度槍を構えて突っ込んでくる! 俺は片手に持っていた金髪さんを解放して曹操と相対する!

 

「槍よッ!」

 

 曹操が聖槍の出力を上げて突いてくる! 俺は片腕を突き出し、指を立てる。

 

 トンッ。

 

 聖槍が俺の籠手で覆われた指で止まる。先ほど初代孫悟空が行なったように。

 

「――ッ! ハハッ! さすがッ!」

 

 曹操の表情が驚愕から即座に笑顔へと変化する! 俺は曹操が次の手に出る前に踏む込む! 指で止めている聖槍を弾き、曹操の無防備な顔面目掛けて左の拳を放つ!

 

 ドンッッ!

 

 俺の一撃が曹操の顔面を捉えた! 殴られた反動で曹操が後ろへと吹っ飛ぶ!

 

「――ッ!」

 

 吹き飛んでいく曹操の体をジークフリートが受け止める。衝撃を殺すように後ろへと飛びながら。

 

 数メートル飛んでやっと止まった曹操。

 

「ぐぅぅぅ……ッ」

 

 ジークフリートに支えられながら曹操は顔を手で覆う! 曹操は右眼から鮮血を散らしながら、こちらに顔を向ける!

 

 血で染まった顔面。曹操は右眼を手で押さえながら狂気に顔を歪ませたっ!

 

「……強い……。強い強い強い強いッ! ハハッ! これが本物の神城エイジか! これが英雄のなかの英雄の力……ッ!」

 

 か、確実に右眼を潰してやったのにすごく元気そうだ……。ていうか、首の骨を折る気で殴ったんだが……。

 

 曹操は槍をかまえると、力強い言葉――呪文のようなものを唱えだした。

 

「――槍よッ! 神を射抜く真なる聖槍ッ! 我が内に眠る覇王の理想を吸い上げ、祝福と滅びの――」

 

 ジークフリートが曹操の口と体を手で押さえた。

 

「曹操っ! 唱えてはダメだ! 『黄昏の聖槍』の禁手――いや、『覇輝』を見せるのはまだ早いッ!」

 

「――ッ!」

 

 ジークフリートを振りほどこうとする曹操。今の曹操には俺しか見えていないようだが――。

 

「いい加減にしろ、曹操ッ!」

 

『絶霧』使いの青年にまで言われて、何とか激情を収めてくれたようだ。曹操は深く息を吐く。ジークフリートが言う。

 

「――今度こそ退却だよ。『魔獣創造』――レオナルドも限界の時間だろう。外のメンバーではこれ以上の時間稼ぎもできないだろうし、僕らのほうもこれ以上の戦闘はさすがにマズい。各種調整についても十分にデータも得られるし、いい勉強になっただろう」

 

 ジークフリートは初代を睨めつけていた。先ほどの攻撃をよほど根に持ったようだ。

 

 曹操が左眼で俺を捉える。肌寒くなるような視線。……おい、色んな意味で危なそうな視線なんだが……。

 

「わかっているさ。初代殿、赤龍帝――否、兵藤一誠」

 

 曹操の視線がイッセーに向けられる。曹操はイッセーを見ながら続ける。同時に『絶霧』使いが転移魔法陣を起動させ始めた。解放したジャンヌもヘラクレスが抱えていて、転移魔法陣の上に曹操たちと立っていた。

 

「ここいらで俺たちは撤退させてもらうよ。まったく、ヴァーリのことを笑えないな。彼と同じくキミを甘く見すぎてしまったようだ。キミはなぜか土壇場でこちらを熱くさせてくれる。今度は完全な強さを手に入れたキミと戦ってみたいものだ」

 

 曹操はイッセーにそんな言葉を送り――。

 

「神城エイジ」

 

 今度は俺へと視線を移した。その視線は昼間やこの夜での不機嫌さなんて微塵も存在しておらず、むしろ畏敬の念さえ感じられた。

 

 曹操は槍を肩でトントンさせず、しっかりと持って言う、

 

「やはりあなたは人間のままが1番輝いている。その今の力こそが。俺が心の底から憧れた英雄としての神城エイジだ」

 

 …………。

 

 魔法陣がいっそう輝きを増した。曹操が消える間際に俺に言った。

 

「――今度戦うときはこの槍の真の力をもってして全力で戦おう」

 

 それだけ言い残し、彼ら――英雄派はこの空間から消えていった。

 

 …………。奴らが消えた瞬間、どっと疲れが襲ってくる。

 

 あれが英雄派、か。曹操……、最強の神滅具……。わけのわからないことだらけだ。

 

 ただ、ひとつだけ言える。

 

 英雄派、特にあの曹操という男は――ものすごく不気味だ。

 

 ……ホモではないとは思うが、人間になった俺を見る視線が危ない。

 




 自重しなくなる曹操……。 次回、エピローグ。

 九尾親子は番外へ。やっぱり昨日の今日ではできなかった……。

 あと自分も、ここのえ → 九重 と変換していますが、

 九重=ここのえ ではなく、九重=くのう

 と、読みます。

 次回、エピローグ!

 立ちまくるフラグ!

 原作がインフレで突っ走りまくって、俺は爆発しそうです!

 いくら初代孫悟空だからって、聖槍の一撃を指で止められるわけがないだろうっ! 曹操相手に苦戦してた堕天使総督アザゼル先生どんだけ弱いんだよ!?

 もう全盛期であろうと、三代勢力を初代孫悟空とか天帝の勢力だけで倒せるんじゃねぇの?

 あと、不利だからってイッセー考えなさすぎるだろ! もしも『僧侶』の一撃で擬似空間が壊れて現実空間まで更地になったら、どうする気だったんだ……?
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