渋谷凛に呆れられながら童貞喪失。するプロデューサー(敏腕) 作:電柱保管
原作:アイドルマスターシンデレラガールズ
タグ:R-18 オリ主 アイドルマスターシンデレラガールズ 渋谷凛 オリキャラ
FC2小説で公開しているものをマルチ投稿しています(一部改変あり)
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ノックしても返事がなかったので勝手にドアを開けると、部屋のなかで担当プロデューサーがオナニーをしていた。
「……なにやってんの?」
「ど、どわぁっ! 渋谷さん!?」
凛に気づいた男は、慌てすぎたせいで態勢を崩し、腰掛けていたソファから見事に転げ落ちた。頭を逆さにし、下半身丸出しで大股を開いている姿は馬鹿そのものだ。
「……入っていいわけ?」
凛がため息まじりに尋ねると、男は間抜けな態勢のままこくこくと頷いた。
「もちろんです、ええ。しかし渋谷さん、今日はレッスンお休みですよね? なにか御用ですか?」
男のきょとんとした表情を見て、凛は再びため息を落とす。
「呆れた。自分で人のこと会社まで呼びつけておいて、なにか御用ですか、なんて訊く?」
凛は今日の昼間、彼からメールで連絡を受けてわざわざ学校帰りに事務所へ寄ったのだ。
「おお、そうでした! すみません、すっかり失念していましたよ」
ようやく起き上がった男は、緩んでいたネクタイを締め直した。
……こんなふざけた男でも、彼はいちおう、凛の担当プロデューサーだ。
シンデレラブロジェクト。
凛も参加しているこのアイドル事業部の統括責任者が彼なのである。
年齢的にはまだ若手といえる彼が事務所の命運を掛けた企画のプロデューサーに抜擢されたのは、その実績ゆえだ。驚くべきことに彼がこれまで手掛けてきた企画やアイドルユニットは、ことごとく予想以上の成果を上げているのだという。普段の彼を見ているかぎりではにわかに信じがたい話だが。
凛としてはこんな男にプロデュースされるのは不安しかないのだが……。
「……まあいいわ。それで?」
内心納得いかないものを感じながらも、凛は敏腕プロデューサー様を問いただした。
「いやぁ、このところ仕事が忙しくて溜まっちゃって仕方なくてですね。この時間なら誰も来ないかな~と思って、チャチャッとヌいちゃおうと思ったんですが、いやはや」
「そ、そんなことは誰も訊いてない! なんで私を呼び出したのかって言ってんの!」
「あ、そちらですか」
ホント、なんなのよ、こいつ……。
凛は人からクールだと言われることが多い。自分では別に冷たい態度をとっているつもりもないのだが、なぜか人からはそう評される。普通に話していても不機嫌に見えるらしく、なかには凛と喋っているだけで怯えてしまう相手もいる。
ところがこの男だけは初めて会ったときから凛に対し物怖じするような様子はおくびも見せなかった。変に相手を威圧しないならばそれに越したことはないはずなのだが、ここまでとなるとさすがに調子が狂う……。
「ええと、来週のスケジュールに関してですね、二、三、急ぎで確認してもらいたい案件がありまして」
ハキハキと言いながら、自分のデスクへ向かう男。凛はそんな彼から少し目を逸らしつつ、眉をひそめる。
さっきから、見苦しいものが視界に入っておちつかないのだ。
「仕事はやるけどさ。その前に、それ。先になんとかしてよ」
凛は男の下半身をチラリと見た。下半身である。彼はあろうことか、局部を露出させたまま歩きまわっていたのだ。
「それって……ああ、これですか」
凛の視線をたどるように、男も自分の逸物に目を落とした。
「そんなんじゃ仕事にならないでしょうが。待っててあげるから、なんとかしなさいよ」
「なんとかって……え? 渋谷さんさえ問題なければ、僕としては見られながらってのもやぶさかではないですけど……」
期待のまなざしを凛に向けながら、男はいきり立った逸物に手を添えた。
「そ、そういう意味じゃない!」
男の言葉の意味に気づき、凛はかぁっと顔を赤くする。
「え、じゃあどういう……? ひ、ひょっとして渋谷さんがお手伝いを!?」
「ちんこしまえって言ってんの!」
思わず大声で怒鳴ってしまった。思いきり男性器の名称を叫んでしまったが、男の態度に呆れすぎて、恥ずかしがる気にすらなれない。
「ハハ、冗談ですよ、冗談」
男は快活に笑うと、肩で怒らせる凛を尻目に、脱ぎ捨ててあったズボンを拾い上げた。
まったく……、なにを考えているのだ、この男は。担当するアイドルに局部を見せつけ、あまつさえ最低の下ネタでからかうなど、頭がおかしいとしか思えない。普通ならばセクハラで訴えられたっておかしくない。
……とはいえそんな男の言動を凛も許容してしまっているのもたしかだ。
凛だけではない。
この男からセクハラまがいの言動を見せつけられているのは、他のアイドルたちも同様だ。プロジェクトのなかでは年長の新田美波はもちろんのこと、まだセクハラの意味もよく分かっていないであろう城ヶ崎莉嘉や赤城みりあにまでも下ネタを振っているのだから、本当に救いようのない変態だ。
ところがなぜか、プロジェクト内から彼への抗議や不満の声が上がったことは今までいちどたりともない。あの純情な島村卯月でさえ、この男に裸を見せられてもちょっと困った顔をするくらいなのだ。男性プロデューサーと女性アイドルの関係は一線を超える危険を常にはらむものだが、この男に関しては性におおらかすぎてかえってその心配もしなくてすむといおうか……。とにかく、凛も含めこの男のもとに集うアイドルたちは彼に対し気を許してしまっている面がある。自分たちが自覚している以上に……。
そうこうしているうちに男はようやくズボンを履きおえようとしていた。凛に背を向け、なにやら股間のあたりでゴソゴソとやっている。まあ、ベルトでも締めているのだろうが……。
「……ねえ、まだ?」
男がいっこうに振り向かないので、凛はとうとう焦れて横目で様子をうかがった。
「い、いえ、もう少しなんですけど、ちょっとなかなか収まらなくて……うっ!」
もぞもぞと手を動かしていた男が、突然うめき声を上げて固まった。
「ちょっと……なに?」
凛は怪訝そうに男をうかがう。
男は内股になり、生まれたての仔馬のようにぷるぷると全身を震わせていた。
「い、いえ……、ちょっとジッパーで、ムスコを挟んで、しまったみたいで……」
は、挟んだ?
よく分からないけど、男の額には脂汗が浮かんでいた。
「だ、大丈夫なの?」
「大丈……夫です。ゆ、ゆっくり戻してやれば……ぐ、ぐああっ!」
叫び声が耳をつんざき、凛はびくりと身を震わせた。
「ど、どうしたのよ!?」
「し、失敗しました……。事態が余計に悪化して……ううう」
男はとうとう悶絶するように床に倒れこんでしまった。
想像以上の事態に凛はうろたえる。
「わ、私、誰か呼んでくるから!」
振り向きかけた凛の腕を、男が強く掴んだ。
「ま、待ってください! こ、こんな……こんな情けない姿を会社の人間に見られるわけには……っ」
苦悶の表情を浮かべながら凛に訴える男。いつものヘラヘラとした顔からはかけ離れた必死の形相だった。こんな血眼になって頼まれては、凛も第三者を介入させるのは気が引けてくる。
「でも……、じゃあ、どうするのよ?」
「し、渋谷さんが……ちょっと診てもらっていいですか……?」
「診るって……は、は!? わ、私が!?」
驚く凛に対し、男は苦しげに頷いた。
「傷がついてたりしたらおとなしく病院に行くんで……お、お願いします」
「~~~っ……わ、分かったわよ!」
悩みに悩んだものの、凛は結局男の頼みを聞き入れてしまった。
まがりなりにも相手は怪我人だ。冷たくあしらうのは凛も気がとがめたこともある。しかしそれ以上に――なぜか凛はいつも、気づけばこの男の言うとおりに動いてしまうのだ。
*
「では、失礼して……。あ、優しくお願いします」
「い、いいから黙って見せなさいっ」
今更になって緊張してきた凛とは裏腹に、男はなにかふざけた態度に思えた。まあ痛みを紛らわせるためだと好意的に解釈しておく。
男は腰を位置を少しずらして凛に局部を差し向けた。仰向けになって両足を上げ、凛に向かって股を開いたその姿は、さながら母親におむつを替えてもらう赤ん坊のようだった。……こんな大きな赤ん坊は勘弁願いたいが。
「ジ、ジッパーは外れていると思うのですが……傷などついていないかどうか……」
「わ、分かってるわよ。診てあげるから、じっとしてて」
凛は覚悟を決めて、男の陰茎と相対した。
スラックスの合わせ目から飛びだした陰茎は、見事なまでに反り立っていた。屹立は己を誇示するかのごとくまっすぐ伸びており、その長さは先端がへそまで達しそうなほど。太さもかなりのもので、食べごろのさつまいもくらいのサイズ感を抱かせた。包皮も完全に剥けており、赤黒く、しっかりとエラの張った亀頭は禍々しささえ湛えていた。
こんなものを無理にズボンへ押し込もうとすれば、そりゃあ事故が起こっても不思議ではない。
凛は顔をしかめながらも裏筋の部分にさっと目を走らせた。ぱっと見た感じでは、傷などは見当たらないが……。
「あの、できればもう少し近くで診ていただけますか? 小さな傷でもばい菌が入っちゃったら大変なので……」
「わ、分かってるわよ!」
凛は自然と荒くなる息を必至に整えながら、セミロングの黒髪を手で抑えて男の局部に顔を近づけた。
つんとした刺激臭が凛の鼻をついた。汗が蒸れたような独特の匂い。だが臭いとは感じなかった。むしろ少し癖になりそうで、凛はひそかにクンクンと鼻を嗅いでしまった。
「あ、臭かったらすみません。お風呂はちゃんと毎日入ってるんですけど」
「べ、別に臭いなんて嗅いでないわよ!」
悪さを見咎められたみたいで、凛はわかりやすく狼狽してしまった。
「ああ……、そんなところで喋られると、渋谷さんの息がかかって、ああ……」
「へ、変な声出さないで! ったく……もう」
凛は気を取り直し、あらためて男根を覗き込んだ。合わせ目の布を少し引っ張り、今度は根本のほうまで調べてみる。陰毛が邪魔で少し見にくかったものの、目を凝らしてもやはり傷口らしきものは見つからなかった。凛は知らず知らず安堵のため息を放った。
「血も出てないみたいだし、まあ、大丈夫なんじゃないの?」
「そうですか。どうやら陰毛をひっかけて二、三本引っこ抜いてしまっただけだったようですね」
凛が診察結果を告げるやいなや、男はなにもなかったかのようにすばやく立ち上がった。今まで苦しんでいたのが嘘のような機敏さだ。……いや、ようなというか、本当に嘘だったんじゃないだろうな?
「いやー、なんにせよよかったです。渋谷さん、どうもありがとうございました」
凛が疑いの目を向けているのを知ってか知らずか、男はいつもどおりのとぼけた口調でお礼を述べた。
……まあ、本気で痛がっていたみたいだし、全部が全部演技だったってことはないだろう。
「……ったく、おおげさなのよ、あんたは。だ、だいたい、そんな大きなものぶら下げてるから、こういう目に遭うのよ」
凛は勢いで男の股間を一瞥した。そこではいまだに男根が威勢よく天井を向いていた。
「いやはや、面目ない。なにせ独り身のもんですから、油断するとつい溜まりすぎちゃって」
「……へえ。あんた、彼女とかいないんだ?」
意外といえば、意外だった。独身なのは知っていたけれど、恋人もいなかったとは。この男、顔はけして悪いほうではないし、体つきもよく見れば適度に引き締まっていてセクシーだ。おまけに仕事もできる。付き合っている相手のひとりやふたり、いてもおかしくなさそうなのに。
「ん? ひょっとして渋谷さん、僕のこと、気になります?」
「な、ならないわよ! なにニヤニヤしてんのよ、気持ち悪い!」
「ですよねー。僕みたいな変態が、渋谷さんに相手されるわけがない」
男のからっとした口調は卑屈さのかけらも感じさせなかった。よく言えばおおらかなのだけど、やはりなんとも掴みどころがない。
というか、変態だという自覚はあったのか……。
「そう思うなら、少しは普段からシャキッとしなさいよ。あんた黙ってさえいればそこそこなんだからさ」
口を開かなければいい人なのに、と世の女性から評されるであろう典型のような男だ。
「渋谷さんからそう言っていただけるだけで光栄ですよ。生まれてこのかた、いちどたりとも彼女ができたことのない僕でも、自信を持って生きていけます」
あまりにさらりと言われたから凛も流しそうになったが、え、なんだって?
「いちどもって……嘘でしょ?」
これはさすがに耳を疑わざるをえなかった。彼女がいないと言ってもせいぜいここ数年のことだろうと思い込んでいたが、これまでひとりも、となると話が違ってくる。
「やだなぁ、今さら見栄張ったりしませんて。僕なんて所詮、彼女いない歴=年齢の童貞野郎です」
「ど、どうて……っ」
急に話が生々しい方向に飛び、凛は頬を赤らめた。
……いやまあ、視線を少し下にずらせば、話どころか、いまだそそり立ったままの逸物を拝むこともできるのだが……。
「あ、童貞って言っても、素人童貞ですよ! 挿入経験自体は二十歳のときにソープランドの泡姫さんと――」
「し、知るか! き、訊いてないわよ、そんなことまでっ!」
男が始めた謎の弁明を、凛は慌てて遮った。
男はなぜか少し不満そうに唇をとがらせる。
……この男の場合、顔とか仕事とかいう以前に、やはり性格というか人間性に問題がありすぎる気がしてならない……。
「……まあ、いいです。ときに渋谷さん。ちょうどいい機会なのでお訊きしておきたいんですけれど、渋谷さんは男関係のほう、今どんな感じですか?」
「どんなって、わたしだって別に彼氏とかは……ハ!」
あまりに自然な流れで訊かれたため、思わず答えてしまいそうになっていた。
「なな、なんであんたにそんなこと言わなきゃいけないのよ! あ、あんたには関係ないでしょう!?」
うろたえつつもなんとか取り繕ったつもりだったが、男は真顔で凛を見返してきた。
「いえ、おおいに関係あります。僕は渋谷さんのプロデューサーですから。担当アイドルの交流関係を把握しておくのも、プロデューサーの大事な仕事なんです」
男はいつのまにか、黒革の手帳を手に持っていた。インデックスがついたシステム手帳で、男がいつも携帯しているところ見ると、彼はあれにアイドルたちのスケジュールなどを書き込んでいるのかれしれない。
「……わ、分かったわよ。ま、まあ……付き合ってる人は、いないわよ……今は」
釈然としない思いはあったけれど、仕事だと言われてしまっては頑なに断るわけにもいかなった。最後にひとこと付け加えたあとで、こんなヤツ相手になんで見栄張ってるんだろうと後悔してしまったが。
「ふんふん、なるほど。お付き合いしている男性はいない、と。しかしそうなると、渋谷さんも欲求不満になりがちなのでは? 悶々としたときなんかはどう処理してるんですか? オナニーですか?」
「な……っ!」
なんの準備もなく直接的な質問をぶつけられ、凛は瞬間湯沸し器みたいに全身の血を沸騰させた。
「あれ? 違いました? あっ、もしかして、恋人はいないけどセックスフレンドはいらっしゃるとか――」
「い、いるわけないでしょ! そんな相手っ」
凛は思わず声を荒げた。どうしてこの男はこちらの気も知らずこう軽口を叩くのだ!
しかし凛に怒鳴りつけられても男は涼しい顔で質問を繰り返した。
「恋人もセフレもいないとなると、やっぱりオナニーで処理するしかないですよね? 別に恥ずかしがることではないですよ? 僕だってオナニーはしますし」
「あ、あんたと一緒にしないでよ。だいたい、男と女じゃ違うでしょ」
「そんなことないでしょう。女の人だって性欲はありますよ。それとも渋谷さんは、そういう欲求がまったくないと?」
「そ、それは……」
嫌らしい訊き方だった。意地を張ってそうだと答えることもできるけれど、嘘をついているのは見え見えだろう。
唇を噛んで黙りこんだ凛を諭すように、男は少し優しげな顔になった。
「すみません、意地悪なことを言ってしまって。でも、ライブやテレビ出演の予定を立てるためにも、アイドルの皆さんの体調をきちんと把握しておく必要があるんです」
男の力説には妙な説得力があった。普段がふざけた態度なだけに、たまに真面目なことを言われるとつい真に受けてしまうのだ。
凛はもじもじと内股をこすり合わせながらも、男に向けてぼそりと漏らした。
「……し、してるわよ、ひとりで。たまにだけど……」
「たまにというと、週に一回くらいですか?」
「そ、そんなに多くないっ。ホントたまにそんな気分になったときだけで……、一ヶ月か二ヶ月に一回とかよ」
「ふぅん。オカズはなにか使うんですか?」
「オ、オカズ?」
「ええと、アダルトビデオとかエロ本とか、そういう類のものです。女性でしたら、女性誌やインターネット上の体験談記事なんかを読んで妄想を膨らませて……という人も多いみたいですね」
「そ、そうなの? そういうのは私は……あまり見たことがない」
「となると、気になる男性を思い浮かべて、とかですか?」
「……」
凛は目の前の男をちらりとうかがってから、こらえきれずにうつむいてしまった。きっと自分の顔は今、真っ赤になってしまっている。凛にとってはそれ自体が無性に恥ずかしかった。
凛の無言を男は肯定の答えと受け取ったようだ。
「なるほど。渋谷さんはリアル妄想派、と……」
男はぶつぶつ言いながら手帳にペンを走らせた。
凛からしたら自分の性癖が白日の下にさらけだされたようなもので、恥ずかしさで身悶えてしまいそうだ。
「も、もういいでしょ! す、するわよっ、私だって、ひとりエッチくらい……」
あえて卑猥な単語を口にすることで、凛は自分の胸中をごまかそうとした。相手に対しても、自分自身に対しても……。
いっぽう男のほうは、凛の真意を見透かしているのかいないのか、慇懃無礼な態度を貫いていた。
「ええ、ありがとうございました。あ、でも最後にひとつだけ」
そう言って男は、ほんの一瞬だけ鋭い目つきになって、凛の瞳を覗き込んだ。
渋谷さん、今はどんな気分ですか?」
「え……?」
急に妖しさをまとわせた男の声色に、凛は呑まれた。生唾が自然と喉元を流れ落ちる。凛の視線は吸い寄せられるように男の下腹部へ降りていった。ギチギチに勃起した陰茎が生える下腹部へ……。
「正直に言っちゃいますと、僕はもう、さっきからムラムラしっぱなしです。勃起が全然収まらない」
「あ……」
電流を流されたようにビクッビクッと脈打つ屹立が、男の言葉を証明していた。
「そのうち収まってくれると思っていたんですが、渋谷さんのオナニーの話を聴いていたら逆にどんどん硬くなってしまって……。あ、渋谷さんのせいではないですよ! すべては僕の不徳のいたすところです。まったく、担当アイドルとの打ち合わせ中に興奮するとか、プロデューサー失格だな」
男の口調はいつもどおりさっぱりしたものなのだが、凛にはなぜか、彼が辛そうに見えた。仕事が忙しくてこのところ処理をしていないと言っていたし、長時間勃起したままで射精もできずにいるというのは、男にとっては蛇の生殺しのようなものだろう。それに思い返せば、凛の来室によって彼の自慰を中断させてしまっていたのだ。
「あ、あのさ……、ごめんね、なんか……」
罪悪感に苛まれた凛が申し訳なさそうにうつむくと、男は慌てたように首を振った。
「ですから、渋谷さんはなにも悪くありませんって! ただ、すみませんが、少しだけお時間をいただいてもよろしいですか? さすがになんとかしないとマズそうだ。まあ三十分もあれば足りると思うので、渋谷さんは下のカフェで時間をつぶしてていただければ……。あ、代金は経費で落としますんで」
「う、うん……」
凛はぎこちなくうつむくと、男は少しバツの悪そうな笑みを返してきた。
ひとりで……処理するつもりなのだろうか? 男は早くも右手で剛直を握っていた。無意識の行為なのだろうが、それほどまでに我慢が利かなくなっているということか……。
「本当に、申し訳ないです。これだから童貞はダメですよねー」
男はおどけたように自嘲した。凛にはそれが、精一杯の強がりに聞こえて。
「そ、そんなに童貞だからって言うならさ……す,捨てちゃえばいいじゃん、そんなの」
気がつくと凛はそう口にしていた。自分でももう、止められなかった。
「え? なんですって?」
目を丸くする男の前で、凛は覚悟を決めたように顔を上げた。
「だ、だから! 一回女とエッチしておけば、そんなふうに無闇矢鱈にちんこが大きくなることも、なくなるんじゃないかって言ってんの!」
売り言葉に買い言葉、でもないが、凛は普段ならば絶対に口にしないであろう卑猥な言葉を大声で叫んでいた。
「ん~、一理ありますけど、経験しようにも相手がいないですし……」
「……私が……してあげるわよ」
「え?」
え? じゃない! 聞こえてたでしょ!?
「私が相手になってあげるって言ってんの! なに? 私とじゃ不満なわけ!?」
つい邪険な態度を取ってしまったあと、もしこれで断られたらと思って、凛は焦った。
「まさか! 渋谷さんにお相手してもらえるなんて夢のようですけど……、渋谷さんは、いいんですか、僕なんかで?」
「い、いいって言ってるでしょ! あんたみたいな変態猿、放っておいたら他の子たちまで襲いそうだし、そ、それに……」
「それに?」
「~~っ、な、なんでもないっ!」
真っ赤になって男から顔を背けつつ、凛はそっと自分の下腹部に触れた。
そこはもう、火照るような熱を帯びていた。子宮が発熱して、腹のなかがグツグツと煮えたぎっているようだった。
いつからだろうか、凛もまた、興奮を覚えていたのだ。
アイドルの体調管理も仕事のうちだって言うなら、私のこれもなんとかしてよね……。
そんな気持ちを秘めて、凛はとぼけた顔の男をキッと睨んだ。
*
「それじゃあ渋谷さん、そこのソファに横になってください。あ、パンティは脱いでおいてもらえるとありがたいです」
「い、いいからあんたも準備しなさい!」
悪態をつきながらも、凛は言われたとおり来客用のソファに寝そべり、下着に指を掛けた。ゆっくりと下着を降ろしていく。布地はすでにぐっしょりと湿っていた。
足首から脱げたショーツはソファの隅に落ちた。拾っておこうかとも思ったけれど、凛がパンティに手を伸ばすよりも先に、準備を終えたらしい男が凛に覆いかぶさってきた。。
「感激だなあ。渋谷さんのマ◯コを僕のちんぽでズッコンバッコンできるなんて」
「バ、バカッ! 恥ずかしいこと言うんじゃない……っ」
この期に及んで最低な軽口を吐く男の胸を、凛はポカポカと叩いた。まったく……ムードもへったくれもないじゃない。
「ご覧のとおり僕のほうは準備万端ですが、渋谷さんはいかがですか?」
男は上着もワイシャツも脱いでタンクトップ一枚になっていた。下はなにも履いていない。ご丁寧にも靴下まで脱いでおり、逆になぜタンクトップだけは身につけているのか、理解に苦しむくらいだった。
対照的に凛はほとんど衣服を着たままだ。制服のブラウスもスカートも身につけた状態で、パンティだけを脱いでいた。……制服姿で下着をつけていないというのはかえってイヤらしい感じがしたが、かといってこの男の前で裸をさらすのは恥ずかしかった。
「わ、私はこれでいいし」
「あ、服もそうなんですけど、ちゃんと濡れてるかなって。よく濡らしておかないと、たぶん入らないと思うので」
「濡れ……? ……あっ!」
男の言葉の意味に気づき、凛は火がついたように顔を真っ赤にした。
「もし必要でしたら、僕もお手伝いさせてもらいますけど」
自らの指先をぺろりと舐める男を見て、凛の顔はますます熱くなる。
「い、いらないわよ! も、もう一回言っておくけど、挿れるだけだからねっ! わ、私の体には触っちゃダメだからっ。それとっ、中には絶対出さないこと!」
凛は事前に言い含めておいた注意事項を繰り返した。体を許す覚悟は決めたつもりだったが、いざ男を迎えるとなると、不安と恐怖を拭いきれなかった。
「分かってますって。だからほら、ちゃんとコンドームもつけてるでしょ?」
凛は男の視線を追って彼の剛直へ目をやった。男の宣言どおり、肉槍にはきっちりと避妊具が装着されていた。コンドームは男が持っていたものだ。なんで都合よくそんなもの持ち歩いてのよと凛は軽く訝しんだが、男によれば「童貞とはいえコンドーム常備は紳士の嗜み」だそうだ。……本当か?
「……まあいいわ。私のほうも大丈夫だから……は、早くしてよ」
……少しせがむような言い方になってしまっただろうか? 凛は羞恥心に襲われぎゅっと目をつむった。
しかし気持ちとは裏腹に、体は男の侵入を今か今かと待ち構えていた。とめどなく愛液が溢れる凛の秘芯はすでに充分すぎるほどほぐれていた。下腹部のうずきもいよいよ耐えがたいくらいになっている。
「では、遠慮なく行かせてもらいますね」
静かに宣言すると、男は正面から凛の両脚のあいだに体を入れ、ゆっくりと腰を近づけてきた。
男の先端が股間に触れた瞬間、凛はビクッと全身を震わせた。スカートはいつのまにか男の手でたくし上げられ、凛は薄く恥毛が茂った性器まで露わにされていたのだが、男の手癖を咎める余裕はもう残されていなかった。
「ん、んふぅ……」
艶っぽい息が凛の鼻から漏れた。男は凛の秘裂に先端を入念に擦りつけていた。滑りをよくするために自らのモノに愛液をまぶしているのだろうが、凛にしてみれば焦らされているようなものだった。
早く……凛が思わず懇願を口に出してしまう直前、男は見計らったように剛直を押し込んできた。股肉が内側から押し広げられるような、奇妙な感覚。
「んっ!」
「痛みますか?」
凛が声を上げたのは快感のためだったのだが、男は気遣ったのか一旦腰を止めた。
「わ、私のことは気にせず……つ、続けていいから」
男は苦悶に歪む凛の表情を冷静に観察し、凛の耳元にそっとささやいた。
「思い切って進めてしまったほうがいいかもしれませんね。すみませんが少しだけ我慢してください」
「う、うんっ」
凛がおびえる仔ウサギのように小刻みに頷くと、一泊の間を置いた後、男は弾みをつけて腰を使った。
「ひうんんっ!」
異物感が一気に体奥にまで広がり、凛は甲高い悲鳴を上げた。
とはいえ痛みは感じなかった。膣全体がじわじわと熱くなるような妙な感覚はあったものの、それは不快ではない。むしろ鼠径部から裏腿にかけて温かさが広がっていくような心地よさが凛を襲った。
男も凛の状態を察知しているのか、変に腰を引くことはせず、肉棒を奥に収めたままでじっとしていた。
男の太い肉槍はいまや、凛の花弁をずっぽりと貫いていた。茂みの向こうに見え隠れする結合部は妖しく濡れそぼっている。雌壺からとめどなく淫液が溢れ出しているのだ。
「いちおうこれで全部入りましたが、どうでしょう? お加減は」
「なんか変な感じ……だけど、悪くはない……かも」
凛は薄く双眸を開けて、正直に答えた。
「それならよかった。渋谷さんを苦しめてまで欲望を満たすわけにはいかないですから」
「……っ!」
屈託なく微笑んだ男を見て、凛は思わずドキリとした。き、急に優しげなことを言うなんて……反則だ。
「あ、あんたは……ど、どうなのよ? その……き、気持ち、いいわけ?」
凛はチラチラと男を見上げた。快楽が押し寄せる状態では言葉を選ぶ余裕もなく、わりと直截な訊き方になってしまった。
「そりゃあもう。めちゃくちゃ気持ちいいです。気を抜くと一瞬で果ててしまいそうなくらいですよ」
「そ、そうなんだ……」
思わず頬が緩んでしまった。
自分の体が彼を悦ばせている。それが嬉しかったのだ。凛自身はほとんど自覚していなかったのだが。
男は凛に負担が掛からぬよう最小限の動きでやや前かがみの態勢を作ると、凛の頬にかかった長い髪をそっと払いのけた。
「このままでも充分気持ちいいのですが、せっかくだから渋谷さんを思う存分味わいつくしたい。少しずつ動いてみてもいいですか?」
「う……ん。いいよ……動いて」
凛が吐息混じりに口にしたのとほぼ同時に、男は抽送を開始した。奥まで収まっていた剛直をゆっくり引き抜いていき、結合部から雁首がわずかに覗いた瞬間、再び奥へ押し戻していく。ゆっくりではあるがなめらかなピストン。正確無比な男の腰使いは凛の性感を徐々に高ぶらせていった。
「んふぅん、あぁ……あ、あっ」
艶めかしい声を聞かれることにはまだ抵抗があって、凛は無意識に自分の指を唇で噛んだ。
だが、男はすかさず凛の手首を掴み、そっと口から指を外させた。
「渋谷さんの声、綺麗ですから、聴かせてください」
「やだ、そんな……っ、あ、あ、アンッ」
イヤイヤするように首を振りながらも、凛は男の動きに合わせて喘ぎ声を漏らした。快感には抗えなかった。
男の腰使いはこなれたものだった。けして無理には動かず、肉棒全体を使って凛の秘肉をマッサージするようにほぐしていく。それが凛を快感の渦へ導いていった。
凛が気づかぬうちに、男は徐々にピストンのスピードを上げていった。男の腰は今や熟達した餅つきのようなハイテンボで前後していたが、凛の膣肉は剛直の抜き差しをしっかりと受け止めていた。
「あ、ン、んんっ、あんっ、あんっ」
男の突きとリズムを合わせて凛は喘ぎ声を奏でた。
接合部ではニッチュニッチュと卑猥な伴奏が凛の乱れた歌を盛り上げる。
「渋谷さんのおマ◯コ、グチョグチョに蕩けてて僕のちんぽに絡みついてきますよ。汁もダラダラ流しちゃって、ソファまでベトベトになってる」
「ああ……、ヤダ、言わないで……」
膣内の具合をいやらしく実況され、凛は羞恥に悶えた。男の言葉は否応なく想像を掻き立てた。淫らな光景が瞼の裏に浮かんだ。喘ぎ声ももはや我慢できず、凛は乱れた呼吸を繰り返した。
「息、苦しそうですね。少し楽になりましょう」
そう言って男は一旦攻めを休み、凛のブラウスのボタンに手をかけた。ゆっくりと、しかし手際よくボタンが外されていく。凛はもう抵抗を示さなかった。
ブラウスをはだけさせると、男はブラジャーにも指をかけ、器用に下へとずり下げた。カップの部分が外れ、やや小ぶりだが形のいい乳房がポロリとまろびでた。
「綺麗ですよ、渋谷さん」
「バ、バカ……、あんまジロジロ見んな……」
か細い声で強がった凛は、両腕をクロスさせて顔面を覆っていた。胸部よりもこの赤面した表情を見られるほうが恥ずかしいと思った。
「そうですか……。でしたら、こうしましょう」
「え……っ?」
男は凛の腕を引き、上半身を起こさせた。同時に自らも尻もちをつき、両脚を前方へ投げ出した。そうすると凛は男の腰に乗りかかるような態勢を自然ととることになった。下半身はつながったまま、凛と男は間近で向かい合う。
「これなら僕に胸を見られないでしょ?」
たしかに、抱き合うようなこの態勢では男が凛の胸部を眺めるのは難しいだろう。しかし……。
「これはこれで……恥ずかしいんだけど……」
少し頭をずらすだけで男とすぐに唇を交わせる。そんな距離感だった。
「そうおっしゃらずに。大変そうでしたら僕に掴まってくれていいので」
「ん……っ」
男がまた腰を使いはじめたため、凛はとっさに男の首に腕を回した。男のほうも両手で凛の腰を抱え込んでいるため、ふたりはまさにハグをしている状態だ。
「対面座位って言うらしいですよ、こういうの。ほら、さっきまでの体位とはまた違った感触でしょう?」
「んっ! あ、ンッ、んんっ」
悩ましげな喘ぎが男の問いかけに対する答えだった。たしかにさきほどの体位とは男の棒が当たる箇所が異なっていた。さっきは膣全体を万遍なく擦り上げられていたが、今度は奥の一点を集中的に連打されているような感覚。腰の動きが制限されているためそうした攻め方になっているのだろうが、これはたしかに新鮮な快感だった。
「ここですか、渋谷さん? ここが気持ちいいんですか?」
「んっ、うんっ、そ、そこ、そこ、もっと……」
男は器用に突く箇所を少しずつずらしながら凛の性感ポイントを探っていった。そして凛の弱い部分を探り当てると、男は的確にそこを突き上げていった。快感は急上昇し、凛の膣は知らず知らずキュウッと締まった。
「くう……っ、締めつけすごい!」
「あンッ!」
愉悦に喘いた男を、凛はギュッと抱きしめた。肉体の快感もさることながら、凛は密着度の高さという点でもこの体位が気に入った。互いに腕と脚を絡め合うこの態勢では、まさしく男と一体化しているように感じられた。相互に浸透する体温。耳元で聞こえる荒い息遣い。存分に色香を含んだ汗の匂い。すべてが男の存在を感じさせた。この男はたしかに自分のものなのだと思え、凛は嬉しくなった。
キスがしたかった。
しかしトロンとした目で見つめても、男は凛に微笑みを返してくるだけだった。まるでお預けを食わせるように。
「渋谷さんは奥を攻められるのがいちばん感じるみたいですね。だったらこういうのはどうでしょう?」
「え――? き、きゃあ!」
男がとった行動に、凛はおおいに驚かされた。なんと男は、凛とつながったままぐるっと体の向きを変えたのだ。ちょうどソファに腰掛ける恰好となり、床に両足をつける男。そして凛の膝の裏へ両腕を差し込み臀部を抱えると、彼はぐっと腰を浮かせた。
「一気に行きますから、しっかり掴まっててくださいね。それっ!」
「え、ちょっ……、きゃあ!」
男は掛け声とともにソファから勢いよく立ち上がった。凛を抱え込んだまま立ち上がったのである。下半身はつながったままだ。当然、凛の体は重力に従って下へ落ちようとするわけで、凛の体奥は、彼女の体重分の力でもって男の肉棒に突き上げられた。
「んふぅっ!?」
凛はたまらず短い咆哮を放った。子宮をズンッと突き立てられたような衝撃が腹の奥で響き渡った。とてもではないがうら若き乙女に耐えられる悦楽ではなかった。
「駅弁スタイルってやつです。ほら、僕が渋谷さんを抱える恰好が、駅のホームで弁当を売り回っている人みたいでしょう? って言っても、渋谷さんくらいの年齢じゃそんなの見たことないか。まあ僕もないですけど」
「ハァ、ハァ……!」
軽口の相手をしている余裕はもはやなかった。凛はぷるぷると震えながら必死で男にしがみついていた。本能的に落下の危険を察知した凛は、無意識のうちに男の腰に脚を回していた。男に抱きつく手にも自然と力がこもる。そのせいで凛の爪は男の背中に食い込みそうなほどであったが、男は痛みなどおくびにも出さなかった。涼しい顔で少し重心をずらし、自らに凛の体重を預けさせる。
「動かしますね」
男は凛の耳元でひとことそうささやいて、凛の尻をぐっと持ち上げた。
もう無粋な気遣いはしなかった。
男は自らの腰の運動も利用して凛の尻をゆさゆさと上下に揺さぶった。男の先端が凛のいちばん奥をズン、ズン、と叩きつけられる。態勢が態勢だけに規則的な突き上げとはいかない。しかし不規則なリズムがかえって凛に未知の愉悦を味あわせた。
「あっ、ああっ……、なにこれ……っ、す、すごい……!」
初めて体験する快感の波に、少女は戸惑いながらも身を委ねた。まだ首の座らない赤ん坊のように凛の顎は自然と上がった。美しい黒髪はハラリと後ろへ流れ、淫らなダンスに合わせてさらさらと揺れる。
「ああ……渋谷さん、すごく綺麗だ。下も大洪水になってますよ」
男の言うとおり、凛の秘陰はとめどなく愛液を溢れさせていた。激しい出し入れのせいで結合部付近の液体は白く泡立つほど。それでも花壺からの漏出は止まず、愛蜜は男の竿を伝って陰嚢にまで流れ、いまや男のシンボル全体をしとどに濡らしていた。
「もう……ダメ。私、私ぃ……」
もう限界だった。これ以上快感を与えられたらどうにかなってしまう。凛が切なげに窮状を訴えると、男も一旦動きを止めた。
「そう、ですね。僕もそろそろ我慢できなくなってきました」
答えた男も肩で息をしていた。額には玉のような汗が滲む。立ったままひとりで凛を抱えて、さすがに体力を消耗したようだ。
「大……丈夫?」
「ええ。降ろしますね」
男は気丈に微笑むと、凛を再びソファへ横たえさせた。そして凛に覆いかぶさる。男が身を起こすような姿勢をとらなかったので、凛は男の首に腕を回したままでいられた。
「ラストスパート掛けますね。いいですか?」
「う、うん、来てっ」
凛が切羽詰まったように促すと、男はただちに腰を振りはじめた。
「はあんっ、アッ、アッ、アッ、アン!」
再開早々からの苛烈な攻めは、ラストスパートと呼ぶにふさわしかった。ハイスピードのピストンに凛は恥ずかしげもなく嬌声を上げてしまった。
激しい行為のせいでふたりが乗るソファのスプリングはギシギシと悲鳴のような音を立てていた。三人掛けの大きなソファが壊れるんじゃないかと心配になるくらいガタガタと揺れた。下手をすると振動が下の階にまで伝わっているのではなかろうか。しかし男は構わず凛の上で跳ねつづけた。ふたりの股間が打ちつけあうたび、パンパンと乾いた音が室内に響き渡った。
「はあ、はあ、き、気持ちいい……っ」
「ああん、私もっ、私も気持ちいいからっ」
男と凛は互いの性感を確かめ合うように言葉を交わした。こいつも気持ちいいんだ……そう思うと凛の胸は高鳴った。ジュン、と愛液もさらに滲みでたのだが、凛自身がそれを意識するまでの余裕はなかった。
「あ……出る。渋谷さん、僕もう出しますよ! 出しちゃっていいですかっ?」
ここへ来て男にも一気に波が押し寄せてきたようだ。射精の許しを乞う男は苦しげに眉間に皺を寄せていた。
凛ももう限界だった。
「い、いいよ! 出してっ。イッていいから!」
「イキますよっ、渋谷さん! ああ出る、出ます!」
「来て! いいからっ、気持ちいいからぁんっ! あんたも私で気持よくなってイッてええええっっ!」
「くう……出るっ」
「ああああんんんっっ――んぐっ!」
男の絶頂に合わせて凛も声を上げたのだが、その口は唐突に塞がれた。
凛を黙らせたのは、男の唇だった。
男は凛に唇を重ねてきたのだ。
突然のことに凛は一瞬驚いて目を見開いたが、やがて穏やかに双眸を閉じた。
「ん……んふぅう……ぷはっ」
チュパチュパピチャ……。
ふたりは貪るように互いの舌を絡ませあった。
熱く甘い口づけは、凛の脳髄を蕩けさせた。
男の逸物がいまだ胎内で脈動を続けるのを感じながら、凛は待ち焦がれた幸福に包まれた。
*
「では渋谷さん、来週の予定はそんな感じで変更になりましたので、よろしくお願いします」
「ん……、分かった」
プリントアウトした予定表を差し出すと、凛は少し不満そうな顔でそれを受け取った。
予定変更といってもレッスンの時間が多少ズレるくらいだったから別に口頭で伝えるだけでもよかったのだが、退室を促す意味も込めてわざわざ予定表を持たせた。
情事の後、男は急いで後始末を済ませた。コンドームを使ったので精液の処理はほとんど手を煩わせなかったし、ソファを汚した凛の愛液も彼女が服の乱れを直しているあいだにさっと拭き取っておいた。さすがに情交の匂いまで消し去ることはできなかったが、その手のことによほど鼻のきく人間が来ないかぎりはまず大丈夫だろう。少なくとも今自分が担当しているアイドルのなかにはそこまで経験豊かな娘はいない。
「渋谷さん、今日はご足労願いましてありがとうございました。おかげでいろいろと助かりました」
名残惜しそうにしながらも帰り支度を済ませた凛に、男は意味深な言葉を掛けた。
凛は頬を桜色に染めながら、横目で男を見返してきた。
「別に……。あ、あんたのほうは、もう大丈夫なの?」
凛の視線が一瞬だが下に流れたことに気づき、男は内心ほくそ笑んだ。
「ええ、おかげさまでスッキリしました。あ、最後、キスしちゃってすみませんでした」
「バ、バカッ、もういいわよ、別に……」
男がわざと蒸し返すと、凛はわかりやすく顔を赤くして気色ばんだ。ムスッとした顔には、満更でもなかったとしっかり書かれてしまっているのだが。
「僕としてもいい思い出になりました。これでまた仕事に励めそうです」
いつものように軽口を叩きながら、男は凛のために扉を開けた。
凛は男にエスコートされ廊下へ向かうが、扉をくぐかけたところで立ち止まって、チラリと男を見上げた。
「……ねえ、あんた、童貞……だったんだよね?」
心配と不安の入り混じったまなざしを向けられても、男はまったく動じなかった。
「ええ、もちろん。あ、童貞って言っても素人童貞だからプロの方にお相手いただいた経験値が多少は――」
「バ、バカッ、大きな声出すなっ」
凛は慌てて男の口に手をかざし、廊下をキョロキョロと見渡した。だが心配することはない。担当アイドルと猥談を交わしていても怪しまれないようなキャラクターを、男は社内で作り上げてきたのだから。
「まったくもう……。と、とにかく、プロデューサーなんだからちゃんと自分で体調管理してよねっ。もし我慢できなくなっても、ほ、他の子とああいうことは……」
「ん? なんですか?」
男が意地悪く問いただすと、凛は我に返ったようにハッとして、またもや顔を真っ赤にした。
「な、なんでもないっ! じ、じゃあねっ」
つっけんどんに別れの挨拶を告げると、凛は男に背を向けて怒ったような足取りで廊下を歩きはじめた。
「お疲れ様でしたー」
彼女の姿がエレベーターホールのほうへ消えるまで見届けてから、男はかすかに笑いを漏らした。
室内に戻った男は扉に施錠をしてからまっすぐ自分のデスクへ向かう。
デスクの上に無造作に放ってあった手帳を手に取る。黒革の表紙が装幀されたシステム手帳である。一見しただけでは、なんの変哲もないビジネス用の手帳にしか思えないだろう。
しかしこの手帳に記されているのは、担当アイドルたちのスケジュールなどではない。
男は「渋谷凛」とインデックスの貼られたページを開いた。
そこにびっしりと書き込まれていたのは、彼女の性格や男の好み、あるいは男の言動に対する反応などだった。男はそこに、さっき知ったばかりの凛の性癖や体の具合を新たに書き加えていく。記すべき内容はいろいろとあるが、とりあえずは簡単なメモ程度で済ませておいた。詳細は後でゆっくりと記せばいいだろう。
男は最後に、ページの冒頭に戻って、凛の名前の頭に星印を書き込んだ。それは、相手と枕を交わしたことを示す印だった。
同じような記録は他のアイドルの分ももちろん取っている。彼が現在担当しているアイドルたちは当然として、彼が過去に手がけた企画に参加したアイドルたちのページも、ひとりも欠けることなく存在している。そして星印は、凛以外にも複数人のアイドルにすでにつけられていた。
だが凛に自分は童貞――いや素人童貞だと言ったのは嘘ではない。男がこれまでの人生で肉体関係を持った相手は、風俗の女性と、そしてアイドルに限られる。それ以外の一般女性を恋人にしたことはないし、ゆきずりの関係を結んだことすらいちどたりとてない。正真正銘、男は「素人童貞」である。
「だからアイドルの渋谷さんとヤッても、僕はまだ素人童貞ってことで」
男は独り言だというのに軽口を叩いた。もともとアイドルたちの警戒心を解くために作り上げたキャラクターであったが、いつのまにかひとりのときも軽口が飛び出すようになっていた。まあ特に不便もないから別にいいと男は思っている。このキャラのおかげでアイドルから用心されずにいろいろ訊き出せているだから文句はない。
アイドルを攻略し、その記録を残す。それが男の趣味だった。
いまいちど念を押しておくが、これはあくまで趣味だ。仕事ではない。
アイドルのプロデュースという仕事と自分の趣味とは完全に分けて考えているし、仕事に趣味を持ち込むこともご法度だと男は考えている。
自慢ではないが、男がこれまでに数々の企画を成功させてきたことも、純粋にプロデューサーとしての手腕によるものだ。たとえ肉体関係を結んだアイドルがいたとしても、それを理由に相手を仕事で優遇したりすることはない。ユニットの結成や企画への登用は、常に全体のバランスを考えておこなっている。仕事のための最善手は、趣味のそれとは別物である。
仕事は仕事、趣味は趣味。だからこそアイドルたちの商品価値を高めるために全力を尽くせるのだし、アイドルの体を思う存分味わい尽くすことができるのだ。
「まあ、プロデューサーって立場を利用してアイドルに近づいてるところはあるわけだけど……そのあたりは最低限の節度を持ってやってるってことで大目に見てもらいたいね」
男はまたも軽口を叩くと、パタリと手帳を閉じた。
鍵などは掛けないし、こそこそと隠したりもしない。
誰かがこの手帳を開けば、男の人生は一瞬で終わりを迎えるだろう。
しかし秘密のものを隠すなどというのは愚の骨頂だ。
古い探偵小説にも書かれたように、秘密の隠蔽を万全にするいちばんのコツは、それを人目にさらすことである。
だから男は担当アイドルたちの前でも平然とこの手帳を広げるし、ときには彼女たちのそばに手帳を残したまま席を立つことすらある。過去にはいたずらで手帳を男から取り上げたアイドルもいたが、結局なかを見られなかった。
繰り返そう。秘密を隠すのに最適な場所とは、もっとも人目につくところである。
だから僕は、アイドルたちとの秘め事の記録をインターネット上に小説のかたちで公開することにした。
誰もが無料で読めるネット小説なんて、秘密の記録を隠すには最高の場所だろう?
どのくらいの人がこの小説を読むのか分からないけれど、まさかこんな与太話を実話だと思う読者はいないだろう。
ま、この言葉を信じるかどうかもあなたしだいなんけどね。
それにさ、下手したら破滅するかもってスリルがまた快感なんだよねえ。これをネットに上げてる最中だって、我慢できなくてオナニーしちゃってるくらいだし。思い出しオナニーなんて言うけど、一粒で二度も三度もおいしいというか、ホント新たな性癖に目覚めちゃいそうだよ。
あ、いちおう断っておくけれど、この日記に出てくるアイドルの名前やユニット名、プロジェクト名なんかは全部架空のものだからね。事務所なんかも特定されないように注意して詳しい情報は載せていないし、だからネットで検索したって無駄だよ。たとえ同じ名前のアイドルが検索にヒットしたって、それは僕らとは一切関係がない赤の他人だ。それに万が一キミたちが僕の正体に気づいてあることないこと言いふらすようだったら、あらゆる手段を講じて口封じに動くからそのつもりでいてね。
そのあたりの情報管理は徹底しているさ。なんたって僕は、人気アイドルを多数手掛ける敏腕プロデューサーだからね。
ま、この言葉を信じるか信じないかも、あなたしだいだけどね。