「ここは・・・っ!」
先に目を覚ましたミラクルは周りをみて驚愕する。薄暗い場所ではあったが床に無残な姿で転がる女性の遺体があった。それも明らかにひとりやふたり程度ではなかった。
「きゃあぁ!?」
ミラクルは思わず悲鳴を上げ、それを聴いたマジカルが目を覚ます。
「ミラク・・・っ!」
ミラクルに話しかけようとするマジカルの視界にも無残な遺体の姿が映った。
「何よ・・・これ・・・」
今まで見たこともない、日常で見ることもないような残酷な光景。そして、大量の遺体達が放つ異臭にふたりは気分が悪くなり、吐き気を催す。
「こ・・・こんな・・・やだよ・・・うっ!」
ミラクルは口元を押さえようとするが腕が動かない。ここでふたりは自身が拘束されていることに気づく。
「くっ!」
マジカルは鎖を千切ろうとするがびくともしない。
「無駄だよ。その鎖はあんた達のために誂えた特注品なんだよ。」
リーアがふたりの前に現れ、足元の遺体を蹴飛ばしながらふたりに近づく。
「な・・・何てことを!」
「この遺体達はあなたの仕業なの?」
マジカルが尋ねるとリーアは笑いながら答える。
「そうだよ!皆あたしが殺したんだよ!人の男に手を出す卑しい泥棒猫どもに罰を与えてやったんだよ!あっはっは!」
ふたりは更に驚愕した。男を取られた、ただそれだけの理由で人を殺すその感覚が理解出来なかった。マジカルはふと疑問に思ったことがあり、リーアに尋ねる。
「どうして私達をここに連れてきたの?」
リーアは突如鬼の形相になり、マジカルに迫りながら答える。
「どうしてぇ?人の男に散々色目使っておいてよくもそんなことぬかせたわねぇ!」
「い・・・色目・・・って?」
呆気に取られるマジカルの横からミラクルが尋ねる。リーアはミラクルの方を向いて答える。
「とぼけんじゃないよ!あたしのフラストに散々色目使ってんじゃない!」
「ふ・・・フラスト・・・」
「あなた・・・あの男の仲間なの?」
リーアはマジカルの言葉にカチンと来たのかマジカルの胸ぐらを掴みながら叫ぶ。
「妻だよ妻!正妻!二度と間違えるな小娘ぇ!」
一方的に捲し立ててマジカルを乱暴に突き飛ばす。
「きゃっ!」
「マジカル!」
リーアは大量の魔導書を用意する。普段のミラクルならワクワクもんだと言っているところだろうが今はそんな場合ではなかった。
「その魔導書で・・・私達をどうするつもり?」
マジカルはリーアの用意した本が魔導書だということがすぐにわかり、尋ねる。
「決まってるでしょ?お仕置きよ、お仕置き。人の男に手を出すような泥棒猫には罰を与えないとね!」
リーアは一冊手に取りめくり始める。
「あなたは・・・誤解しているわ!」
リーアの眉間にしわが寄る。明らかに怒りの表情を浮かべてミラクルを睨む。ミラクルは一瞬圧倒されながらも続ける。
「フラストの方から私達に近づいて来たのよ!近づいて・・・私達に・・・あんなこと・・・」
途中でフラストに陵辱された記憶が蘇ったのかだんだん勢いが無くなり、悲しげな表情を浮かべる。
「あんた・・・それはあたしへの当て付けか!?絶対に許さない!」
リーアは怒り狂い、呪文を唱えると魔導書が光りだす。
「違う!そんなこと・・・」
突如鎖から電流が流れ始め、ミラクルに襲いかかる。
「きゃあぁぁぁ!」
「ミラクルっ!」
ミラクルは悲鳴を上げながら激しく悶える。この電流による攻撃も刻印虫によって快楽に変換される。
「うあぁ・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「あっははは!いい君だよ!」
リーアにはミラクルの悲鳴が心地よく聞こえるのか高らかに笑う。
「止めて!いい加減にしなさいよ!あなたの言ってることはただの被害妄想じゃない!」
見かねたマジカルが堪らず叫ぶ。リーアの表情が再び怒りを称えたものに戻る。
「うるさい奴だね!あんたもそんなにお仕置きしてほしいのかい!」
リーアが再び呪文を唱えるとマジカルにも電流が流れ始める。
「うわあぁぁぁぁぁぁ!」
マジカルもまた、電流に激しく悶える。
「覚悟しておくんだね・・・あんた達は今までの奴らみたいに簡単に壊したりはしない・・・たっぷりと時間をかけて徹底的にぶっ壊してやる!あっはっはっは!」
アジトにはミラクルとマジカルの悲鳴、そしてリーアの笑い声がしばらく響き渡っていた。
「おっと・・・忘れるところだったよ。」
リーアは何かを思い出したかのようにそう言うと電流を止める。
「「はぁ・・・はぁ・・・」」
ふたりはぐったりとうなだれ、身体からは煙が出ている。衣装はさらにボロボロになり、所々が焦げている。
リーアが魔導書を置いて呪文を唱えると、リンクルスマホンがふたりの元を離れてリーアの手元に来る。
「り・・・リンクル・・・スマホン・・・が・・・!」
「だめ・・・返・・・して・・・!」
ふたりはどうにか顔だけ上げて懇願するがリーアは聞く耳を持たず、リンクルスマホンを手元で遊ばせる。
「へぇ~・・・そんなに大切なんだ?これが・・・どうせならここでぶっ壊してやりたいとこだねぇ・・・」
「止めて!」
「はーちゃんは・・・関係ない!」
必死に止めようとするふたりを見てリーアは心底残念そうに溜め息をつく。
「けど・・・こいつはクライアントが欲していてね。残念だねぇホント・・・」
「クライアントって・・・まさか・・・!」
ふたりは察しがつき、拘束を解こうとするが、ただでさえ弱りきった身体が魔法で強化された鎖をどうにか出来るはずがなかった。
「「はーちゃん!」」
リーアは魔法でリンクルスマホンを奥に持っていく。遠ざかるリンクルスマホンを見送ることしか出来ないふたりは俯き、悔し涙を流した。