真人と摩耶は長い廊下を早歩きで会議室に向かっていた。
「摩耶、すまないが皆を起こして連れてきてくれ。会議室で待ってる。」
「分かった提督。すぐ起こす。」
摩耶は真人とは真逆の方に行き皐月と蒼龍を起こしに行った。それを確認した真人は町役場らしき所の受付カウンターへ向かった。
「あら、前に不知火ちゃんに助けられた人じゃない?どうしたの?」
受付カウンターの女性が立派な軍服を着た真人を見て少し驚いた。
「マトでいいですよ。それより少し不知火と話がしたいのですがそこのトランシーバーを借りてもよろしいでしょうか?」
「あら不知火ちゃんがこれ持ってる事気づいていたの?」
「ええ。でなければ単独行動で普通離れた位置から報告に必要なトランシーバーをもってかないわけがない。」
「あらそう。マト君は随分と頭がいいのね。」
「それほどじゃありません。」
受付カウンターの女性は机に置いてあるトランシーバーを渡した。
「もう貰ってもいいわよ。マト君が指揮官なんだし。」
「ありがとうございます。」
真人はトランシーバーを受け取り、会議室へ向かった。
「不知火聞こえるか?」
トランシーバーを使い、話しかける。
『――っ―すか?え?マト!?何故あなたが!?』
「その話は後だ!今すぐ会議を開く!早く来てくれ!」
『.....分かりました。すぐに行きます。』
「あぁ...」
真人はトランシーバーを切りポケットに入れた。
約15分が過ぎて不知火達が到着した。誰かを連れてきている。真人達は会議室で目を険しくしながら待っていた。
「入りますね。」
不知火が扉にノックをしながら確認をとった。
「あぁ入ってくれ。」
不知火が扉を開けるとぞろぞろと後ろから他の艦娘達が入ってきた。そして一人、真人めがけて突っ込んできた。
「!?」
首を掴まれ椅子の背もたれを突き破り、後ろのコンクリートの壁に激突した。一瞬意識を失いかける。
「かはっ...!」
「金剛さん!!」
「提督!!」
金剛と聞いたことのある艦娘が右手を握り真人の顔を殴ろうとしたが横にそれ、コンクリートの壁を殴った。
殴ったコンクリートの壁にはひびが入り、破片が飛び散った。
「....あなたが....殺ったですカ....」
金剛は憎悪と悲憤で溢れていた。殺気はかなり大きい。
「....そうだ...俺が殺った....」
真人は覚悟を決めて正直に言った。
「........」
「...そうですカ...。」
金剛は真人の首を離し背を向けた。
「お前には従わないが不知火ちゃんの為ネ。話は聞いてやるネ。」
金剛は真人から一番離れている席に座り、殺気を抑えた。
「....コホン....さて集まってますしやりましょうか。」
不知火が空気を換え、話を進めた。
「...あぁ....」
一つの長方形のテーブルの奥に真人が座り、真人から見て左側に皐月達、右側に不知火達が座った。
真人は背もたれがなくなった椅子に再度座り、会議を開始した。
「...すまないが不知火、その子達は?」
「この人達は....故司令官の艦娘達...です。」
「.......」
真人とその艦娘達とは少し面識があった。戦前で何回か蒼汰の鎮守府に訪問しに行った時に話したことがある。
その艦娘達とは戦艦長門、重巡古鷹、雷巡木曾、軽巡川内、駆逐艦叢雲と人数が多かった。
「何故連れてきた?」
「..私は死んでしまった司令官の為に命を懸けてこの日本と呼ばれたこの国を、島を取り返したい。」
「マトも同じですよね?」
不知火は同情を求めるように真人に話しかけた。
「...当たり前だ。その為に集まってもらったんだ。」
その言葉を聞いて木曾が質問をする。
「んで、何するんだ?」
「まず第一の目標として関東地方を取り戻す。」
真人はテーブルに日本地図を広げ説明する。
「その為には奴らの第一拠点だと思われるここ東京を攻めて取り返さなければならない。」
「何かあるのかそこには?」
長門が険しい目で真人を見ながら質問をした。
「あぁ。奴らがやたら一番大切に守っている物があった。」
真人は東京のある場所を指差す。そこは東京タワーだった。
「俺がまだ奴隷だった頃に見た時はここの警備がとても厳重になっていた。」
「...つまりそこにある何かを破壊すれば深海棲艦は弱まると?」
「...俺の予想ではあるが多分そうだ...」
「...そうか。」
「でも提督...そこまでどうやって行くの?それに他の県は?」
心配して蒼龍が色々疑問に思いかけていることを話した。
「他の地下町の提督達も奴らと戦ってるんだろ?んじゃあ自分達もやるしかないじゃないか。」
「それに他の県にいる奴らは俺たちが東京を取り返すことが出来たならいざ取り戻そうと東京に向かってくる。その時に迎え撃ちすればいい。」
「大体の事は分かったか?」
真人の言葉を聞いて皆は頭を下に振った。
「そうか...。んであれば早速行動に移そう。」
真人が鋭い目をし、声を低くして考えた事を話した。
「不知火、今日は何月何日何曜日だ?」
「月日ですか?今日は5月25日水曜日ですけど?」
「なるほど.....」
真人は月日、曜日を聞いて何かを考えた。それを見た不知火達は困惑する。
「おいマ、マトとか言ったな!何を考えているんだ?」
長門が慌てながら話しかける。
「そうだよ司令官...何かあるの?」
皐月が心配そうに真人の顔を見た。
「何もなかったら考えもしないさ。」
真人は皐月に笑顔を見せ、喋った。
「明日午前12時、ヒトフタマルマルに俺が捕まっていた拠点を攻めて殲滅し、多くの人を救う。」
叢雲が椅子から立ち上がり異議を申し立てた。
「ちょっ、本気で言ってるの!?」
「そうだ。明日がいいタイミングなんだ。むしろ明日ぐらいしかない。」
「...理由を聞こうかな。」
川内が眠たそうにあくびをしながら聞いた。
「あぁ。俺が捕まってたあの場所、奴らの一つの拠点である元警視庁の留置場で奴隷として使われた。」
「そこには深海棲艦でも圧倒するほど強い奴らが2人いるんだ。」
不知火は以前真人を助けた時に凄まじい殺気を放っていた南方棲鬼を思い出した。
「その強い奴らは俺と蒼汰を弄んだ主犯者でもある。」
真人の言葉を聞いた瞬間に奥に座っている金剛から殺気を感じた。
「でも2人ともいなくなる日が何回かあるんだ。」
「そこで俺は2人が丁度良くいなくなる日が規則的になっていると思い、不知火に月日と曜日を聞いてその日を特定した。」
真人は不知火達に納得してもらえるように説明をした。
「つまりはその強い奴らがいない日が丁度明日って言うことか....。」
摩耶は真人が説明したことをまとめた。
「...俺は別にいいぞ。もとよりその気だ。」
「私もです。」
木曾が腕を組みながら参加の意思を見せる。不知火も同意した。
「私も行くかなー」
川内も右手を挙げ意思を見せた。
「んじゃ私も行かせてもらおうか...。」
長門も右手を挙げ参加する。
「よし。明日午前11時、ヒトヒトマルマルまでには準備していてくれ。以上解散だ。」
真人は声を聞いて参加の有無を確認し会議を解散させた。
――第10東京都地下町町役場内。
真人が階段を降りロビーに入ると艤装を装備した皐月達と不知火達がソファや壁に腰をかけて休んでいた。その中には真人を殴りかけた金剛もいた。
「....行くぞ。」
真人は真剣な目をして艦隊(仮)を引き連れた。総勢9名と少ない人数ではあるが個人の能力は高い艦隊(仮)とはなった。
出口までの長い一本道を歩く途中、真人が全員に話しかける。
「作戦の内容として皐月と蒼龍、古鷹、川内以外は敵の殲滅を頼む。蒼龍は後ろから艦載機を飛ばして援護をしてくれ。」
「古鷹、川内、皐月と俺は拠点の奪還、人々の救助と地下町への誘導だ。分かったか?」
「「「了解!」」」
皆が作戦の内容を理解し返事をした後、皐月が話しかける。
「司令官は何か持ってるの?」
「あー俺はこのハンドガンぐらい...しかないぞ。」
真人はズボンの右ポケットからハンドガンを取り出し見せびらかした。だがハンドガンを持っている手は小刻みに震えている。
「あっ...うん..。」
皐月はあの事を思い出し、言い続けるのをやめた。
――日比谷公園内。
「よし全員出たな。」
真人が全員いるかを確認し、周りを見る。地上には誰もいないが上から深海棲艦が監視していた。とても外に出れる様な状況じゃない。
「蒼龍、艦載機を飛ばす準備をしろ。」
蒼龍は真人の言うことを聞き、矢筒から矢を取り出して弓によせる。
下から見て監視している深海棲艦が少し減った。真人はこのチャンスを見逃さなかった。
「今だ蒼龍。射れ。」
「了解。」
蒼龍は目的とは違う方向に射る。そして矢が飛ぶ途中に艦載機に変身し、迂回して監視している深海棲艦めがけて撃ち出した。
「ナニッ!?」
深海棲艦の断末魔と共に建物の上で爆発した。大きな爆発音が鳴り響くのと同時に警報が鳴る。
「行くぞ!!」
日比谷公園の木々から抜け出し、元警視庁に繋ぐ道へ全力で走る。するとそれを邪魔するように上から深海棲艦が雨の様に降ってきた。
「おらぁ!!」
深海棲艦は殴り飛ばし、蹴り飛ばし、砲撃する。その一連の動きが続いた。
「っ!!」
木曾はあらかじめ持っていた剣を使い、立ち阻む深海棲艦を斬り捨てていく。上では蒼龍の艦載機と敵艦載機が空中戦を繰り広げている。
右に向かうと元警視庁が見えた。
「後もう少しだ!」
真人達は元警視庁に向かうも目の前から高速で重巡リ級が真人に近づく。
「アノ時ノオ前カ!モウ一度殴ラレニ来タノk...」
「「邪魔だぁ!!」」
喋り終わる前に雷巡リ級は摩耶と古鷹に顔面を殴られ吹っ飛んでいった。
「よしここだろ提督?行ってくれ!!」
「ああ分かった!後は頼んだ!!」
元警視庁の前に着いた真人と皐月は正面から入っていった。それを確認した摩耶達は正面を囲うようにして前を見るとそこには無数の深海棲艦が立っていた。軽巡や重巡、軽空母などがさらに周りを囲む。
「へぇ~私たちに挑むなんて度胸あるじゃない。」
叢雲は槍らしきもの回し、道路に叩きつけた。
「まぁ、肩慣らしぐらいにはなるんじゃないか?」
摩耶と長門が指の関節を大きく鳴らす。
「......」
金剛は相変わらず黙りながら首の関節を鳴らした。
「何ガ何デモコイツラヲ殺セェェ!!」
深海棲艦達は摩耶達の発言にイラッと来たのか逆上して数で攻めた。だが直後に砲撃音が鳴り響き、攻めた深海棲艦達は断末魔をあげ、吹っ飛んでいく。
「数で攻めたらただの的になるだろうに。」
長門が哀れな目でつぶやき、深海棲艦に向かってアッパーカットを喰らわせ後ろ回し蹴りをお見舞いした。蹴った後に遅れて煙が舞う。
不安定な態勢の長門を上から二匹の深海軽巡が襲い掛かる。が、蒼龍の艦載機が丁度良く爆撃をし、二匹は爆撃を受けて塵になった。
「抜け駆けはずるいぜ!」
摩耶も先を行かれては困ると最前線へ向かう。
「そうね。」
叢雲も笑いながら深海棲艦に斬りつけた。
――警視庁内。
外で摩耶達が戦ってくれているおかげか中にいる深海棲艦は1匹、2匹と少なかった。真人達は少ない深海棲艦を軽々と倒し、留置場に向かった。
「古鷹と川内はこの拠点にいる奴らを頼む。俺らは捕まっている人の救助をする。」
「殲滅が終わったら俺らのところ来てくれ。」
「「分かった。」」
真人達は古鷹と川内で分け、それぞれの任務にあたった。
「あ、いた。」
古鷹と川内はすぐさま敵を確認すると疾風の如く深海棲艦を薙ぎ倒して行く。
「二階制圧完了!」
古鷹が少し笑いながら報告する。
「じゃあ三階行こうか。」
川内は眠たそうに指揮をとった。
「司令官!深海棲艦いるから下がって!」
「おう!分かった!」
皐月は目の前の敵を確認して、思いっきり深海棲艦の顔面に蹴りを入れた。だが深海棲艦は早く立ち上がり、蹴った相手を探す。
「ボクとやりあう気なの? 可愛いね!」
わざと姿をばらし、天井にぶらさがる皐月は深海棲艦を振り向かせた途端に顔面に殴り過ぎていき、床にに跳ね返るようにして膝裏に蹴りを入れる。皐月の攻撃の威力は小さいものの周りの物を利用して量で押した。深海棲艦はぼこぼこにされ動かなくなった。
「さぁ行こう司令官!」
「..お、おう!」
――留置場。
突然重い扉が突き破られた音が響き、留置場にいた人達は怯え始めた。
「よし着いた!」
留置場にいた人達は以前に聞いたことのある声を思い出す。
「皆さんを救いに来ました!もう大丈夫です!」
檻越しから大声で伝えた真人はハンドガンで大きい南京錠を壊そうとするも手が震え照準が狂う。
「司令官!ボクがやるよ!」
それを見た皐月は無理矢理真人のハンドガンを取り、牢獄全ての南京錠を壊した。数年間自由じゃなかった人達は外に出て歓喜の声をあげた。
「皐月...」
「司令官、あまり無理はしちゃだめだよ。」
皐月に励まされ真人は...あぁと答えることしか出来なかった。
「ほら司令官!報告!報告!」
「お、おう!」
――警視庁前。
『不知火!聞こえるか?』
「何ですか?いきなり。」
トランシーバー越しに真人の声を聞いた不知火は適当な返事をした。
『今から救助した人々を地下町に誘導する!誘導経路にいる奴らを殲滅してくれ!』
「あぁ深海棲艦ですか。それなら大丈夫です、もう全部やりましたから。」
不知火達の周りには無数の深海棲艦の死骸が無様に転がっていた。
『えっ!?そ、そうか、分かった。じゃあ俺たちが来るまで警戒態勢でいてくれ。』
「分かりました。」
不知火は周りを見渡しながら少し不穏な空気を感じていた。
「(なぜこんな雑兵ばかり...少し強い深海棲艦がいないのはおかしいな..)」
周りを見渡す時に立っている艦娘が足りない様に思った。
「(あれ?誰かいないような...)」
――警視庁内。
「よし!全て制圧完了!後は屋上のみ!」
古鷹と川内の拠点制圧は順調に進み、残すところは屋上だけだった。2人は屋上に続く階段を駆け上る。
「ここが屋上かぁ....っ!?」
川内が景色を眺めた途端、古鷹に頭を下げられ体を小さくした。
「突然なにさぁ...」
「しっー!あれ見て。」
古鷹が指差す方向を見ると一人の深海棲艦が立っていた。微動だにしない。古鷹と川内が攻撃を仕掛けようとするとその深海棲艦はフフッ...と笑い声を漏らしながら消えた。
「「っ!?」」
が、消えたのではなくある場所へ音速で降りていた。その場所は――
――警視庁前。
留置場にいた人達は真人がいた前と人数が変わって8人しかいなかった。真人についていき誘導していく。不知火達は周りに敵がいないか確認した。
「私についてきてください!今からある場所に行きます!」
真人が頭の中で大体の作戦は成功かと確信した時に、突如真人の前で隕石がアスファルトの道路に落ちたのかと思うほどの衝撃が走り、周りを揺らせ煙が舞った。
あまりの衝撃に真人は一度宙に浮き、仰向けに倒れた。
「なっ!?なんだ!?」
周りを煙で囲まれ視界が閉ざされる。救助された人達はパニックに陥った。
「う、うわぁぁぁぁ!!!」
「て、提督!」
「マト!!」
不知火達は煙に囲まれるも真人を探した。
「...っ、一体何が起きた?」
真人は立ち上がり視界が遮られてる中、パニックに陥っている人達を探した。その時壁ではないような物に頭をぶつけた。
「痛っ!あれなんか当たった様な....」
真人が呟いている途中に大きな風が煙を晴らす。真人の目の前には大きな穴、いや砲口だった。
砲口を向けたのは――
「コンニチハ♡蒼汰ノ親友チャン♡」
――蒼汰を弄んだ離島棲鬼だった。
「何でお前が...ここに....」
次回は「鮮やかな赤い液体を今流せ」です。