キリトとアルゴはあの後、何もしゃべることなくコテージに戻ってきた。恥ずかしさとなにか他の甘いものが混ざった感覚を持てあましながら。
「…………」
キリトは無言で椅子に座る。水着は着替えていないから、地肌が背もたれに当たって冷たい。彼は顔だけを動かして外を見る。夕日が世界を朱に染めながら、ゆっくりと光を弱くしていく。次期に夜になるだろう。
アルゴはいない。おそらくコテージの中かその近くにいるはずなのだが、少なくともキリトの視界の中にあの金髪は見えない。少し恋しげにキリトは視界を動かす。
びくっとキリトは肩を動かした。無意識にアルゴのことを探していた。
この奇妙な状況、唯一のツレ。そう考えれば探すのは別におかしいことはない。しかし、この場合は意味が違う。それはキリトが一番良くわかっていた。
「……あるご……」
キリトは彼女の名を呼んだ。それは呼びかけではない。かといって意味もない。ただ口にしたかった。
思い出すのは晴天の下、波のそばでのこと。あたたかい感触がその手に、その体に残っている。キリトは顔が熱くなるのを感じた。そうして心になにかもやもやしたものを感じる。だがそれは不快なものではない。
お腹が鳴った。
キリトはあっと思い出さす。たしか昼から何も食べていない。サイダーの炭酸でごまかした後は「それどころではない」状況になってしまったからだろう。彼は冷蔵庫のある部屋に向かった。歩きながらここの電気はどこから来ているのだろうかと思った。結論はでない。
冷気が顔を撫でる。
キリトは覗き込んだ冷蔵庫の中をくまなく見る。昼に飲んだ清涼飲料水のペットボトルが整然と並んでいる。だが今は飲み物よりも、食べ物だった。何かないかと探してみる。
「ん?」
昼には喉が渇いていて気が付かなかったが食べるものは何も入っていない。冷蔵庫の中の冷気とは違う意味で背筋が冷たくなる。
「やばいな……」
普通は野菜などが入っているチルド室にはジンジャーエールが入っていた。恨みを込めた目でキリトはそのペットボトルを掴む。飲む気はないがなんでここにいるのかという気持ちがある。
「てめえ、ふざけんな……」
ジンジャーエールに悪態をつく少年。腹が減っていることもあり、気が短くなっている。
どうしようか。キリトは一度目をつぶって考えた。とりあえずはアルゴに報告して、この状況を二人で考えて、と考えたところでキリトの心臓が小さく鳴った。
探しに行く。ちょうどいい理由。特におかしくもない。いや絶対的に食糧問題は二人で解決しなければいけないだろう。
キリトの目が動く。なにかを探しているのではない。しかたないのだと今からの行動を必死に正当化しているのだ。別にそんな必要はないのだがどうしても心の整理がつけたかった。
「よし」
唇を動かさずにキリトは決意を声に出す。聞こえたら恥ずかしい。彼は部屋をでて、コテージの入り口にむかおうとした。
「にゃ!」
一瞬コテージに入ってこようとしていた影が見えた。すぐに隠れてしまってその姿は良く見えなかったが、誰かは分かる。というよりも一人しかいない。
「あっ」
ルゴ。とういうつもりがキリトは言葉に詰まる。なにをやっているんだと自分を叱咤する。ただ単に食料の問題を解決するために話しかけるだけじゃないかと彼は考える。
考えたからといって口が動くと限らない。
キリトは少しずつ入り口に近づいた。見えないがすぐ近くにアルゴがいる筈だろう。キリトはぐっと唾を飲む。
(なんで、こんなに緊張しているんだ、俺)
キリトはなんなのかはわかっているのだが。それを認識したくない。さすがにこの状況で気がつかないほど自分の心に鈍感ではない。
「あるご」
変なイントネーションでキリトは呼びかけた。心臓の音がうるさい。
「…なんだヨ」
ちょこんと入り口に金髪が見えた。ゆっくりと少女が姿を現す。
斜陽が彼女を照らす。昼と同じ、腰にコートを巻いた姿。それでも細い上半身を白い水着に包んだ姿がキリトには眩しかった。
アルゴは少しそわそわとした風情でコテージに入ってきた。目線が定まらないのはキリトと同じ理由だろうか。
「ちょっと、話したいことがある」
びくっとアルゴの肩が跳ねた。キリトはできるだけ感情を出さないようにしているつもりで声が冷たくなる。しかし、次の言葉が出てこない。そんな中アルゴが彼を見る。顔が赤い。夕日だとキリトは思う。思わざるを得ない。
なにかを言わねばならない。食料のことを言わなければならない。キリトは一度唇を舐めてから口を開いた。
「腹が、へった」
「ハ?」
呆然とした顔でアルゴがキリトを見た。彼が彼女に伝えたいことも彼女が彼から聞きたいことも伝わらず、聞こえない。キリトが赤くなる。必死に言い訳を初めた。
「い、いやちがう。そうじゃない、そうじゃくて。冷蔵庫がないんだ。いやあるんだけど、その、食べるものが……」
「くっ」
アルゴが笑った。キリトの顔もつられて緩む。意識しすぎていた関係が、すこしずつほぐれていく。思いが伝わることがいいというのは一般常識すぎないのだろうか。全くツタらない擦れ違いが、彼らには心地よかった。
食糧問題意外に簡単に解決した。
キリトは手に持った赤い果実を眺めてから、かじる。リンゴみたいな味がする。
「うまいな」
さっきまでアルゴがいなかったのはコテージの周りを散策していたらしい。その時コテージの裏手にいろんな果実のなった、森を見つけたらしい。アルゴはあまり見たことのない果実をてきとうにとって食べ。いくつか持って帰った。
味は一度アルゴが食べたものだけえお持ってきたので保証されている。
アルゴとキリトはコテージの中のカーペットに座る。彼らの前には色とりどりの果実が転がっていた。キリトがおいしそうに食べるのを見て、アルゴも赤く太った一つを手に取る。机があるのに座らないのはこっちの方がなんとなくいいらしい。
もちろんキリトはアルゴが居なかった理由は聞かない。最初から食料を探しに言っていた、なんてこともないだろう。それになんで「俺と一緒にコテージにいなかった」などと口が裂けても言えない。
「だロ」
アルゴは時間差でキリトの言葉に反応する。にししと歯を見せて笑う。調子はだいぶ戻ってきたらしい。キリトは少しほっとする。もぐもぐと口を動かしながら彼はアルゴの様子を見る。
わずかに斜に座るのは彼女のくせだろう。なんだかアルゴらしいとキリトは呟く。普段はコートのを着ているので良くわからないから、新鮮だった。彼の目線が下に行く。アルゴの腰に巻いたコートから、わずかに下のビキニが見えて、
「ごほ」
せき込む。
「ど、どうしタ」
いきなりむせたキリトにアルゴは心配そうに言った。キリトは一度せき込んだからか咳を繰り返す。大丈夫と伝えたいが、声がでない。アルゴは彼によってその背中をさすってやる。
甘い匂いがする。
後ろに水着の女の子が居る。
「ごほっごほ」
「大丈夫カ?」
背中に柔らかい感触が伝わり、やさしくなでてくる。服など着ていないから、直に。キリトは本当にどう反応していいのかわからない。やんわりと拒絶するのが普段だが、今はそれをしたくない。
苦しみながらキリトは目を開ける。顔は下を向いているからアルゴの顔は見えない。かわりに彼女のおへそが見えた。ぐっと彼はある衝動に襲われる。触りた。いや違うと頭を振る。
「はあ、はあ」
「……」
キリトが落ち着き始めたのを見てアルゴはほっとする。なんとなくその気配が伝わったのかキリトはどきりとした。何かが惹かれていく。いや最初からそうだったかもしれない。ならば今はそれを確認している最中だろうか。
「あるご」
「ン?」
今の問いかけはさっきキリトがひとり呟いたものと同じものだった。呼びかけの言葉ではない、ただその名前を口にしたかった。彼の心がふんわりした甘さがつつむ。ただ名前を呼んだだけなのに、愛おしくてどうしようもない。
アルゴがそばにいて、自分の声を聞いてくれているのがうれしい。
腕に力が入る。キリトはもう抑えられそうになかった。
「きーぼ」
がっとキリトはアルゴに抱き着いた。腕の中で彼女がもがく、逃げようとするのではなく驚きからだろう。キリトは離したくなかった。離れたくもなかった。だからぎゅっと彼女を抱きしめる。
「いたいヨ……」
キリトの胸元でアルゴが出した声音は、拒絶ではない。たキリトの手が少し痛いことを言っているだけ。キリトには言葉がない。別にあらかじめ決められた行動をしたわけでもないから、この先に何をするなどという考えもない。
キリトの目線が下がった。アルゴと目が合う。
アルゴの前髪が彼女の光る瞳を遮る。キリトは両手がふさがっていて、それを払ってあげることができない。ゆっくりと彼の唇が動いて、アルゴに近付く。
唇を合わせる。柔らかい感触をお互いが感じる。そのままアルゴは首をひねった。そうすると彼と彼女の間に少しだけ水の音が鳴る。舌は入れない。そんなことは二人とも知らない。しばらくしてお互いが唇を離す。
「……」
「……」
何も言わない。それでも相手が愛おしいのは二人とも同じ。声をださなくても交わった気持ちが心を彩る。キリトは少しだけアルゴを抱く力を弱めた。アルゴはそっとキリトの体に体重をかける。いや預けると言った方がいいだろう。
「あるご」
「ン?」
さっきと同じ問いかけと返答。
「なんだイ。キー坊」
やさしく言葉を付け加えるアルゴ。それは彼らの関係が一歩すすんだことを表しているのだろう。だから――
「がぶ」
アルゴがわざとらしく擬音を出してキリトの肩にかみついた。
「いたっ??」
キリトが驚いて力を緩める。アルゴはそれをみてにししとまた笑う。
「いきなりキスするなんて、だいたんだナ」
「い、いやあるごだって、その抵抗……」
しない、と言いかけてキリトが止まる。なぜならアルゴがその肩に手をかけて上へ昇ってきたから。
「ンー?」
いたずらっぽく笑い。アルゴがキリトの頬に自分の顔を当てる。そうしてその首に腕を回して、今度は彼女が彼を抱いた。
キリトには彼女の顔が見えない。ただそばにいるだけでぞくぞくする。アルゴはその気持ちを見透かしてか、キリトの背中をつまむ。
「いたあっ?」
「にゃははは、キー坊のエロエモン!」
いたずら成功らしい。キリトはまんまと彼女にだまされた。いつか言われた猫型ロボット風の渾名をさらに変えたものが耳元でささやかれる。
「このっアルゴ。いい加減に」
怒っているわけではない。キリトは反撃とばかりにアルゴに抱き着こうとする。だがアルゴの方がはやい、彼女はキリトの耳に甘くかみつく。
「にゃあ!」
アルゴみたいな声を出すキリト。なんで痛くもないのに耳を噛まれたらこうなるのだろう。彼にはそれもわからない。もうなんで真っ赤になったのかよくわからない顔でキリトはアルゴを見る。普通に羞恥心なのか、もっと他の理由なのかそれもわからない。
アルゴは彼に小さく舌を出した。楽しそうに。キリトはその顔が猫のように見えた。だがすぐに気が付く彼女は猫ではない、鼠なのだ。
キリトはアルゴの腰に手をまわして抱く。さしものアルゴもここは避けられない。本気で避ける意味もない。
「に、にげられないぞ」
「ふっ」
勝ち誇ろうとしたキリトの耳にアルゴが息を吹きかけた。ぐっと彼の体が跳ねる。だが今度は力を緩めることはしない。少し体重をかけて、ゆっくりとアルゴを床に押し付ける。
キリトとアルゴの体が絡み合う。キリトは押さえつけようとしているのだが、アルゴが巧みに彼の「弱点」をつく。そのうちキリトが彼女の両腕を掴んで、床に押し付けた。
二人の動きが止まる。これはじゃれ合い。優位をきめるようなものではない。
「……まだ、ていこうできるヨ」
アルゴが言う。キリトはさらに彼女の体に圧力をかけた。しかしそれはやさしく、痛くはなく。
「まだ、できるか」
キリトの声に、アルゴはふるふると首を動かす。さすがに無理と言うことだろう。やっといたずら好きの鼠をキリトは捕えた。
「仕返し、してやるよ。アルゴ」
「……うん」
アルゴがか細くうなずく、怖いのかそれともわからないのか。キリトは彼女のいたずらに「仕返し」する。
体で押さえつける。キリトがアルゴを。そうして彼女の手を掴んでいた彼の指が少しずつ下へ動く。腕から脇へ、もう少し下へ。キリトは一度「いいか?」と聞きそうになった。だがこれは仕返しなのだ。言うのはおかしい。だから結局何も言わない。
「あっ」
ブラの中にキリトの手がはいる。拘束を解かれたアルゴの片手が床にぐったりとしていて、その指がピクリと動く。かといってキリトを邪魔したりはしない。
ふくらみを揉んだ。くっアルゴが目をつぶって、肩を動かす。初めての感触を彼らは分け合う。アルゴは目をつぶったまま、唇をかむ。
「痛い?」
キリトは聞いてしまった。アルゴは首を横に振る。キリトははっとして気が付く、気遣ってどうするんだと。だから彼は取り繕うように彼女の胸を揉んだ。手に固いものが当たる。ふくらみの先っぽがてのひらに当たっていた。
きゅっとつまむ。
「にゃ!」
今度はアルゴも声を出して驚いた。その顔が可愛くて、その反応が愛おしくて。キリトはもう一度指先に力を入れてみる。「くう」と押し殺した声をアルゴが出す。
キリトの舌が彼女の鎖骨を舐めた。良くわからない感情が彼にはある。キリトは漠然と男女の交わりには下腹部がどうの。といった中途半端な知識しかなかったから、なぜ自分がそうしたのかわからない。
キリトの顔がアルゴの体をなぞる。抑えているのは彼女の片手だけ、逃げようと思えば彼女は逃げることができる。それでもアルゴは逃げない。
キリトはアルゴのブラをずらした。二つのふくらみが顔を出す。その先の赤い部分がわずかに動く。キリトはそれを見て、ごくりと息をのむ。いままで感じたことないものが彼を動かす。キリトは顔を動かして、片方の胸に吸いついた。
「そ、そこハ……」
弱々しい声をアルゴは出す。だがキリトの耳にはそれが心地いい。これは仕返し。さっきのアルゴのしたいたずらがあったからしているだけ。だから容赦なくキリトは吸った。柔らかい丸みが口の中で動く。先っぽを舌で絡める。
「あ、ウ」
アルゴが腰を動かす。キリトは逃がさない。彼女の背中に片手を回して強く抱きしめる。もちろんその分だけ彼女の胸が彼に押し付けられる。
アルゴの背中を指でなぞった。そうするだけで彼女は身を振るわせる。どう感じているのだろうか。わからないがキリトには面白い。
アルゴがもぞもぞと動く。逃げるというよりも耐えられなくなったらしい、このままでは叫んでしまいそうだった。キリトは彼女の胸から口を離す。アルゴの体がその手の中で動く。
背中をアルゴは見せた。キリトに後ろから抱き着かれる姿勢になった。彼の前にアルゴの耳がある。だから彼はそれを軽く噛む。
「ひっア」
アルゴが体をそらす。キリトからは逃げられない。はみはみと耳たぶがキリトの口の中で可愛がられる。
「……そ、そこは、だめ」
そんなふうに言うのは二回目だった。もちろん聞いてやる義理がキリトにはない。だって先にされたのだから。ふっとキリトがアルゴの耳に息を吹きかける。それだけでアルゴはしゃべられなくなる。
キリトが後ろから手を回して、彼女の両胸を揉んだ。柔らかくて気持ちのいい感触が彼の両手に広がる。時折先っぽをつまんであげると、アルゴは声を上げて身を反らす。
うなじを舐める。耳を可愛がる。胸を揉む。
「…………も…さ……はんせいしたヨ…っ…」
涙目でアルゴがキリトに言った。顔は赤くて、息は熱い。
「もう、少し」
キリトは言う。アルゴは小さくうなずく。
キリトの片手がアルゴのお腹をなぞりながら下がっていく。そうして腰に付けたコートの中に入っていく。アルゴは何も言わない。
キリトの指が中のビキニの縁で止まる。この先はいいのだろうか。そう思ってしまった。彼は彼女の拒絶を待つ。いやだといわれるなら。もう、しない。
アルゴの胸が上気する。彼女は彼の動きが止まった理由を考えた。そうして「それ」を言うには少しだけ勇気がいることにも気が付く。だが彼女は意を決して言った。
「いい。ヨ」
キリトが目を見開いた。心臓が鳴る。アルゴの背中の暖かさが伝わる。ごくりと口に溜まった唾を飲み込む。そうしてから彼の指がビキニの中にゆっくり入って行った。
アルゴの中に、入る。指が動く。
「…………」
アルゴがその口を引き結んで、震える。さすがに経験はない。かといっていやではない。キリトは優しく湿った中を動く。きゅっとアルゴの腿が締まる。キリトの片手がアルゴのコートを掴んでずらした、コートは腕の部分を結んでいただけだから簡単に外れる。中から白いビキニが出てくる。彼女の汗を部屋のほのかな明かりが照らす。
ぐっとキリトは指を入れ込んだ。びくっとアルゴは体をそらす。
「脱が、よ」
キリトが言う。アルゴが赤い顔で頷く。キリトは彼女の中から指を取り出して、ビキニの縁に手をかける。ゆっくりと下ろす。だが後ろをアルゴが後ろを向いたままではやりにくい。
体で押す。アルゴが前に出る。キリトは体を絡ませながら彼女の横に回って、彼女の股から太ももを通って白いビキニを足首から脱がす。そうやって横に回ったからキリトの目には見えた。アルゴの股の間は愛液で濡れて、小さな割れ目が桃色を見せている。
「あ、あまり。みないデ……」
恥ずかしげにアルゴが腿を動かす。
アルゴを床に押し付ける。キリトは彼女の上に身を置く。息を吐く。もう我慢が限界だった。キリトは彼女にキスをする。お互いの素肌がわずかな音を立てて、動く。その肌を汗が流れていく。
「……」
キリトが唇を離す。アルゴが彼を見る。
「いい。かな」
「いいヨ」
薄くアルゴは笑いかける。なにをするなんて言わない。キリトは彼女の顔の横に口を近づけて言う。
「ありがとう」
キリトは自分の水着をずらす。アルゴには目の前に彼がいて、見えない。キリトはゆっくりと彼の固くなったものを彼女の股の間にさし入れる。おっかなびっくり、彼はアルゴを怖がらせないように自分のそれを彼女の割れ目に入れる。
「っ……」
アルゴが顔を下げる。自分の中に彼が入ってくる。キリトはゆっくりと入れていく。彼もどうすればいいのか手探りなのだからそうもなるだろう。
「うう……」
キリトが唸る。アルゴの中で彼のものがこすれる。同じようにアルゴも声を出した。アルゴは腕を伸ばして、キリトの首に腕を回す。これはさっきやったことと一緒だった。だから目的も一緒。
アルゴがキリトを自分に押し付ける。キリトが声を出した。
「ぐっう!」
キリトの肉棒がアルゴの奥へ進む。彼女の膣に擦られながら。彼の口から一筋のしずくが垂れる。彼がアルゴを見ると、彼女はにやりと笑った。彼女も感じているのだろう、その笑いには先ほどのいたずらの後より力がない。ただ、ゆるんだ目元が色を見せる。
キリトも笑う。そうして腰を動かす。ペニスがアルゴの愛液を絡ませながら、突く。
動く。そのたびにキリトの中に快感走る。それはアルゴも一緒。彼女はキリトの首へ絡ませた腕に力を入れる。それは無意識にそうしなければ耐えられそうなかった。
「あっ、あぅ……」
アルゴが嬌声を上げる。キリトが腰を動かして小さく唸る。彼らが動くたび、形のいいアルゴの胸が揺れる。キリトはまたアルゴに唇を合わせた。音をたてて吸う。もう遠慮をする気はなく、考える余裕もない。
アルゴも彼を抱く。その中が彼のペニスでかき回される。彼女はそのたびに体を動かし、彼を求める。合わせた唇を自分からキリトに押し付ける。
キリトの動きが激しくなる。ピストン運動が速くなる。だんだんとアルゴの腕から力がなくなって床に落ちる。キリトはアルゴの手に自分の手を絡ませる。手に平を合わせる。アルゴもそれに合わせて、彼の手を握る。
キリトは動く。アルゴは受け入れる。
一度キリトは唇を離した。荒い息のまま言う。
「い、いくぞ、あるご」
「い、イイヨ。きーぼぉ」
なんとか声をだす二人。そうしてキリトは最後に腰を動かす。アルゴはたまらずに声を上げた。キリトからアルゴの中に熱いものが入っていく。
「あるごっ」
和人が目を覚ますと目の前には見慣れた天井があった。はっとして、体を起こしてあたり見回すとそこは間違いなく自分の部屋だった。
「ゆ、め?」
まさかお和人はベットから降りる。時計を見ると7時。もう学校へ行く準備をしなければならない時間だった。和人は信じられないような面持ちで呆然とした。強烈な喪失感が心を襲う。
「は、はは」
そうだ。アルゴとはずっと会って居なかったはずなのだ。それなのにあんな「島」で彼女と会うわけがないのだ。
「……」
和人は力なくベッドに腰を落とす。馬鹿な夢を見たと思った。なんて夢を見るのだと自分を責めた。自然に顔が下をむく。自分で自分を嘲るしかできなかった。
ぽとりと膝にシミができた。
「えっ」
和人が手を顔にやる。頬を涙が伝っていた。彼は指先でそれをぬぐう。そうしてじっとぬぐった指先を眺める。夢に期待して。夢に涙するなんて。
「ばがが、おれは」
和人の声も、濡れている。涙が止まらずに腕を顔に付けて、上を向く。
力が入らない膝を何とか立たせて。和人は制服に着替える。着ていた寝間着は脱いでベッドに投げ捨てた。たたんだり、直す気はない。そんなことに気が回らない。彼は一度制服の袖で顔を擦る。泣き顔を家族に見られるのは嫌だった。「いやな夢」をみたなどと言いいたくはなかった。
喪失感は消えない。ばかかと和人は自分を責める。そんなことは何度もやったが、何度やっても心がいえない。彼は一階に降りて、妹の直葉にご飯はいらないと声をかけてから家をでた。彼女は焦燥した彼の姿に心配してくれたが、キリトはあいまいに笑うだけで理由はいわなかった。
「いってきます」
できるだけ明るく、彼は家を出た。
まだ少し早いからか、人通りは少なかった。
和人は暗い顔でゆっくりと歩く。バス停まではそう遠くはない。空を見上げると晴れていた、まるであの島の――。
和人は頭を振る。夢のことを頭から追い出そうとする。そうして晴れ晴れとした空を忌々しそうに彼は睨んだ。だが口に不満や抗議はない。そんなことをしても無駄だとわかっていた。
しばらく歩くとバス停についた。ちょうど今来たばかりのバスが止まっている。彼は乗り遅れないように小走りに乗り込む。
乗客は少ない。朝とはいえ、彼の行く場所は「少し特殊な」学校なのだ。客が少ないのはそれだからだろう。和人の耳にバスのエンジン音だけが響く。
「…………」
彼は無言でバスの後部へ足を向ける。一番後ろに行きたかったが鼠色のフードをかぶった乗客が座っていたので、後ろからひとつ前に座る。そうしてバスは走り出す。
暗い顔は変わらない。和人は流れていく景色をつまらなさげに眺めながら、窓枠に肘を置いて頬杖を突く。このまま寝てしまってもいいだろうと彼は思う。それで学校に遅れても仮にいかなくても、今日はいい気がする。
「…………げんきなさそうだナ」
和人が後ろからの声に目を覚ます。口が開いて、震える。
信じられなかった。和人は心臓の音を聞く。後ろは見ない。違ったら怖い。
「ひさしぶり? だナ」
声は続ける。久しぶりと言う言葉に疑問をつけながら。
「あ……るご」
和人は息を吐くように言った。か細くて今にも消えてしまいそうなほど不安をにじませた声だった。後ろの声はなにも言わない。
「……ちがうヨ」
「えっ」
たまらずに和人は後ろを振り向く。そこにはフードを深くかぶって横を向いている、彼女がいた。顔は見えない。それでも見間違えるはずがない。その仕草を、その声を覚えているから。
「ちがうヨ」
それでも彼女は否定する。和人は聞いた。
「何が、ちがうんだ……?」
フードの間から見える、赤い唇がふふっと笑う。
「違うヨ。……私はね。私の名前はね――」
バスは進む。
おつかれさまでした。読んでくださってありがとうございました。