ポエムっぽいのはそれほど気にしなくてもいいかもです。
――とくり、とくりと注がれる。
――ゆっくりと自身が満たされていく。
――とくり、とくりと注がれる。
――誰かが私に口付けをした。
――とくり、とくりと流れ行く。
――とくり、とくりと注がれる。
――――――――――――――
間桐慎二は緩やかに意識を持ち上げる。何度か瞬きをして、眼鏡越しに自分の手を確認してから息を吐き出した。
大きく息を吸い込みながら凝り固まっていた筋肉を伸ばし、関節が小さく音を響かせる。
「んぅ…………ふぅ」
肺に留めていた空気を吐き出して新鮮な空気を吸い込む。校舎に響くようなベルが鳴り、時間を確認すれば昼食時。
遅刻から流れる様に屋上でサボりを決め込んだ慎二は波打つ群青色の髪を撫でて欠伸をした。惚けたような息を吐き出して、先程から鳴かずに自身を凝視している鳥に視線を合わせる。
眼鏡を少しばかりズラし、口をへの字にして慎二はバツが悪そうに頬を掻いた。
「サボらない、とも言ってなかったかな」
そんな言い訳のような事を放った慎二に対して鳥は一向に動く気配はない。降参したように慎二は両手を上げて肩を竦めた。
立ち上がり、スカートを正して鳥に近寄る。
「心配してなくても学園は安全だよ」
カナリアの綺麗な羽毛を指で撫でて、慎二は少しおかしそうにそう呟いた。喉元を撫でられている鳥は気持ちよさそうに顔を上げて慎二の手に跳び乗る。
手の甲に器用に乗った鳥を見て微笑んだ慎二は緩やかに腕を空へと振り上げて鳥を空へと送る。
「さて、教室に行くか」
これ以上怒られるのも癪だし、と不貞腐れるように呟いた慎二の声は少し錆びついた屋上の扉が吸い込んだ。
「あ」
「む」
廊下を欠伸をしながら悠々と歩いていた慎二の足が停止し、目の前の男へと集中される。男も男で眉間を寄せて慎二を視界に入れているが腰はやや退けている。
そんな男の隣では赤銅色の髪をした両者の友人。
「おはよう、慎二」
「おはよう、士郎。と言っても、おはようというには随分な時間だけれど」
「そう言うのなら遅刻もせずに登校すればいいではないか?」
「これでも病弱な設定でいるからね。まったく我ながら困った設定だ」
「思い切り設定って言ってるし……」
「おのれ魔女め……」
「魔女らしくミステリアスでいいだろう? 生徒会長殿」
ニタリと笑みを浮かべる慎二は楽しそうに生徒会長、柳洞一成を見つめる。魔女と蔑むように言われている事に関して慎二はそれほど思うこともない。そもそも柳洞一成が自身を蔑む性格でない事など知っている。更に言えば、『魔女』というのはそもそも彼から出てきた渾名などではない。
通称として既に知れ渡っているから気にするまでもない。気にしていたのならば、既に魔女などと呼ばれる訳もない。
「それで、その設定とやらはどうなのだ?」
「近頃は調子がいいよ。以前のように突然倒れる事もないね」
「そうか」
短く応対した一成は安心したように息を小さく吐き出した。その様子を士郎と慎二は視界に収めて肩を竦め合う。
「それで、昼休みに来るなんて珍しいな」
「まあね。それに頼みたい事もあったし」
「ん、何だ?」
「残念ながら
「む、では俺か」
「ああ。正確には柳洞寺に、だけれど」
「……普段は何も言わずに来訪しては昼寝をしているらしいが?」
「知り合った友人を連れて行くつもりだから、一応言っておこうとね」
魔女でも良識は持っているよ。とクツクツと笑いながら付け加えた慎二に一成は一つだけ頷いて了承の意を伝えた。
士郎のなんとなく呆れたような、慎二だし仕方ないな、というような納得の視線を浴びた慎二は不満そうに口をへの字に曲げて反論を口にする。
「一応、弁明しておくけれど。別に昼寝の為に柳洞寺に出向いている訳ではないぞ。こう、ただ、空気がよくて丁度いい木陰があってだな」
「なるほど……つまり昼寝の為か」
「流石衛宮だ。弓が上手い」
「この男共が……」
片眉を吊り上げた慎二が怒りを露わにしているが、残念な事に身長からしても顔立ちからして、彼女が怒った所でそれほど怖くはない。当然の事だが、衛宮士郎と柳洞一成は彼女が本気で怒っているなどとは思っていない。この程度で怒るような仲なら既に切れている関係だ。
「そういえば慎二」
「ん、どうしたんだい
「そこまで欲しいなら今度焼いてやるけど、桜が探してたぞ」
「桜が?」
嫌味を言った慎二に気にしないように返した士郎。義妹が自身を探している事に疑問を浮かべる慎二は少しだけ思考を巡らせた。
「何か慌てていた様子だったが……。間桐、お前妹に何かしたのか?」
「私が桜に何かをする訳がないだろう」
心外だ、という声色でもなく、一成の言葉に対して半ば反射の様に応えた慎二は結局自身を探している理由が見付からずに思考を打ち切った。
「少し探してくる」
「ああ。授業には遅れるなよ」
「当然だ。桜は優等生だぞ」
「慎二、お前の事だぞ」
「次の授業が倫理か英語であれば考えておくよ」
ひらひらと手を振って踵を返した慎二の背中を見送り、士郎と一成は顔を見合わせて溜め息を同時に吐き出した。ちなみに次の授業は数学である。
◆◆
優等生を演じている自分ほど滑稽なモノもない。
顔すら認識するに値しないニンゲン達に嫌味にならない程度に愛想を振りまき、楽しくもない学園生活を無心で乗り切る。
間桐桜にとって穂群原学園とはその程度のモノだった。義姉に『優等生であれ』と言われずとも優等生らしく振る舞っていただろうけれど、義姉と一緒にいる時間を減らす事はなかっただろう。
マジックか何かで乱雑に黒く塗りつぶされた顔のニンゲン。相手の感情なんてどうでもいいけれど、目元である程度の感情は読み取れるし、口の動きで喋っている内容も凡そ理解出来る。そもそも鼓膜もあれば本当に乱雑に顔が塗りつぶされている訳でもない。
認識したくない。認識する意味もない。認識する労力すら惜しい。
灰色の教室。愛想笑いをする自分。顔を塗りつぶした人形達。実に滑稽極まりない。
登校している義姉に逢いたくて仕方ない。けれど我慢をする。自宅に帰れば目一杯甘えれる。だから、我慢する。
それでも今日だけは、初めてだったから我慢など出来ずに義姉に助けを求めるように義姉の教室に向かった。
残念な事に義姉はサボりの真っ最中だったらしく教室にはいない。どういう訳か申し訳なさそうな衛宮先輩に、「
「■■、■■■、■■■■■」
「ハハハ……そうかなぁ」
世界に色など存在しない。あるのは絶望だけ。苦しみだけ。辛さだけ。虚ろだけ。
雑音が広がり、心の中で溜め息を吐き出す。早くこんな世界が壊れてしまえばいい。そうすれば自分と義姉だけの世界を創り上げてみせる。
義姉が望むモノを全て献上して、愛してもらい、甘やかされ、悦ばせればいい。少なくとも桜の世界はソレで完結出来た。
「■■■■? ■■■、間桐先輩が呼んでるけど」
「義姉さんが?」
ゴミの視線の先には波打った綺麗な髪を少し跳ねさせた義姉がいる。桜の視線が向いている事に気付いたのか手がヒラヒラと揺れて、慎二は笑みを浮かべていた。
瞬間に世界は彩られる。義姉の足元から色が広がり、世界は瞬く間に希望に溢れる。
桜は
「やあ桜。呼んでいたらしいけれ――」
「すいません、義姉さん」
義姉が何かを言おうとしていたけれど、ソレを遮って義姉の手を握って教室から離れる。謝罪を口で言った後も心の中で何度も謝りながら、桜は虚無から離れていく。
慎二は慎二で頭に疑問符を浮かべながら義妹を振り払うわけでもなく、握られた手に少しだけ力を入れて頑張って桜に着いていく。
桜「義姉さん!義姉さん!義姉さん!義姉さんぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!義姉さん義姉さん義姉さんぅううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!義姉さんの群青の髪をクンカクンカしてるお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!! 」
ワカメネキ「…………えぇ(受け入れ体制無抵抗」
>>これは……次回エロじゃな
そうじゃよ。
感想で頂きましたが、そら(チンコが生えてからワカメネキの制服)姿をみたら、そう(人気のない所に)行くんやろ。
>>カナリア
金糸雀。まあ言葉遊びみたいなモノです。
>>柳洞一成が嫌味っぽくない?
皮肉を言われれば皮肉で返すぐらいの余裕はあるんでしょ(テキトー
>>ワカメネキ「ひ、昼寝じゃないから(震え声」
ポンコツ臭。
>>桜ちゃんの手首
ゲルググ並にぐるぐる回転する。