間桐桜は温もりに満たされながら、意識をじんわりと覚醒させていく。強く感じるシャンプーと柔らかく香るボディソープで鼻孔を擽りながら、更に求めるように温もりを強く、優しく抱きしめる。
強くなった拘束を感じて、身動ぎした義姉は寝心地のいい場所として桜の胸へと顔を埋めて、安心したのか息を吐き出してそのまま夢の世界へと旅立った。
胸に感じる熱と恐らく無意識であろう背中に置かれた腕の感触に桜は悦びを噛み締めながら、ハッキリと朝を迎えた。
深夜もそこそこに帰宅した義姉を抱きしめたのは覚えている。心配し、不足していた必須栄養素を貪欲に求めたのも覚えている。
泣く事はなかったけれど、抱きついて無言になった自身を理解したのか、義姉はしっかりと抱きとめてくれた。そのまま一緒にお風呂に入り、ベッドに入った。
前日の記憶を紐解きながら、ようやく桜は行為に及んでない事に気付き、ムクムクと欲望が湧いてくる。
義姉の柔らかい腹肉に当たったソレを感じつつも、桜は少し腰を引く。シたくないという事ではない、むしろシたい。義姉を自らの手で壊してしまいたい。監禁して、飼って、管理して、ゆっくりと間桐桜を刻みつけて、壊してしまいたい。
この細い首に少し力を入れれば、それだけでいい。そうすれば義姉のスベテは自身のモノになる。傷を付けて、痣を付けて――。
そんな事をしたら、義姉さんは私を嫌ってしまうだろうか?
きめ細かい肌を撫でて、少し強く抱きしめる。
緩やかなウェーブを描く義姉の髪に顔を埋めて肺いっぱいに香りを溜め込む。考えても仕方がない事を考えてしまった。ありえもしない未来――そんな事を考えるのは幼少以来かもしれない。
遠坂の家で過ごす未来。
いつの間にか、そんな未来を考えなくなった。自身が間桐として生きる決心が着いた……という訳ではなく、義姉が全てを抱えてくれた。
間桐桜を必要として、間桐桜を愛し、間桐桜を想い、間桐桜を欲した。それだけで十分だった。
毒である事は理解していた。地獄よりも熱く、蕩けるように甘い毒。けれど桜はソレを飲まずにはいられなかった。
だから、ありえない未来は考える必要は無くなった。義姉が間桐桜を求めるから、自身が遠坂桜に戻る意味を亡くした。
神様は存在などしない。自身には義姉がいる。それだけで世界は完成していた。むしろ世界こそが義姉なのだ。
自己完結世界を脳で完結させた桜は頬を緩める。やっぱり義姉が居ればそれでイイ。
他に必要なモノなど無い。全ては義姉の為にある。可愛い服も、サーヴァントも、自身も。
だから、ちょっとぐらい股間を拝借してもバレないだろう。うん。
盛大な自己弁論を完了した桜は義姉の身体を用いる桜にとって豪華な自慰を開始する。布団の中で見えない世界であるけれど、義姉の状況など手に取るように分かる。
腰を優しく支えて、男根をゆっくりと差し込んでいく。膣内には入れずに、女性器を擦るように太腿に挟む。まるで絹のような義姉の肌に擦り合わされる男性器。流石に乾燥しているからか、刺激が強すぎ桜の顔が僅かに歪んだ。
慎二としっかりと身体を密着させる。トクリ、トクリと義姉の鼓動が伝わり、僅かに身動ぎした時に男性器が擦られる。そんな小さな快楽を楽しむ。
幸福感とじんわりと迫り上がる快楽。温もり、香り、刺激、鼓動。
この状態が永遠に続けば――、いやソレはソレで生殺しになるな……。変な所で我に返った桜であったが、今暫くはこの状態を維持しようと考える。
幸いな事に、登校時間まではまだ余裕がある。
だから、ゆっくりと義姉さんの香りと温もりを――
目が合う。まるで海を思わせる深い青の瞳が桜の顔を捉えて離さない。
桜は、とりあえず笑ってみた。笑うしかなかった。慣れてしまった笑みであったのに、ぎこちない笑みである事など桜はわかっていた。それでも笑うしかなかった。
「お、おはようゴザイマス、義姉さん」
「ん……おはよう、桜。何をしてるのかな?」
「……ま、魔力が足りなくて」
「ふーん……」
義姉の上目遣いから逃げるように桜は目を逸した。引こうとした腰を逃がさないように、男根が握られる。
込められた力が少しばかり強くて眉間を寄せれば、すぐに優しく撫でる様に握り直された。
「ね、義姉さん?」
細い蛇が絡みつくように、触手でも絡みついたかのように。布団の中で起こっている現象はさっぱり見えず、心地よい快楽だけが腰を迫り上がってくる。
ツプリ、と男根の先に湿り気と熱を感じ、そのまま亀頭が包み込まれる。生暖かい熱と柔らかい肉の感触。モゾリと動いた慎二と一緒に亀頭を包んだ肉壁も蠢く。
常よりも赤くなり蕩けた表情をどうにか戻そうと、口が真一文字に結われる。そんな義姉の蕩けた表情を見なら、桜は快楽に流されていく。
何度も楽しんだ義姉の膣内だが、男性器からの快楽など慣れるものでもない。突き入れて、抜き差ししたい気持ちを抑え込んで、じんわりと広がる快楽へと流される。
肌と肌が密着し互いの熱を交換しながら、慎二は桜を見上げる。紅潮した顔。ぎこちない微笑み。飲み込まれた生唾。瞳、唇。
何が切欠だった、という訳でもない。ただ欲求が自身を突き動かした。慎二にしてみれば、それだけだった。
桜の首に両腕を回し、顔を寄せる。唇に柔らかい感触。桜の驚く顔を薄目で確認してから、慎二は感触を楽しむ為に瞼を閉じる。
唇を食み、舌で歯を撫でて、舌同士を合わせる。
「ん……ふぅ、んちゅ……」
息継ぎの度に慎二の口から甘い声と粘膜の合わさる音が鳴る。蕩けるように甘い唾液が桜の脳を麻痺させていく。
穢れた自分。清らかな義姉。接吻。舌。唾液。
そんな単語が頭の中でループして、桜の頭を白んでいく。何も考えられず、与えられたソレを味わい、求める。
「じゃあ、私は学校に行きますね」
「行ってらっしゃい、サクラ」
「あ、義姉さんなんですけど」
「はいはい。起こさないようにするわよ」
「お願いします……」
登校の見送りに立ったライダーと呆れた表情のキャスター。早朝にあれだけの嬌声を響かせれば嫌でもわかるし、どことなく桜の表情も明るい。
深く聞かずともわかる状況にキャスターは盛大に溜め息を吐き出す。
「ゴチソウサマ」
などと厭味ったらしく言えば、桜は困ったように、照れたように笑って謝罪を口にする。キャスターは口をへの字にして、また呆れたように溜め息を吐き出した。
◆◆
「腰が痛い」
「それはそうでしょう」
白い息を溜め息として吐き出した慎二の言葉に呆れを含みながらメディアが応えた。慎二は珍しくもスカートを穿き、紺色のフレアコートを着ている――着せられている。
いい加減に慣れてきた、と言いたいがコレでも慎二の根底は男性としての感性である。例え、義妹のチンポに負けてようが、朝に義妹に襲われ子宮口をゴツゴツ突かれて絶頂したとしても、そのまま気絶したとしても――慎二の根底にあるのは男性としての感性なのだ。
故にスカートを履くのは心許ないし、男性寄りの格好の方が気も楽なのだ。スカートとニーソックスの間の絶対領域など手を差し入れたいとは思うが決して自身がしたい訳ではない。断じて。
対してメディアは聖杯戦争である事と自身の領域とも言える工房から出ている事から対戦用の装いである。紫の外套に果たして概念武装としての役割があるのかはメガネを掛けた慎二にはわからないけれど、メディアが「そう」と言えばそうなのであろう。
簡単にあっさりと――……稀代の悪女による巧妙な話術によって騙されている慎二。
それは置いとくとして。
「――それで、ライダーではなく私である理由は?」
「先日言っていた事の証明……というべきか、私が自覚しなくてはいけない事の立会だ」
「……それこそライダーの方が適役だと思うけど?」
「危険も危害も危機すらないんだ。
「あらそう。それで、本音は?」
「穴倉に篭ってばかりで羨ましかったから連れ出した」
クツクツと喉を震わせて笑う慎二にあっさりと返事を返したキャスターは小さく息を吐き出した。
両者共に歩く速度は変わっていない。それこそ石段を駆け上がる程の体力を慎二は持ち合わせていないし、キャスターとて駆け上がる意味を見出だせない。
僅かに息の上がった慎二は大きく息を吐き出しながら、石段を登り終える。
何度か経験している石段であるけれど、今回は余計に疲れた気がした。
「朝にお盛んなのが悪いのよ」
「明日からは控えるさ……というか、桜に
「アナタの義妹に言う方が建設的だわ」
「桜に言えば、私のついてさぞ熱弁される事だろうさ」
「それは楽しみね」
「やめてくれ。私の前にしてするつもりだろう」
何が嬉しくて自身が如何に可愛らしいかの演説を聞かされなくてはいけないのか。まるで女神様を崇拝するように桜の口から流れるように出る言葉達を慎二は止める事は出来ない。
桜を自身に依存させるように動いた自覚はある。だから、ソレを自ら止める事など慎二は既に出来ない。出来る筈がない。
息を細く吐き出して、慎二はメガネをズラす。地面を見て、ゆっくりと何かを辿り、その終着点を見つめる。
「さて、自覚しに行こう」
柳洞寺への挨拶もそこそこに、慎二とキャスターは封鎖された洞穴へと入り込んだ。
特有の冷たい空気を肌に当て、時折響く水滴の音で鼓膜を揺らす。キャスターによって明かりは確保されているし、体力は無いが運動神経は良い慎二が滑ってコケる事はない。
ソレに、明かりなど必要はなかった。
ソレは文字だった。
達筆と言うしかない文字。捻くれた存在が書いたような歪んだ文字。まるでコンピューターに出力されたかのように均整の取れすぎた文字。
或いは知る文字で。
或いは知らぬ文字で。
或いは文字とも分からぬ文字で。
群となって、固まる文字達を慎二はただ認識しているだけ。《そう在れ》と定められた文字を、認識してしまっているだけなのだ。
ただ理解しているのがソレらが世界を構築しているという事だけ。統一すらされず、乱雑に書かれた文字達。それこそが世界であることを間桐慎二は理解していた。
堪らなく怖い。出来る事ならば進んでいる足を止めて、逃げ出したい。桜の元へと帰って、抱きついて眠りたい。自身の趣味で創り上げた世界へと戻り、もふもふを堪能していたい。
怖い、怖い、怖い。
『地面』という不確かな文字の上を歩く。
『壁』というバランスの悪い文字に手を置く。
世界はコレほどに不安定で、そして奇妙にバランスを保っている。
いつ崩れ落ちるかわからない文字の世界。それこそが間桐慎二の世界であった。
――だからこそ間桐慎二は不安定極まりないこの世界に対して恐怖を抱く事はない。それこそ怖いけれど、既に自身の基盤になるほどにその世界と過ごしたのだ。
故に、改めて恐れる必要など無い。
「着いたわ」
キャスターの一言に、慎二は顔を上げる。
魔術を心得た一般人――そして文字として世界を視る魔眼を持つ存在が圧倒される。
張り巡らされる魔力。計算され尽くされた魔法陣。魔法へ肉薄する程洗練された魔術。
「きれい……」
そう口から溢れる程にその魔術は美しかった。今まで視た何よりも、機能的で、奇抜で、鮮やかで。ただただ美しい。
物語の始まりの様に、間桐慎二は端からその文字を読み取っていく。
わかっていた事だ。
わかっていた事なのだ。
徐々に慎二の表情が歪められていく。理解していた。知っていた。ただ逃避したかっただけだった。
「あ……あぁぁぁぁあ」
本当は逃げ出したかった。本当は理解などしたくなかった。今だって逃げ出しかった。けれど、ソレはもう出来なくなった。
溢れてくる涙は止めることなど出来ない。
「ああぁぁぁっぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
臆病者は吼えるしか無い。
そうでもしなければ感情が壊れてしまいそうだった。世界を恨んで壊してしまいそうだった。
だから、間桐慎二は叫んだ。現実など理解したくはない。
魔術を使えない自分が何故魔力を溜め込む事が出来ようか。
サーヴァント二騎と魔術師一人分の魔力を単なる人が万全に供給出来るものか。
間桐の魔術が関与すら出来ない聖域が自然に出来よう訳がない。
洗練された魔術式。その一端と、間桐慎二には同じ記述がある。世界を文字として認識出来るからこそ知ってしまった繋がり。
《器》としての機能。自身に備えられた機能。付け加えられた異物。既に混ざりあった要因。
間桐慎二は――この時より自覚してしまう。
>>間桐慎二
器機能を完備したポンコツおねえちゃん(ロリ)
>>真面目っぽい解説。
原作で桜の中に仕込まれていた欠片をINされてるだけです。概念的に器としての機能はあるので魔力タンクとしてワカメネキが機能してます。
自覚してない、というのは自身が聖杯に関与していることです。
「明らかに人として間違った記述があるし、コレでマナを貯め込んでるのはわかる。でもよくわがんにゃいです……」という状態が物語の最初辺りから進んでます。今回で小聖杯を自覚しました。尤も、聖杯として十全な機能はしてませんが……。
穢れている事も今回で認識したでしょうし、絶望するには十分でしょう。叫ばなきゃ(使命感。
魔術を使わずに、溜め込まれる外部魔力。そんな魔力貯蓄存在が一定の場所で「もふもふ」していればマナが充満してある種の聖域化になるんじゃないかなぁ、とかいう妄想。気分は世界樹とか、そういう類い。
>>これは……いかんでしょ
他にエロの為の理由がなかった。不甲斐ない二次作者ですまない……。
実際、エロする為の理由として魔力補給を選んだけれど。慎二の立場だと魔術を使えたら蟲蔵にポイッされちゃうし。仕方ないね!