※この作品はR-18です。

桜に落花   作:猫毛布

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シリアス
グロ
ギャグ

今回の構成です。
ちなみに次回は獣ックスですので、後背位でパンパンしながらワカメネキに下品に「お゛お゛お゛ぉ゛ぉぉ」してもらう予定です。
英雄王の不遜さが足りない。慢心王はもっと慢心してないといけないと思いました(小並感)


24

 トクリ、トクリと流れ落ちる。

 夢幻が文字として瞳を通過する。

 それは願いであった。それは望みであった。それは希望であった。

 それは恨みであった。それは怨嗟であった。それは絶望であった。

 トクリ、トクリと注がれる。

 文字の流れが原点へと収束する。

 それは夢であった。それは魔法であった。それは奇跡であり、人々の願いであった。

 私の中にある■■■が塗りつぶされていく。一部であった筈の文字が■■■を侵食していく。

 ゆっくりと蝕むように。私の中の■■■が不足していく。

 世界へ溶けていく。

 文字に溶けていく。

 文字が解けていく。

 世界を解いていく。

 

 

 

 

 

 ゴム紐が千切れたように意識が急浮上する。瞳に鈍痛が響き、頭痛が酷くなる。

 視界を制限するように閉じた瞼を舐めるように熱い液体が瞳に広がっていく。薄く開いた視界が淡い赤色に染まる。溢れて出て来る液体を指の腹で拭って、瞳を落ち着けるように瞼を閉じたまま空へ向く。

 行きつけのオープンカフェであるが、目尻から赤い涙を流していれば訝しげに見られるだろう。こういう時に人払いの魔術でも使えれば状況も変わるのだろうけど。生憎、文字は覚えていても書くことは出来ない。

 出来るだけ視界の情報を制限したくて空だけを見れる場所にしたけれど、どうやらそれもままならなくなっているらしい。文(・)字(・)人(・)間(・)など見慣れた光景でもあるが、メガネ越しにもソレが見えてしまうのは気分も悪い。

 小さく息を吐き出して、コーヒーの香りが鼻孔を擽る。今日はライダーもキャスターも連れてはいない。相席にしては、一声もなく随分と無遠慮であろう。

 空を向いていた顔を下げ、瞼を閉じたまま正面を向いた。

 全身が粟立つ。

 閉じた瞼の上から直接瞳を焼くような輝き。溶けた黄金が流動し、美しい文字列は秩序的で暴力的でもあった。そのどれもが誰かに対する文字ではない。それは正しく存在そのものを表した文字列でしかない。けれどしかしその文字列は全てを平伏させるだけの輝きを放っていた。

 今、私は死んでいる。目の前にいるであろうこの存在に生かされているに等しい。一瞬にして生殺与奪を握られた。体が自然と震える。けれど震える事すら不敬である。

 

「――許す」

「――げほっ、げほっ」

 

 ようやく再開出来た呼吸と新鮮な空気を肺の中へと押し込んでいく。何秒、何分だろうか、呼吸を忘れていたかが分からない。ただ戯れ程度にそれが行われ、そして幸いにして目の前の黄金の暴君が私に慈悲を与えてくれたのは理解出来た。

 どうにか閉じられた瞼を上げようとしたけれど、未だに熱を持つ瞳がそれを許すことはない。

 

「こ、このような不格好をお許しください、英雄王」

 

 震える声をどうにか絞り出して吐き出してみせる。鳴りそうになる歯を食い縛り、不格好に笑みを浮かべる。閉じられた瞼であっても焼き尽くすような黄金が私を見下しているのが分かる。

 本当はこうして同じ高さに座している事も許される事ではない。彼の機嫌に関わり、そして負に傾けば私という存在はいとも容易く掻き消えてしまう。

 

「死んでおけば楽だったものを」

 

 呆れたように暴君はそう言葉にした。言葉の節々に喜悦を混ぜ、隠すことすらせずに口から出したのだ。

 私に怒りはない。憤る意味すらない。私はそうなる事を受け入れて今に至り、そして愚かにも瞼すら開けられない状態にいる。けれどそれでいい。私の苦痛など些事に等しい。

 楽に生きる事を諦めたのはいつからだろう。自分の為と理由を取り繕っていたのはいつからだろう。

 自分の幸せの中に桜が存在していたのはいつからだろう。救おうと決めた義妹が愛おしくなったのはいつからだろう。

 私は勝利しなくてはならない。勝つためには手段を選ばない。選べるほど私は優秀ではない。

 だからこそ、私は盤外に存在していた。この聖杯戦争の盤上ではなく、駒を俯瞰し、自由に動かせる盤外に居た。

 

「楽に逃げてはツマラナイでしょう」

「クク、ハハハハハハ! 我を楽しませる為と言うか、雑種」

「王を楽しませずして何が道化でありましょう」

「ほう……。して、道化はここからどう楽しませる? 立ち向かう事すら許されない貴様は目に見える出来事を享受するしかあるまい」

「はい」

 

 言葉に出した瞬間に全身を支配する威圧が強くなる。空気が重くなったように全身が締め付けられる。

 ただ運命を享受する事など許される訳がない。けれど私は享受するしかない。それはとても詰まらない事なのだろう。

 道化にすら成れない。王を笑わせる事すら出来ない。不出来過ぎる道化。

 

「私は死ぬでしょう」

「ああ、そうだ。貴様は死ぬ」

「だから、英雄王。交渉致しましょう」

「――クッ、ハハハ、ハハハハ! 道化如きが我と同等に交渉を持ちかけるか!」

 

 大笑いしている英雄王に頭を垂れ、不敬と知りながら私は更に言葉を吐き出す。

 

「英雄王。非力な私がかの英雄達を倒すのはさぞ楽しいとは思いませんか?」

「サーヴァントを倒すと言うか。なるほど、なるほど。それは実に愉快ではある」

「私にはその仕掛けがあります。この聖杯戦争を――戯曲に終わらせるだけのシナリオがあります」

「――が、現実的ではないな」

「だからこそ面白いのではありませんか」

 

 私は笑う。口を歪め、目の前にいる英雄王へと顔を向ける。

 そうこれは現実的な賭けではない。非力な私が英雄を倒すなどという幻想でしかない。

 

「一つ間違えれば意味もなく死にます。薄氷の上を私は盛大に足音を鳴らして歩くのです。そして私はソレをやってのけます。この生命をこの戯曲へと費やすのです」

「狂気の沙汰だな」

「ええ。そうです。その狂気の渦、特等席で見たくはありませんか?」

 

 英雄王は気付いている。私の戯曲に彼が居ること自体が不利益である事に。そして英雄王を舞台から降ろし、観覧席へと座らせようとしている事に。

 だからこそ、英雄王は笑っている。笑うしかない私を、狂気へと溺れるしかない私を笑っているのだ。

 この戯曲の結末を予見されているだろう。サーヴァントを倒す方法など、私にはそれしかないのだ。それを知りながらもその選択をする私を笑っている。

 

「見ていてやろう。その狂気の渦とやらを」

 

 ガタリとイスの音が鳴り、目の前にあった黄金色が遠ざかっていく。

 瞼の上から視える雑多な文字達に黄金色が混ざっていき、消える。

 

 

 

 

 余韻にも似た感覚が体を弛緩させ、イスに浅く腰掛け背凭れへ体重を預ける。

 生きている。どうにか生きる事が出来た。ヘラクレスよりもハッキリとした輝き。クー・フーリンよりも綺羅びやかな文字。あれが英雄王、ギルガメッシュ。

 死ぬと思った。いいや、途中まで私は死んでいたのだ。

 震える手を持ち上げる事すら億劫で、流れる汗を拭う事も面倒に思える。

 冷たい空気がふわりと頬を撫で、大きく息を吐き出して意識を保つ。

 元々引き返すつもりもなかったけれど、これで完全に引き返す事も出来なくなった。

 あの王様がのんびりと私の都合に合わせて待ってくれるとも思えないし、何より私が保つとも思えない。

 

 瞼を上げる。

 淡く赤に染まった世界が次第にクリアになっていく。ハッキリと視えすぎる。

 メガネの位置を正して、細く溜め息を吐き出す。

 空へと伸ばした手の先から文字が解けていく。■■■が世界に消えていく。

 

「……ああ、これでは足りないな」

 

 まだすべき事がある。これ以上失う事はそれこそ英雄王に殺されるよりも悲惨だ。

 戯曲の半ばで倒れる道化など、存在の意味すらない。

 ライダーやキャスターを食(・)べ(・)れ(・)ば(・)幾らかはマシになるだろう。けれど、それは下策だ。アサシンも、食べれない。

 目を細める。どうにか逃げ道を探そうとしても、逃げる事も出来ない。

 私は前に進まなくてはならない。間(・)桐(・)慎(・)二(・)は(・)進(・)ま(・)な(・)く(・)て(・)は(・)な(・)ら(・)な(・)い(・)。

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

 間桐邸。その中で唯一臓硯の手が及ばない部屋の扉を慎二は後ろ手で閉めた。

 部屋に暮らす動物達は自身の主が戻ってきた事に歓喜し、そして異常を知った。

 コレは主であるが、主ではない。まるで存在そのものに綻ぶように、間桐慎二が揺れていた。

 

「……ぁぁ」

 

 主は小さく声を出した。

 部屋の中を視渡し、確信したように頷いた。

 足りないモノが存在した。世界へと解けていく■■■が確かにここに存在していた。

 他人を食べた時よりも色濃く。そして慎二自身がソレを求めて止まない。その事を理解した。

 

 震える腕に爪を立てて慎二は自身を律する。

 必要な分だけ。そう、必要な分だけでいいのだ。

 生唾を飲み込み、苦痛である筈なのに悦楽に満ちたように笑みを浮かべる。

 

 動物達の主とも呼べる青い毛の大型犬が主へと近寄る。

 鼻に掛かるように鳴き、主の手を鼻先で持ち上げる。慎二の手に滑らかな毛並みが触れ、普段のように慎二は大型犬を撫でる。

 

「――ごめんなさい」

 

 慎二の口から謝罪が溢れた。

 膝を折り曲げて、大型犬の首を抱きしめて、精一杯撫でる。これから自身がする事への償いのように、慈しみを持って。

 部屋の存在達は気付いていた。主が今から何をするのかを。自分達がどうなるかを。

 そして、動物達はソレを受け入れる。主である間桐慎二の為に。他ならぬ慎二の願いの為に。

 

「ごめんなさい」

 

 抱きしめた大型犬に再度告げるように言葉を溢し、慎二の身体に何(・)か(・)を(・)無(・)理(・)や(・)り(・)折(・)っ(・)た(・)ような音が広がった。

 ポケットの中にあるナイフを取り出し、慎二は力なく自身に凭れる愛しい従者を見つめる。

 瞳から溢れる液体が頬を伝い、吊り上がった口角を流れた。

 

 

 

 

 

◆◆

 

 間桐桜は驚愕した。これを驚かずに何を驚けというのだろうか。

 世界の破壊など些事に等しく思える事実が今眼前に在った。まるで夢にも思える現実を肯定する為に桜は自身の頬を抓った。痛い。現実である。

 桜の眼前には風呂上がりの義姉が存在している。確かに義姉の風呂上がりの姿はまさに、こう、下半身にクる。男性器の生えた桜は男性器が生える以前より性に忠実だった。

 濡れて濃く見える群青色の髪は水にも負けず僅かに波打ち、火照った身体は血気に満ちて仄かに赤らんでいる。

 どうでもよくないけれど、今はそんな事すら些細な事に見える。

 

 耳があるのだ。

 髪と同じ群青色の尖った耳が頭頂部から生えていた。聞こえる音を捉えたのかピクリと動いている。あれは確かに耳である。犬耳だ。

 更に言えば尻尾があった。

 もふもふの尻尾であった。さわり心地の良さそうな尻尾であった。尻尾である。水を吸った髪とは違い、濡れている事を嫌ったのか水気は既に取れている毛並みのいい群青色の尻尾が義姉から生えていたのだ。

 

 義姉さん、どうしたんですか?

「神様、最高かよ」

 

 思わず自身の口調すらも忘れる出来事であった。

 信じてもいないクソ野郎(ファッキンゴッド)を崇め、普段自身が積んでいる善行の褒美かと思った。塵芥達と仲良くしていた結果だというのならば塵芥達をクラスメイトと呼んでもいいかもしれない。

 桜の声を耳(・)で捉えた慎二は桜へと顔を向けて首を傾げる。

 桜は目を輝かせ、何か神々しいものにでも触れるかのように手を震わせて義姉へと手を伸ばす。

 

「おかえり、桜」

「な、撫で回していいですか?」

「撫で回されるのは嫌なんだが……」

「じゃあ首輪とかどうです?」

「悪化している気がするんだけど」

「じゃあ義姉さんを飼っていいですか」

「……存分に撫で回してくれ」

 

 徐々に悪化する桜の要求に観念したように慎二は肩を落として桜の前に立った。

 桜は慎重に、ゆっくりと、震える両手を慎二の頭に置いて耳に触れる。もふもふした。心地よい毛並みであった。

 言語化出来ていない桜の思考は「ほぁあっぁぁぁぁああああああ!?」である。キャスターによって鍛えられた分割思考全てが歓喜に満ちていた。

 

 どうして犬耳なんか生えてるんですか?

「獣ックスしましょう。今すぐしましょう」

 

 桜は欲望に忠実であった。スカートを押し上げる肉棒をとにかく目の前の義姉に突っ込みたくて仕方なかった。

 

 桜は欲望に忠実であった。

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