続きを投稿します。
ここはとある病院の一室。窓から降り注ぐ太陽が室内を明るく照らしている。
室内のベッドの上に、一人の少女が横たわっていた。拳藤一佳である。
昨日、ショッピングモールでヴィランに撃退された彼女は、駆けつけた警察によって救急病院へ担ぎ込まれた。幸いにも彼女は大したケガは負っておらず、ミルキーマンの個性によって巨大化してしまった胸もほどなくして元に戻った。
念のため翌日に精密検査を受けることとなり、一佳は病室で一夜を過ごした。今日は朝から様々な検査を受け、その結果を待っているところだ。
「はぁ……」
一佳は日差しに背を向ける体勢のまま、本日何回目か分からないため息をついた。警察から連絡を受けた両親に心配をかけ、お説教を受けたことと、ヴィランに敗北した事実が彼女の心に影を落としていた。前者についてはもう心の整理はついていた。重いのは後者だ。
ヒーローの卵である彼女にとって、昨日がヴィランとの初めての実戦だった。
相手は自分と同年代の少年少女達。身元がバレるのを恐れたのか、彼らは個性は使っていなかった。とすればあとは実力勝負。拳法を習っている一佳は負ける気がしなかった。
だが、結果はどうだ。相手の策にはまって混乱し、誤って味方のヒーローを殴り倒してしまった。おまけに味方の個性を喰らってしまい、戦闘不能になる始末。その後のことは思い出したくもない。
「うう……」
恥ずかしさと怒りで真っ赤になった一佳は、両手に握りしめていたスマホを思わず握りつぶしてしまいそうになる。
その時、スマホがブルッと鳴った。起動しておいたメッセージアプリが新しいメッセージを受信したのだ。
一佳は感情を押さえながらアプリを開く。
メッセージを送ってきたのは雄英高校の女子生徒だ。以前に食堂で相席をしたことがあり、その時に仲良くなった子だった。
一佳の件はすでに雄英の生徒の間で噂になってしまっており、クラスメイトからも彼女を心配するメッセージが大量に届いていた。
新しく届いたメッセージも一佳を心配する内容であった。クラスメイト達と同じように一佳がお礼のメッセージを送ろうとすると、アプリが再び新しいメッセージを受信した。
『ところで、塩崎さんも大丈夫でしたか?』
一佳はその内容に目を見開いた。女子生徒の言う塩崎さんとは、一佳のクラスメイトである塩崎茨のことだ。食堂で相席したときに茨も一佳と一緒にいて、女子生徒と知り合っていた。
それにしても女子生徒のメッセージは腑に落ちない。昨日、一佳以外のクラスメイト達はみな外出できなかったはずだ。茨からもその連絡を受けていた。
一佳が『どういうこと?』と尋ねると、すぐに返事が来る。
女子生徒もきのう外出しており、街中で茨の姿を見かけたという。茨は個性のおかげで特徴的な髪の毛を蓄えている。女子生徒が目撃したのは遠くからだったが、あの髪の毛は見間違えるはずがないと自信ありげに語った。
女子生徒によると、そのとき茨は私服姿の背の高い女性と何やら話していたらしい。先を急いでいた女子生徒はその場をすぐに去ってしまい、その後のことは知らない。
一佳は事情がよく分からないものの、茨は自分とは一緒に居なかったことを女子生徒に伝えた。女子生徒は安心したように『お大事に』と一佳にさよならのメッセージを送った。
女子生徒とのやりとりを終えた一佳は茨の件について考える。とくに今のところ彼女についてとくに連絡は来ていない。普通に考えると、一佳の呼びかけで茨は外出したものの、後から追ってきた保護者に捕まってしまったというところだろうか。
念のため茨に連絡をとろうと一佳がスマホを操作しかけると、病室のドアが開いた。
室内にやってきたのは一佳の両親だ。検査の結果で一佳の身体に問題が無いことが確認されたため、彼女を迎えに来たのだ。
一佳は慌ててスマホをしまうと、病室を出るための準備を始めた。
◇◆◇◆◇
卯稀の部屋からドタバタと大きな音が響いた。
ドラキュラ屋敷への出発に向けて、室内で百達が慌しく準備を進めているのだ。そんな彼女達を放ったまま、卯稀は一人でスマホを操作している。
梅雨の話に疑いを持った卯稀は、彼女が教えてくれた情報が本当なのか確認することにした。
親しいヴィラン仲間に電話を掛け、あの襲撃事件の際に芦戸三奈と葉隠透を貰っていったヴィラン達のその後について訪ねた。
卯稀が仲間に確認した内容は梅雨から聞いた話と一致した。
三奈と透の主人となったヴィラン達は、その後すぐにドラキュラからゲームを持ち掛けられた。そしてゲームに敗北して少女達を奪い取られてしまったのだという。
梅雨が何か隠していると疑っていた卯稀だったが、けっきょくは彼女の言葉の裏をとる結果となった。
考え過ぎだったのだろうか。そう思った卯稀が通話を切ろうとすると、仲間は『そう言えば……』と更に続きを話し始める。
ドラキュラに少女達を奪われたヴィラン達だが、ゲームから数日後に何者かに襲われたらしい。
それぞれ自宅で急に意識を失ってしまった彼らは、意識が戻ると目隠しをされて全身を縛られてしまっていた。混乱するヴィランの側には何者かが立っていて、あれこれ尋問してきたそうだ。
その内容は例の襲撃事件についてで、なかでも誘拐された少女達の行方についてはしつこく問い詰められたとのことだった。
正直に話さなければ拷問すると脅されたヴィラン達は知っていることを全て話してしまった。その後、尋問を終えた侵入者はヴィランの拘束を解かないまま立ち去ったらしい。彼ら達が自力で拘束を解いたのはそれからしばらくしてからだった。
「おいおい……そう言えばで話す内容じゃないだろ。それってかなりマズいんじゃないの?」
卯稀が電話越しに仲間に呟くと、相手も深刻そうに返した。
『ああ……幸い、被害にあった連中は大したことは知らなかったみたいだが、連合の上の連中は大騒ぎしてる』
巨大施設襲撃事件については新たな報道も出ておらず、警察の捜査は進展していないというのが卯稀の認識であった。
だがここにきて事件を探る謎の人物の存在が明らかになった。漏れてしまった情報はわずかでも、そこから捜査の手が伸びる可能性は十分にある。
ヒーロー稼業が大人気の昨今。かつて治安を守る主役であった警察はヒーローが倒したヴィランの護送係、などと皮肉られることもある。しかし長年にわたって積み重ねられた手法や、数による人海戦術は基本少数のヒーローに真似することはできない。
ヴィランにとってはヒーローともども厄介な相手なのである。
そんな警察の手が伸びるのを防ぐため、被害にあったヴィラン達は連合の指示ですぐに身を隠したそうだ。
「で、その謎の人物さんの正体は分かったの?」
『それもサッパリらしい。かろうじて女の声だったということしか分からんそうだ』
「女、ねぇ……」
卯稀は梅雨が犯人ではないかと再び怪しんだ。だが彼女の犯行にしては手口が鮮やかすぎるようにも思えた。
自宅で油断していたとは言え、ヴィラン達を気絶させて縛り上げるのはかなり困難だ。きっと犯人はこういった作業に慣れた人物なのだろう。
また、漏れた情報については警察に渡った様子がないと仲間は続けた。身を隠したヴィラン達を刑事や警官が探しているようでもないという。
話を終えた卯稀は、モヤモヤした頭のままスマホのスイッチを切った。目を閉じて、聞いた内容を頭の中で思い返す。
誘拐された少女達の行方を何者かが追っていることだけは分かった。
卯稀はその人物が今回のドラキュラとの一件に関わっているような気がしてならなかった。確証は一つもないが。
卯稀が考えを巡らせていると玄関のチャイムが鳴った。ドラキュラの使いの者が卯稀達を迎えに来たのだ。
なんとか準備を終えた百達とともに、卯稀はドラキュラが用意したリムジンに乗り込んだ。
ドラキュラの屋敷は街から離れた山の中にある。
建物もまばらな、左右に緑が広がる山道をリムジンは進んでいく。卯稀達はその後部座席に全員座っていた。そこは四人が乗っても楽にくつろげるほど広い。運転席とは板で仕切られていて、ドラキュラの使いの者は見えない。完全に四人だけの空間だ。
卯稀はふかふかのチェアに背中をうずめながら、スマホをいじっている。
百、響香、お茶子の三人娘はこれから行われるゲームのことを考えているのか、落ち着きがない。それぞれ窓の外を眺めたり、俯いたりして黙っていたかとおもうと、とつぜん意味もなく指を組んで弄んだり、頭をワシャワシャとかき乱したりしている。
そんな彼女たちの様子が気になった卯稀は、スマホを触る手を止めて顔を上げた。
「みんなどうしたの? ずいぶん静かだけど、乗り物酔いでもした?」
「えっと、そういう訳じゃなくて……」
浮かない顔で響香が応える。
「もしかしてゲームのことが心配なの?」
卯稀が尋ねると、響香は頷いた。
「大丈夫だって。出発する前の話を思い出してごらんよ。僕らが負ける要素はないって」
「でも、でも……ボス! もし負けたらウチ達は……」
「うん。耳郎ちゃん達はまとめてドラキュラの奴隷にされちゃうね」
「ウチ、そんなの絶対にイヤ! みんなだってそうでしょ!?」
響香の言葉に百とお茶子が揃って頷いた。二人とも真剣な表情で卯稀を見つめている。
卯稀はタイミングをみて梅雨を疑っていると百達に話そうと考えていたのだが、今の様子を見てやはり止めることにした。
自分の考えすぎかもしれないし、このタイミングで三人が動揺しそうなことを伝えるのはリスクの方が大きいと判断したのだ。
「不安なのは分かるけど、今からそんな調子じゃ勝てる勝負も負けちゃうよ?」
「でも……」
響香が申し訳なさそうに目を伏せる。頭では分かっていても、簡単には実践できそうにない。それは百たちも同様だった。
「んもう、手が掛かる奴隷ちゃん達だなぁ」
卯稀はスマホをポケットにしまうと、響香の横に移動する。
「えいやっ」
卯稀は響香の頭を押さえると、いきなり彼女にキスをした。
「んっ、んんんーっ!?」
不意に唇を奪われて、響香が顔を真っ赤にして叫んだ。
「ご主人様っ!? いきなり何をしてますのっ!?」
二人の側にいた百が慌てた様子で叫んだ。お茶子も顔を赤くしながら卯稀と響香を凝視している。
「ぷはぁ……耳郎ちゃんの緊張をほぐそうと思って。これが一番効くでしょ?」
響香から口を離してあっけらかんと言う卯稀。当の響香はウットリとした表情で卯稀を見つめている。その潤んだ瞳はまるで恋する乙女のようだ。
「ね、ねぇ……ボス? ウチ、まだ不安がとれなくて……だから、もっとボスとちゅっちゅしたい……」
切なそうに内股をモジモジさせながら響香が呟く。
「やれやれ。仕方ないなぁ」
再び卯稀が響香の口を塞いだ。それに応えるように、響香が卯稀の背中に腕を回す。密着した身体を卯稀に擦りつけるように揺らしていった。
「んっ、はぁっ……んむぅ、んっ……ボ、スぅ……! すきぃ、だいしゅきぃっ……」
濃厚に舌を絡め合う二人。車内にピチャピチャという水音だけが響いた。
響香は呼吸のためにいったん口を離すが、すぐにまた唇を捧げていく。二人のまるで恋人のような甘いひと時は終わる気配が見えない。放っておくと次のステップに進んでしまいそうだ。
それを見せつけられている百達はたまったものではない。
最初は二人の行為を呆然と眺めていたが、やがて我を取り戻すと慌てて二人に飛びついた。
「耳郎さんっ、いつまでそうしてらっしゃるのですかっ!? い、い、いくらなんでも、な、長すぎますわっ!」
「キング様っ! 私も不安なんですっ! 私にもお願いしますぅっ!」
とたんに車内は喧騒とした空気に包まれる。
その様子を車内に取り付けられたカメラが捉えていた。実は後部座席の様子は車が動き出してからずっと、運転主が定期的にチェックしていたのだ。
数分ぶりにモニターを見た運転手は目を丸くした。
出発してからお通夜のように重苦しい雰囲気が流れていたはずだったのに、今はどうだ。三人の美少女達が一人の少年の唇を奪い合って組んずほぐれつしている。まるでギャルゲーかラブコメ漫画の一場面を切り取ったようだ。
運転手は映像を見て羨ましそうな顔を一瞬したあと、前を向いて小さく舌打ちをした。
それからしばらくして、リムジンは目的地であるドラキュラの屋敷へ到着した。
すっかり車内で盛り上がってしまった四人は、乱れた衣服を慌てて整えると車外に降り立った。
「うわぁ……おっきいお屋敷……」
感嘆したようにお茶子が呟く。
ドラキュラは山の中を切り開き、東京ドームが何個もおさまるような広大な敷地を作っていた。その中央に西洋建築風の巨大な屋敷がそびえ立っている。
屋敷の周囲には緑の植え込みや噴水がいくつも設置され、その側では執事やメイド服姿の使用人達が忙しそうに作業をしていた。
「それではこちらへ。私から離れないようにお願いいたします。屋敷の防犯装置が反応してしまいますので」
見た目ではよくわからないが、敷地のあちこちには防犯カメラが仕掛けられている。許可のない者が侵入すれば即座に装置が反応する仕組みになっていた。
車を運転してきた男に案内されながら、卯稀達は庭園を進んでいく。
「ねえ。防犯装置があるって言ってたけど、わざわざこんな山の中のお屋敷に忍び込もうなんてやついるの?」
男の背中に向かって卯稀が問いかける。
「はい。我が主は敵が多いものですから、それなりに。つい先日も何者かが屋敷に接近する騒ぎがございましたばかりで」
「その犯人って、男? 女? ちゃんと捕まえた?」
「それが残念ながら取り逃がしてしまいまして……真夜中でしたので、カメラにもはっきり映っておりませんでした」
「そうなんだ」
男の言葉に、卯稀は納得していないような表情を浮かべる。
これだけのお屋敷を作れるお金があるというのに防犯用に暗視カメラを使っていないとは考えづらかった。
部外者である自分に詳細を話したくないのだろうと卯稀は思った。
百たち三人娘は男と卯稀の後ろを歩いている。
「執事とメイドさんって本当にいるんだ。私、初めて見た」
「ウチも。あのお屋敷も、ここ本当に日本? って、感じしない?」
「あー、うん、そうかも。すごすぎて、なんか映画の中にいるみたい」
周囲の珍しい光景にテンションが上がったお茶子と響香は、オノボリさんのように目に映るものについて盛り上がっていた。
「だねーって、あれ? どしたヤオモモ? 気分でも悪くなっちゃった?」
ボウッとしたまま黙って歩く百に気がついた響香が声を掛ける。
百は響香の問いかけに気がつくと、照れくさそうにはにかんだ。
「あっ、申し訳ありません。ここを歩いているうちについ実家を思い出してしまいまして……お屋敷やお庭の雰囲気がよく似ていたものですから」
「!?」
百の言葉に響香とお茶子が固まった。
二人とも百がお嬢様だというのは何となく聞いていたが、まさかこんな豪邸によく似た所に住んでいたとは思わなかった。
「あっ、とはいいましても! 私の実家は街中ですから、ここよりも敷地が狭いですし、使用人の数ももっと少なかったかと……!」
身をこわばらせた二人の様子に慌てた百が、早口でまくし立てる。響香達に引かれてしまったのではないかと不安になった百は、自分の実家がここよりスケールが小さいことを身振り手振りを交えて力説する。
ほどなくして、響香とお茶子が復活した。
「落ち着いて八百万さんっ! ちょっとビックリしちゃったのは事実やけど、ぜんぜんおかしくないから!」
「うん、なんか逆に納得した」
「お二人とも……」
正気を取り戻したお茶子達の言葉に、百はホッと胸をなで下ろした。
やがて卯稀達は屋敷の中に入り、大きな扉のある部屋の前まで案内された。どうやらここにドラキュラが居るらしい。
男にドアを開けられ、卯稀達は室内に足を進める。
広い室内にはあちこちに豪華な家具や、高そうな彫像品が置かれている。中央に大きなベッドがあり、一人の老人が寝そべったまま半身を起こしていた。
頭頂部こそ禿げてしまっているが、左右の真っ白な髪はワックスできれいに整えられている。彫りの深い顔立ちは、異国人の血が混じっていることを感じさせた。
「遠路はるばるご苦労じゃったのう。わしがこの屋敷の主、ドラキュラじゃ」
ドラキュラは卯稀達に向けて不敵な笑みを浮かべる。彼の口に生えた鋭い牙が僅かに頭を覗かせた。
「お招きに預かりありがとうございます、でいいのかな? 分かってると思うけど、いちおう名乗っておくよ。僕はリボーン・キング。それでこっちは――」
「存じておる。八百万百、耳郎響香、麗日お茶子じゃろ?」
ドラキュラの言葉に三人娘が驚いた様子で頷いた。
「写真でもきれいじゃったが、実物は一段とめんこいのう。数時間後には全員わしのものになっとるかと思うと、今から股間が熱くなってくるわい」
ドラキュラがネットリとした視線を百達に浴びせる。その厭らしい感触に百達は背筋が寒くなった。
「悪いけど僕の奴隷を視姦するのはやめてくれないかな? とっととゲームとやらを始めちゃおうよ」
「おっと。そうじゃったそうじゃった。年をとると物忘れが激しくなっていかん。お楽しみは後にするとしよう」
ケラケラと笑いながらドラキュラが指を鳴らす。するとベッドの後ろからメイド服に身を包んだ少女達が姿を現した。ドラキュラによって奴隷にされてしまった蛙吹梅雨、芦戸三奈、葉隠徹である。
ドラキュラの枕元に整列した三人は言葉を発さずに卯稀達見つめている。
透明人間の透は定かではないが、残りの二名はどちらも人形のように無表情で、百達にはそれがとても不気味に思えた。
「……?」
梅雨達を見て卯稀が眉をひそめた。彼女達の頬がどことなく紅潮しているように思えたのである。よく見ると梅雨と三奈は二人とも唇をキュッと結び、まるで何かに耐えているようだ。
卯稀の耳には機械のモーターが動いているような音が微かに届いていた。それに雌が発情したときのような独特の臭いが、少女達からしてくるように感じるのは気のせいだろうか。
「ルールは梅雨から聞いておるな? おさらいするが、この場にいる四人ずつで一組となり、相手のメンバーを性的に絶頂させていくゲームじゃ。わしかキングが三回射精するか、おなご達が全員達してしまったほうが負けとなる。判定にはこれを使う」
ドラキュラが自分の右腕を卯稀達に見せつける。そこには腕時計のような形をした小型の装置が取り付けられていた。
続いて梅雨達も主人と同じように右腕をかざす。彼女達も同じ装置を身に着けていた。
「これは脈拍や体温などから、装着者が絶頂したかどうかを判定する装置じゃ。このゲームのためにわしがこしらえさせた。安心せい、妙な小細工などしておらん。ついでに、絶頂するとどうなるか実演させてみよう。ほれ、お前たち」
ドラキュラの言葉を受けた梅雨達がおもむろに自分のスカートをまくり上げる。その下から彼女達の秘密の花園が姿を現した。
彼女達はパンツを履くことを主に許可されていなかったのだ。
さらけ出された女性器には極太のバイブが深々と挿入され、ひっきりなしに振動している。女性器から溢れでた蜜がバイブの表面を伝わって、床の絨毯にポタポタと染みを作りはじめてしまっていた。
梅雨達の下腹部ではコウモリのイレズミが妖しく輝いており、梅雨の話通りであれば、今の彼女達は性的な快楽を感じているはずだ。しかも光の強さから、それが並みのものではないことが伺える。
だが、梅雨達はそれを表情に出さないように懸命に努めている。言うまでもなく、ドラキュラの趣向であることは間違いなかった。
そんな梅雨達の姿を目の当たりにして、百達は顔を青くして身を寄せ合った。三人とも膝がガクガクと震えている。
今の梅雨達の姿は、ゲームに敗北した場合の百達の姿だ。ドラキュラの悪趣味ぶりに思わず恐怖を覚えてしまうのも無理はなかった。
「うへえ。いい趣味してるね。実演っていうから、お爺ちゃんのオナニーでも見せつけられるのかと思ったけど」
先ほどの違和感から、何となく予想済であった卯稀は全く動揺していない。
「あいにくわしにそんな趣味はないが……もしかして見たいのか? 客人の要望とあらば検討せざるを得んが」
「いえ、お構いなく。で、実演とやらをするんじゃなかったの?」
「そうじゃったわい。お前ら、存分に乱れて構わんぞ。感情を表に出すことを許す」
ドラキュラが指を鳴らすと、梅雨達の顔がクシャクシャに歪んだ。少女達は全員がその場にへたり込み、狂ったように嬌声を上げ始めた。
「あっ、あああああああああぁぁぁっっ!!!」
「ふぇああっ、ごくぶとバイブ、ずっぽりきてるううううぅぅっ!!」
「わたしイク、もうイッチャううううっ!!!」
梅雨、三奈、透は百達の目の前であることも忘れて、襲い来る快感にのた打ち回った。
「おや、みんな急に元気になったね。何をしたんだい?」
「大したことではない。わしの個性で封じていた心を一時的に戻したのじゃ。こうしないと反応が悪くてつまらんじゃろ? やかましくてしかたないから、ふだんは心を奪っておるがな」
ドラキュラが楽しそうに唇をつり上げる。
ドラキュラの個性は『吸血鬼』といい、吸血鬼っぽいことができる。相手の血を啜ることでその人物を僕(しもべ)に変えることが可能だと、卯稀は噂で聞いていた。
僕に変えられた者はドラキュラに完全に支配される。心を奪われ、まるで人形のように主に付き従う。主の許しが無ければ笑うことも、怒ることもできなくなってしまうのだ。
老人のベッドの側で梅雨がうずくまっている。だらしなく舌を垂らしながら、それでも懸命に淫欲と戦おうとしていた。
三奈は梅雨とは対照的に、すっかり気持ちよさに流されてしまっているようだ。メイド服の上から自分の胸を懸命に弄っている。すると彼女の身体から白い煙が上がりはじめた。
「よ、溶解液、ですわ……!」
顔を青ざめさせながら百が呟いた。
芦戸三奈の個性は『酸』という。身体中から溶解液を噴出することができる。溶解度に加え粘度まで調節可能であり、汎用性に優れた個性といえよう。
だが、今の彼女はバイブの与える快感のせいで我を見失い、個性がダダ漏れだ。あっという間に三奈の衣服はボロボロになり、豊かな方な胸がぽろっとこぼれた。
幸いなことに今の溶解液は床や周りが危なくなるほどの酸性は持っていない様だ。
また、彼女を犯しているバイブは防水に加えて対酸性の加工が施されており、溶解液にもビクともせず三奈の股間で暴れ続けている。彼女の個性が暴走することを見越してのドラキュラの処置であった。
「おぉっ、これは…………うぉっ、いったぁ!?」
三奈の胸を凝視していた卯稀は、後ろから響香にお尻をつねられてしまった。
「うううぅぅっ……! ボスのバカ……! こんな時まで……!」
卯稀が振り向くと、響香が泣きそうな顔で彼を睨んでいた。
「ふむ。キングは大きい胸がお好みか? 何だったら、ここで三奈の味見をしても構わんぞ? ただしアレが溶かされてしまっても責任は持てんがのう」
「最初の質問はイエス。次はノーだよ。僕は溶かされる趣味は無いからね」
お尻を擦りながら、ドラキュラの問いに答える卯稀。
そんなやりとりをしていると、メイド服の少女達の中からひときわ高い声が挙がった。
「ふぁ、あああああぁぁっ! もうダメええぇぇぇーーっ!!!」
それは透明少女、葉隠透のものであった。
透は全身を激しくビクつかせると、そのまま動かなくなる。絶頂のあまり気絶してしまったようだ。透の右腕の装置のランプが点滅し、やがてピーという機械音が鳴った。
『チームドラキュラ・葉隠透、絶頂しました』
室内に備え付けられたスピーカーから、女性の声が流れた。
ドラキュラが用意した装置は、身に着けた人物が絶頂するとランプと機械音でそれを通知するように作られている。しかも機能はそれだけではない。絶頂と同時に無線で信号を飛ばすことも可能としていた。
装置が飛ばした信号は屋敷内にある受信機が受け取り、絶頂した者の名前を館内へ自動アナウンスする仕組みになっていた。
「とまあ、こんなふうに誰かが負けるとすぐに教えてくれるのじゃ。今回の参加者の名前も登録済みじゃから、いつでもゲームを始められ……ほれお前ら! いつまで盛っておるのじゃ!」
ドラキュラがベッドの上から杖で梅雨と三奈の身体を乱暴に叩いた。
「あっ、やめっ、ふぁああぁっ!」
梅雨は身体を丸めて、背中で杖の痛みに耐え続けている。
「マスター! だめっ、だめええぇっっ……あああぁっ、とんじゃうううっっ!!!」
仰向けになって悶えていた三奈は杖の一撃をまともに腹に受けてしまった。
痛みが引き金となり、三奈は限界を迎えてしまう。全身を溶解液まみれにしながら、放心したように天井を見つめている。
『チームドラキュラ・芦戸三奈、絶頂しました』
スピーカーから、三奈が絶頂した旨が放送された。
最後の一人になっても抵抗し続ける梅雨の身体を、ドラキュラは叩き続ける。
「あのっ、ひどいことをするのは……やめてください……!」
見かねたお茶子が、ドラキュラを咎めた。
かつて自分もヴィランに監禁され、凌辱と虐待の日々を送らされていたお茶子だ。目の前で起きていることを見過ごすことはできなかった。
同じ境遇だった響香も昔のことを思い出したようで、言葉は出さないものの拳を固く握りしめている。
老人は杖の先端を梅雨の背中にグリグリと押しつけると、お茶子の方を睨んだ。
「やめろじゃと? よいかお茶子。これは躾じゃ。客人を待たせて自分の快楽を貪り続ける奴隷へのな」
「でも、それじゃ……」
「あ、あんまりですわ!」
「そうだ、そうだっ!」
「黙れ小娘ども!」
「ひぃっ!」
なおも食い下がるお茶子に同調した百と響香だったが、ドラキュラの迫力ある一括に押されて三人とも身をすくませてしまう。
ドラキュラは怒りに表情を歪めてお茶子達を睨みつけている。いつの間にか青い瞳は真っ赤な色に変わり、禍々しい光を放ち始めていた。
大物ヴィランの風格を遠慮なく放つ老人に圧倒され、お茶子達は何も言い返せなくなってしまった。
「躾のなっていない奴隷ほど、許せんものはない。小娘らよ、今までどれだけ甘やかされてきたかは知らんが、わしの物になった後は容赦せんから覚えておけ。三人とも生き血を啜り、こいつらのようにしてやろう。主に絶対服従し、わしが許可せんと言葉を発することすら出来ない、惨めな身体にな。徹底的になぶり、犯し、責めてやるゆえ、今から覚悟しておくようにの?」
老人は怒気をはらんだままの口調でまくし立てた。彼が住んでいる屋敷を見れば分かるとおり、ドラキュラはヴィランの中でも大物の部類に属している。そこらのチンピラのようなヴィランとは年季と格が違う。
対する三人娘はまだ高校生にあがったばかりで、経験も浅い。すでに彼女達は泣きそうな顔になってしまっているが、それは無理もないことであった。
「お茶子ちゃんが出しゃばったのは謝るけど、それくらいにしてくれないかな? それにゲーム前に大事な駒を壊しちゃ、もったいないと思うよ」
まだまだ百達を恫喝しようとしていたドラキュラを卯稀が止める。彼はエキサイトした老人の様子を見ても動じた気配はない。
そんな卯稀の様子にドラキュラはつまらなそうに鼻を鳴らすと、梅雨から杖を離した。
「ゲームは今から三十分後に始める。別室に案内させるからそこで準備をしてもらおう。何か質問はあるかの?」
「そうだ。ゲームにハンデが欲しいんだけど」
「ハンデじゃと?」
「うん。僕らはこのゲームは初めてだ。それにここはあんたの屋敷でしょ。少しくらい手加減してもらわないと、こっちが不利すぎるんじゃないかな」
「なるほどのう。申してみよ」
「そうだね。僕の奴隷に対して、本番行為はやめてもらえるかな。ゲームとはいえ、他の奴のチンコを挿れられちゃうのは我慢できないんでね」
「なんじゃそんなことか。別に構わんが、それだとそっちもわしへの攻撃手段が1つ減ってしまうぞ?」
「別にいいよ」
「よし分かった。おまえの奴隷への本番行為は無しにしよう。どうせ後でたっぷり楽しめるでの」
「受け入れてもらえて助かるよ。他に何か禁止事項は?」
「とくに無い。あとは何でもありじゃ」
「わかったよ。それじゃあ、また後で会おう。ほら行くよ、みんな」
未だドラキュラの迫力に怯えている百達を連れて、卯稀はドラキュラの部屋から去っていった。
卯稀達の足音が完全に遠ざかると、ドラキュラが梅雨達に声を掛ける。
「よくやったぞ、お前達」
ドラキュラの言葉を受けた梅雨達がヨロヨロと立ち上がり、彼の前に整列する。それぞれの表情は無表情に戻っているが、快楽を抑えきれない苦しさが微かに漏れていた。
実演と称された一連の出来事は、じつはドラキュラの筋書き通りに進められていたのだ。
まず透が絶頂し、次に三奈が個性を使って肌を晒す。最後にドラキュラが奴隷達を責め、梅雨がそれに耐えきる。これらの行為には二つの狙いがあった。
「予定通り、向こうのおなご達にワシへの恐怖を植え付けることができたわい」
くくく、とドラキュラが笑みを漏らした。
ドラキュラは百達の目の前でクラスメイトをわざと痛めつけ、彼女達を挑発したのだ。百達が物を申したところを狙って彼女達を一括し、怯ませた。もし何も言ってこなくても、ドラキュラのことを奴隷に対して容赦のないヴィランと印象付けることができる。これが最初の狙いだった。
「これでおなご達はわしに会った時に今のことを思い出し、少なからず精神が動揺する。そうすれば、後は思うままじゃ。あと、あの小僧。本当に不能になっておるみたいじゃのう。三奈の乳に食いついておったが、股間はちっとも膨らんでおらなんだ」
筋書きのもう一つの狙いが卯稀の不能の確認だ。
三奈の胸を晒して反応を見てみたが、梅雨の報告通り卯稀は勃起していなかった。
「まあいい。それも手を打ってある。さて、お前達。ゲームでもよろしく頼むぞ。とくに梅雨。お前は以前のように振る舞って、キングたちを罠にかけるという大事な役目があるからな。よろしく頼むぞ」
「かしこまりました」
ケロ、と呟きながら、梅雨はドラキュラに深々と頭を下げる。続いて三奈と透もそれに続いた。
◇◆◇◆◇
ドラキュラの部下に別室された卯稀達はそこでゲームの準備を行うことになった。
室内には卯稀達が持ち込んだコスチュームが机の上に置かれている。これはゲーム用に大急ぎで百達が用意したものだ。ここにいる全員分が揃えられている。
着替えるために服を脱ぎかけた卯稀だが、いったん手を留めて百達を見た。
「……」
百達は準備を始める気配もなく、うつむいたまま黙っている。
先ほどの部屋で次々に起きた出来事は彼女達の心にショックを与え、百達から戦意を奪ってしまっていた。とりわけ最後のドラキュラの恫喝は彼女達の心に恐怖を与えていた。
「ほらほら、今からそんなことでどうするのさ。ゲームに負けたいの?」
「いえ、そんなことは……ありませんわ」
「ただちょっと、びっくりしたっていうか……」
百と響香が歯切れ悪く答える。
これは良くない兆候だ。精神状態は行動に直接影響する。このままゲームに突入したらどんなミスを犯すか分からない。
卯稀は先ほどあったことも全てドラキュラの策であることを見抜いていた。そしてゲームの前に彼女達のケアを行わなければならないとも感じていた。
また全員にキスでもしようかと卯稀がシャツを下ろしたとき、お茶子が大声で叫んだ。
「だいじょーーーーーーーーぶっ!!!」
お茶子はまるで走っている瞬間を切り取ったように、両手を挙げ片足を宙に浮かせた姿勢をとっていた。
彼女の奇行に目を丸くする卯稀。すると百と響香は顔をほころばせてプッと吹き出した。
「きゃははは! それ飯田のマネ?」
「正解!」
腹を抱えて笑う響香に、お茶子がそのままの姿勢で答えた。
全く意味が分からない卯稀に百が説明をする。
百達が雄英高校に通っていた頃、とつぜん校内に警報が鳴り渡るという事件が起きた。
当時校門の前で陣取っていたマスコミの一団が無断で校舎に侵入したことが原因だったのだが、そんなこととは知らない生徒達は一斉にパニックに陥った。
大勢の生徒が非常口に向けて殺到する中、1-Aに在籍していた飯田はいち早く混乱の原因に気づくと、お茶子の力を借りて宙に飛び上がった。
飯田はそのまま己の個性を使って非常口に備え付けられた案内板の上に張り付くと、大声で大丈夫と叫んで混乱を収めたのだ。その時の飯田の姿は非常口の標識の、走る人物そのものであった。
お茶子はこの事件のときの飯田の様子を再現していたのだ。
「へ、へぇ……?」
百の説明を聞き終わった卯稀は目をパチパチさせる。
この件を知らない彼にしてみればぜんぜんピンとこないのだが、百と響香の心をほぐす効果は十分にあったようだ。
お茶子を見る二人の表情は落ち着きを取り戻していた。
「確かにさっきはちょっとビビっちゃったけど、もう切り替えた! だから大丈夫! 絶対に勝ってみんなを取り戻そう!」
「麗日さんの仰るとおりですわ。私としたことが、ドラキュラさんの気迫に押されて醜態を見せてしまいました。なんとお恥ずかしい……」
「ウチ達の作戦だと、どうせあいつとは会わないし!」
三人の口から力強い言葉が次々と溢れてくる。
どうやら卯稀のフォローは必要ないようだ。安心した卯稀は着替えを再開しようと、自分のシャツに手を掛けた。
「あ、あの……ご主人様?」
百に呼び止められた卯稀が顔を向けると、三人娘が揃ってこちらを眺めていた。
卯稀はきょとんとした顔で首を傾げた。
◇◆◇◆◇
「理不尽だよなぁ……」
卯稀は屋敷の前でひとりぼっちで立っていた。
あれから着替えを再開しようとした卯稀は、恥ずかしがる百達に部屋から追い出されてしまっていた。そのため、彼は仕方なく卯稀だけ別室で着替えることになったのだが。
「裸なんて家で見慣れてるのになぁ……」
納得行かない表情で呟く卯稀。彼はいつものヴィランコスチューム姿だ。顔にはドミノマスク、体は伸縮性に優れたタイツ状のスーツを身につけている。卯稀が個性を使用しても破れない優れ物だ。
「お待たせしてしまい申し訳ございません、ご主人様っ」
声を掛けられた卯稀が振り向くと、ヴィラン仕様の衣装を着た百たちが走ってくる。
「おおっ」
彼女たちの姿を見た卯稀は目を輝かせる。百の衣装はお茶子捜索の際に見ていたが、残り二人のヴィランバージョンのコスチュームは初公開だ。
「どうかなボス……変じゃない?」
「えっへへ……ちょっぴり冒険しちゃいました」
響香とお茶子の二人が頬を赤らめながら卯稀に尋ねる。
二人ともヴィランらしい全身黒ずくめの衣装だ。雄英時代に用意してもらったデザインを元にしているが、どちらも大幅に露出度が上がっていた。
響香はレザー製の黒ジャケットは変わらないが、その下はレオタード型の黒い水着を着用している。太股は艶めかしい黒ストッキングで覆われ、足首には強力な武器となる大型スピーカーが以前と同じく取り付けられている。頬に描かれたフェイスペイントは黒いハート型に変更されていた。
お茶子も全体的なシルエットは元のデザインとは大きく変わらない。特徴的な大きいブーツやヘルメットも真っ黒になったが、形はそのままだ。ただし以前のパツパツスーツの部分はビキニ水着だけになっており、胸と股間を隠すだけに留まっている。おかげで愛らしいおへそが丸見えだ。
「うへへ……二人ともよく似合っているよ」
卯稀の体調が万全であればこの場で襲いかかってしまっていたかもしれない。
回復したらコスチューム姿で相手をしてもらおうと卯稀は固く心に誓った。彼が遠慮なくニヤついていると、百が不満そうに頬を膨らませているのが目に入った。
「ああ、ごめん百。二人の衣装を作ってくれてありがとう。もしかして百もコスチュームのデザイン変えた?」
「お、お分かりになりましたのっ……!?」
百が驚いたように声を上げる。
響香達から衣装の要望を聞いた百は、その過激さに密かに驚いた。つい対抗心が出てしまった百は、もともと露出度が高い衣装の布地をさらに減らしていたのだ。
「もちろん。百のことはよく見てるからね」
「そんなご主人様っ、私、照れてしまいますわ」
恥ずかしさのあまり、顔を手で覆ってしまう百。卯稀の視線はより見えやすくなった彼女の豊かな胸に注がれている。
「えっと、そろそろよろしいでしょうか」
屋敷から現れたドラキュラの部下が卯稀たちに声を掛ける。
卯稀とのひとときを邪魔されたと思った百が、指の間から男を睨んだ。
氷のような冷たい目に、怯えた男は思わず身を仰け反らせてしまう。ちなみに男は四人をマンションから案内した人物でもある。
「うん。こっちはいつでもいいよ」
「わ、わかりました」
男は百の視線を気にしながら、無線でドラキュラに確認の連絡を入れる。
「旦那様も準備ができたとのことです。ご健闘をお祈りします」
「ありがとう。それじゃみんな、行くよ」
卯稀の号令に、三人娘が引き締まった顔をして頷く。
入り口の大きな扉を開けて、四人は屋敷の中へと進入する。
建物の中はしんと静まりかえっていた。先ほどまでは使用人たちの姿が見えたのだが、ゲーム中は邪魔にならないように別の場所で待機させられているようだ。
卯稀たちは入り口近くのホールで足を止めた。階上まで吹き抜けになっており、天井で大きなファンがプロペラのようにゆっくりと回っている。
「さて、どうするか」
先ほどの案内でドラキュラが居る寝室までのルートは分かっている。梅雨の話どおりなら、ドラキュラはそのまま室内にいるはずだ。
ゲームの勝利条件は二つ。ドラキュラを三回射精させるか、梅雨たち三人を全員絶頂させるかだ。
以前に話し合った結果、卯稀達は後者を選ぶことにしていた。従ってドラキュラは無視して構わない。
「だけど問題は……」
「蛙吹さんや芦戸さん達がどう動くか、ですわね」
卯稀の言葉に百が応えた。
ドラキュラに奴隷にされた三人の動向が不明なのが痛かった。場合によっては三人ともドラキュラと一緒にいることも考えられる。もしそうであればドラキュラまで相手にしなければならない。できればそれは避けたかった。
とりあえず館内を調べてみようかと卯稀が思っていると、頭上から声がした。
「お待たせ。キングちゃん」
いつのまにか梅雨が天井付近の壁に張り付いていた。彼女は雄英高校のときに身につけていたのと同じデザインのコスチュームを身にまとっている。
「梅雨ちゃんっ!? びっくりしたぁっ!?」
突然の登場に驚いたお茶子が身体をビクッとさせる。
「驚かせてごめんなさい。あっ、こっちは見ないで! ドラキュラが監視カメラでチェックしてるわ! 声は聞こえないから安心して!」
思わず天井を見上げていた卯稀たちは慌てて視線を落とした。
「ここはカメラの死角なのよ。で、キングちゃん。三奈ちゃんと透ちゃんの居場所が分からなくて困ってるんでしょ?」
「そうなんだ。どうしたらいいかな」
「二人ともドラキュラから離れて別々に動いてるわ。私がそれぞれの持ち場へ案内するから、指示に従ってちょうだい」
「わかったよ」
四人は梅雨の指示どおり、ゆっくりと移動を始める。すると、それぞれの足下の床に大きな穴が開いた。
「うわぁっ!?」
「きゃあっ!?」
「ひゃあぁっ!?」
「えっ、えええっ!?」
思い思いに声を上げながら、四人は落とし穴に吸い込まれていった。
壁に張り付いたまま、梅雨はその光景を眺めている。
「うまくいったわ。これでみんなはバラバラね」
梅雨は嬉しそうに笑った。彼女の片手の指は壁に備えられたボタンに伸びている。
そのボタンは四人が落ちた穴を開くためのボタンだ。
梅雨はドラキュラの指示で四人を分断させるべく、卯稀達を落とし穴の上へと誘導していたのだった。
お読み下さり、ありがとうございました。
間が空いているうちに出したい展開が変わってしまい、前回とやや矛盾する描写が出てきてしまいました。
(具体的に言うとNo.7のショッピングモール回で拳藤一佳以外の1-B生徒は外に出られなかったと書きましたが、今回では塩崎茨が外で目撃されたという内容になっています)
お目を瞑っていただけるとありがたいです。。。
また、オリ主の卯稀が射精をしない初めての回となりました。
つまりエロ要素が少ないということで、次回への反省点です。。。
次は卯稀チーム対ドラキュラチーム戦の予定です。
それでは。