※前二作と違い、御門先生の一人称となっています。
「先生、今日もお疲れさまでした」
「ありがとう、お静ちゃん」
今日の診察を終え、お静ちゃんがアイスコーヒーを出してくれた。
デスクの上に置かれた透明なグラスには、たくさんの氷と濃い茶色のコーヒーが注がれ、ストローも差してあった。
熱いコーヒーもいいけれど、夏場の暑い時期の仕事終わりはアイスも捨てがたい。
私は暑苦しい白衣を脱いでソファに置いた。
椅子に腰かけながらグラスを持ち上げ、ストローに口を付けた。
冷たいコーヒーが喉に染みわたる。
うん、美味しい。
二口三口飲んでから、グラスをデスクに置いた。
「う~ん、肩が凝るわね。歳かしら?」
ここ最近、今までは気にしたことのなかった肩こりに悩まされている。
診察が忙しいということもあるけれど、それは今に限った話ではない。
「肩、お揉みしましょうか?」
「ホント?お願いできるかしら」
私があまりにも疲れた顔をしていたためか、お静ちゃんが気を利かせて肩を揉んでくれた。
細い指だけど力は意外に強い。
「ふむふむ、確かに凝っているようですね」
ぐいぐいと指圧しながらお静ちゃんが言った。
「やっぱり」
鉛でも乗っかっているかのように重くなった肩は、お静ちゃんのマッサージでほぐされていく。
肩凝りや腰痛で来る患者には、湿布薬よりもこのマッサージの方が効果的かもしれない。
「…先生、おそらく、なんですけど…」
「ん?何かしら」
お静ちゃんの指がシャツ越しにブラ紐をなぞる。
「下着が合っていないのではないですか?」
「…そうなのかしら」
ブラが合わなくなるのは、単に胸が大きくなっただけか、もしくはウエストを含めて胸以外の全てがサイズアップしたかだと思う。
まあ、前者の可能性の方が高いのは明白だった。
結城くんがいつも激しく揉むせいか、胸のサイズは確かに大きくはなっていた。
手持ちのブラも窮屈な感じはしている。
でもしばらくちゃんと測っていなくて現時点でのサイズがわからない。
「サイズの合わないブラジャーも、肩凝りの原因になりえるわね」
「測ってみましょうか?」
「ええ、お願い」
お静ちゃんは棚からメジャーを取り出し、それをシュッと目の前で50センチくらい引き出した。
まるでどこかの仕事人のようだった。心なしか眼も鋭くなっている。
胸のサイズを測るだけなんだから、そんなに気合をいれなくても…
「では服を脱いでください」
「わかったわ」
『よっこいしょ』と言いかけたのを我慢し、椅子から立ち上がってシャツのボタンを外していく。
胸が邪魔してボタンが見えないのが難点なのよね。
シャツを脱ぎ終えたら今度はブラのホックに手をかけて、パチッと外した。
「ふぅ…」
ブラを脱ぐとずっしりとした重さが肩に圧し掛かる。
けれど何だか解放された気分になって気持ちが良い。
「じゃあ測りますね」
お静ちゃんが乳首のすぐ下にメジャーを宛がう。
そしてグルっと後ろに回して一周させた。
そういえば、胸が垂れている女性は胸を持ち上げてサイズを測るらしい……幸い、私の胸はまだその必要なかった。
夢中になって結城くんがむしゃぶりつく場面がふっと呼び起され、思わず恥ずかしくなる。
「え~と、99か…100センチ、ですね」
お静ちゃんが目盛りを読み上げる。
「そんなに大きくなったの?」
「……羨ましい」
「え?」
「な、なんでもありません!」
なぜかお静ちゃんはあたふたしていた。
それにしても100センチか…
いつか読んだ女性向け雑誌には、平均バストサイズは84センチと書いてあった気がする。
私は身長が高いし……というより、そもそも地球人ではないのだし、この雑誌に書かれていた数値と比較するのはナンセンスかもしれないけれど、それにしても大きいと我ながら感じてしまう。
あ、ちなみにウェストのサイズは平均よりも細かったわよ。
念のため腰回りを自分で触ってみる。
「太っては、いないわよね…」
「そこも測ってみましょうか?」
「結構よ」
腰に伸びてくるお静ちゃんの手をやんわりと制止する。
まあ100センチともなれば、今のブラのサイズは合わないはずよね。
「ブラ、新しくしないと…」
上半身裸のまま椅子に腰かけてアイスコーヒーを再び口にし、どんなブラがいいかなとしばらく想いを馳せた。
・・・・・・
それから数日経ち、私はとある街の駅前に立っていた。
彩南町からはだいぶ離れたこの街は、お店の数が多く、彩南町で事足りないときによく利用している。
「…変じゃないわよね」
駅前のショーウインドーに映る自分の姿を見る。
白の半袖ブラウスは胸元が開いていない割と上品なものにした……久々に着たらボタンを留めるのが窮屈だった。
それに合わせているのは膝丈の黒のスカート。
いつものタイトなものではなくて、裾にかけてふわっと広がる、これも品のあるスカートだ。
化粧もあまり濃くせず、清楚な女性を演出してみたつもりだった。
件の女性向け情報によれば、男性はこういう女性が好きらしい。
「さて、結城くんは次の電車かしら」
今日の買い物は一人ではない。
せっかく新しいブラを選びに来たのだから、私以外に一番私のブラジャーを目にする機会が多い結城くんを誘わない手はなかった。
けれど結城くんを誘った後に気付いたことがあった。
結城くんと二人で買い物(これもデートの範疇に入るのかしら?)をするのは、温泉旅行のとき以来だった。
ただ、あれも厳密にいえば夕食までの時間つぶしに近かったし、こうやってちゃんとした形でデートをするのは初めてになる。
あえて車ではなく駅前で待ち合わせにしたもの、単なる買い物ではなくデート気分を味わいたかったからだ。
『先生、今日はなんだか楽しそうですね』
着替えている途中にお静ちゃんにそう声をかけられたのを思い出す。
考えてみたら、男性とデートをするのなんて今までなかったことだった。
いつもからかっているティアには口が裂けても言えない。
…どうしよう、何だか緊張してきたわ…
そんなことを考えていると、離れたところによく見知った顔が見えた。
「…あれ?もしかして…」
少し跳ねた髪に黒いシャツ、カーキ色のズボンを履いていて、肩からカバンを掛けている。
ちらっと時計を見ると、待ち合わせまであと15分はあった。
私も早く来たつもりだったけれど、彼はもっと早く来ていたのかしら。
きょろきょろ辺りを見回す彼に気付かれないようにそっと後ろに回り込む。
幸いにも、悪戯心が私の緊張を消してくれた。
「…人をお探しですか?」
「うわっ!」
肩を掴んで耳元でそう言うと、結城くんはビクッとなって後ろを振り向いた。
「御門先生!驚かさないでくださいよ!」
「ふふ、ごめんなさい。つい、ね」
そう言ってむくれる結城くんの視線が僅かに上下し、まるで品定めをするように私の身体を見た。
またちょっと緊張して、生唾を飲み込んでしまう。
「ど、どう?今日の私」
緊張を面に出さないように心掛けて聞いてみる。
「な、なんかいつもと雰囲気違いますね」
「そう?」
「大人っぽいというか……あ、い、いつも大人っぽいですけど、今日はなんだか印象が違います。でも…」
「でも、何かしら?」
何だかドキドキしてきた。
「凄く綺麗です。それはいつもと変わりません」
笑顔でさらりと結城くんはそんなことを口にした。
「あ、ありがと」
心臓が高鳴って顔が熱くなる。
眼も泳いでいるに違いない。
自分の心情を悟られないように、結城くんから顔を背けた。
「今日の目的は買い物ですよね?」
顔を背けたことを気にするそぶりもなく、結城くんは私に声をかけた。
「え、ええ、そう。買い物よ」
「何買うんですか?」
結城くんには『買い物に付き合って』としか説明していなかった。
今ここで下着を買うとバラしても良かったけれど、きっと驚くだろうから後に取っておこう。
そう考えると、また気持ちに余裕が出てきた。
でもどうして結城くんの前だとこんなに心が揺れ動いちゃうのかしら…
「まあ、色々よ。でも荷物になっちゃうから目的のものは最後にして、とりあえずお茶でもしましょうか」
「そうですね」
今日はとても天気が良くて、そして暑い。
汗だくでランジェリーショップに行くのは憚られるし、今日はのんびり結城くんとの時間を楽しむとしよう。
駅前のカフェでお茶をした後、駅前から続く商店街を散策した。
そのあとは公園へ行ったり、また別のカフェに行ったり…
結城くんの笑顔を見ていると大量の患者の診察で疲れた神経が解れていく。
意外なほどスムーズな結城くんのエスコートのおかけで、私は時間を忘れるくらい楽しい気分だった。
デートって、こんなに嬉しいものなのね…
今度ティアに自慢しよう。
「じゃあそろそろ目的の買い物に行きましょうか」
「わかりました」
陽も傾き、空気もほんのちょっとだけひんやりしてきた。
私と結城くんは、駅前通りからやや外れた路地にあるランジェリーショップの前で歩みを止めた。
「ここよ」
「こ、ここですか…」
案の定、結城くんは苦笑いをする。
この店はネットで調べた場所で、実のところ私は来たことがない。
外から中をのぞくとこじんまりした店内で、お客さんは他にいないようだった。
「今なら私たちしかいないから、遠慮しなくてもいいのよ」
「は、はい」
ドアを開けると、若くて淑やかな店員が『いらっしゃいませ』と声をかけてきた。
ランジェリーショップという先入観があるせいか、この女性店員の胸の形が凄く綺麗に見える。
…大きさは、私の勝ちかな。
結城くんは困り顔で辺りを見回している。
壁一面に色とりどりのブラやショーツが飾られていた。
甘い食べ物は売っているはずがないのに、なぜだか甘くていい香りがする。
薬品に囲まれた診療室とは180°雰囲気が違うところだった。
「ふむ」
あまりのんびりしていては別のお客さんが来てしまうかもしれない。
早速私は店員に声をかけた。
「胸のサイズを測っていただきたいのですが…」
「はい、かしこまりました。ではこちらへどうぞ」
店員がにこりと笑って試着室を案内してくれた。
目尻に僅かに皺ができているところを見ると、ひょっとしたら私より年上なのかもしれない。
それはそれとして、私は試着室の中でブラウスと薄緑色のブラを脱いだ。
「………」
結城くんがすぐそばにいると思うと何だか胸が熱くなってくる。
この狭い空間で結城くんと二人、身体を激しくぶつけ合ってセックスすることを想像してしまう。
太くて硬いペニスが私の好きなところを執拗に突いてくる。
身動きの取れない私は結城くんのされるがまま蹂躙されて絶頂を何度も迎える…
「お客様、よろしいでしょうか」
「あ、はい…お願いします」
扉越しに店員の声が聞こえて我に返る。
危ない危ない、危うく発情してしまうところだった。
店員が試着室のカーテンを開けて中に入ってくる。
そしてまじまじと私の胸を見ると、目を皿のようにして、
「こんなに素敵なバストは初めてです…」
と言った。さらに、
「これだけ大きいのに全く垂れていませんね…それに張りもありそう…」
「ええっと、サイズは…」
「はっ!し、失礼しました!あまりにお美しいのでつい…」
お世辞なのかもしれないけれど、悪い気はしない。
でもやっぱり結城くんに褒められるのが、一番嬉しい。
店員はメジャーを私の胸のトップに回した。
「…100センチですね。アンダーが…」
今度は胸の下にメジャーを回す。
「69センチですね……凄い…」
「あの…」
「!?す、すみません……そ、それで、今は何カップのブラをお使いですか?」
「確か…Gカップです」
前にブラを買ったのはいつだったか忘れてしまっていた。ついでにどこで買ったかも忘れてしまっていた。
そのときは確かGだったはず。
「それでしたら窮屈だと思いますよ。お客様のサイズでしたら、Iカップが適正かと思います」
「Iカップですか…」
Iということは、Hを通り越して2段階アップすることになる。
これでは肩が凝るのも納得だ。
結城くんの手はバストアップの効果抜群ね。
今度胸の大きさに悩む女子生徒に試してみようかしら……って、さすがにそれはマズいわね。いろんな意味で。
「ではIカップのものをお見せしますね」
店員はそう言って試着室を出た。
私も脱いだばかりのブラジャーを付け直す。
Iカップと聞いてから、何だか朝よりも窮屈に感じる。
胸をぎゅっとカップに詰め込み、シャツを着て試着室を出た。
「ど、どうでした」
結城くんがなぜか心配そうな顔で私を見ていた。
別に病気でもなんでもないのだけれど。
「私のブラ、合ってなかったみたい」
「そそ、そうですか…」
「原因は……結城くんならわかるでしょ」
「はぅ」
あなたが何度も何度も揉みくちゃにするからよ。
心でそう呟く。
「お客様に似合いそうなものをいくつかご用意させていただきました」
「ありがとうございます」
店員は手早く数点のブラをカウンターに並べた。
今使っているものと比べると、見るからにカップの部分が大きい。
美柑ちゃんの顔くらいなら隠せる気がする。
「こちらのブラが締め付け感が緩和された商品になっておりまして、こちらが…」
店員はそれぞれのブラの特徴を言っていくので、その中からいくつか見繕って試着してみることにした。
結城くんをあまり待たせては可愛そうだし、手早く決めてしまおう。
「じゃあ…これと、これと、これ。試してみます」
「ええ、どうぞお持ちください」
3つのブラを受け取って試着室に入る。
また服を脱いで上半身裸になった。
鏡に向かって正対し、改めて自分の姿を見てみる。
ティアには…ひょっとしたら負けるかもしれないけれど、少なくとも彩南高校の生徒よりは胸の大きさに自信はある。
片方の胸を持ち上げてから、ぱっと手を離す。
ぷるんと震えて何度かバウンドした。
肌の張りもまだ大丈夫だと思う。
「さて、と」
私は一つのブラを手に取り、着けてみた。
やっぱり今着ているものより随分楽だ。
ブラ紐の張り具合も以前よりゆったりしていて着心地が良い。
これは買っていこう。
…と、その前に。
「ねえ結城くん、ちょっと」
「な、何ですか」
私はカーテンを少し開いて結城くんを手招きする。
店員も察したのか、にこりと笑って結城くんを見ると、
「どうぞ、ぜひご覧になってください」
と促した。
結城くんは困ったような、でもちょっと嬉しそうな顔をしてカーテンの中に頭を突っ込んだ。
こちらから見ると、結城くんの顔だけがぴょこっと出ている形だった。
「どうかしら?」
結城くんの前でいろんなポーズを試す。
背伸びをしてみたり、前かがみになったり。
胸を強調して結城くんに見せつけるようにしてみた。
「す、素敵です」
「そう?良かった。じゃあこれにしましょう」
過度なコメントは求めていないけれど、やっぱり素敵とか綺麗とか言ってもらえると素直に嬉しかった。
結城くんから言われるのだから、嬉しくないわけがない。
他の男から言われたとしても、私の心には全く響いてこないだろうし。
結局3着のブラジャーすべて結城くんにも見てもらい、3つとも買うことにした。
結城くんに試着姿を見られている間、視線で犯されているような気がしていやらしい気持ちになったのは、内緒の話。
・・・・・・
店を出ると、いつの間にか空が厚い雲に覆われていた。
確か今日の天気は快晴のはずだったけどなあ。
かく言う私の心も少し曇っていた。
ブラを買うという目的を達成し、あとは帰るだけになってしまった。
楽しいデートもこれで終わりだと思うと、寂しい気持ちが募っていく。
そんなことを考えながら駅までの道のりを歩いていると…
ぽつ、ぽつ…
黒い雲から水滴が落ちてきた。
「雨、ね」
「そうみたいですね」
「折り畳み傘持っているかしら?」
「持ってないです。天気予報じゃ、雨は降らないって言ってたし…」
「そうよね。私も持っていないわ」
そんな会話をしている間にも雨足はどんどん強くなり、服を濡らしていった。
せめて買ったばかりのブラは濡らさないよう、紙袋の口を閉めて抱える。
「あそこで雨宿りしましょう」
結城くんはある建物の軒先を指す。庇がついていて、雨は凌げそうだった。
私と結城くんは小走りで駆け出した。
「先生、身体、冷たくないですか?」
「今のところはね」
白のブラウスは雨に濡れ、薄緑色のブラジャーが透けて見えてしまっている。
背中やお腹のあたりも濡れて張り付き、肌も透けてボディラインもバレバレだった。
スカートが透けない生地なのが幸いだったけど、たっぷりと雨を吸ってずっしりと重くなっていた。
「これ着てください」
「え?」
結城くんは自分が着ていた黒のシャツを脱いでTシャツ一枚になり、脱いだシャツを私の肩にかけてくれた。
「…その…先生の身体、他の奴に見られたくないから…」
照れたようにそっぽを向きながら結城くんは言った。
「あ、ありがとう…」
また胸が高鳴り、顔が火照る。
結城くんの言葉は、どうしてこんなに私の心を揺さぶるのだろう…
並んで立つ結城くんを横目で見ると、ちらちらと私の身体を見ているようだった。
シャツをかけたとはいえ、胸は大きく張り出していて、スカートもお尻に張り付いてしまっている。
今の私に欲情してくれているのかしら…
顔の火照りが身体の火照りに変わり、女としての欲望が込み上げてくる。
その色欲が私の眼を動かしたのか、視線の先にとある看板があるのに気づいた。
「結城くん、あそこで休憩しましょうよ」
「あそこって……えっ!?」
・・・・・・
そこはいわゆるラブホテルだった。
当然ながら、私は初めて入る。
「ここで部屋を選ぶのかしら」
「えっと、そうだと思います…」
ホテルのフロントと思しき場所には、部屋番号と、その部屋の中を写したと思われるパネルが掲げられていた。
私がしげしげと眺めていると、結城くんが、
「た、たぶん暗くなっている部屋は使用中とか、使えない部屋なんだと思います」
と言った。
ついでに鍵の受け取り方などなどを私にレクチャーしてくれる。
…む、なんだか妙に詳しいわね…
「…結城くんは、誰かとこういうところに来たことがあるのかしら」
「は、初めてですよっ!来たことなんかないです!」
結城くんのことだし、ハレンチパワーを発揮して済し崩し的に誰かをホテルに連れ込んだ可能性は否定できない。
現実にそういうことがあったかどうかは別として、ちょっと嫉妬してしまう。
結城くんの腕を掴んで引き寄せる。
「本当?」
「本当ですよっ!」
結城くんは頭をぶんぶん振っている。
そういうことにしておこう。これ以上詮索しても有益なことは一つもない。
…そもそも私と結城くんは、恋人同士ではないのだし…
私は結城くんの腕を解放する。
「まあいいわ。で、どの部屋にしようかしら」
改めてパネルを見てみると、部屋によって内装が随分違うようだった。
やっぱり普通のホテルとは違うのね。
「じゃ、じゃあこれにしませんか?」
結城くんは303号室を指さした。
特に変哲もない部屋に見える。
「結城くんがいいなら、そこにしましょう」
私は結城くんに従うことにした。
結城くんは何かの機械を操作してカードキーを受け取る。
さっきの私の追及が尾を引いているのか、結城くんは「こ、ここに操作方法が書いてありましたよ!」と、何も言っていないのに説明してくれた。
こうして私と結城くんはエレベーターに乗り、303号室に向かうことになった。
部屋は、思いの外広さがあった。
ダブルベッドには枕が二つ置かれ、大きめのソファーもあった。
何やら操作盤というかスイッチがそこかしこに見受けられるのは、普通のホテルとちょっと違う気がする。
「さて、まずどうし…んむっ!」
私の前にいた結城くんが、部屋の扉が閉まるなり私の唇を強引に奪った。
持っていた紙袋を落としてしまう。
結城くんは私の背中に手を回して、舌をねじ入れてきた。
「んっ、結城くんっ、あん、むっ、ん」
いつになく激しい口撃に、あっという間に骨抜きにされてしまう。
顔が熱くなり、脳も蕩けそうな気分だった。
「んぷっ、れるっ、ちゅぷ…はぁ、はぁ、ゆ、結城くん、今日は激しいわね…」
だぶん30秒くらいは経っていたと思う。
唾液の交換を中断し、私は結城くんを見た。
「ごめん先生、で、でも俺、先生の誘惑に我慢できなくて!」
「ゆ、結城くん」
誘惑?
確かにブラの試着の時にいろいろと見せびらかしたけれど、私としては誘惑というより悪戯をしていた気分だった。
けれど結城くんの気持ちは違うようだった。
「ブ、ブラジャーを見せてきたり、ラブホテルに誘ったり、胸を、お、押し付けてきたり…その、えっと…」
胸は押し付けていない気がするけど……あ、でもさっきフロントで結城くんを引き寄せたときのことかしら。全然意識していなかった。
「と、とにかくっ、我慢できないです!」
結城くんは着ていたTシャツを荒々しく脱ぎ捨てた。
「先生も、脱いでください…」
と言う結城くんの眼が、獲物を狙う獣のようになっている。
私の心臓はいつになく激しく脈打った。
そして同時に下腹部が疼きだすのがわかった。
「わかったわ、結城くん。今、脱ぐから…」
雨を吸ったブラウスのボタンを上から外す。
外していくたびに胸の谷間が露わになっていった。
結城くんはそれを凝視している。
凝視されている私もどんどん気持ちが高揚してくる。
全てのボタンを外してブラウスを脱ぎ、近くにあった簡素なタオルラックにそのまま乗せる。
ブラとスカート姿となった私は、襲われるように結城くんにベッドに組み引かれた。
「あっ…んっ」
「先生!はむっ、じゅぷっ、れろっ」
結城くんはブラをたくし上げ、こぼれた私の胸にしゃぶりついた。
「はぁ、ふぁっ、くっ、んん、あんっ、ん」
胸を揉まれながら、乳首がベロベロと蹂躙されて唾液まみれになる。
しばらくの後、結城くんは私のスカートと、その下にあるブラとお揃いの薄緑色のショーツに手をかけた。
そして一気にスカートとショーツを引き下げた。
「あぁん!」
組み引かれたまま秘所を露出された瞬間、とてつもない欲情が湧き上がった。
ゾクゾクする気分が止まらない。
まるで結城くんに激しく犯されることを身体が望んでいるかのようだった。
これから硬いベニスが捻じ込まれるのを想像して、それだけで達してしまいそうになる。
「いいわ、結城くん…ふふっ、買い物に付き合ってくれたお礼よ……前戯はいらないから、私の身体、好きにして…」
早くセックスがしたくて堪らなかった。
何度も、何度も突いて欲しい。
膣内はもう愛液でとろとろになっているに違いない。
「あぁっ、こ、こんなの我慢できないよ!」
結城くんはベルトをもどかしそうに外し、ズボンとパンツも脱ぎ捨てた。
いきり立ったペニスがボロンと現れる。
私は結城くんのペニスを見るだけで硬さがわかるようになっていた。
今のペニスは……最高に硬くなっているはずだ。
「い、いくよっ、先生!」
「うん…来て……んぁあっ!!」
ずぶぶっ!
ペニスは一撃で膣内の奥の奥に到達した。
私の中はパンパンになる。
「はぁ、はぁっ、くっ、あっ、んっ!」
「ああっ、これっ、凄いっ、あぁんっ!」
結城くんは腰を素早く、力強く私に打ち付けた。
抱き合いながら私は受け入れる。
鎖の外れた猛犬のような猛々しいセックスだった。
デートで嬉々としていた気分が、性欲でどんどん上書きされていく。
それはとても淫靡で、女としての悦びが身体に渦巻いていった。
「あんっ、ゆ、結城くんっ、はぁっ、やっ、んっ」
結城くんは私の首筋に舌を這わせている。
身体を押さえつけられた私は抵抗できず…というよりは、抵抗できないことを身体が望んでいた。
もっともっと、滅茶苦茶にして欲しい。
何かドロドロとした、それでいて甘く蕩けるような淫らな気分だった。
ぬちゃ…
ペニスが私の膣内から抜き取られた。
「んっ、先生、身体起こして」
「はぁ、はぁ、え、えぇ…」
真剣な表情で結城くんは私に命令する。
その命令口調が妙に私を興奮させる。
私は身体を起こした。
「こっちに来て」
結城くんはいつの間にか正座をするような恰好をしていた。
ペニスが天井を向いてビクビクと何度も震えている。
結城くんが何を欲しているのか察しがついた。
誘われるように私は結城くんが正座する脚を跨ぐようにして、そして腰を落としてペニスを侵入させた。
ぐちゅ…
「あぁんっ!はぁっ、んっ」
互いの片膝を股の下に滑り込ませ、腰をぶつけ合うようにペニスを抜き差しした。
「んちゅっ、はむっ、んんっ、じゅぷっ、はぁはぁっ、あむっ、ん!」
濃厚なキスをしながら背中に腕を絡ませて、私と結城くんは膝立ちに近い形で求め合った。
初めての体位だったけれど、結城くんのリードのおかけでこの上ない快感が生まれる。
「き、気持ち良いっ、あんっ、ゆ、結城くんっ」
「先生っ、俺もだよ!くっ、あっ」
座りながらでも身体がぴったりと密着している。
私の胸は結城くんの胸板でひしゃげていた。
好きなだけ、結城くんの気のすむまでいくらでも私の身体を差し出したい。
本心からそう思い、私は一層激しく身体をぶつけた。
それに呼応するように、結城くんも私をぎゅっと抱きしめた。
「はぁっ、はぁ、せ、先生、立って…」
しばらくこの体位で交わった後、また結城くんは私に命令した。
結城くんは真っ赤になったペニスを引き抜き、ベッドを降りる。
無条件で従うロボットのように、私もベッドを降りる。
向かい合って立っていると、結城くんは私の片足を持ち上げ、すぐさまペニスを差し込んできた。
「あんっ!」
私は腰が砕けそうになり、結城くんの肩に腕を回した。
片足が持ち上げられているからか、秘所が思いっきり開かれている気がして恥ずかしかった。
けれど同時に、私の身体を持ち上げる結城くんの逞しさに心惹かれるものがあった。
「結城くんっ、あぁ、やんっ、はぁっ、んっ!」
何度も突かれていると、ふっとティアのことが頭をよぎった。
…ひょっとしてこの形でティアとしているのかしら…
結城くんとティアは、あの温泉旅行の日から度々交わっていた。
たまに三人で、というときもあるけれど、結城くんとティアの二人だけでセックスすることもある。
きっかけを作ったのは紛れもなく私であり、ティアと…私以外の女性とセックスすることで、結城くんのハレンチ体質を改善することが目的だったからだ。
でもこうやって私の知らない恰好で結城くんと交わっていると、私より先にティアがこの快楽を享受したのではないかという、みっともない猜疑心に囚われてしまっていた。
いやひょっとすると、私とティア以外の女性ということも考えられる…
何だか悔しくなってきて、結城くんを抱きしめる力を強めた。
突き上げられる度訪れるドロドロとした肉欲に、自分で勝手に作った嫉妬の粉がふりかかっていく。
「あんっ、ゆ、結城くんっ、私のことっ、涼子って呼んでっ、お願い!」
「はっ、く、あっ、りょ、涼子っ、涼子!気持ち良いよっ」
「あぁん、う、嬉しい…」
私を「涼子」と呼んでくれる男は他にいない。
だから「涼子」と叫ばれて、私は胸がキュンとなった。
私の身体は結城くんのものなのだと、改めてそう感じた。
ぐちゅっ!ぐちゅっ、にちゅ!
「くっ、涼子っ、もう、イキそうっ!」
「あん、ゆ、結城くんっ、き、来てっ」
結城くんの力が一層強くなった。
嫉妬を振り払い、女としての悦びに浸る。
突かれる度に、とろっとした蜜が私の腿を伝って垂れていった。
「ぐあぁっ、あ、はっ、くっ、ふっ、んん!」
「やんっ、もっ、だ、だめっ、はぁんっ、あはっ!」
パンパンという、肉と肉がぶつかる卑猥な音が響く。
そのリズムが徐々に早くなり、結城くんの射精が近いことを感じ取った。
そして自分の絶頂もすぐに迎えられそうだった。
結城くんの背中に跡が残るくらいきつく抱きしめる。
私のおまんこは…結城くん専用のおまんこは、極太のペニスを締め上げて射精を促す。
早くたっぷり注いでほしい。
結城くんの精液がないと、私は枯れてしまうかもしれない。
「だ、出すよ!涼子!」
「ゆ、結城くんっ、だ、大好きよっ、い、いっぱい、精子っ、ちょうだい!」
「あぁっ!!」
結城くんの身体がわずかに硬直したと思った瞬間、膣内の奥に精が発射された。
びゅるるっ!!どぷぷっ!どぷっ、どくっ…
温かい…濃厚で、大量の精液だ。
結城くんの射精が何回も続く。
一回一回、放たれる性の感触を膣内でしっかりと感じる。
私の身体も絶頂に達して震えあがった。
「凄い…たくさん、出たね…」
「はぁ、はぁ…」
結城くんは私を抱きかかえたまま、ベッドに横になった。
ぬぽっ…
ペニスが離れていく。
…やだ、垂れちゃう…
そこからは白くてドロドロとしたものが垂れ流しになり、お尻の穴に伝っていく。
仰向けに倒れている私の股の間に、結城くんは膝立ちになって私を見下ろしていた。
その眼は「まだまだ足りない」と言っているようで、眼で犯されている気持ちになった。
あぁ、どうしてだろう。
そういう眼をされるとゾクゾクしてしまう。
私の身体を結城くんのおもちゃにされたいという気持ちも湧き上がってくる。
「………」
じっと結城くんを見つめる。
「り、涼子!」
「あぁんっ!」
ぐちゅぅ!
これを待っていたの…
結城くんは私の両足を抱えて、またペニスを打ち込んできた。
それだけで軽くイってしまう。
ぱんぱんぱんっ!
激しく何度も突かれる。
ティアや他の女性に対する嫉妬など、どうでもよくなっていた。
私は結城くんになされるがまま何度も何度も絶頂を迎え、それと同じくらいの回数の射精を膣内や身体に享受していった…
・・・・・・
清算してホテルを出ると、辺りは真っ暗だった。
当然ね、もう夜の8時を回っているし。
シャワーを浴びて出てきたけれど、まだアソコの中に結城くんの精液が残っている気がする。
…シャワーをしながらまた交わったのがいけなかったのかしら…
私はまだ少し湿っているブラウスの上から結城くんのシャツを羽織っていた。
「こういうところでするのも悪くないわね」
「そ、そうですね」
人気もまばらな路地を足並みをそろえて歩く。
「…でも本当にラブホテルは初めてだったの?何だか最初から最後まで慣れている気がしたのだけれど」
「本当ですって!……で、でも」
「でも?」
「実は、これ…」
そう言って結城くんはカバンから一冊の本を取り出した。
『実践!デートテクニック!』と表紙に書かれている。
「この本に、ラ、ラブホテルの使い方とか書いてあったから…」
「…ということは、ホテルに入ったとき『あっ、本に書いてあったのと同じだ!』と思っていたってことかしら?」
「まあ、そんなところです…」
笑い出したくなるのを堪える。
でも、結城くんがそうやって真面目にデートのことを考えてくれたことが嬉しかった。
今回の私とのデートのために買ったのか聞きたいけれど、野暮なことはやめておこう。
「あの、先生?」
「ん?なにかしら」
私の呼び名が『先生』に戻っている。
『涼子』はセックスの時限定と考えているのかしら。
「俺、もっと先生とデートして、その、外でこういうことをしたいんだけど……だ、ダメですか?」
結城くんは勇気を出して告白する女子中学生のような瞳で私を見つめた。
「ふふ、ゆーきくんっ!」
「とわっ!?」
私は結城くんを背後から抱きしめる。
「はい、喜んで…」
そして続ける。
「私の心と身体は結城くんの虜になっているから、結城くんのお誘いならいつでもOKよ」
「先生…」
「それと…」
私はさらに耳に口を近づけた。
脳内に直接響かせるように囁く。
「私は結城くんに攻められるのが大好きだから、多少乱暴にしてもいいのよ?お願いね」
「ふぁ、はい…」
私はどちらかといえば人を観察することが好きだったから、自分が当事者になって恋愛をしたことはなかった。
きっかけは…まあそれとして、今はこうして結城くんに惹かれている自分を楽しんでいる。
結城くんのことが好きな女の子はたくさんいると思う。
その子たちを結城くんから引き離すつもりはないけれど、大人としての魅力は最大限利用させてもらって結城くんを繋ぎ止めなきゃね。
そんなことを考えつつ、帰ったらネットで私もデートテクニックを学ぼうと決めるのだった。
と、いうことで、そこそこ長いおまけssとなってしまいました。一人称で書いてみると、意外にスラスラと書けました。
楽しんでいただけたら嬉しいです!
※ご好評頂ければティアーユ先生編も制作したいと思っています。感想等、お待ちしております!