織斑千冬は抱えられていた。
腰を、後背から。
いや……尻を。黒いタイトスカートを丁寧に捲り上げられ、あられもなく剥き出しにされ、白くつるりとした手触りを優しく堪能され、汗にまみれて。
「ん…………くぅ……」
今も、擦りつけられている。彼女を後ろから抱く男の腰がいやらしく蠕動し、ふたつの尻肉が、丸みを帯びながらほどよく引き締まるそれが翻弄されていた。
男は、すでに性器の結合を済ませてある。
千冬は犯されていた。しかも、あろうことか、彼女が担任を務める教室で。
千冬はこのIS学園の教師であり、男は生徒だった。
下校時間はとっくに過ぎている。時刻は深夜に近い。室内にはふたりの他に誰もおらず、真っ暗だった。とは言え、学問と倫理を教授するための清廉であるべき学び舎で、教師が教卓に両手をつき、教壇に立ったまま生徒と性行為におよぶことなど許されるはずもなく……
「は……んぅ…………い…………!」
我慢していても喘ぎが洩れる。女が男に、満たされる嬉しさを伝えるための声が。
千冬の肉体と心を、えぐり刻むような突きの数々だった。身体の奥で、それを感じている。ただし、まだ動きは小さく、緩慢だ。だから堪えていられる。
彼女が、もはや快楽に抵抗出来ないほどに感じ昂ぶったとき、少年は決定的な一撃を激しくも加えてくるはずだ。
この、忌まわしくも懐かしい感覚……
いやらしい気持ちにさせられ、全身を弄られたせいで痛覚は完全に麻痺し、何をされても痛いと感じることができない。
下腹部に侵入してきたあまりにも硬いそれは、千冬がいくら力を籠めて押し出そうとしても易々と突き込まれる。それを苦しいと思うことすらできず、むしろ強く甘く痺れが走り、興奮と衝動に心が満たされてゆく。
千冬とその少年の関係は初めてではない。2年前は、毎晩のように犯されていた。その頃はまだ、千冬は教師でなかったし、少年も生徒ではなかった。
「気持ちいいかい、千冬姉?」
耳に心地良い少年の声が、千冬の脳を奮わせる。その教え子の名は織斑一夏――彼女の実弟だった。
「…………っ!…………」
何も口にしてはならない、会話に応じると言葉に絡め取られてしまう、と千冬は自身に言い聞かせている。それに、今は一刻も早くとるべき行動がある。無論、一夏を自分の背中から、性器から、引き剥がすことが先なのだ。
分かりきったことだった。だが、それが出来ないでいる。気持ちが急くばかりで、身体はいっこうに言うことをきかない。むしろ、下腹の奥くに生じる快感を貪り続けてしまっている。
「無理もないよなー。最後にしてから2年も経つし。俺も…また千冬姉に、こうしてやりたいってずっと思ってた」
「んんぅ……」
見透かしたような、一夏の囁き。実際、千冬の性器は潤みきって、一夏の小刻みな動きにあわせて湿った音を立ててしまっている。
感じてなければ、こうはならない。一夏は、殊更に高い音を立てさせ、姉の羞恥心を炙っていた。弟の性器で喜ばされていることがばれているのを自覚させ、千冬の昂ぶりを途切れさせないように、じっくりと。
「2年前、姉さんが突然家を出て、行方が分からなくなったときは悲しかったな。でも、いつかは帰ってきてくれると信じて、周りには月イチくらいは帰ってるなんて嘘ついて、ずっと待ってたんだよ」
などと言いながら、一夏の手が、千冬の腋をくぐり、乳房に触れる。
「!……あうう」
いつの間にか、彼女の胸許ははだけていた。気づかなかった。どおりで、暑さが少し和らいでいたはずだ。
弟の指が、じかに姉の乳首をつまんだ。上着もシャツも守ってはくれない。ボタンをすべて外され、ブラもずらされ両乳とも剥き出しにされている。
どんな男からも巨乳と評され、目も釘付けにさせるそれを、一夏は存分に愉しんでゆく。
「で、どうだった? 他の男と寝たんだろ」
あまりにも無遠慮な、直接的すぎる一夏の問い掛け。千冬は歯嚙みした。
「…………う」
「俺の他に、満足できる男はいたのかな。もしかして……いなかった?」
弟の指に挟まれた乳首が、絶妙の強さでくりくりと擦られる。硬く痼りきったそれを、ほぐそうとするかのように。
「い…い、一夏――」
うわずる声でなんとか、姉は弟の所業を諫めようとした。いつもの、教師としての強さと威厳に満ちた口調で。だが、その言葉は優しい耳打ちで遮られる。
「教室の中では『織斑』だろ?」
千冬は「織斑先生」で、一夏は「織斑」――千冬自身が一夏に強いた、校内でのふたりの呼び名だった。
黙らされてしまった千冬は、さらに爪先が静かに踏まれるのを感じた。悶えているうちに上履きは脱げ落ちていた。脱げかけのストッキングを履くだけのそこを一夏の上履きの底がきつく圧迫する。
「んう……」
かなりの強さで踏まれたのかもしれない。
千冬の足には、激しく甘い電流のような快感が走っただけだった。
「くん……ぅ…………はあ、はあ……や、やめ……」
足で踏ん張ることにより、快楽に辛うじて堪えていたのだ。だが、そのかなめを責められることで急激に堪らなくなってくる。
いや、まだ堪えられる。まだ……
「千冬姉さあ……赤ちゃん、どうしたの?」
「!!」
そして、とうとう、されてはならない、恐れていた問い掛けが浴びせられた。
2年前の、妊娠……それが家を出た切っ掛けだった。そこまでされて、やっと千冬は、悪魔のような弟から離れる決心がついたのだ。
だが、その悪魔に、千冬は再び毒されてしまっている。逃げるという意思を持つことすら叶わないほどに。
「どうしたのさ?」
再度、投げ掛けられる背徳の質問。
「……お、
当然の選択だった 血のつながった実の弟の子を産むわけにはいかない。
すると、一夏の指が凶暴さを増した。千冬の乳首を可愛がるように捏ねくっていた指に、いきなり強い力がこもる。乳首を、容赦なく、圧迫する、痛めつけるように。
「あっ…………や、ん……つぅ…………」
指の力が和らいだ、と思ったのも一瞬、さらに強烈な力で乳首が挟み潰される。
「ぅん!…………あん……嫌ぁっ…あっあ…………ぅうん……」
出したくもない甲高い、女の喘ぎが止めどなく、自分の口から流れ出てゆく。ずっと我慢していたというのに、もう千冬自身でどうすることもできない。
2年前と同じだ。このままではまた、弟の性の玩具に逆戻りだ。このままでは……
間違いなく鬱血しているはずの乳首に痛みはなく、じーんとする痺れと熱さをただ感じる。そして、全身を包む興奮と、内側から膨れ上がってゆく倒錯的な嬉しさ。
身体中、気持ち良くなっていない部分はどこにもない。逃げ場のない喜悦に完全に浸かってしまっていることに、千冬は絶望せずにはいられなかった。
だが、まだ、堪えきれる。段々と理性の限界が近づいてはきているが もう少し、あと僅かなら、さらに気持ち良くされてもいい……
「大丈夫、何度だって孕ませてあげる」
その囁きと、同時だった。
「!!…………あーーーーーーっ!?」
今までとは格段に違う激しさで突き込まれた。一夏のカリ首が千冬の膣内を貫くように潜り込み、熱く吸いつく肉壁を引っ掻きながら戻ってゆく。
その逞しくも頼もしい刺激に、千冬の背筋に震えが走る。
「ふう……う……あん! ま、待って……あっ……はぁん……ぅん、は……あはぁ……あ……っ!」
突き込みはなおも激しさを増してゆく。恥ずかしい甘え声が自分の口から漏れ続けているのに、千冬は、どうしても止められない。逃げ出さなければならないのに、身体は衝動と快感に痺れて微動だにしない。
一気に、限界を越えてしまったのだ。どれだけの気力を振り絞ったとしても、千冬はもはや逃げられない。
牝の本能が、拒むことを許さない。
「抜い……だ、駄目ぇ……抜いてぇ……!」
だから、容赦を請うた。弟に、必死に。
「ほら、千冬…先生。もっと胸を振りたくって。みんなに見せてあげなよ」
一夏の穏やかな声が、しかし無慈悲に千冬の懇願を撥ね除ける。
「みんな……? あ……誰よ、みんなって……」
夜の教室――そこには、ふたりの姉弟しかいない。
「みんな、見てる」
一夏は、繰り返す。
「…………!?」
千冬は、身の毛がよだつのを感じた。彼女は目を瞑っていた。だが、立っているのは間違いなく教壇。授業のある日は毎日立つ。
想像してしまったのだ。そこが、真昼の教室で、千冬が受け持つクラス中の女子生徒たちがいつものように、自分に注目している光景を……そういう、錯覚に陥った。
見られている……クラスの、みんなに。
「あぁ……あぁあああ……あぁーーー…っん!」
恐怖したのは一瞬だけ。淫靡な興奮に駆られ、千冬は、自分の豊かな乳房を激しく揺さぶった。教卓に乗り掛かるようにして、汗をしぶかせながら、上下に。
幻の生徒たちに見せつけるために。
千冬の後背に立つ一夏には、暗い中で彼女が目を閉じていることなど見えるはずもない。しかし、一夏は知っている。千冬が、快感がきつくなると両目を瞑ってしまうクセを。
それを見抜いた上での、一夏の言葉責めが姉を情欲にまみれさせる。
「脚、もう少し開いて。もっと奥まで突くから……ほら、力抜いて」
仰け反る千冬の耳朶を、舐めるように寄せられた一夏の口が、そう命じてきた。
「や、やぁん……!」
千冬は、弱々しく甘い悲鳴をあげた。その声で興奮したのか、一夏の腰がさらに苛烈に稼動する。
「あん……だめ……い、ち…か…………あっ…………うぅああああっ……逆らえない…………!!」
脳が、白い光に漂白される中、千冬は子供のように泣き叫んだ。
……ふと、我に返ったとき、千冬はすでに射精されていた。膣内にはまだ一夏のものが挿し込まれたままだ。そして彼女のそれはたっぷりと注がれた臭いの強い液体を呑み込んでゆく。何度も収縮して、内へ内へと一夏の子種を子宮へと向けて流し込む。
「はあ……はあ……あ…はぁん……」
洗浄しなければならなかった。今すぐに、膣内を。だが、千冬は久しぶりの男女の行為に、幸福感すら抱いてしまっていた。
あれだけ動かなかった脚は、一夏の望み通りに大きく股を開き、片脚が教壇に乗り上がっていた。尻の力も抜いて肛門を一夏の腰骨あたりに擦りつけてしまっている。
弟にこんなにされるなんて――などという屈辱感と自己嫌悪は、強烈な行為の余韻ですぐに霧散した。
いや、むしろ男をここまで狂わせる自分の肉体への優越感、なにより女として満たされる悦びが頭の芯を心地良さで痺れさせている。
この男以外にこんなにされたくない、と千冬は思った。血を分けた弟・織斑一夏以外の男のモノになるなど、やはり考えられないと本気で思ってしまっていた。姉の肉体は、再び弟の所有するものとなったのだ。
「今度こそ俺の子、産んでくれよな、千冬姉」
「あ!……んん…………ん……っ」
不意に、一夏の手が千冬の顎をすくい上げるようにして振り向かせ、その唇を奪った。
千冬も熱く応じて、舌と舌を絡め合う。
そして、確信をもって感じていた。
今夜のことは絶対に生涯忘れることはできない。もう、ホームルームや授業でこの教壇に立つたび、欲情せずにはいられなくなるだろう。
それが、悪魔めいた弟……一夏の狙いだったことに疑いはない。