※この作品はR-18です。

魔法少女まどか☆マギカR‐18   作:七音

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【彼氏達の】お菓子会社の陰謀なおまけ・下【バレンタイン】

 

 

 バレンタイン・デー。

 それは、男達の喜びと悲しみ、その両方を一日に内包する、罪深い――あるいは祝福された日。

 

 例年通りなら、自分にとってこの日は、悲しみを呼び起こすだけの呪われた一日だった。

 だがしかし、今年は違う!! ぬぁぜならぶぁ!!

 

 今年の自分には【 彼 女 !! 】が存在し、確実に【 本 命 チ ョ コ レ ー ト !! 】が貰えるからだっ!!!!!!

 

 二十年近い人生で初めて迎える、祝福された恋人達の日! 前日からワクワクドキドキして眠れませんでした!

 日がな一日ニヤニヤして先輩と鹿目部長に「気味が悪い」と言われた上、女子社員達からは義理の一個も貰えませんでした! どぅあがそんな事は気にしない!

 自分にはたった一つの本命チョコがあれば良い!

 モールの中のファーストフード店で待ち合わせ! 定時になったら即行で上がって全速力で向かいます! その後はもちろん自分の家に彼女毎お持ち帰りSAっ☆

 

 テンション上がってきたぜぇぇぇええぇぇぇぇぇぇええっ!!!!!!

 

 

 

 

 

 ――と、気持ち悪く騒いでいたのも、今は昔。

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

 ……えーと、コ、コーヒー飲むか? それとも、たまには他のが良い?

 

 

「………………」

 

 

 な、何でもあるぞー? アップルティーにシナモンティー、カフェラテに番茶、センブリ茶! 全部インスタントだけど。

 

 

「………………」

 

 

 必死の呼びかけにも、さやかは一向に答えてくれない。

 飲み物はだめ、か……。

 なら次は食べ物だ。確か冷蔵庫にプリンとヨーグルトがあったはず……。

 

 

「……うっ」

 

 

 ――と、冷蔵庫に向かおうとした瞬間、さやかの座るベッドの方から奇妙な音が。

 何かと思いそっちを振り返ってみれば――

 

 

「うわぁぁあああんっ!」

 

 

 ちょっ、おぉい!? な、泣くなよさやかぁ!?

 

 ――ぶわっ、と目尻から雫を溢す彼女の姿。

 唐突な涙に驚き、自分はしばらく手を彷徨わせた後、はぁ、という溜息と共に、後頭部を掻き毟る。

 喜ばしいはずの日に、自分は何故か、ベッドの上で体育座りをする背中のご機嫌取りに勤しんでいた。

 近くのテーブルには、開封済みの本命チョコレートの箱。しかし、それを開封したのは自分ではない。

 

 なんとさやかの奴、幼馴染である上条恭介とやらに渡す義理チョコと、本命チョコを取り間違えやがったのである。

 中身にお金をかけたせいで同じ包装紙になってしまったのだからしょうがないのかも知れないが、初めての本命チョコと他人に開けられたなんて、やはり彼氏としては悔しくて堪らない。

 そして、取り違えられたそれは、彼の恋人――志筑仁美さんの手によって、件のファーストフード店へ届けられたのだ。

 よほど酷い顔をしていたのか、志筑さんには「怒らないであげて下さい」とさやかを庇われてしまい、自分としても薄暗い気持ちを向けたくなんかなくて、彼女との対話に集中する事で、それを誤魔化していた。

 ……だけのつもりが、気付けば、恋人を放ったらかして会話に花を咲かせ――

 

 

「なんで……? なんであたしは、こう、肝心な場面でばっかり失敗しちゃうのよぅ……」

 

 

 うーん、そういう星の下に生まれちゃったとか?

 

 

「ちったぁ慰めなさいよっ! あんたそれでも彼氏ぃ!?」

 

 

 あ~ごめんつい……。

 

 ――結果として生まれたのが、このイジケさやかという訳だ。

 その原因は、志筑さんが思っていた以上の美少女であり、良い所のお嬢様という割りに、気さくで話しやすかったというのもある。

 なんかこう、同じ匂いがするというか、ピンと来るというか。妙に豆“腐”と“麩”の味噌汁が飲みたくて仕方が無くなったんだよなぁ……。

 しかし、恋人の目の前で他の女の子と仲良くしたりすれば、どんな思いをさせてしまうかは言わずもがな。ぶすー、とした顔のさやかに気付いた自分と志筑さんは、早々に店を出て別れたのだが、そうしたら今度は「あたしなんて……」と落ち込んでしまったのである。

 全く、女心って難しい……。

 

 

「あたしだって……。あたしだって、あんたに開けて欲しかったわよ……。ちゃんと目印のカードだって付けといたんだよ?

 けど、いつの間にか鞄の中で取れちゃったみたいで、分かんなくなっちゃったんだもん……二分の一なら当たると思ったんだもん……あたしの所為じゃないもぉん……」

 

 

 ぐすぐすイジけながら、抱えた膝の間に顔を隠すさやか。おかげでパンツが丸見えです。

 こんな状況でなければ、思う存分それを眺めていたいのだが、このまま放っておいたりしたらソウルジェムがギュインギュイン濁りそうだ。

 ちょっと強引にでも、気分を変えて上げなければ。

 

 

「……ひっく。すんっ」

 

 

 しゃくりあげるさやかを横目に、自分で一度頷き、チョコの箱を手にとって隣に腰掛ける。

 そして、わざと目に付くようにして、端っこをパクリ。

 

 

「あ……」

 

 

 やはり気になるのか、無言で咀嚼するのをチラチラ伺ってくる。

 その間にも、口溶けの良いチョコは舌の上で瞬く間に消えてしまった。

 ……っていうか。

 

 やばい、どうしよう。美味すぎて涙出てきた。超美味しい。これが恋人からのチョコか……。

 世のカップル共は毎年こんなもん食ってたのかよ……不公平だっ!

 

 

「え……お、大げさ、だよ……そんなに美味しい訳ない……」

 

 

 いいや、嘘なもんかっ。

 少なくとも自分にとっては、今までの人生で最っ高に美味いし、後にも先にも、これ以上のチョコなんてこの世に無いっ!

 ほら、さやかも。

 

 

「んぇ? ……あ、あ~」

 

 

 不貞腐れるさやかに向かい、歯形が付いたのとは反対側をパキリ。口元に寄せると、おずおず口を開く

 放り込んであげれば、もにゅもにゅそれを噛み締めて――

 

 

「……ん、甘い」

 

 

 ――と、小さな笑顔。

 釣られて自分も笑い、な? 言った通りだろ? とドヤ顔をして見せる。

 

 

「えへへ、そうかも。あ、だけど、一個だけ間違ってる」

 

 

 しかし、笑みを浮かべたまま、さやかは言う。

 どこが? と尋ね返せば、制服の袖で顔を拭い、今度は満面の笑み。

 

 

 

 

 

「これから毎年食べられるんだから、後にも先にもって言うのは変でしょ? 来年も、再来年も、その先もずぅっと。あたしの本命チョコ、嫌でも食べさせてやるんだから!」

 

 

 

 

 

 高らかな宣言に込められているのは、こちらとしても望む所な、楽しい未来。

 でも、嬉しくて緩んだ顔を見せるのが照れ臭くて、自分は少し茶化してみせる。

 

 ……なら、来年からは朝一でプレゼントして貰おうかなー? あ、前の晩から一緒に居れば確実か?

 

 

「へ? ……も、もう、このすけべっ! すぐそういう事言うんだからぁ……。ほらっ、今度はあたしの番っ。あーんして、あーん!」

 

 

 ふくれたかと思えば、それも一瞬。

 彼女はこちらの手からチョコを取り上げ、端を折って口に運んでくれる。

 餌を待つひな鳥の様にそれを待ちうけ、悪戯のつもりで、あむっ、とさやかの指ごと頂く。

 

 

「ひゃ! こぉらっ、くすぐったいってばぁ! あははっ」

 

 

 さやかの顔にはもう、暗い影なんて見えない。

 結構な回り道をしてしまったが、これぞ長年追い求めてきた、恋人と過ごすバレンタイン。

 自分は、どうしようもなく胸が高鳴るこの時間を、彼女と共に、心行くまで堪能するのだった。

 

 ついでに、イチャつく間にガマン出来なくなって、チョコの上に描かれた言葉に従い、今まで使った事のない部分まで愛したりも、するのだが。

 

 

「え、ちょっ、やだ、そっちはお尻――あひんっ!?」

 

 

 ……ちゃんと、ローション&ゴム着きで。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 バレンタイン・デー。

 それは、男達の喜びと悲しみ、その両方を一日に内包する、罪深い――あるいは祝福された日。

 

 恋人が居る自分なら、祝福された日となるはずの今日。しかし、自分はあまりそれに期待していなかった。

 その理由は、恋人である佐倉杏子が食欲魔人だからである。

 というか、去年までまともに学校へすら行けず、荒んだ生活をしていた彼女が、こういったイベント事に興味を持つとは思えないのだ。

 

 まぁ、友達も多いみたいだし、話題には上るだろうけど、同じ家に住んでいる為、チョコを作ろうとしていれば直ぐに分かる。

 が、結局それらしい気配は見えず、この日を迎えてしまった。

 ちょっと寂しい気もするのだが、チョコをねだるだなんて見っとも無い真似ができる筈もない。

 なので、学校から帰ってきた杏子にメロゥの散歩を任せ、それで空いた時間を使い、チョコフォンデュを作っていた。

 作り方を調べた時に自分でも意外に思ったのだが、前もって準備しておけば手早く作れるのである。

 最近は男からもチョコを渡すらしいし、甘い物も大好きな杏子であれば、きっと喜んでくれると思う。

 

 もうすぐ、彼女が帰ってくる時間。

 既にフルーツは切り終えて、串に刺して皿に並べてあるし、後はチョコへ香り付けにリキュールを垂らして――完成だ。

 ちょっくら味見を……うん、初めてにしては中々の出来だ。

 

 

「ただ~いま~」

 

「ワンッ」

 

 

 ――と、タイミング良く杏子の帰宅の声が聞こえる。

 クッキングヒーターを最弱にし、庭に面する窓に近づけば、丁度、メロゥを繋いでいる彼女の姿。

 その手馴れた背中に、自分は声を掛ける。

 

 お帰り、杏子。

 

 

「おう、ただいまっ……って、あれ? この匂い……?」

 

 

 お、気付いた? 早く手を洗って、居間に来て。

 いいもの用意してあるから。

 

 

「……? うん、分かった」

 

 

 漂う甘い匂いに気づいたのか、杏子はくんくん鼻を動かす。

 そんな彼女へ笑いかけながら、一足先に準備に戻る。

 程なく居間の扉が開かれ、食卓に乗った小鍋と切り揃えられたフルーツを見た杏子は目を丸くした。

 

 

「え? これ……チョコフォンデュ、ってやつか?」

 

 

 彼女の驚いた顔に嬉しくなり、今日はバレンタインだからな、と胸を張って説明する。

 

 

「いや、それは知ってるけど。でも、女の方から渡すはずじゃ……?」

 

 

 最近では、男からも渡すんだってさ。

 せっかくだからやってみようかと思って。

 それに、杏子って食べる方にしか興味なさそうだし……。

 

 

「なっ!? ば、馬鹿にすんなっ! アタシだって、チョコの一つや二つ作れるってのっ!!」

 

 

 ……え? も、もしかして、用意してくれてた?

 

 

「あ、当たり前だろ。アタシはアンタの……か、彼女なんだし」

 

 

 照れ臭そうに、頬を指で掻く杏子。

 服のポケットからは綺麗に包装されたチョコレートが現れ、おずおずと差し出される。

 

 

「……ほら。マミと一緒に作った奴だから、味は、確かだと思うけど……」

 

 

 巴さんと? そうだったんだ……。

 

 杏子の言うマミ――巴マミさんとは、自分にとって同じ高校の後輩であり、杏子にとっては、昔馴染みのお姉さん代わりとなる。

 この家に住人が増えてからというもの、何度も遊びに来てくれた彼女は、見事なプロポーションと美貌に加え、お菓子を始めとした料理の腕前まで持ち合わせていた(ついでに彼氏くんも。今では友達だ)。

 彼女に習ったのなら、味は保証付きだろう。また、知らぬ間にお世話になっていたようだ。今度は何でお返ししようか……。

 

 

「は、早く受け取れってばっ!!」

 

 

 あ、う、うん、ありがとう。

 

 そっぽを向きながらの焦れた声に、慌ててそれを受け取る。

 開けてもいい? と尋ね、杏子が頷いたのを確かめてから包みを開ければ、様々な形の一口サイズチョコが。

 

 おお……。これを、杏子が?

 

 

「う、ん……。は、初めてにしては、上手に出来たと、思う……。アンタの作ってくれたのに比べたら、その……手抜きみたいなもん、かもしんないけど」

 

 

 そんな事。嬉しいよ、本当に。

 好きな女の子からチョコを貰うのなんて、初めてだし。

 

 

「そ、そうか? なら、こっちも嬉しいんだけど、さ……。とりあえず座ろーぜ? アタシも、アンタが作ってくれたの早く食べたいしっ」

 

 

 杏子の言に、そうだな、と頷き返し、食卓に向かい合って座る。

 そして、揃って「頂きます」をした後、さっそく星型のチョコを一つ。

 

 ……ん、美味しいっ!

 

 

「ん~! 甘い~! ウマい~!」

 

 

 意図せず、声が重なる。見れば、杏子も苺にチョコを纏わせ、口に運んでいた。

 自分の口の中にも、芳醇な香り(これは、紅茶だろうか?)が広がっている。

 とても初めて作ったとは思えない味だ。

 

 スゴイな、これ。本当に初めて作ったのか? 練習とか無しで?

 

 

「ま、まーな。つっても、マミが付きっ切りで教えてくれたから、ほとんどそのおかげだけど……」

 

 

 それでも、この味を出せたなら立派だよ。

 これは負けかな、チョコの味では。

 

 

「なに言ってんのさ。このチョコフォンデュだって、鼻に抜ける匂いがすんごく良いし、メチャクチャ美味しいって。アタシの方が負けてるよ、これじゃ」

 

 

 そんな、杏子の作ってくれたチョコの方がダンゼン美味しいよ。

 

 

「え? んな事ないって。アンタの作ってくれたチョコのが美味しいぞ?」

 

 

 そんな事無い、こっちの方が美味しいっ。

 

 

「違うって、こっちの方が美味しいっ」

 

 

 ………………。

 

 

「………………」

 

 

 

 

 

 テーブルを挟んで向かい合いながら、無言で見つめ合う。

 その間には、目には見えない火花が散っているように思えた。

 

 

 

 

 

 ……杏子の作ってくれたのが美味しいに決まってるだろ!

 

 

「決まってるってなんだよっ、アンタの作ってくれた方のが美味しいって!」

 

 

 杏子がわざわざ手作りしてくれたんだから、こっちの方が美味しいんだってば!?

 

 

「それならアンタのだって手作りじゃん! こっちのがゼッタイに美味しいんだよ!!」

 

 

 何だよ!?

 

 

「何さ!?」

 

 

 わーわー、ぎゃーぎゃー。

 

 それからしばらく、喧々諤々と不毛な喧嘩は続く事になる。

 結局勝負がつかず、『両方とも美味しい』という当たり前の結果を導き出すのに、自分達は一時間を要するのだった。

 

 後で気付いた事だが、ほったらかしになっていたメロゥは、窓からこちらを覗きこみ、退屈そうに大きな欠伸をしていた様で。

 夫婦喧嘩は犬も食わないと言うのは、本当らしい。

 ……自分で言うのも、ちょっと恥ずかしいけど。

 

 

「ワフン……」

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 バレンタイン・デー。

 それは、男達の喜びと悲しみ、その両方を一日に内包する、罪深い――あるいは祝福された日。

 

 当然の如く、自分はマミからチョコを貰える事を期待していた。

 勿論それは叶い、学校から帰って来て、彼女の家で手渡されることになっている。

 少し手間だが、学校で受け渡しとかできる筈がない。そんな事したら、悪友達に冷やかされ、マミのファンに追い掛け回され、その日一日を逃避行に費やす事になるだろう。

 ……実際、そうなった。

 

 はぁ、はぁ、はぁ……つ、疲れた……。

 

 

「大丈夫? 今お水用意するから。座って待っていて?」

 

 

 う、ん……あり、がとう……。

 

 

 ソファに倒れこみながら、自分はマミにお礼を飛ばす。

 中学を卒業して、同じ高校に入学したはいいものの、真新しい制服に身を包む彼女は、瞬く間に一年の――いや、学校のアイドルとなり、ファンクラブは即日発足。二日目でマミとの関係を把握され、三日目には全校男子から四面楚歌である。

 栄田達が居てくれなかったら、新しく友達を作る事も儘ならなかったかも……。

 恋人が美人なのは嬉しい事だけれど、ちょっと勘弁して欲しい。割と本気で。

 

 そして、そんな彼等が今日という日に企む事と言えば勿論、バレンタイン・チョコレートの一時的強奪だ。

 一時的、という辺りに人の良さが伺えるし、日付が変わる頃には返してくれるらしかったのだが、受け渡しがマミの家で行われると知った彼等は、「だったらお前を拉致って今日中に受け取れるか受け取れないか冷や冷やさせたるわぁ!」と、襲い掛かってきたのだ。

 当然、逃げた。せっかく恋人と二人っきりで過ごそうとしていたのに、男に囲まれてむさ苦しく過ごすのなんてごめんだ。

 ちなみに、いかにも栄田が口走りそうな台詞だが、これを行ったのは現ファンクラブの会長であり、むしろ栄田は逃走を手助けしてくれた。

 なんでも――

 

 

『ここは俺に任せて先に行けぇ! ……って人生で一度は言ってみたかったんだぜぃ!』

 

『右に同じく! ここを通りたければ、俺達を倒してからにするんだなぁ!』

 

『左に同じく! 俺、無事に帰ったら堂もっちゃんに告白するんだ……。冗談だけど』

 

 

 ――らしい。

 椎名君だけ別の物をおっ立てている気がする。が、それで助かったのだからとやかくは言わないでおこう。

 栄田、備前君、椎名君。君達の犠牲は三日ぐらい忘れないよ。多分。

 

 

「おまたせ。はい、ゆっくり飲んで」

 

 

 空に浮かぶ栄田達のうざイケメンスマイルを脳裏に思い描いていたら、マミがコップを手に戻っていた。

 ありがとう、と返しながらそれを受け取り、言われた通りにゆっくり流し込む。

 冷えた水が心地良く喉を潤してくれ、走ったせいで火照った体もクールダウンしていく。

 

 はぁ~、ようやく落ち着ける……。ありがとう、マミ。

 

 

「どういたしまして。でも、栄田くん達、大丈夫かしら? 無理してないといいんだけど……」

 

 

 頬に手を当て、マミは心配そうな顔。

 そんな彼女を安心させようと、自分は笑ってみせる。

 

 大丈夫だよ、栄田達なら。

 引き際は心得てるだろうし、童貞を捨てるまでは死んでも死に切れない、っていつも言ってるじゃないか。おかげでドン引きされてるけど。

 例え死んでも、地獄から這って来ると思うよ。女の子を求めて。

 

 

「そ、そうだったわねぇ……。もうちょっと落ち着きがあれば、直ぐにでも恋人が出来ると思うんだけど……」

 

 

 うーん。でも、落ち着き払った栄田なんて、栄田らしくないよ。

 あのまんまを好きになってくれる人の方が、自分は応援できるかなぁ。

 

 ソファへ寄り掛かり、今度はちゃんとした親友の姿を思い浮かべる。

 いつもとなりで騒がしく、友情に篤い、愛すべき馬鹿。

 彼のおかげで今の自分があり、毎日を楽しく過ごせているのだから、そんな彼を幸せにしてくれる存在は、ありのままを受け入れてくれる大らかな人であって欲しいと、勝手ながら思っていたりするのだ。

 

 

「……そうね。きっと、その方が幸せよね。頑張って応援してあげなくちゃ」

 

 

 同意見だったのか、マミもしきりに頷くのだが、最後に一言、呟く様に付け加える。

 応援……どういう事だろう? もしかして、栄田に想いを寄せる子でも知っているのだろうか。

 それはやっぱり、昔から彼の隣に居続けて、優しく見守り続けている、あの子だったり……?

 

 

「さぁ、せっかく皆が助けてくれたんですもの。私達も、今日という日を楽しみましょう!」

 

 

 ……そうだね。せっかくのバレンタインだしねっ。

 

 予想はしてみたものの、それを聞く前に、マミは胸の前で両手をポンと合わせ、二月十四日の本来の目的を思い出させてくれる。

 彼女の言う通り、今はここまでにしておこう。他人の恋路に首を突っ込んで、馬に蹴られたくはないし。

 もちろん、助けになれるなら何でもするつもりだけど、今日くらいは、マミの事を優先させて貰おう。

 

 

「……それで、普通に渡してもいいんだけど……。少し準備をしたいから、このまま、ここで待っていてくれる?」

 

 

 準備……って、何の?

 

 

「それは……まだ秘密。……恥ずかしいけど、私、頑張るから。ちょっとだけ待っていて?」

 

 

 そう言うと、マミはこちらにウィンクを投げ、そのままベッドルームベッドルームに篭もり、なにやら準備を始めた。

 恥ずかしい、頑張る、と言った部分が気になるけど、正直、足の疲れもまだ抜けきっていなかったのでありがたい。

 疲労回復には甘いものが良いって言うし、マミのチョコなら美味しいのは確実。早く食べたいなぁ……。

 

 

《十分後》

 

 

 まだかな~。

 

 

《更に十分後》

 

 

 ……あれ。

 

 

《更に更に十分後》

 

 

 ………………あの、まだ?

 

 

「ご、ごめんね? もうちょっとだけ待って……? 今、覚悟を決めるから……」

 

 

 チョコを渡すのに覚悟が要るってどういう事だ。

 何かと恋人達のイベントには力を入れる彼女。おめかしでもしてくれているのだと思っていたが、そんなに際どい格好なのだろうか。

 ちなみに、去年のクリスマスはミニスカサンタさん。プレゼントが何だったかは言うまでもない。赤玉出るかと思ったけど。

 それは置いておくとして、こうも待たされたら焦れると言うか、どんな事をしてくれるのかと期待が膨らみ過ぎて、緊張してしまう。

 

 

「……もう、いいわよ。入って来てくれる?」

 

 

 ――と、扉の向こうから呼び声が聞こえた。

 その声に導かれる様にして、内心の緊張を隠し、ベッドルームへの扉を開く。

 

 入るよ。随分と遅かったけど、一体なに――。

 

 

「……ハ、ハッピーバレンタインっ! これ、チョコレートよ」

 

 

 ――あ、どうも。

 

 差し出されたのは、見慣れた黄色いリボンの飾られる、ハート型の包み。予想を超えた光景に思わず唖然としながらも、両手で受け取る。

 それを確認した彼女は、胸元を強調するように前屈みになって――

 

 

 

 

 

「……そ、それから……チ、チョコと一緒に、私も、食・べ・て♪」

 

 

 

 

 

 ――と、のたもうた。

 あまりに急な展開で反応に困ってしまった自分は、とりあえずチョコの包みを開ける。

 その間も、視線は胸の谷間に釘付けだ。

 

 

「……っ」

 

 

 恥ずかしいのか、視線を泳がせ、頬を紅潮させるマミ。

 一言で言えば、可愛い。もうそれに尽きる。こんな女の子が恋人だなんて、紛れも無く、人生において最大の幸運だろう。

 が、そんな感慨も吹っ飛ばす彼女の格好にどうしても物申したくなり、自分は一口サイズなハートを口に運びながら、キッパリと告げる。

 

 ……無いわー。あ、チョコは美味しいけど。

 

 

「えぇっ!?」

 

 

 ショックを受けたのか、マミは酷く動揺し、ほぼ全裸に近い体を縮こませた。

 そう、何でか知らないが、彼女は素肌にリボンを巻きつけ重要な部分だけを隠すという、男の妄想を具現化した様な格好をしているのだ。

 ホントになんで? どうしてこうなったの? どういう判断?

 

 

「うぅ……。こ、こういうの、嫌い……?」

 

 

 マミはモジモジと体を揺らす。そのせいで、たわわに実った極上の果実がより強調されてしまい、視界が極楽浄土。

 しかし、そんな事はおくびにも出さず、チョコを頬張りながら問い掛ける。

 

 嫌いではない……というか、むしろ個人的には好きなんだけど。

 ちょっといきなり過ぎる気がする、かなぁ……? 一体なにが切っ掛け……?

 

 

「だって……小母様が、アナタはこういうのが描かれたエッチな本を、持ってるって……」

 

 

 息子の持ってるエロ本の情報を流すとか何考えてんだ母さぁぁぁあああああんっ!! ていうかバレてたのぉぉおおおっ!?

 

 二重の意味で吃驚し、思わず叫ぶ。

 確かに、確かにそういう本を持ってるけどっ! それ一週間前に買ったばっかなんですけどぉ!?

 いつからバレて……っ、も、もしかして、今までのエロ本履歴も把握されてる……? ぅおぁあぁぁあああぁ……。

 

 

「あ、あの、私は気にしないか――はっくちっ!!」

 

 

 全身を駆け巡る悪寒に、思わず頭を抱えてしまう。

 そんな自分にマミは、気にしないから、なんて言い掛けるのだが、途中で口元を手で覆い隠し、ぷるんっ、と胸を揺らしながら可愛いくしゃみ。

 まだ二月だし、そんな格好をしていれば寒いに決まっている。ここは紳士として、早急に彼女を暖める必要があるだろう。うん、そうだ。そうしよう。そうすべきだ。そうする以外に道は無い。

 

 ……ごほん、ご馳走様。美味しかったよ、マミ。

 

 

「スンッ、あ、うん。よかっ……た?」

 

 

 手近な棚に包みを置いて、鼻をすする彼女に歩み寄り、そのまま肩を後ろへ。

 

 

「あ、あの、どうしたの……?」

 

 

 困惑するマミに微笑みながら、だって食べて欲しいんでしょ? と囁く。

 

 

「それ、は……あっ」

 

 

 恥ずかしさからか、返事に窮する彼女を、やや強引にベッドへ押し倒す。

 考えてもみて欲しい。

 男なら誰もが崇め奉りたくなる素晴らしい体付きをしているマミが、エロ漫画でしか見たことの無いエロい格好をしているのである。こんなご馳走を目の前にぶら下げられて我慢できる男がいるだろうか? いや居ない!! (反語)

 さぁ、メインディッシュの時間だ。

 

 

「あ、あのっ、やっぱり、恥ずかしいからやめ――」

 

 

 いただきます。

 

 

「――あんっ♪」

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 バレンタイン・デー。

 それは、男達の喜びと悲しみ、その両方を一日に内包する、罪深い――あるいは祝福された日。

 

 自分にとって、今年のバレンタインは特別な日になる筈だった。

 貰った事が無い訳ではないが、恋人からというのはまだ経験した事は無く、几帳面な彼女であれば、間違いなく手作りチョコレートを用意してくれる筈。

 そう思い、自分は今日という日が訪れるのを、とても心待ちにしていた。そして、早めに店も上がらせてもらい、出迎えの準備を整え、何度も時計を確認しながら、今か今かと待ち人に期待している。

 

 ……そろそろ、か?

 

 

《ポーン》

 

 

 ――と、試しに呟いてみたその時、聞きなれたドアホンの音が聞こえた。相変わらず、時間に正確だ。

 待ってましたっ、と言わんばかりの勢いで立ち上がり、玄関のドアを開くと、その向こうには期待していたその人――

 

 

「こ、こんばんは……」

 

 

 こんばんは。いらっしゃい、ほむら。

 

 ――白い縦編みセーターに黒髪が映えさせる恋人が、少しおどおどした様子で立っていた。

 手荷物は持っていないようだが、それでも問題が無いのが彼女の特徴でもある。気にしなくても大丈夫だろう。

 

 寒かったろう? さ、上がって。

 

 

「……ええ。お邪魔します」

 

 

 何度も来ているというのに折り目正しく一礼し、静かに靴を脱ぐほむら。

 それを待って一緒にリビングへ向かった後は、彼女を先に座らせてお茶の用意だ。

 紅茶好きな共通の友人にお裾分けして貰った物で、淹れ方も一通り教わっている。と言っても、その子の腕前には中々近づけないのだが。

 

 ……はい、巴さんのブレンドティー。今日の点数は?

 

 

「ん……そうね。七十五点、という所ね」

 

 

 まだ七十点台か……。難しいな、やっぱり。こっちは向いてなさそう……。

 

 

「そんな事ないわ。私の舌が肥えてるだけで、とっても美味しい。巴さんは、本当に凝っているから」

 

 

 そうだね、まだあの子には敵いそうもないよ。

 

 巴――巴マミさんというのが、先ほど言った友人の名前だ。

 知り合ったのは去年の冬で、今では大切な友人達である《彼氏連合》の最初の集まりの後。

 その別れ際に、いつか彼氏彼女全員で集まってみよう、と企画され、年末で仕事が忙しくなる前に、パーティーが開かれたのだ。かなりの大騒ぎになったが、とても楽しい一日だった。

 また機会があったら、皆で集まってみるのもいいかも知れない。その時には、自分で作ったパンとかを振舞えるといいんだけど……。

 

 と、そんな事を思いながら、自分もほむらの隣に座り、ストレートティーを一口。

 真新しい茶葉の香りと、爽やかな苦味が口に広がる。手前味噌だが、まぁまぁ美味しい。

 けれど、砂糖も入れない紅茶を飲んでいれば、お茶請けに甘いものが欲しくなるのも当然で。

 

 ……ところでさ、ほむら。チョコ――。

 

 

「……っ」

 

 

 ――お?

 

 

 言いかけた瞬間、ぺた、と引っ付く体温。ほむらがその身を寄せ、ソーサーを持つ腕に手を乗せていた。

 どうかした? と聞いてみても、彼女は「……なんでもない」と一言だけ。なのに、カップをテーブルに戻せば、空いた手に指が絡まる。

 ……今日はやけに積極的だなぁ。これがバレンタイン効果だろうか? 嬉しいんだけど、少し照れるかも……。

 まぁそれもいいとして。

 

 それで、チョ――。

 

 

「……ぁ、あのっ」

 

 

 ――コ?

 

 また、言葉を遮られた。

 バッとこちらを見上げる顔には、危うく見落としてしまいそうなくらいの、僅かな焦りが見える。

 

 

「……き、今日も、両親が帰って来ない、の。だから……え、と……っ、さ、寂しく、て……。また、ここに居させて貰っても……いいかしら……?」

 

 

 それは……勿論。

 構わないけど……。

 

 

「……良かった……」

 

 

 ほっ、と安堵のため息を漏らすほむら。

 ……が、妙だ。今まで、彼女の方からお泊りをねだってきた事なんて無い。

 いつもなら、何も言わずに遅くまでこの部屋に居て、泊まって行く? と誘われるのを待っているだけなのに。

 バレンタイン効果だとしても、なーんか引っかかる。

 

 なぁ、ほむら。何か隠して――。

 

 

「そんな事ないわ。それより、夕飯はもう済ませたの? もしまだなら、私が作りたいのだけど」

 

 

 ――あ、うん。頼むよ……。

 

 言い終える前にまたも言葉が被さり、繋いだ手を解いてキッチンへ向かう彼女。

 やっぱり変だ。

 間違いなく、ほむらは何かを誤魔化そうとしている。他の誰が見逃したとしても、自分だけはそうは行かない。

 

 ……ちょっと待って。

 

 

「っ! ……何?」

 

 

 立ち止まり、ほむらは上半身だけを振り向かせる。

 自分も立ち上がり、そんな彼女の前に回りこんで視線の高さを調節、じー、と見つめてみる。

 

 

「な、何かしら」

 

 

《じー》

 

 

「………………」

 

 

《じー》

 

 

「……ぅ」

 

 

 唇が小さく歪む。

 黒く大きな瞳も、徐々に揺れが大きく。

 それでも自分は彼女との睨めっこを継続。ここまで来たら、根競べだ。

 

 

「……ご、ごめんなさい……」

 

 

 しばらくすると、熱視線にとうとう屈したのか、俯くように顔を背け、がっくり肩も落としてしまう。

 やっぱりか。ほむらがこんな風に隠し事するなんて、珍しいな。

 もしかして、ご両親と喧嘩して家を飛び出してきたとか? そんな可能性も無くは無いと思うけど……。

 とにかく、理由を聞いてみよう。

 

 それで、何があったの? 良ければ話してみて。

 

 

「うぅ……お、怒らないで、聞いて、くれる?」

 

 

 何で怒るのさ。

 バレンタインに肝心のチョコを忘れた訳じゃあるまいし。

 ちゃんと最後まで聞くよ。

 

 

「……ごめんなさいぃ……」

 

 

 ずぅーん、と効果音を付けたくなる落差で更に肩を落とし、ぷるぷる震え始めるほむら。

 あれ、何で今まで以上に落ち込むんだ?

 ……い、いやまさかそんなはず……。

 

 

「チョコ、無いの……」

 

 

 ………………へ。

 

 何故だろう。今、脳が理解を拒否したぞ。

 いやいやいやそんな筈は無い。

 自分の聞き違いだ。絶対そうだ。そうであってくれ……!

 

 も、もう一度、言ってくれる?

 

 

「だ、だから、その。まどかへの友チョコに、材料を使い果たしちゃって。買おうにも、どこも売り切れで……用意、出来なかった、の……」

 

 

 申し訳なさそうに、ほむらが頭を下げる。

 無い。

 バレンタインデーに恋人から貰うチョコが、無い。

 

 ………………ばんなそかな。

 

 

「ほ、本当に御免なさい……」

 

 

 うな垂れ、床に両手と膝を突く。それを見てか、ほむらは何度目か分からない謝罪の言葉を呟いた。

 そ、そんな……恋人達の最重要イベントとも言えるバレンタインに、チョコが無い? うそだろう?

 まさか、妙に積極的たっだのはこれを誤魔化すため?

 純粋に喜んでたのに、罪悪感から来た行動だったなんて……。あんまりだ……。

 

 

「ちゃんと二人分買ってきたのだけど、その……チョコを作るなんて初めてで、結構、失敗してしまって……」

 

 

 ……良いんだ、どうせ自分は二号なんだ……結局、鹿目さんには勝てないんだぁ……。

 

 

「そ、そんな事無いわっ、大好きよ?」

 

 

 ほむらは、慰めるようにそう言ってくれる。確かに、男の中では一番に好かれている自信がある。

 しかし男女の区別を無くすと、自分の上に鹿目さんがランク付けされているような気がしてならない……。というか、この結果から見ればそれは明らかだ。

 いい子だよ? 物腰は柔らかいし、ほんわかとした笑顔を見せてくれる、こんな子が妹だったらと思わせてくれる可愛らしい子だよ? 家の妹と取っ替えたい位だよ? でもそれとこれとは別だよ!?

 切な過ぎて魔女の口付けが復活しそうだ……。

 だけど、ほむらの性格からしてわざとじゃないし責められない……あぁぁああぁ、辛いぃぃ……。

 

 

「……ふぅ。仕方ない、わよね。私のせいなんだし……恋人、なんだから……これくらい、普通……毒されてなんかない……はず……」

 

 

 どこか、自分自身に言い聞かせるような言葉と共に、何かの光がパッと弾ける。ついでに、カサカサとビニールか何かの音も。

 しかし、滂沱と流れ出そうになる涙を堪えていた自分は、それに反応できない。

 

 

「ぁむ………………顔を上げて?」

 

 

 頭上から降ってくる声に、ぇえ? なんて情けない声を出しながら、半泣きの顔を上げると――

 

 

「……んっ」

 

 

 ――突然、唇が重なる。

 半開きになっていた唇の隙間に、ほむらの小さな舌と、小さな甘さが入り込む。同時に、カカオの香りを感じた。

 これは、チョコ……?

 

 

「……ちゅ……ん、ぷ……は、む」

 

 

 彼女は悩ましげに眉を寄せ、たどたどしく舌を動かす。

 反射的に自分も舌を絡ませ、二人分の舌が、チョコレートを瞬く間に溶かしていく。

 

 

「……ん、ん……はぁ……ど、う……? これで、許してくれる……?」

 

 

 荒くなり始めた息を整え、頬を染めながら、ほむらが尋ねる。

 それに対し、チョコは無かったんじゃ……? と、逆に尋ね返す。

 

 

「これは、失敗作、で……。凄く硬いから、無理やり舐め溶かすぐらいしか、出来なくて……」

 

 

 だから、これ……?

 

 

「……いや、だった?」

 

 

 触れ合うほどの距離で絡む、不安そうな視線。

 その手元を見れば、ラップの上にあるチョコの破片達。

 彼女へ答える代わりに、自分はそれをつまみ上げ――

 

 

「ん、む、ぅ」

 

 

 ――同じ様に、唇を重ねる。

 熱い吐息。甘い唾液。

 知らず、ほむらの頭を抱え、床に押し倒していた。

 唇を離さずに盗み見れば、とろん、と目を半分閉じ、紅くなった少女の乱れ顔。

 

 口元から零れる、チョコと混じり合った唾液を舐め上げ、ほむら、と名を呼ぶ。

 ただそれだけで、望みを察してくれたのか。

 彼女は更に目を細めて、こちらの首に腕を回し、掠れる声で囁くのだった。

 

 

 

 

 

「貴方が、満足するまで……好きに、して……あ、んっ……」

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 バレンタイン・デー。

 それは、男達の喜びと悲しみ、その両方を一日に内包する、罪深い――あるいは祝福された日。

 

 そして、社会人の男にとって、これ程に面倒なイベントは他に無い。

 なにせ、普段は滅多に話さない女子社員からも、義理チョコという名の商品引換券を渡され、その金額に見合わないお返しを通例として強いられるからである。

 剛毅な部長の居るおかげか、うちの会社には少ない部類だろうが、それでも、去年は両手で数えられるくらいしか無かった義理チョコが、小さめの紙袋とはいえ二つ分。

 

 一体、何故だ。

 

 昇格の効果だとしても、そんな理由でチョコを渡してくる女に、馬鹿正直にお返しなんてしたくない。……のだが、そうも行かないから人間関係は難しい。

 更に言うなら、出社した時から気持ち悪いハイテンションを維持し、ニタニタ笑っていた後輩の分も含まれるのだろう。いい迷惑だ。後で覚えてろよ。

 しかし、そんな憂鬱な気分を吹き飛ばしてくれる嬉しい出来事が、この後直ぐに待っている。

 

 部長が珍しく、定時で上がれと言ってきたのだ。その理由は、「お前ん家でまどかが待ってるから」との事。

 今日という日を考えれば、何で待っているのかはおのずと理解できる。

 貰えるだろうとは思っていたが、正直、受け取れるのは明日以降になる事を覚悟していた自分にとって、その一言は例え様も無く嬉しい一言だった。

 こんな風に気を利かせてくれるのなら、まどかに手を出した事がばれた時に、臓腑を抉られた甲斐があるという物だ。

 

 ……本気で死ぬかと思ったけど。一瞬だけど走馬灯が見えたし。

 その割りに次の日にダメージが残らない辺り、部長は何者なんだろうか。

 

 まぁ、「夕飯までには 絶 対 に 帰せよ?」と釘を刺されたものの、その程度で済むのならむしろ助かる。本当に、通報されなくて良かった……。

 そんな開放感もあって、自分はいい年こいてスキップなんてしながら、アパートの廊下を急いでいる。

 程なく自宅の扉が見え、ただいま~、と、上機嫌のままにその扉を開く。

 予想通り、誰も居ない筈の室内には明かりが灯っており、ドアの開く音に反応したのか、パタパタとスリッパの音が近づいて来て――

 

 

「あ、あのっ……お、お帰りなさい……あなた……」

 

 

 ――制服姿の可愛らしい恋人が、少々照れ臭そうに出迎えてくれた。

 ご両親の公認となった後、来るべき未来のために花嫁修業を開始した彼女は、こうして「あなた」と呼んでくれるようになった。

 前々から、時々そう呼ばれてはいたけれど、込められる感情が変化したためか、こちらを呼ぶ声は、堪らない響きで鼓膜を揺らしてくれた。

 それが嬉しくて、自分はもう一度、笑顔で挨拶を返す。

 

 ただいま、まどか。

 

 

「今日も一日、お疲れ様でした。……えっと、あ、背広と鞄、お預かりしますっ」

 

 

 うん、じゃあ、お願いします。

 

 まだ少し、たどたどしく。でも、その分を補うように元気良く、甲斐甲斐しい彼女。

 笑みを消させてくれない可愛らしさに甘えると、それ等を胸に抱え、まどかは寝室へパタパタ駆けて行く。

 その後姿を見つめながら、内心、安堵の溜息。

 

 義理チョコの入った袋、気付かれないで良かった……。

 

 玄関の扉を開けてからそれに気付き、慌てて靴箱の影に隠したのだが、なんとかバレずに済んだようだ。

 今の内に、どこかへ隠してしまわないと……とりあえず靴箱に突っ込んでおけばいいか。

 後は、まどかが戻って来ない内に手とかを洗っておこう。これからチョコを食べるんだし。

 そう考え、靴箱の扉を閉めて、そそくさ洗面所へ。

 

 

「ねぇ、あなた」

 

 

 ……っ!? ぬ、な、なんだい、まどか?

 

 ――向かおうとしたら、意外と早く帰ってきた声に驚かされてしまった。

 思わず背筋がピンとするが、なんとか取り繕い、そちらへ振り向けば――

 

 

「これ、なぁに?」

 

 

 ひぃい。

 

 ――小さな手に、これまた小さな、綺麗にラッピングされた義理チョコの一つが。

 あぁぁあぁ、しまったぁぁ……。

 そういえば帰り際に、隣のデスクの人からも「ついでだから」って一つ渡されて、紙袋が一杯だったから内ポケットに仕舞ったんだった……。

 なんて、迂闊な……。

 

 

「チョコ、だよね。これ」

 

 

 初めて聞く、落ち着き払ったまどかの、冷たい声。

 瞳からは光が消えているように見え、一切の表情を浮かべない姿が、凄まじい気配を放っている。

 こ、これが俗に言う、内緒で行った危ないお店の名刺を突き付けられる感覚、か……? キッツイなぁこれぇ。行った事も行く予定も無いけど。

 いやっ、今はとにかく言い訳だっ!

 

 う、うん、まぁ、そうなんだけど。

 義理、義理だから、当然、ね? ほら、付き合いもあるし……。

 

 

「何個、貰ったの?」

 

 

 え、あ……ぃ、一個だけ、だよ?

 自分がそんなにモテる訳ないじゃないか……はは、は……。

 

 

「じゃあ、さっき隠してた紙袋は? どこにいったの?」

 

 

 ……な、何の事でしょうか。そんなの持って――。

 

 

 

 

 

「 出 し て 」

 

 

 

 

 

 はい。

 

 威圧感に負け、すごすご靴箱を漁る自分。

 あぁ、やっぱりこの子、部長と知久さんの娘だ……プレッシャーが半端じゃない……。浮気なんてしたら、一日と経たない内に包丁で刺されそうだ……。

 そんな事できるほど器用じゃないから、ある意味、安心だけども。

 

 

「こん、なに……」

 

 

 足元に差し出した紙袋を覗き、彼女は顔を伏せる。

 だらり、垂れ下がった手は硬く握られ、放たれるオーラは最高潮に。

 うっわぁ……も、もしかしなくても、本気で怒ってる……? 下手な嘘なんかつかなきゃよかった……。

 ど、どうしよう、喧嘩した事なんて今まで無いし、まどかの怒った顔なんて想像がつかない。本当に、どうしよう……?

 そんな風に、どう対応すれば良いのかと困っていたのだが――

 

 

「……むうっ」

 

 

 ――予想に反してまどかは、子供の様に頬をぷく~と、ぱんぱんに膨らませているだけだった。

 つり上がった眉も、怒り肩も、睨みつける顔も。

 どうやら不機嫌さの現れらしいけど、正直、可愛いだけなんですが。

 

 

「ん」

 

 

 ……え? まどか?

 

 なんて思っていたら、シャツの袖をガッシと掴まれ、リビングへ導かれる。

 されるがまま、ソファの前に立たされると――

 

 

「んっ」

 

 

 ――今度は、ぴっ、とそれを指差される。

 座れ、という事だろうか……?

 普段の様子からは考え付かない強気な姿勢に困惑しつつも、逆らう気も起きず、大人しく腰を下ろす。

 

 

「ぇいっ」

 

 

 すると、ぽすっ、なんて軽い音と共に、まどかはこちらの膝の間へ横向きに座り込む。

 体重のせいか、全然痛くは無い。

 そのまま彼女は寄りかかり、胸板を額で擦りながら――

 

 

 

 

 

「……私が、一番最初にあげたかったのに」

 

 

 

 

 

 ――と、悔しそうに呟く。

 考える前に、彼女を抱き締めていた。

 もうなんなんだこの可愛い生き物殺す気か。そうか未来の嫁だった。

 羨ましいぞ未来の自分、羨ましいか過去の自分! 女子中学生――だと危ないな、言い換えよう。十歳以上年下の恋人万歳っ!

 

 

「んー」

 

 

 内心で悶えている間にも、餅の様に膨らむほっぺた。

 指で突っついてみれば、正しくそんな感触が返り、どうしてもにやけ顔が浮かんでしまう。

 

 ああ、もう、本当にまどかは可愛いなぁ。

 

 

「むー。私、怒ってるんですけど」

 

 

 そんなに拗ねないで? 一番最初には貰えなかったけど、でも、一番最初には食べてあげられるから、ね。

 

 

「うー、それだけじゃ、やだもん……。だ、だから……」

 

 

 不満そうに唇を尖らせるまどかは、更に何かを要求するつもりなのか、上目遣いにこちらを見つめる。

 

 

「キ、キス、して……下さい……。貰った数、だけ……」

 

 

 ………………。

 三十個以上あるんだけど、それでも?

 

 

「……ん……」

 

 

 自身で要求しておきながら、頬を真っ赤に染めて恥ずかしがる少女。

 次の瞬間には、その唇を啄ばんでいた。

 ただでさえ可愛らしい少女が、最高にいじらしく、キスをねだっているのだ。

 応えないのは、男じゃない。

 

 

「っむ、っ、ん、ふ、あ」

 

 

 胸の上に手が置かれ、シャツがくしゃりと握られる。

 上唇を挟むキス。

 重ねるだけのキス。

 下唇に吸い付くキス。

 何度も、何度もそれを繰り返し、次第に夢中になっていく。

 

 

「んぅ、ん、っあ、は、ぅ」

 

 

 やがて、時間の感覚が曖昧になり、数えていたキスの回数がどうでも良くなってしまった頃。

 何と無く、唇を離してみる。

 視界に入ったまどかの顔は、既に蕩けきっていて――

 

 

「やだぁ、も、っと、深く……あなたぁ……」

 

 

 ――離れてしまった事が寂しいと、より深くを、切願するのだった。

 

 ……すみません、部長。

 今日も、自重は出来なさそうです。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 バレンタイン・デー。

 それは、男達の喜びと悲しみ、その両方を一日に内包する、罪深い――あるいは祝福された日。

 

 幼馴染の少女と、付き合って一年ほどになる恋人。

 二人の少女からチョコを貰い、男として最高の結果を得られた、十四歳の冬(実は、過去最低記録だったりもするんですが)。

 僕、上条恭介は、恋人である志筑仁美の邸宅内にある彼女の部屋にて、にっちもさっちも行かない状況に追い込まれていた。

 

 

「ただいま戻りました」

 

「……お帰り、仁美。どうだった? ちゃんと返せた?」

 

「ご安心下さい。さやかさんの本命チョコはきちんとお返ししましたし、例の殿方ともお話できました。……やはり、最初は不機嫌そうになされていらしたのですけれど、最終的には、納得して頂けましたわ」

 

「そう、良かった……」

 

 

 ほっ、と胸を撫で下ろ――そうとして出来ないのを思い出し、溜息だけを零す。

 恋人からのバレンタイン・チョコを勝手に開封されてしまうなんて、想像しただけで、僕も苛立ってしまう。

 それを実際にやってしまったのだから、本当なら直接頭を下げたかったのだけど、「いきなりお会いすると拗れかねませんわ」という仁美の提案で、僕は謝罪の伝言を頼んだのだ。

 正確に言うと、頼まざるを得なかった、ですが。

 

 

「ですが、話してみると意外に会話が弾んでしまって……。遅くなってしまい、申し訳ありませんでした……」

 

「あ~、気にしないで。メイドさんとかが色々とお世話してくれたし。直前にトイレ行ってなかったら、ちょっと困った事になってたかも知れないけど……。それで、どんな人だったんだい? 例の人って」

 

「ええと、ですね。率直に申しますと……気の置けない方ですわ。少し、さやかさんに似ています」

 

「……さやかに?」

 

 

 しっとりとした仕草で思い返す仁美を見上げながら、僕は首を傾げる。

 さやかに聞いた――というか無理矢理に聞かされた話では、随分と……うん、まぁ、その、なんだろう。

 とにかく、印象が違うのだけど……。

 

 

「なんと言えばいいんでしょうか。あの方と話していると、こう……同好の士と出逢えたような親しみを感じてしまって。

 気を遣って頂いたのか、あちらの方からも色々と話しかけてくださって、中々に楽しい時間でした。でも、ちょっと馴れ馴れしくしてしまったみたいで、さやかさんを怒らせてしまいました。失敗ですわ」

 

 

 きしり、ベッドが沈み込み、仁美との距離が縮まる。

 困ったような笑みを浮かべる彼女は、同時に、楽しそうにも見えて。

 どうやら怒っているとはいっても、深刻なレベルじゃなさそうだ。

 

 

「やっぱり、僕も会ってみたいなぁ、その人に」

 

「んー、今回はこんな形でしたので、残念でしたけれど……。でも、少し間を置いて、きちんとお話しする機会さえあれば、恭介君とも仲良くなれると思いますわ。

 折角こうして知り合えたのですから、すれ違ったままというのは寂しいですもの。御手伝い致します」

 

「うん、ありがとう。そうだよね? 直ぐには無理でも、いつかは……」

 

 

 仁美へ感謝の言葉を返しながら、僕は思う。

 先ほどから名前の出ている、美樹さやか。彼女との関係を、一言で表すことは出来そうもない。

 幼い頃から共に過ごした、幼馴染。

 僕の弾くヴァイオリンの、一番のファン。

 そして、僕なんかの事を好きだと言ってくれた、女の子。

 さやかの気持ちに、僕は応えられなかった。日常となっていた笑顔の裏で苦悩していた事に、気付こうともしなかった。

 きっと、酷く傷付けたと思う。悲しませたとも、思う。……幼馴染、失格だ。

 

 そんな彼女を癒し、励ましたのが、彼。

 僕が知りもしなかった事をいち早くに察して見せ、僕には出来なかっただろう事を、いとも容易くやってのけた男性。

 是非とも会って、その人となりを知っておきたい。

 たった一人の、大切な親友を預けるのだから。

 

 

「……ところで、さ」

 

「なんでしょう?」

 

「そろそろ、このロープ解いてくれない? 逃げたりなんてしないから……」

 

 

 腕を引っ張って見せると、繋がれたベッドの主柱が、ぎし、と鳴いた。

 ……実は僕、恋人がいつも使っているベッドの上へ、仰向けに縛り付けられていたりする。

 この部屋にお邪魔させて貰い、彼女のくれたチョコを食べ終えた後の事。

 さやかから、「二人で分けてもいいよ?」と手渡されたそれを開封し、明らかに本命と分かる《 Love Me Do !! 》というピンクい文字を目にした瞬間、仁美は指をパチンと鳴らし、どこからか沸いた黒服さん達に括り付けられてしまったのだ。

 抵抗する暇? ありませんでしたよそんなの。

 

 

「……私、今日一日を通して、痛感致しましたの」

 

 

 無視ですかそうですか。

 さっきはああ言ったけど、同じ体勢で居続けるのって結構疲れるんだけどなー。

 寝返りも打てないし、いくらフカフカでも体が強張って辛いよー?

 

 

「私との関係を知っているにも関わらず、恭介君に本命チョコを渡そうとする女子を目で射殺す事、二十三回。

 同じく、席を立った隙に机へ入れられていたチョコを排除する事、十四回。

 ちょっと危ない手段で私達を引き離そうと画策していた不逞の輩を物理的にどうこうする事、二回。

 そして、さやかさんからの豪奢なチョコレート――これは勘違いでしたけれど。

 とにかく、早急に二人の関係をランクアップさせる必要がある、と。あ、義理チョコはきちんとお預かりしていますので、後でお渡ししますね」

 

「今年は妙に少ないと思ったら君の仕業だったのか……」

 

 

 恋人も出来たし、もともと義理以外は受け取らないつもりだったけど、できれば一言だけでも断りが欲しかったなぁ……。

 というか危ない手段って? いつの間にそんな事へ巻き込まれてたの僕達? 物理的にって、まさか《ころころ》してたりしないよね?

 

 

「ですので……ち、ちょっと、早過ぎる気は、するのですが……」

 

 

 きし、きし。

 ベッドを軋ませながら、仁美がにじり寄る。

 その表情に妙な色気を感じてしまった僕は、しどろもどろになりつつも、彼女の真意を問い質す。

 

 

「ひ、仁美? い、いい一体、何をするつもり?

 あの、か、勘違いならとっても恥ずかしいんだけど、もし、も、もしも、僕が想像している通りの……。

 やらしい、事だったりしたら……出来れば、その、もっと、べ、別な形で……」

 

「ご安心、下さい。なんでも、この方法で契った男女は、どんな障害をも乗り越え、固く結ばれる事が出来るらしいんです。

 あいにく、何方かは存じあげませんが、実際にこうして絆された方々もいらっしゃると、風の噂に……」

 

 

 何処の誰だそんな迷惑なGETのされ方した人はっ!? おかげで僕はこの状況なんですがっ!? 謝罪と賠償を要求……したら可哀相、か……。

 良く考えたら、こんな噂を流されているなんて赤っ恥ってレベルじゃないよ。僕だったら新天地を求めて泣きながら引越し頼むよ。

 でも、それはそれっ、これはこれっ!

 

 

「僕はちょっと遠慮したいかなこんな結ばれ方! なにも無理矢理じゃなくて、もっと正攻法でも……ううん、そもそも僕達まだ……っ!」

 

「ごめんなさい……お叱りは、後で……いいえ、今から、たっぷりと……。ですから……」

 

「ちょ、ちょっと、仁美ぃ!?」

 

 

 こちらへ覆い被さるように、彼女の手が、膝が、ベッドを這う。

 蜘蛛の巣に囚われたが如く、身動きすら許されない僕には、それを留める事なんて出来ようも無く。

 そして、年頃の男子中学生としては、恋人のあられもない姿を想像してしまうのもまた、当然な訳で。

 抵抗できないのを、自分への言い訳として。

 僕は、これから繰り広げられるだろう情事に、密かに心を躍らせてしまうのだった。

 

 

 

 

 

「私の不安を、消して下さい……。お慕いしております……恭介、君……」

 

 

 

 

 




 美樹さやかは(性的な意味で)レベルが上がった!
 感度が3上がった!
 色気が2上がった!
 羞恥心が5下がった!
 変態度が―― (あと十五項目ほど続く)
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