「ご、ごほっ………」
現在、目の前で黒髪長髪の吸血鬼が顔を真っ青にしながら口から血を吐く惨状が繰り広げられている。彼女の名前はリリエル。健康を求めてこの飛行島にやって来た病弱体質の吸血鬼の少女だ。
地面は彼女の血で染められていて、こういう状況になるたびこれを見かねた人が悲鳴を上げるのだが、飛行島のみんなもいい加減慣れていた。
今日の魔物退治のためにこうしてアジトの外でアイリスとキャトラを引き連れてリリエルと待ち合わせたのだが、彼女のこの状況では星だぬき一匹倒すのすら苦労しそうだ。
「お、おい大丈夫かリリエル。いつもより顔色悪そうだけど今日は一段と悪そうだぞ」
「リリエルさん、今日の魔物退治は休んだらどうですか?」
「だ、大丈夫ですよこれくらい、いつものことですから……」
俺とアイリスは心配して声をかけるが、リリエルは心配ないと吐血しながらも震える両足で歩こうとするが見ているだけでも危なっかしい。
「ごほっ!!」
「ギニャーー! 言ってる側から無茶するから!!」
これまた盛大に血を吐いたリリエルにキャトラが叫び声を上げる。何度も見たシチュエーションだが、今から魔物退治に行くのだから思わず心配して叫びたくもなるだろう。
仕方ない。今回の魔物退治はリリエルの代わりに他に頼むとするか。幸いこの飛行島には腕のあるやつらが揃ってるわけだし。
「リリエル、今日はもう休もう。その状態だとまともに武器も振れないだろ?」
「そ、そこまでひどくはないんですが……。それに皆さんにはお世話になってますので、これ以上迷惑かけるわけにもいきませんし……」
「だ~か~ら~、今のあんただと危ないの! こいつも休んでいいって言ってるんだから休みなさいよ」
痺れを切らしたキャトラが呆れた感じでリリエルに物を言う。こいつはおしゃべりで時々偉そうだが、この口ぶりでも仲間を心底大切に思ってるいいやつだ。
それが通じたのか、リリエルを納得したように言った。
「わ、わかりました。皆さんがそう言うのでしたら休ませてもらいますね。感謝します 」
「はい、どうぞゆっくりしていてください」
ふぅ……とりあえずこれでリリエルも納得したし今から空いた枠でも探そうかな。どうせそこら辺歩けば暇をもて余してるやつに一人二人会えるだろう。
「あ、待ってください」
その場から離れようとするとリリエルが引き留めてきた。やっぱり心境が変わって魔物退治に行きたい……というわけではなさそうだ、表情を見る限り。
「もしご迷惑でなければあなたに連れてって欲しい場所があるのですが……」
「俺に……?」
「えと、どうしても連れてってほしいというわけではないのですが。以前、赤髪さんとアイリスさんとキャトラさんとで一緒に私の健康を求めて活力のルーンがある森へと行ったのは覚えていますか?」
ああ……確かリリエルの健康のために、森の最深部にある全てに癒しを与えたり生命力の活性化を促すという『活力のルーン』を探しに行った時のことか。
途中で偶然であったヴィルに追いかけ回されたり、調子に乗ったリリエルが魔物相手に無双して結果的に倒れたりと、散々だったけどなんとかルーンのある場所にたどり着いたあの出来事だ。活力のルーンのお陰でリリエルは健康を得たものの色々訳あってルーンを森から持ち帰るわけにはいかなくて、結局生命力を分け与えてもらって帰ったのだ。
「もしよければもう一度あそこの森へ案内してもらえないでしょうか? あそこに行けば元気が出るような気がして……」
「そうか。その手があったか……」
でも俺たちは今から魔物退治に行くところだ。私情で依頼を放置するわけにはいかないし、かといってできることならば今すぐにでもリリエルを助けてあげたい。
魔物退治か、リリエルか……。
「行ってあげたらどうかな。その間に依頼は私たちで解決しておくわ」
悩んでる俺にアイリスが助け船を出してくる。
アイリスと他のやつらが魔物退治に行ってる間に俺はリリエルに同行する。これなら問題ないはずだ。
俺もキャトラそれに納得して、俺はリリエルに同行することになった。
「それなら帰るときにカニカマ買ってきてよ。なくて困ってたのよね~」
「はいはい、わかったよ」
ついでにキャトラの買い物を頼まれる。
「ありがとうございます皆さん。迷惑かけないためにも早く健康になって来ますね。それではレッツゴー……ごほっ!!」
やる気を見せたかったのかいつも常備してある点滴台を軽く持ち上げて見せるが、無茶したせいでまたも盛大に血を吐くリリエル。
やっぱり今日は大人しく飛行島に引きこもった方が安全じゃないだろうか。既に引き受けた身とはいえなんだか不安になってきたぞ……。
◆
というわけでリリエルを引き連れてこの間の森まで来ていた。
俺が先行してリリエルを魔物から守りながら進んで、活力のルーンがあるところまであと少しだ。だがしかし……。
「ぜぇ、はぁ……す、すいません。少しまってくださ~い……」
戦ってもいないはずのリリエルは戦っていた俺より息を切らしながら、俺に着いていくのがやっとの様子だった。
これといって急いでいるわけではないが、このままでは帰りが夜になってしまいそうな気がする。夜になれば魔物の行動が活発になって、どこからかいきなり闇が現れる危険性もある。それは活力に満ちたこの森でも一緒だ。
だからといってリリエルを無理に歩かせたくもないし……あ、それなら。
「ほらリリエル。乗れ」
俺は姿勢を低くして背中をリリエルに向ける。俺がリリエルを背負いながら進めば問題ないわけだ。両手が塞がれるがここ辺りから魔物も出なかったはずだし大丈夫だろう。
女の子を背負うと考えると若干緊張するが、そこは俺が堪えるしかない。
「ふぇ、いいんですか? 赤髪さんも疲れているはずでは?」
「これくらいならへっちゃらだからさ。だから乗って」
「わかりました。それでは早速……」
背中にぴっとりとリリエルがくっついて彼女の細い腕が胸元へ回される。俺は決してセクハラと勘違いされないよう気を付けながら太ももあたりに手を回してゆっくりと立ち上がる。彼女の柔らかい太ももの感触がして、気を紛らわすために早歩きする。
「ふぁ~さすが癒し系男子ですね。落ち着くような匂いがして気分が良くなっていく~……ごくりっ」
「おいこらさっきの音をなんだ落とすぞ!?」
「ご、ごめんなさい‼ 大人しくしますので落とさないで!!」
まさかおんぶした仕打ちがこうだとは思わなかった。おそらく先程のリリエルは血を飲みたそうに喉を鳴らしたに違いない。いつかのリリエルは俺を癒し系男子とか言って無理矢理に血を吸おうとしてきたからおっかない。今にでも首もとに牙を向けてきそうだから警戒しないと……。
「うん、でもやっぱり貴方と一緒にいると落ち着きます。こうやってくっついていると余計に……」
何を思ったのかリリエルはぎゅっと強く抱きついてきて耳元でそう囁いてくる。状態も落ち着いてきたのか声が穏やかである。
しかしいきなりそう言われると恥ずかしい。それが例え無意識だとしても俺の頬は若干赤くなっているに違いない。さらに密着しているせいか彼女の甘い匂いが鼻孔を擽ってきてこれでは気を紛らわすことさえ難しいそうだ。
と、とりあえず悟られなければ大丈夫だ、これくらいなんともない……。
俺は自分にそう言い聞かせながら再び歩き出す。
しばらくして森の開けた土地が見えてくる。そこに近づいていくほど体の底から元気が溢れるこの感じは、活力のルーンがそこにあるからだろう。
そしてそこにたどり着くと目に見えるぐらいに活気づいた自然がそこにあった。真ん中には大きな生い茂った樹があって、その中心部にはここの自然に栄養を与えている活力のルーンが埋め込まれており、金色に輝いていた。
リリエルを降ろすと普段の彼女とは思えない足取りでさっさとルーンのところへ近づく。
「ふぅ……これですよこれ。この体から悪いものが抜けてふっと軽くなるような感じ。極楽極楽~……」
樹に体をもたれさせて幸せそうな表情を浮かべるリリエル。ルーンの力を得ることができて満足そうだ。
せっかくなので俺もリリエルの隣に座ってルーンの癒しを味わう。日頃の疲れが抜けるような感覚のそれはまるで温泉にまったりするような気分だった。リリエルのこともそうだがここに来て本当によかったと思える。
「今日は本当にありがとうございます、一度ならず二度までもここに連れてきてくださって。いつか貴方にお礼をしないといけませんね。私にできることなら何でもしますから、その時は言ってください」
ん? 今何でもって……というネタはおいといて。
ここまで言われると連れてきた甲斐があったものだ。本人は愉悦に浸りすぎたせいか、何でもとか言っちゃったりしてるけど、まあそれはいいや。
「別に俺は全然気にしなくていいよ。それより今はゆっくりしよう」
「うーんしかしそれでは私が納得できませんし……そうだ!」
リリエルはふと何か思い付いたのか、正座してスカートについた葉っぱを払う。そして「どうぞ」といいながら、自分の両膝を指し示した。
「リリエル? これはどういう……」
「膝枕ですよ。私のでよければですけどどうですか?」
いや、それは分かるんだけどいきなりされると焦るというか……。もしかして気分がよくなりすぎてあまり物事を深く考えれなくなってるんじゃないだろうか。
しかし滅多にないであろう女の子の膝枕。見逃したらもしかしたら二度とこの機会は訪れないかもしれない。しかも俺はリリエルの太ももの柔らかさを先程体験してしまっている。さらに周りには二人しかいないし場所も良好だ。
うん、この機会を逃すなんて男の恥だ。
「それじゃあ、ありがたく……」
おそるおそるしながら俺はリリエルに膝枕に頭を預ける。
太もものほどよい弾力が後頭部に伝わってきて心地よい。上を見上げてると満足げな顔をしているリリエルが見えた。最初は緊張していたが、ルーンの効果と心地よい抱き枕のお陰でその緊張も解れてきた。
「どうですかね? 実は男性にこのような事をしたのは初めてであまり自信がないのですが」
「もちろん気持ちいいよ。なんだか心地よくていい感じ……」
「そうですか。なら良かった」
他愛もない会話をしながら幸せな時間が過ぎていく。リリエルが頭を撫でてきて眠気がやってくる。
もうこのまま寝てしまおうかと思ったところでリリエルの異変に気づいた。
「リリエル……?」
ボーとしていてなんだか様子がおかしい。いつもの具合が悪そうな様子ではなくどうやら俺をジーと見ているようだった。
それだけならまだいいのだが名前を呼んでも返事がない。俺を見ることに集中しているだからなのだろうか……それはそれでおかしいと思った瞬間、リリエルの口元からよだれが垂れて俺の頬へと落ちた。
「り、リリエル!?」
思わず飛び起きてリリエルが驚いた。
「ふぁ、あっ、ごごめんなさい。その貴方の事を見ていたらどんな血の味がするんだろうと考えてしまいまして。き、気分が良くなったせいで逆に欲求不満になってしまいました! ごめんなさい!」
なんだいつものリリエルか……てそうじゃない。下手したら寝た隙にこっそりと血を吸われるところだった。
俺が血を吸われるのは絶対に嫌だからというわけではない。女の子に血を吸われるというシチュエーションが不純に思えてしまうからだ。もちろんリリエルはそんな動機はないのだろうが、きっと男の性だからか俺はエロく感じてしまうのだ。
「うぅっ、びっくりしてしまいましたよね……。私ったらせっかく連れてきてくださったのに恩を仇で返すような事をしてしまって……」
リリエルが涙目を浮かべながらこちらを見てくる。おそらく自分が欲求に駆られかけた事を後悔しているのだろう。しかしそんな表情をされると逆に困ってしまう。まるで自分が悪いことをした気分だ。
くっ……この状況を打開するにはこれしかない。
「……耳だけなら血を吸ってもいいぞ。耳ならすぐに傷も治るからさ」
「え、いいんですか……!?」
「誰にも言わないなら大丈夫、うん」
まさかこんな展開予想してなかったけど仕方ない。他の人たちにこの事がバレないなら大丈夫だろう。
「もちろんです。一度でいいから赤髪さんの血を吸ってみたかったんです。誰にも言いませんからお願いします」
「お、おう……」
そこまで迫真に自分の血を必要とされるとなんだか微妙な気持ちになるが、いいと言ったら以上仕方がない。
リリエルは病弱だが見た目は可愛らしい美少女だ。綺麗な黒髪に普段は若干青白いが艶のある肌。そんな少女に今から吸血……つまり唇を触れさせられるのだから緊張と喜びを覚えずにはいられない。
ん……もしかして、俺はリリエルのためではなく邪の思いで吸血を許可したのだろうか?
「それではまず体を横にして、それから緊張したり動かないでください。下手すれば大怪我しちゃうかも知れませんから」
「わ、わかった」
え? 大怪我? 耳から血を吸うだけなのに大怪我するの?
俺は聞き捨てならない言葉を聞きながらも芝生に寝転ぶ。
「安心してください。貴方の体が慣れるまで私がペースをゆっくりと合わせますから、楽にしていてください。それでは……いきますね」
俺は密かな期待と緊張をしながらリリエルに耳を向ける。
俺はリリエルのいない方向を向いているため視界では分からないが、しだいに彼女の息が大きくなって唇が近づいてきている事が分かる。吸血鬼の欲求を抑えきれてないのか息が荒く感じる。息が耳に当たってくすぐったいが動くなと言われたためぐっと堪える。
「んっ、ちゅるっ……」
リリエルは唇で耳を咥え、次にチクッとした痛みが伝わってくる。そして軽い傷から血が流れたところを彼女は舌で舐めていた。耳なめのような快感が気持ちよくて堪らない。
とはいえそれがバレてはそれこそ俺はセクハラ扱いされてしまう。落ち着け俺……平常心、平常心だ。
「美味しい……。この甘酸っぱい血の味……やっぱり貴方の血が私は好みのようです」
「そ、それは良かった」
いやいやよくないよくない!? この状況で好みとか言われると余計動揺するんですけど!?
ひ、ひとまず深呼吸だ……ふぅ。
「……んっ、ちゅるっ……ちょっと舐めにくいかも。ちょっと距離を詰めますね」
俺が羞恥心に悶えているのも知らずにリリエルは顔を近づけて耳全体を口に含む。生暖かい空気が耳全体に触れる。
しっとりとした舌が血を舐めてきて痺れるような感覚が体中を駆け巡る。俺は必死に耐えようとしていつの間にかリリエルのスカートの裾を掴んでいた。
「れろっ……もしかしてくすぐったいんですか? それなら……」
それに気づいたリリエルが、スカートを掴んでいる俺の手を自分の手にぎゅっと握らせる。普通に握るのではなく手の指の間に指を挟む所謂恋人繋ぎだ。リリエルすべすべとした手の感触が伝わってくる。
「大丈夫ですよ、そんなに強張らなくても。ちょっとだけ血を頂くだけですからね……ちゅっ」
まるで赤子をあやすように優しく言葉を投げ掛けるリリエル。もしかして手を繋いだら俺が落ち着くと考えたのだろうか。
しかしこれは逆効果でしかないのだが……。
「んっ、美味しい……ちゅるっ、れろっ、いくら舐めても舐めたりない癖になりそうな味……んれろっ」
急に吸血が激しくなって、俺も考える余裕がないくらいの気持ちいい感覚が波となって襲ってくる。思わず暴れてしまいそうな手をリリエルは必死に掴み離さない。顔が動きそうになるがリリエルが強く吸い付いてきて動けない。
血の味とやらは吸血鬼にではない俺にはよく分からないが、どうやらリリエルは血の味に興奮してか歯止めが効かなくなってしまったようだ。
少量の血を吸われ続けられているだけなのに吸血される感覚は思った以上に刺激が強く、これ以上昂奮を抑えることは不可能だった。
もう我慢できない。
咄嗟に俺は無理矢理リリエルを退かして起き上がる。それに驚いて耳から口を離したリリエルは今の俺を見て何度も目をぱちくりとさせている。
「あ、危ないですよ。急に動いたらダメだって言ったではありませんか、って、きゃあっ!?」
その隙を狙って有無を言わせずリリエルを芝生に押し倒す。彼女の黒髪が絨毯のように芝生に広がって、俺は手首を地面に押さえて捩じ伏せる。そして恐怖よりも行動が理解できないと訴えかけているリリエルの眼差しも無視して唇を重ねた。
「ひゃっ……んんっ」
リリエルはピンと背中が跳ねるが唇が離れることはなく、抵抗しないで俺とのキスを受け入れる。
柔らかくて官能的な唇、甘いキス。俺は自分が何をしているのかようやく理解してリリエルから離れるようにして跳び跳ねた。
俺から解放されたリリエルが起き上がって、困ったように頬を染めながら視線を反らす。
ヤバい。すごく気まずい。いや俺があんなことしたからなんだけど……。
「えっとリリエル、これはなんていうかその……」
「……私ともっとえっちなことしたいんですか? キスとか色んなこと……私は、別に、いいですよ……?」
「え?」
俺の聞き間違いかと思ってあえて惚けて見る。
「だ、だからしたいんですか? 赤髪さんが私にそう望んでくれるのなら私はむしろ……う、うれし」
どうやら聞き間違いではないらしい。
…………いや、嬉しいんだけど!! 嬉しいんだけど!!
あまりにも予想外の反応で返答に困ってしまう。
「えと、リリエルはそれでいいのか? いきなりキスした俺だからもしかしたら抑えが効かないかもだぞ?」
「そ、それは私の方ですよ。貴方こそこんな病弱で貧血気味の種族も違う吸血鬼の私なんかと……」
お互いに言いたいことを言えずに沈黙してしまう。
言葉に出せないなら行動で示そうと俺はリリエルの唇へもう一度自分の唇を近づける。その行動に気づいたリリエルも自ら唇を近づけてきた。
そして唇が重なりあってお互いに唇の確かめ合うだけの微動だにしない時間が続く。
リリエルの唇は柔らかくて小さくて普段から不健康とは思えないほどのほどよい質感だった。
「んっ……あなたとのキス。すごく心地よくて美味しいです。あの、もっとキスしていいですか?」
「もちろん」
唇を離すと今度はリリエルの方から積極的にキスを求めてきてまた唇が重なる。
唇の感触を堪能したあと今度は舌を彼女の口内へ侵入させる。びくっと肩を震わせるがすぐに理解して彼女の方からも舌を絡めてきた。
ぴちゃ、ぴちょりっ、と湿った音がなる。舌のざらつきと彼女自身の体温が堪らなく心地よい。ゾクゾクした快楽が背筋を駆け巡る。
キスを終えて唇を離すとお互いの舌を繋いで銀の糸ができあがる。リリエルはそれを指に絡めると口に含んだ。
「何してるの?」
「人間の唾液は私たち吸血鬼にとって血と同じ好物なんです。血ほどではありませんけど唾液も美味しく感じるんですよ。だからもっと、キスして貴方の味をもっとください……」
リリエルは蕩けるような表情で外気に舌を晒しながらキスをせがむ。その姿は情けないというよりも俺を求めてくれたことが嬉しかった。そして俺自身もリリエルを求めていた。普段はこういう関係ではないのに、恥ずかしげもなくこうも素直になれたのはお互いとも興奮しているからだろう。
今は俺の頭をリリエルのことでいっぱいだった。
「んっ……はやくぅ……」
リリエルが不満げに声を漏らす。その仕草も堪らなく可愛くて俺は唇を重ねる。
三度目のキスを初めから舌を絡め合う激しいキス。官能的な気分に浸りながら荒い息が混ざりあって頭の中が真っ白に染まる。
滅多に人が来ない奥地ならもっと大胆になっても大丈夫だろうと彼女の胸に触れる。くすぐったい声を漏らすが抵抗しないということはこの先へ進んでもいいと理解して、リリエルの胸を優しく揉みしだいていく。
「んくっ、ぷはっ……。あんっ、私の胸触りたいんですか? でもそんなにされると服に皺ができちゃいます」
「あ、ごめん。さすがにやり過ぎたかな」
「いいえ、そういうわけではなくて。どうせなら貴方に脱がせて貰えたらいいなって……」
その言葉が切っ掛けで今まで抑えていた欲求が爆発する。リリエルの可愛いげな言葉によって脳がショートして、乱暴だと知りながらも一秒でも早く彼女の姿を拝みたくてゴスロリの服装を脱がす。
「ひゃあっ、ちょっと乱暴ですっ、あっ」
彼女の言葉を無視して全身を脱がし終えると、スポーツブラとショーツだけになった全身の柔肌を露出したリリエルがそこにいた。
「……ひどいです、いきなり獣みたいにがっつくなんて。血を前にした私でもさっきの貴方みたいに凶暴になったりしませんよ」
いや、血を前にしたリリエルもなかなかしつこくてある意味凶暴だが。
「わ、悪かった。その……すごく可愛らしいよリリエル」
「むっ……なんだか誤魔化して言ってるみたいで嫌です。お世辞のつもりですか?」
普段謙虚で素直なリリエルがここまで拗ねるのも珍しい。まあ確かに胸はスポーツブラから膨らみが少しある程度でお世辞にも大きいとは言えない。でもそこに不満など一片もない。
ぷくっと頬を膨らませるリリエルにどう言えばいいか困っていると、彼女方からこちらに手を伸ばして服を掴んできた。
「服」
「え?」
「あなたも服を脱いでください。私もあなたの肌に触れたいのに、あなたばっかりそのままでいるのは不公平です。私もあなたとえっちなことしたいのですから脱いでください」
そう言われて俺も服を脱ぐ。そしてお互いに下着のみになるとリリエルが抱きつき、体のあちこちをべたべたと手で触ってきた。
彼女の暖かい体温と服越しからでは感じれらなかった質感の良い肌が俺の体を刺激させる。性欲が昂って愚息が怒張する。
俺も負けじと彼女の背中や肩。頬を撫でながらリリエルの体を堪能する。
「んあっ……触られてるだけなのに変な気分になってしまいます」
「そう? だったらここはどうかな」
いたずらぽく言って胸を揉む。それだけでリリエルは「ひゃあっ」と驚きの声をあげる。
「もう……こんな色気もない小さな胸を触って何が楽しいんですか」
「楽しいというよりは気持ちいいかな。それに色気がないだなんて、そんなことないよ」
触ればわずかだが柔らかい女性特有の感触はするし、何より触ったり揉んでいたりしたくなるくらい気持ちがいい。色気がないなんてあり得ない。
「……ずるいですよ。そんな風に言われると許したくなってしまうじゃないですか」
「それはよかった」
「あっ、またおっぱい触って、ひぃっ……」
触るだけで甘美な声を上げるリリエル。俺に身を寄せながら悶える姿が可愛らしくて、それを見るだけで股間に熱が帯びる。
布越しからでは物足りなくなって彼女のブラを脱がす。ブラが脱げると同時に控えめにプルっと揺れる胸に欲情を駆られて思わず生唾を飲み込む。
試しに表面に触れて見ると、決して布越しからでは味わえなかった至高の感触がした。もはや触れるだけでは満足できなくなって、少々強引に胸を揉みしだく。
「ひゃんんっ!! んぁっうぁっ」
案の定、リリエルは刺激に強く反応して身を捩らせながら耐えるためか必死にこちらの服を握って抱きついてくる。
距離が近いせいで胸を揉みにくくなってしまい、一旦彼女を抱き抱えて背中をこちらの胸に預けるような体勢にさせてから再度胸を揉む。
彼女の胸を揉めば揉むほど貪欲になってしまい、性的な快楽を求めて片方の空いた手でもう片方の胸を揉む。
「んあっ、ああっ、む……胸だけじゃだめですっ、き、キスも……んんむっ」
ちゅるっ、れろれろっ、ぴちゃ、ぴちゃっ
背中を向けたままリリエルがこちらに顔を寄せてそのまま唇を重ねて舌を絡め合う。とろりとした濃厚なキスの味に脳が支配されてそろそろ余裕がなくなりつつある。
体中が熱くなってやがて息が苦しくなるが抑えがきかなくなりさらに激しく舌が絡まる。
「むぅっ、んんっ……はぁっ、はぁっ……ま、またおっぱい……っ」
限界を感じて唇を離しても収まることができない欲情が今度はまたリリエルの胸に集中する。さっきのキスを止めに抑制の糸が切れた俺は、彼女の喘ぎ声と胸の感触だけを求めてひたすら胸を揉む。ただ揉むだけじゃなくて乳首をつまんだり、上下に揺らすように揉んだりして感触と反応を楽しむ。
「だ、だめです、これ以上乱暴にされると、わたしっ、わたしっ、ひゃんっ」
リリエルはそう叫ぶが、彼女の胸を揉みしだく事に頭一杯の俺には既にその手を止める余裕はなかった。
身をよじらせてわずかな抵抗をするリリエルの体を少々乱暴に抑えて唇を唇で押さえる。抵抗した彼女もキスだけは拒否できずに舌を積極的に絡めてきて、卑猥な水音が静かな空間に鳴り響くと同時にリリエルの全身が強く跳ねて、一時痺れたように体をガクガクとさせるとそのまま俺の胸元に倒れ込んだ。
リリエルの顔を覗くと、頬を紅潮させはぁはぁと艶かしい息を漏らしながら瞳を潤わせていた。
「うぅっ……キスとおっぱいだけでイッちゃいました。これでも吸血鬼の私があなたにここまでされるなんてなんだか悔しいです……」
彼女は吸血鬼のプライドを理由にそう言うが、絶頂したばかりの表情からは不満げな様子はない。
今度は隙だらけの彼女を押し倒す。秘部覆う下着に指で触れてみるとグッショリと愛液で濡れていた。
「やっぱり……最後までするんですよね?」
「ダメかな? ダメなら今からでも俺を押し飛ばしても……」
「いじわる……貴方にここまで求められてそんなことするはずじゃないですか。私ももう我慢できません、あなたのを早くくださいっ……お願いです」
二人しかいないのを良いことに淫らの正体を露にするリリエル。自らショーツを脱いで股を開いて俺を求める姿はとても官能的で、それがまた興奮をそそる。
既に俺は理性を失いつつあるというのにそんな卑猥な格好をされると、いよいよ抑えていた本能がむき出しになる。
自分もパンツを脱いで、パンパンに膨れ上がった愚息をリリエルの秘部へあてがうと、滑りとした愛液の感覚が亀頭に伝わってくる。
リリエルの膣は小さくて少し挿入するだけで俺の肉棒を強く締めてくる。このままゆっくりと押し進めては拉致があかないと思った俺は一気に肉棒を根本まで挿入した。
「ひぃっ、ん、いぃっ」
リリエルは嬌声を上げながら、両手を伸ばして俺の肩を掴んで引き寄せて唇を重ねた。
俺は腰を振りながら肉棒を膣壁に何度も擦りつける。それに合わせてリリエルの艶かしい声と息が唇の間から漏れだす。
ずちゅっ、ぐちゅっ、ちゅぽっ、ずちゅちゅっ
肉棒はリリエルの膣内に圧倒されて、ここが外だということも忘れて卑猥な音を静かな空間へ奏でる。腰を振れば振るほど自制が効かなくなって、無心に肉棒を出し入れしていると、射精感が体の奥底から波打つように襲ってきているのがわかった。
「あっ、い、イっちゃう、私吸血鬼なのにあなたのおちんちんでイっちゃう! イっちゃいますぅっ!」
唇を放して芝生の上で何度も身をよじらせながら声を上げるリリエルの小さな胸が申し訳程度に揺れている。その胸を揉みながら、ギュッとさらに締め付けが強くなった膣内へ肉棒を出し入れしていると、これ以上の快楽に耐えれずに精液を彼女の中に放出した。
「も、もうダメです……ぁあんっ、も、もうイッちゃう――――ああっ、はんっ、ああぁんっ」
どびゅっ、びゅるるっ、どくっ、どくんっ
「んぅっ、た、たくさんでてきて……ます、あぁっ……」
大量に注がれた精液はリリエルの小さい膣内に収まることなく、秘部に栓をしていた肉棒を抜き取るとそこから白濁液が溢れ出てくる。そのまま緑の芝生が白色の液体に塗り替えられる様は俺が彼女に射精した量を物語っていた。
熱が抜けたせいか外の気温は寒くそれはリリエルも同じようで肌を重ねてきて、俺を受け入れるように抱き締める。そしてどちらともなく互いに唇を重ねるとキスとともに余韻を味わった。
■
「あら二人ともお帰りなさい。意外と遅かったわね」
「ん……リリエルあんたやけに元気そうというか、なんかキラキラしてない?」
事を終えて飛行島に帰還すると既にアイリスとキャトラが既に帰ってきていた。
「はい。活力のルーンやこの人のおかげですっかり元気になっちゃいました。あと一週間ぐらいこの調子でやっていけそうです」
そういうリリエルは本来はきめ細かな肌をキラキラと輝かせ、どこかすっきりとした様子だった。こうなった理由が活力のルーン以外のおかげでもあることは二人だけの秘密だ。
「ん? あんたリリエルに何かしたの?」
「い、いや別に何もしてないけど……あ、ちょっと知り合いに教えてもらった健康体操をリリエルに教えたからかもなぁ……あははっ」
適当に笑って誤魔化すとキャトラは疑問符を浮かべてその場から立ち去っていく。アイリスも後を追いかけてなんとか誤魔化すことができてほっとした。
一方リリエルはこっちの心中など気にすることもなく相変わらずキラキラと輝いていた。そりゃあもう今朝の吐血していたあのときのリリエルとは比べものにはならないくらい健康に満ちている様子だ。
まあこちらも美味しい思いができて大満足である。
「あの、よかったら」
「ん?」
「よかったら不健康になったときには、また……よろしくお願いしますね」
そう言い残してルンルンとスキップして立ち去っていくリリエル。どうやら俺はリリエルとは今まで以上に、そしてこれからも深い関係になってしまったらしく、いつかどこかでこの関係がばれるのではないかと思いながらも俺は心の底で嬉しく感じていた。
「そういえばあんた、カニカマもちろん買ってきたわよね?」
「あ、すっかり忘れてた」
ある事に夢中になりすぎて忘れたなど言えるはずもない。