※この作品はR-18です。

女神「突然ですが、貴方たちには対魔忍になってもらいます!!」「「「「「えっ!?」」」」」   作:ニゴリエース

1 / 15
※今回のお話には男子が男性に対してひどい目に遭わされる描写があります。そういったものが苦手な方は十分ご注意ください。




外伝編
井河弟幼少時代:紅月に照らされて


 都心の地下深くに広がる都市ヨミハラ――そこはノマドが支配する闇の世界であり、毎夜に己の欲望を満たさんとする者たちや犯罪者、魔に与する者が集う場所である。日の光は決して届かず、そこかしこに存在している娼館などの店や外灯を唯一の光源としているため、その妖しい輝きがより一層この都市の不気味さを彩っているように思える。

 

 ヨミハラにはスーツ姿の中年やギャングのような奇抜な恰好をした若者、肌が見えてしまうほど薄い生地に身を包んだ娼婦と様々な人間の姿や、人間にはないオオカミのような耳を持つ獣人、緑色の肌を持つオークなど魔族の姿が見られる。彼ら闇の住人はこのヨミハラを拠点として生活しているため、人間以外の者がいたとしても誰も不思議がらないのである。

 

 そんな人魔入り乱れる場所に、まるで人混みを避けるかのように路地裏を歩く一つの影があった。その影は大人の背丈の半分くらいしかなく、身を隠すように黒い外套で身を包んでいた。やや息も荒く肩で息をしながらあたりの様子をひっきりなしに伺う。そして誰もいないことを確認すると影はため息をついて壁にもたれかかりフードを脱いだ。

 

「くそっ……ジジイの奴、何が楽な訓練代わりの任務だふざけやがって……」

 

 声はやや高いソプラノボイスであるが口調は汚いためまだ声変わりしていない少年であることが伺える。また左右にアホ毛が伸びた黒髪に翡翠色の瞳と中性的な顔であり、少女に見えなくもない。ヨミハラには少年や青年の男娼も存在している為、その手の店にいれば客がこぞって彼を買うことだっただろう。しかし服装は身を隠すための外套に所々に破損が見られる装甲を纏ったスーツ、さらに先ほどまで戦闘でもしていたのか右目には大きな裂傷がありだらだらと出血が起こっているのが見られているため、彼は男娼というわけではないようである。

 

 彼の名は井河カムイ――古くから魔と対峙してきた対魔忍と呼ばれる政府所属の非合法組織であり、伊賀の里にて長を務める井河家の長男である。彼はとある事情から現在死亡扱いになっているが、それは彼の祖父である井河の頭領が行った偽装工作であり今は対魔忍になるため正体を隠して修行の真っ最中である。

 

 彼がヨミハラにいる理由も訓練の一つであり、草としてヨミハラに侵入しノマド以外の勢力の調査の任務を任されたのである。祖父が言うには今回はノマドの支配が強いヨミハラにて暗躍する淫魔族の動向を探るのが目的であり、戦闘になっても大したことのない戦力ばかりであると伝えられていた。

 

 祖父の考えや経験から、カムイは幼いながらもその実力は伴ってきており現場での経験を積ませれば良い経験となると考えていた。それに相手は吸血鬼や鬼など強力な魔族ではなく非戦闘的な種族である淫魔族で、彼らは祖父の経験から戦闘になってもカムイなら退けられると判断したためである。

 

 しかしそれは間違いだった。昔ならいざ知らず、現代において独自の組織を形成している淫魔族が敵に対してなんら自衛の手段を持たないはずがなかった。彼らは強大な力を持たない代わりに生来より異性を虜にする術と知能を持っていた。それを使って猛者を従え、時には財力や権力を利用して傭兵を雇うなどを行っていた。それを理解しておらず頭領である祖父の指示で地下に潜ったカムイは淫魔族に嗅ぎ付けられ、追手をけしかけられた。まだ実戦を経験したことのないカムイは自分よりも遥かに格上の相手との戦闘によって右目に重傷を負い、今こうして難を逃れようとしている最中である。

 

「あぁ~いってぇ~……右目はもうなんにも見えねぇ」

 

 カムイは激痛の走る右目を押さえ、懐から救急キットを取り出し止血しながら応急処置を取っていく。カムイくらいの年齢の子供ならば泣き叫んでもおかしくはないほどの傷ではあるが前世での年齢も合わせ精神的年齢ではすでに二十歳を超えており、なにより前世で受けてきた両親からの仕打ちに比べればこの程度でわめくほどでもなかったのだ。

 

「くそったれ……どんどん血が出てきやがる、早いとこっから逃げ出した方が良いか」

 

 すでに何枚ものガーゼで血をぬぐい、包帯で覆っても傷口から血は溢れてくるため巻いて数分足らずで右目を覆っている包帯は紅く染まっていた。カムイはそのことに悪態をつき、ヨミハラから脱出する算段を考える。

 

 カムイにとって任務の失敗に対する負い目や叱責の心配は一切なく、片目が潰されすでに距離感が掴めない状態ではもはや任務の続行などできるはずがない、ならば今は脱出することだけを考えて次に備えるべきだと脳内で判断していた。そもそも昔の経験だけで任務の危険度を見誤り一人でこんなところに来させた祖父が悪いのだとも考えているのは余談である。

 

「よし、そうと決まれば早速逃げることにするか……」

 

「おっと、そういうわけにはいかねぇなぁ~」

 

「っ!」

 

 逃げることに一切ためらいを見せずにカムイはそそくさと路地裏を移動しようとする。しかしカムイは背後から男のように野太い声がかけられたため後ろを振り返った。そこにいたのは、緑色の肌を持ち無法者のような格好をしたオークの四人組であった。

 

「オーク……淫魔族の連中の追手か」

 

「お前が雇主の言ってたガキか、随分小汚い格好してんなぁ」

 

「その割には顔は中々綺麗じゃねぇか」

 

「服装からして対魔忍って奴だろ、連中は見た目が良い奴が多いからな~」

 

 オークたちは間の抜けた様子でありながらじりじりとカムイを囲むようにして迫り、それぞれ武器を構える。カムイはオーク一人一人の位置を確認しつつ自分が逃げるべきルートと実行するための準備を行う。

 

「なぁ、ボスからはこいつのこと捕まえたら好きにして良いって話だったよな?」

 

「あぁ、雇主様からのお墨付きさ。こいつは俺らの自由にしていいってよ」

 

「へぇ~……まっ、男でも顔は良いし穴もあるんだから全員で輪姦せれるだろ」

 

「げへへっ、俺三発な」

 

「うげ~、お前そういう趣味だったのかよ」

 

「……」

 

 オークたちの下卑た会話にカムイは顔をしかめつつ早々にここから逃れるための手順を頭で組み上げていく。相手はオークなのだからおつむは低い、だからこそまだ力も弱い自分でも活路は見いだせる、そう考えていたのだ。そして彼は意を決すると一気に動き出す。

 

 外套の中からカムイはそれのピンを抜き、地面に放る。仲間と下卑た話に夢中になっていたオークたちは自然とそれを目で追ってしまう。そしてそれはカムイの真下ではじけた。

 

「ぐぁっ!?」

 

「なんだこりゃっ!?」

 

「め、眼が痛ぇ!」

 

 それは暴徒鎮圧にご用達のフラッシュバンであり、強い光を発してオークたちの眼を焼く。オークたちは突然の光に対処しきれず目を覆ってしまう。その隙を見逃さず、カムイは懐にしまっていた二つのクナイを持ち路地裏に立ちふさがるオークに向かって突進する。相手は魔族とはいえ下級種族のオークだ、例え仕留められなくとも隙さえ作ってしまえば逃げることはできる、そう考えての行動だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人生において、何をやってもうまくいかないときがある。それは不幸の連続や偶然の一致などによって間が悪い時を指す。例えば転んだ先に水たまりがあったなど、偶然の重なりなどで人は不幸だと言ってしまう。カムイにとっては今日が人生において最も運が悪い日だった。彼は祖父の見当違いの経験から危険度の高い任務に一人で向かわせられ、たまたま淫魔族に嗅ぎ付けられてしまい、たまたま自分よりも強い相手を追手として差し向けられ、右目に重傷を負い、隠れていたところをオークに見つかってしまった。

 

 そして何より運が悪いのは、たかがオークと思っていたカムイ自身の小さな油断であった。そのオーク達は、オークであっても魔界において強靭な部類に入りオーガにさえも果敢に挑みかかり打倒す力を持つ『羅刹オーク』だったのだ。カムイが斬りかかったオークはにやりと笑うと目を瞑ったまま、特攻してきたカムイを避ける。カムイはそのことに驚いてしまい致命的な隙を生じさせる。それを見逃すはずがなく、羅刹オークはカムイのみぞおちに膝を叩き込んだ。

 

「ごぶっ!!?」

 

 防御が疎かになり、もろに喰らったカムイはクナイを取り落してその場に崩れ落ちてしまう。そして閃光による一時的失明から回復したオーク達はさきほどの下卑た笑みを浮かべてカムイの腕を掴みあげて拘束する。

 

「ぐっ!?」

 

「へっへっへっ、やってくれたじゃねぇかこのガキ」

 

「こりゃお仕置きが必要だな」

 

「おら、さっさと脱げや!!」

 

 羅刹オーク達に手足をとられ、完全に身動きが取れなくなったカムイはそのまま彼らに外套とスーツを無理やり引き裂かれ素肌をあらわにする。オークの性欲や下種な性質を理解しているカムイはこれから自分の身に起こるであろう惨劇をおとなしく受け入れるしかないことを思い知った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カムイが羅刹オークに敗れ、捕まってから外の時間では一日が経過していた。カムイはあの路地裏からまったく移動させられず凌辱の限りを尽くされていた。前戯もない状態で菊門に子どもの腕ぐらいはあるオークの巨根をねじ込まれ、擦り切れようとお構いなく彼を凌辱し続けた。カムイは最初こそ決して悲鳴は上げまいと歯を食いしばっていたが、排出するのだけが役割である菊門に何度も出し入れるという嫌悪感に次第に嗚咽を漏らしていた。

 

 しかし彼にとっての悪夢は次からであった。羅刹オークもまたオークの一種であり、彼らの精液には催淫効果が含まれており媚薬のようなものである。それを直接直腸に出され、吸収してしまったカムイの体は痛みすらも悦楽に感じるようになってしまった。

 

 精通すらもまだな少年の体にとってそれはとても許容しきれるものじゃなく、カムイは次第に声を荒げて抵抗を示すようになる。しかし大人と子供、ましてや人間よりも遥かに力強いオークにとってそれは蚊ほどにも感じない弱々しい抵抗であり、それを蔑んで嘲笑った。

 

 次第にオーク達の行為はエスカレートしていき、カムイの口に無理に自分の剛直をねじ込み大量の精液を胃に叩き込むように射精し続けた。カムイが窒息しそうになっても構わず何度も何度もである。次第にカムイの左目から光が消えていき、今でも凌辱が続いているにも関わらずほぼ死んだように反応しなくなっていた。

 

「うっ……あっ……」

 

「おいおい、こいつとうとう反応しちまわなくなったぞ」

 

「そりゃこんだけ犯してやったんだ、死ななかっただけマシじゃねぇか」

 

「対魔忍の連中は頑丈だからな、こいつもその端くれってわけだろ」

 

「ぎゃはははっ、むしろ死ねた方がマシだと思うけどな!!」

 

「そりゃ違ぇねぇや!!」

 

「「「ぎゃはははははっ!!」」」

 

 オーク達はすでにズタボロになっているカムイを尚も嬲りその有様を見て嘲笑していた。カムイはというと、全身に青あざがあり、すでにその思考は朧げになっておりいつ死んでしまったっておかしくないほど衰弱している。

 

 自分の姉や妹のため、今ここで死ぬわけにはいかない――先ほどまでそう思っていたのに今はこの望まぬ悦楽を終わらせるためならばもう殺してくれとさえ願っていたほどだった。

 

 井河カムイとして転生する前――彼の前世は壮絶な人生だった。彼の両親は最低の屑であり、軽い火遊びのつもりで出来てしまった赤ん坊をどちらが引き取るか醜く言い争いをしていた。結局父親が引き取ることになったが父は彼に対してろくに食事も与えず、仕事のストレスから何度も暴力や性的暴行を加え続けてきた。

 

 それを甘んじて受けてきた彼は次第に衰弱し、結局は高校を卒業する前に体が弱って死んでしまったのである。そして今、力が強い相手による一方的な暴力が前世での出来事を思い出させさらにカムイの心を絶望に染め上げていく。

 

(俺……ここで、死ぬのか…………)

 

 死ぬ――その言葉以外に自分の未来が思い浮かばず、カムイはもはや抵抗することすらしなくなってきた。これから起こるであろう姉と妹の壮絶な未来を変えるため、力をつけようとしたのに結局自分はここで野垂れ死にすることに、カムイはただただ静かに受け入れるしかなかった。

 

(くだらねぇ……結局、俺の人生って……こんなにくだらないものだったんだ……)

 

 何も成し遂げられないまま前世と何ら変わらず死ぬ――カムイはその自分の運命に対してくだらないと断じ、このまま死ぬことを受け入れかけた、そんなときであった。

 

 

 

 

 

 

「貴様ら、そこで何をしている」

 

 女の声がその場に響いた。カムイを犯すことに夢中になっていたオーク達は突然の声に頭を上げて声の主を確認すると、途端にそれの正体に気づいたか怯えを見せ始めた。カムイもオークの怯えを感じ取ったのかノロノロと視線を向ける。

 

「オークか……よってたかってそんな幼子に己の欲望をぶつけるとは……下賤な畜生共め」

 

 そこにいたのは鮮紅のロングコートのような衣服に褐色の肌、金色の髪をツインテールに結い、紅く光る瞳を持つ女だった。見た目はふつうの女であるが、その纏う雰囲気はどこか禍々しく、畏怖すら感じるほど力強い。

 

 そしてカムイが視線を向けた瞬間に、それは起こった。目に見えないほどの鋭い何かが一閃――オークはただそれだけで動かなくなりやがてゴトリと音を立てて全てのオークの体が真っ二つに分かれて崩れ落ち、オーク達の白い体液と赤い体液が辺りにぶちまけられた。オーガを斃すほどの羅刹オーク数人が一瞬にして殺されたのである。そのことにカムイは驚くしかできなかった。

 

(あっ……)

 

 そしてオーク達を一瞬にして皆殺しにした女はカムイの元に跪く。そしてカムイはその女に見惚れていた。自分を助けた女――禍々しくもどこか神々しいそれにカムイは心を奪われた。まるでそれは紅い月のようであったとカムイは思ってしまった。

 

「大丈夫か……これは、なんてひどい」

 

 女はオークの体液で汚れてしまうことも厭わず、カムイを抱き寄せて顔に着いた汚れをぬぐう。カムイはすでに疲労困憊であったためか、声を出すこともできず意識を手放してしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ……?」

 

 ふと、カムイは目を覚ました。そこはオークによって凌辱を繰り広げられていた路地裏ではなく、どこか薄汚れてはいるが豪華な調度品が存在している一室であった。衣服は全てなく生まれた状態のままである。

 

「……装備も全部取り上げられたか」

 

 カムイは軋んだ体に鞭をうち身体を起こして現状の確認を行う。あれだけ激しい凌辱を行われ汚れがない部位を探す方が困難だった体は綺麗に洗浄されており、拘束されていないあたり敵に捕まったわけではないことを判断する。

 

 しかし対魔忍スーツや外套、顔を隠すための仮面も全て取り上げられたようである。カムイは途中で気を失ってしまうという己の失態に舌打ちすると辺りを物色し始めた。まずは情報収集……ここはどこなのか、また自分をここまで連れてきたのが誰なのかを探る必要があると判断したのである。

 

 カムイはしばらく埃がたまったタンスなどを探している内に埋もれていた資料をいくつか発見することができた。資料によると彼が今いる場所はグリードハウスと呼ばれていたヨミハラの歓楽施設の一つであり、今は亡き闇の商人である『天堂数馬』と呼ばれる男が有していたものであるらしい。しかしとある事情から天堂は殺害されて彼の組織は瓦解、今ここは誰も住んでいない無人の廃墟となっているのだ。

 

「こりゃまた随分と大物だったみたいだねぇこの天堂って男は……さて、他にめぼしいものはっと」

 

 カムイが資料を読み通すと、唐突に部屋のドアからノックの音が聞こえてきたためカムイは慌ててベッドの横に隠れて様子をうかがう。やがてドアが開き、部屋に入ってきたのはオークからカムイを助けたあの女性であった。

 

「あぁ、目が覚めたのか……大丈夫か、どこか痛むところはあるか?」

 

「……別に、まだ痛みはあるけど問題ない」

 

「そうか、それなら良かった」

 

 女性はカムイが目を覚ましたことを目にして安堵の表情を浮かべている。カムイはやや警戒気味な対応である。

 

「……あなた」

 

「んっ?」

 

「あなたは何者ですか」

 

 カムイは自分を助けてくれた恩人に対してやや失礼と思いつつも相手が何者なのかを探るために誰かと質問を投げかける。女性はカムイの態度に対して特に不快に感じた様子はなく、にっこりと笑いながら返答をする。

 

「あぁ、そういえば自己紹介がまだだったな……私の名は心願寺紅、わけあってここで暮らしているものだ」

 

「心願寺……ふうま一族の対魔忍ですか?」

 

「元だがな……そういう君も対魔忍なのか?」

 

「……はい、名前は明かせないけど……まだ見習いだが対魔忍です」

 

 心願寺紅と名乗った女性に対し、カムイは極力自分の身バレがないよう隠すべき情報をぼかしつつ情報を交換していく。紅の話によるとたまたまヨミハラを探索している際にオークに凌辱されているカムイを発見し、いてもたってもいられず助けたとのことである。そこかしこに犯罪が蔓延り、殺人が起きても無頓着な住人が大半のヨミハラにおいて紅に助けてもらったのは運がいいとしか言いようがない。

 

「……その……助けてくれてありがとうございます……」

 

「ふふっ、気にしないでくれ。だが君のような幼い子供が任務とはいえ一人で行動するなんて感心しないな」

 

「……それはうちの頭領に言ってください。それよりも世話になりました……もうこれ以上迷惑はかけられないから俺は行きます」

 

 カムイはすでに任務の失敗を確認し、早々に本部に戻るためその場から立ち去ろうとする。しかしそんな彼を紅はそっと遮る。

 

「待ってくれ、今まで治療していたから分かるんだが君はまだ傷が癒えてないんだ。せめて傷が治るまでここにいた方が良い」

 

「……問題ない、俺も忍です。この程度どうってことないです」

 

「いいや無理だ、そんな状態ではヨミハラを脱出するのは危険すぎる。それに君はまだ子供なんだから大人の忠告は素直に受け止めるべきだぞ」

 

「……確かに……なら、その……しばらく、お世話になります」」

 

「あぁ、これからしばらくよろしく」

 

 カムイはあくまで本部に戻ろうとするが、それを紅は危険と言って制する。このヨミハラは地下300mに存在する。ここに到達するには闇の住人でも特に財界や政界に君臨する者が使う個人エレベーターを使うか、とある鉱山跡を一日かけて通るしか方法がない。前半に関してはカムイが使用することはまずできない。後半に関しては野生化したオークやトロールなどが存在するため、深手を負っているカムイでは容易に捕まると紅は判断したのである。また、カムイもそのことを承知している様子でありしぶしぶながら紅に世話になることをお願いしたのであった。

 

「よし、それならお腹も空いていると思うし食事にしようか。ちょうど私の部下が夕飯を作っているんだ」

 

「すいません、何から何まで」

 

「気にしないでくれと言っただろう。君は子供の割に随分とかしこまっているな」

 

「性分なもんで」

 

 紅はカムイに衣服を渡し、そのまま二人で部屋を移動する。厨房らしき場所に移動するとそこにいたのはウェーブがかかった黒の長髪を結い、エプロンをつけて何かを作っている長身の女性がそこにいた。女性は紅の姿を見ると笑みを浮かべて早足で近づく。

 

「あっ、紅様!今ちょうど出来上がりましたよ!」

 

「ありがとうあやめ、いつもすまないな」

 

「いえいえ、これくらいなんともないですよ。って、その子は……」

 

 あやめと呼ばれた女性はカムイの存在に気付いたのか怪訝そうに視線を向ける。カムイはすぐに頭を下げる。

 

「初めまして、この度は危ない所を助けていただきありがとうございます」

 

「あぁ、この子は確か紅様が助けたっていう……」

 

「紹介しよう、私の部下のあやめだ」

 

「よろしくです」

 

「えぇ、よろしく」

 

「それでは立ち話も何だし食事にしながら話をしよう」

 

 軽い自己紹介を済ませると三人は卓を囲み、それぞれ箸を取る。テーブルには綺麗に形作られたハンバーグや彩の野菜が盛られた皿が置かれている。

 

「あぁ、今日はハンバーグなのか」

 

「いつもお店だと気が引けますからね。たまにはこうして自分で作るのも良いかと思いまして」

 

「凄いな……うん、味付けも良い。これはお店でも出せるぐらいだ。本当にあやめはなんでもできるんだな」

 

「ふふっ、ありがとうございます。紅様にそう言っていただけるなら身に余る光栄です♪」

 

「……」

 

 食事の時、二人は主従の関係と言っているがどちらかというと長年連れ添ったような間柄に見えるほどで、笑みを浮かべながらあやめが作ったハンバーグに舌鼓をしつつそれを紅が褒め、その言葉にあやめは照れながらも胸を張る。そんな二人が談笑する姿を見ていたカムイは唐突に口を開く。

 

「お二人って、もしかして恋人同士かなにかですか?」

 

「ぶっ!!?」

 

「はいっ!?」

 

「なっ、なにを突然言い出すんだ君は……わ、私とあやめはそんな関係ではない、いやそもそも女同士なんだぞ!!?」

 

「いえ、別に俺はそういう風なのに理解があるから別に隠さなくたっていいですよ」

 

「だから違うと言っているだろっ!!」

 

「そ、そうですよ!私は紅様の下僕なだけで……た、ただ紅様が望むなら私はいつだって……朝のお世話からベッドでのお世話だってなんだってしてみせます!!」

 

「あやめも何を言っているんだ!大体子供の前でそんな話をするんじゃない!!」

 

「こんな職業をやってるから子どももくそもないと思いますけど……ちなみに夜のお世話もしてもらってるんですか?」

 

「するわけがないだろっ!?」

 

 そんな軽口を叩きつつ、傷がいえるまでの一週間の間、カムイと紅の交流が始まった。怪我を癒しつつカムイは紅に対魔忍としての訓練を付けてもらうことにした。紅の部下である槇島あやめという女性も途中から加わり、時には談笑しながら食卓を囲み、時には彼らに襲い掛かる無法者を退けたりと様々なことがイベントのように起こっていた。

 

 また、カムイと紅は歳の差はありながらもお互いにどこか通ずるものがあったのか自然とお互いのことを話すようになった。方や出生のことや自分の立場、自分がどんな存在なのかも。特に紅はその出生から周りから奇異の視線で見られたりすることがあったため、自分のことを話すには少し抵抗があった様子であったが、カムイにとってはそれは些細な事であり態度を変えるようなことはしなかった。それが紅にとってどこか心が軽くなったように感じたのであった。そしてあっという間に一週間が過ぎた。

 

「それじゃあ、俺もう行きます」

 

「あぁ、気を付けていくんだぞ」

 

「……助けてくれたこと、本当に感謝しています紅さん」

 

「だから、あまり気にしないでくれ。あれは私が好きでやったことなんだから」

 

「それでも俺は命を助けてもらいました。だから、何かあった時は俺も力になりますから。例え紅さんが人間じゃなくたって、俺は紅さんに味方しますから」

 

「……ありがとう、カムイ」

 

「……短い間ですが、本当にありがとうございました」

 

傷がある程度癒えたカムイは紅に見送られてヨミハラを脱出したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「懐かしい夢だったな……」

 

 カムイは自分の部屋で朝の光を受けて眼を覚ました。あの日、ヨミハラの一件から数年が経った。カムイは無事にヨミハラを脱出することができた。あの任務は結局失敗に終わったが、それでも無事に帰ってきたことを同僚たちに賞賛された。祖父は何も言わなかったため、誰のせいでこんなことになったとますます確執を産むことになったのは余談である。

 

カムイは先ほどまで自分が見ていた夢について思いをはせる。内容は紅たちとヨミハラに隠れていたころのものである。あれ以来ヨミハラで紅たちと会うことはない。しかし彼女たちのことだ、今日もどこかでその力を振るい続けているだろう。

 

「今頃何してるんだろうなあの人たちは」

 

 カムイはそう言ってどこかにいるであろう紅に思いをはせる。すると、ベッドからにゅっと腕が生え、物思いに耽る彼の頬を抓る。

 

「いでででっ、ちょっ、なにするんすか不知火さん!」

 

「あらっ、だってカムイ君ったら横に私がいるのに別の女のことを考えているんだもの。いくら私がおばさんでも嫉妬ぐらいするわよ」

 

「……なんで俺が他の女の人を考えていたって思うんすか」

 

「ふふっ、女の勘ってものよ」

 

 カムイの頬を抓っていたのは水城不知火であった。彼女はたまの休みを利用して自分の愛人であるカムイに会い、互いの愛を確かめ合うように情事に浸っていたのだ。しかしそれが終わって次の朝には相手が別の女のことを思い浮かべていたのを感じたのだ。それは不知火にとってどこか面白くなく感じてしまったのである。

 

「ひどいわっ、私とは所詮性欲を満たせればいいだけの関係だったのね……確かにもう私は子供もいるしおばさんって年齢だけれど、あんまりだわ」

 

「い、いや別にそういうわけじゃないっすよ……ただちょっと夢で昔の恩人が出てきたんで思い出してただけですよ」

 

「……」

 

「そ、それに俺は軽い気持ちで不知火さんとこういう関係になったわけじゃないっすから」

 

「なら……この後もちゃんと愛してくれるかしら」

 

「……もう朝なんですけど……あぁもう分かりました分かりましただからそんな目で見ないでくださいよ」

 

「んっ……中々会えないんだから、今は私だけを見てほしいのよ」

 

 不知火の責められるような発言と視線にカムイは申し訳なく思いつつ、首に腕を絡めてくる不知火に口づけをしてベッドに倒れ込んだ。彼の頭からすでに紅たちのことは消えている。

 

 

 

 

 

 

 あれ以来、カムイは紅とは会っていないがそれでもどこかで元気でやっている、そしてまたいつか会えるだろうと信じていた。彼らが再び再会するのはまだもう少し先の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





前回のガチャイベント

おっ、復刻って麗華じゃないか……チケット八枚にHR以上が三枚……それでも私は出てきてくれると信じている!!
↓↓↓↓
・LR朧
・UR井河さくら

ちがうって言ってんだよぉぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!!いや、強いし欲しかったけど違うんだよぉぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!



相も変わらず物欲センサーがななめ上に行っているニゴリエースです。この間なんか限定狙って『ニゴリエースハオレノモノダァ!!』って勢いで課金もしてまわしたのにLRアサギが出てきました……なんなのこれ……。

今回のお話は主人公であるカムイがなぜ右目に怪我をしたのかなどを含めた過去編の話です。本編待っていた人は本当に申し訳ないです。最近になって『対魔忍紅』をクリアしたのでつい出したくなった衝動を抑えきれなかったんですはいすいません。紅たちはまだ本編に出す予定はないですね、せめて決戦アリーナぐらいまで進めばまだ望みはあるかと……ちなみに幕間での転生者達もこんな感じで一話限りの外伝主人公にしていく予定ですのでご了承ください。

では次回も暇があれば読んでください。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。