女神「突然ですが、貴方たちには対魔忍になってもらいます!!」「「「「「えっ!?」」」」」 作:ニゴリエース
ジジイを抹殺し、姉さんが伊賀の頭領に着任してから数か月が経過した。姉さんとさくらは対魔忍になるとほぼ同時に五車の里へと移り住むことになった。カオス・アリーナの一件からすでに最強の対魔忍としての姉さんの復帰が巷に広がっているため、あの場所に住み続けるのは非常に危険であるという考えがあったからである。隠れ里である五車の里ならば襲撃の心配も低く、安心して英気を養うことができる。また姉さんは対魔忍の復帰を機に五車学園に教員として後進の育成を、さくらはいくら才能があろうとも独学ではどうしても対魔忍として技術を磨くにはどうしても心許ないため生徒として本格的な訓練を受けることになった。
姉さんの対魔忍復帰の報せは里にも届いており、八津紫を中心とした若い対魔忍達は手を叩いて喜んでいた。老害共はあまりいい顔をしてはいなかったが、それでも裏切りの対魔忍である朧の抹殺と情報を売っていた長老の不正を暴き、部下である俺が粛清したこともあったため大きな声で彼女の復帰に対し反対することはなかった。
姉さんと俺はさくらが一般の学校から五車学園へ編入することになったため周りの環境が変わってしまうことに戸惑ってしまうのではと心配していたが、持ち前のフレンドリーな態度と明るい性格が相まってすぐに周囲に溶け込むことができていた。特に古くから付き合いがある紫とよく一緒にいる姿が見られるため、虐めとかの心配はなさそうだろう。まぁ紫自体はさくらのことを邪険に扱っているけど…。
俺達霧の部隊は長老が死んだことによって正式的に姉さん直轄の部隊につくことになった。もともと秘密裏に編成された長老の私兵のようなものだったためこちらを良く思っておらず、他の家の御隠居は戦力の集中だの引き抜きだのなんだの難癖つけて解散を命じていたがそこは姉さんの一声ですぐに黙らせられた、ざまぁwww。
姉さんは正式な部隊として俺達を姉さんの直轄に任命しようとしていたらしいが、極秘部隊である俺達の情報が広まるといけないと言っておいたため俺達の存在は未だに秘匿扱いになっている。政府の連中や老害共の方は姉さんの一件もあるし、こちらには散々汚れ仕事をさせてもらった分の脅迫材料がたんまりとあるため手出しはできないだろう。まぁこちらの揚げ足を取ってあわよくば対魔忍の長の座を狙おうとする連中だから、その内連中も始末しておけば良いんじゃないかと思ってる。まぁ姉さんが止めたので今はしないけどねぇ~…。
特に問題なく事が進んだように俺は思っていたが、それは改めて姉さんの部下として任務につく前までの話である。姉さんはこと戦闘において右に出るものはおらず、彼女の実力は長年サポートしてきた不知火さんや九郎さんが太鼓判を押すほどである。実際にその実力を俺自身も何度も見てきたため、何人かかってこようが彼女を打倒せる者はそうはいないだろう。
問題は組織の長としての仕事である。姉さんは戦闘に関しては強いのに人員配置や編成、――長としての仕事っぷりや在り方などが原作通りポンコツなのだ。主にその者の実績、または感情論で任務につく対魔忍達を決めており、馬の合わない者同士が現場で衝突してしまうことが何度か発生している。しかも下手に実力がある分に姉さんの制御もきかないことがあるため、作戦を全無視して突っ込むなど血の気が多い猪武者共が足を引っ張ってくるのだ。さらに個々の能力や忍法が任務内容で非常に相性が悪かったり専門外であったりするため自然とこちらがフォローに回らなければならず、負担が倍増しになってくる。おまけに姉さんも強くものを言えないため始末が悪い。
例を挙げるとしたら顕著に表れるのは神村舞華、上原燐、八津紫と九郎さんの弟だ。あのバカどもはまず話を聞かない、勝手に突っ込む、隠密など糞くらえの三拍子がそろっている。おかげでこちらの心労が半端ない。姉さんの命令で何度か組んだけどかなりひどい。
神村舞華…対魔忍というよりは古くから魔を滅するエクソシストのような家系であり、長年にわたって対魔忍や吸血鬼ハンターなどを輩出してきた家の生まれである。彼女の姉――『神村東』も凄腕の吸血鬼ハンターであり、吸血鬼ハンターを育てる学校の教師をしている。俺も吸血鬼の女王であるカーラを通じて何度か面識があり、妹の神村舞華のことも東を通じて何度か聞いている為それなりに頼りになるかと思っていたが――――
『よし、今日はとある下部組織の拠点への強襲作戦だ。今回は俺達と火遁衆の二班で行う。火遁衆は派手に動いて陽動、俺達は静かに動いて内部へ侵入し情報を収集するシンプルな作戦だ。異論はないか?』
『『『『問題ありません、隊長』』』』
『では早速開始する。神村舞華、陽動はできるだけ派手に頼むぞ』
『へっ、言われなくてもやってやるぜ!!燃え尽きろ―――爆炎、冥土バズーカ!!』
ドゴォォオオオオオオオオオオオンッ!!
『……おいぃぃいいいいいいいっ、なにやってんのお前ぇぇえええええっ!?誰が拠点ごと爆破しろって言ったぁぁぁああっ!!』
『あぁっ!?てめぇが派手にやれって言ったんだろがっ、文句言われる筋合いはねぇぞっ!!』
『派手の意味が違えんだよボケっ、作戦始まってまだ一分も経ってないのに現場が阿鼻叫喚になってんじゃねぇかぁっ!!』
『しっかり敵をぶっ潰せてるんだから問題ねぇだろがっ!!』
『作戦は陽動と隠密って言っただろがっ、お前らが大きく動いて敵を引き付けて俺らの注意をそらすって作戦なんだよ!!』
『だったらそういう風に俺らに分かりやすく伝えろやこの陰険野郎がっ!!』
『誰が陰険だこのヤンキーがっ、こっちの作戦を台無しにしやがって…頭パープリンなんじゃねぇのか?!』
『んだとゴラァッ!!』
『たたたた隊長っ、こっちにまで火の手が回ってきましたぁっ!!!』
『爆発が酷くてとても拠点に近づけません!!』
『というかさっきから爆発がこっちすれすれで火傷しそうです!!』
『おまけに俺達が準備していた後方支援のトレーラーも爆発に巻き込まれましたぁっ!!』
『ちょっ、おいやめろ神村、こっちも巻き込んでんじゃねぇ、もっと火力制限しろっ、味方に甚大な被害が出てるぞ!!』
『知るかっ!こっちは俺らの好きにやらせてもらうからなっ!!』
『おい神村、神村、神村ちゃぁぁあんっ!!…………全員退避ぃぃぃぃいいいいいいっ、全力でこの場から離れろぉぉおおおおおっ!!!』
ヤンキー気質は姉譲りのようであった。姉の東は【鬼切】と呼ばれ千の吸血鬼の血を啜ったと言われる金属バットを振り回し、敵の群れに単騎でツッコむため、あれはあれでフォローが大変だけど百歩譲って陽動の役割は熟せる。しかし舞華は忍法の中で攻撃力が高い火遁――それも自身の火力を制御できないほどの火力であるためわざわざ専用の装備である【冥土バズーカ】(ネーミングセンスを疑う)を製作してもらい、コントロールはいくらかましになったが戦い方があれなためこっちへの被害が半端なかった。結果的に組織は壊滅させたが情報が取れなかったため責任が全部こっちに押し付けられた。まじでふざけんなあのヤンキー女……いつか身の毛もよだつような格好をさせてブチ犯す。
次に上原燐…電輝の対魔忍と二つ名を持つ雷遁の使い手で、五車学園で臨時講師をしており、任務のない時は学園で野外戦専門の授業を受け持っている。生徒たちに一切甘えを許さず鍛え上げ、一人前の対魔忍に育てようとしているスパルタ女だ。姉さんもその実力に一目置いているらしく、絶大な信頼を得ているようだけど――――
『隊長、スナイパーの配置完了しました』
『了解、今回の任務は敵施設の制圧だ。敵は異常を察知すればすぐに増援を呼んでくる。サスケが施設をハッキングし終わるまで待機し、素早く制圧しろ』
『『了解です』』
『隊長、アサギ様からの通信でもうすぐ援護の人が来るらしいっすよ』
『そうか。ちなみに誰なのか言っていたか?』
『えぇ~っと確か…電輝の―――』
ピカッ――……ドガシャァァァアアアアアアン!!
『……ねぇ、皆…なんか施設の方向から凄い雷が見えたんだけどあれ落雷だよね…ただの自然発生してたまたま落ちてきた落雷だよね(汗』
『……』
『……』
『全員目をそらさないでぇぇぇえええええっ!!俺だって分かりきってんだからぁぁぁああっ!!』
『隊長っ!!電輝の対魔忍さんが特攻したおかげで警備システムが作動しやがりました!!?』
『やっぱりぃぃいいいっ!?やっぱり上原ですかぁぁああっ!!?』
『おまけにあの人の電撃の影響でこっちのモニターもパソコンもショートして全部おしゃかになりましたぁっ!!?』
『隊長っ!警報を聞きつけて周囲の人員が次々と集結していますっ!!』
『うわぁぁぁああああああ聞きたくないぃぃぃぃいいいいっ!!?』
『おいウツロ、なにを叫んでいる。遊んでないでお前も降りてさっさと戦え!』
『上原ぁぁぁあああっ!!お前さぁ、何度も言うけど作戦を聞いてから戦闘しろって言ったよねぇええええっ!?』
『現場指揮というものがある、お前のやり方ではいつ終わるかもわからん』
『無駄を排除してるだけだっつうのっ!!無駄な労力を使うのは嫌なの俺はぁっ!!』
『隊長、敵がこっちにもやってきましたっ!!』
『戦闘の指示をお願いします!!』
『えぇぇえいもうどうにでもなりやがれぇっ!全員戦闘配備!!敵を一人も逃がすな!!』
『さっさと準備しろ……お前の腕は頼りにしている』
『なら話を聞けぇぇぇええええええええええっ!!』
殲滅や襲撃任務が主なため上原はこっちの作戦を聞きもせずに特攻する。そして結果的にこっちも真正面から敵と戦わざるを得ない状況になり、被害が半端ない。おまけに損害もやばい……上原いつか泣くまでブチ犯す。
八津紫とその兄貴についてはもう知ってのとおりですハイ。九郎さんというストッパーがいなければ好き勝手に暴れ、生け捕りという任務も彼女らが現れれば殲滅任務に早変わり。おまけに紫の態度は最悪の一言につきる…おかげで始末書が書いても書いても終わらない。あいつらいつか死ぬまでぶち殺す。紫はおまけして桐生佐馬斗が対魔忍に属してきた瞬間に媚薬でもなんでも使ってドロドロにして触手おばけに差し出してやる。
考えてみれば、頭領が姉さんに変わってから俺の心労が倍近く増えてる。ジジイの方がまだ単独で動かしていたため被害はあまりなかったけど姉さんの采配がポンコツ過ぎてもうストレスが半端ない…。ごめぇぇぇええええんジジイぃぃぃぃいいいいいっ!もう殺すとか言わないから蘇ってきてぇぇぇええええっ!!
「つ、疲れた……もう動けねぇ…」
今日も任務を終えた後の始末書の山を片付けた俺は自室に向かって歩を進める。姉さんが頭領になってからというもの、俺の心労が増加傾向にある。接してくる態度とかは改善されたけど任される任務の割合と味方のフォローが半端ない。いくらお使い潰し下さいって格好つけて言ったけどこれじゃあ本当にストレスですりつぶされる。
俺は余程疲れていたのか気づかぬ内に自室の前にたどり着いていた。俺はようやく休めることにため息を吐きつつ自宅のカギを取り出して開場し、部屋に入った―――。
「あっ、おっかえり~うっ君!ごはんにする?お風呂にする?それとも、わ・た・し?な、なんちゃって~」
「……またやってるんすかさくら様」
ドアを開けて部屋の奥から出てきたのは俺がよく知る人物―――俺の妹である井河さくらであった。妹と言っても本人はまったく知らないけどねぇ~…。俺達霧の部隊はそれぞれ身分を隠して生活している為、住居などの情報も秘匿扱いになっている。そのため俺の部屋を訪ねてくる人なんていないのだが、唐突にさくらが俺の部屋を訪ねてきたのである。
なんでも任務の帰りの際に影遁の術を使って俺の影の中に忍び、住居を特定したとのことである。いくら影の中に入りこめるという異能系忍法だろうとまだまだ未熟なさくらの気配ならすぐに察知できるのだが、どうやら最近の激務のせいで注意力散漫になり追跡を許してしまったみたいだ。俺もまだまだ未熟だね~…。
そして俺の部屋を特定してからというもの、さくらは週に3~4回はここに訪れるようになっている。時には遊びに、時にはご飯を作りにきたりと……俺が自宅で休む暇がねぇっ!!?
しかもどういうわけか俺の部屋に来るたびに過激な恰好を用意しているのであるこの妹は……ある時は大事なところがはみ出るのではないかと思うくらい際どいミニスカートとTシャツ一枚、ある時は勝手にシャワーを借りてバスタオル一枚で俺の前に現れる、ある時はベビードールで部屋にいたりと……お前俺のこと誘ってるのと何度も思った。まぁ妹の体じゃ経験豊富な俺の息子は反応しませんけどね!!(必死
しかも今回はおたまを片手にハート型のエプロン、しかもそれ以外は何も着ていないと来た。よくある新婚夫婦の帰宅シーンかよ……。
「むぅ~、こんな恰好でお迎えしてるのになんでそんな反応なのさうっ君」
「反応もできないくらい疲れてるんすよ俺は…ってか、なんすかその恰好」
「えっへへ~、この間読んだ雑誌で男の人は裸じゃなくてこういう見えそうで見えない格好に興奮するんだって書いてあったから実践してみることにしたんだ~。どうかなうっ君、興奮しちゃったかなぁ~?」
「ふっ…www」
「鼻で笑われた!?」
「小娘の体に興奮するほど俺はガキじゃないですよ」
「むぅ~~、なにさぁ小娘って!!」
「とにかく疲れてるんだから中に入れてくださいよ」
俺に無下に扱われたせいか若干不機嫌そうに頬を膨らませるさくらを押しのけ、俺は部屋の中に入る。外套はその場に脱ぎ捨てるが素顔は見られるといけないため仮面はつけたままにしてある。さくらが来てからというものおちおち自宅でも仮面を外せやしない。
「今日もお疲れうっ君…それでさっきのことなんだけど―――」
「風呂…それから飯…さくら様は飯が終わったら早々にご帰宅ください」
「想像以上にドライな反応!?」
「手を出すと思ってるんすか?アサギ様にバレた瞬間ぶち殺されますよ」
いくら態度が緩和してきたと言っても、大事な妹に手を出したと姉さんに知られれば憤怒の表情で殺人華を使われ朧のようにぶつ切りにされてしまう。それ以前に実の妹に手を出すとか鬼畜外道なことはしません。NOシスター!NOタッチ!!
「とにかく俺は風呂に入りますから、絶対に入ってきちゃいけませんからね」
「えぇ~いいじゃん別にぃ!疲れてるうっ君の背中を流してあげたいなぁ私」
「入ってきた瞬間に大声出しますからね」
「いやうっ君それ普通は女の子がする反応だよ」
「じゃあ容赦なく目を抉りますから」
「急に過激になったぁ!?」
俺はそう言って風呂場に入ってこないように念を押す。風呂場で素顔を見られて正体を見られるなんてことになったらシャレにならない。それに風呂くらいゆっくり入らせてほしいのだ。
「もう~、なにさうっ君ったら!いっつも素っ気ない反応しちゃってさ」
カムイが風呂場に入っていった後、さくらは不機嫌な様子で台所に戻り料理を再開する。機嫌を悪くしているためか鍋をかき混ぜるスピードが若干早い。
さくらがウツロの家に来たのはカオス・アリーナの一件でのお礼を兼ねての親睦を深めるためであった。脱出できたのは姉であるアサギの力が大きいが、彼女の脱出のために惜しみなく力を貸してくれたウツロには返しても返しきれない恩がある。脱出後は色々と忙しくなっており、疲れた様子のウツロを何度も目撃しているためさくらは日常面で恩を返せればと思っていた。彼の家を付けたのもそんなさくらの善意からの行動であった。
いや、実際は恩返しのためだけではなかった。カオス・アリーナの一件以来、さくらの中でウツロの存在は姉と同じくらい大きくなっていた。対魔忍にもなっていない未熟な自分に対し、姉を助けるために力になると約束してくれた。そして姉の宿敵である朧に捕まった自分を助けにきてくれた。そして肉体を醜悪なまで淫乱に改造されてしまった自分のことを知ってもなお普通に接してくれる。今まで日常の合間で対魔忍になるための修行に没頭しており男性経験がまったくないさくらが、まるでヒーローのような登場をして、どこか自分をおちょくりながらも優しくしてくれる顔も知らない男に、いつの間にか夢中になっていたのである。だからこそ内心恥ずかしいながらも過激な恰好をしたり、遊んでいる間に思い切って体をくっつけたりとしているのだが、ウツロはまるで無反応であった。
「…やっぱり、お姉ちゃんみたいな人じゃないと興味ないのかな」
さくらは今までのウツロの態度を思い出し、目じりを下げ泣きそうな表情になる。自分は姉のような魅力はなく、ウツロは井河家に仕えると言ってもアサギの部下なのだ。彼にとってさくらはまるで眼中にない――どこか心の中でそう思ってしまう。
「はぁ……って、いっけない!調味料いれるの忘れてたぁ!!」
さくらは陰鬱な気持ちで思わずため息をついてしまうが、それを追い出すかのように料理に集中し始める。しかし途中で調味料をいれるのを忘れてしまいさくらは慌てて棚に置いてある調味料らしきものを漁り始める。
「え~っと、どこに置いてあるのかなぁ~…うっ君の家って物が多いからごちゃごちゃして全然見つからないよぉ……あれっ?」
ゴソゴソと棚から物を出しては確認し、それが目当てのものじゃないとそれを戻して改めて探し始める。それを何回か繰り返している内に、さくらはある物を発見した。
「なんだろこれ?なんか変な色してるなぁ~」
それは小さな小瓶に入った痰赤色の液体であった。どこにもラベルらしきものは見当たらず、見たこともない色をした調味料なのでさくらは珍しがりそれをじっくりと観察し、やがて瓶の蓋を開けて匂いを嗅ぎ始める。
「うぅ~ん、唐辛子でもないなぁ……ペロっ…あっ、甘い」
匂いはどこか甘ったるく、ペロリと舐めてみると癖がない甘さであった。こんな調味料は料理の知識が浅いさくらではどんなものなのかも判断できなかった。
「やっぱり調味料なのかな…もしかして限定品なのかも…そうだ、これを代わりに入れちゃおっ!隠し味隠し味~っと」
さくらはそれがウツロが買った特注の調味料だろうと結論付け、アレンジとしてこれを入れることにし、沸騰している鍋に瓶を傾け中身を半分ほど入れていく。しかしこれは調味料ではなくウツロが武器に塗布するなどで用いる、とある薬品であることをさくらは知らなかった。
「はぁ…さっぱりしたぁ~……」
「あっ、上がったんだうっ君。ちょうどご飯できたよ~」
俺が風呂から上がると同時に、さくらは大きめの皿を二つテーブルに置き夕食ができたことを知らせる。ちなみにちゃんと素顔が見られないよう髪をバスタオルでまとめ、サングラスをかけて目元を隠してある。俺がテーブルに座ると、さくらもまた裸エプロンのまま席に着く。
「おっ、今日はクリームシチューですか。中々見栄えはいいですね」
「えへへ~っ、お姉ちゃんに比べて対魔忍の腕も料理もまだまだだけど、私だって頑張ってるからねぇ~」
「最初の焦げた卵焼きを見た時は頭が痛くなりましたけど、まあよくここまでできるようになりましたねぇ~」
「もう、またそうやって話を蒸し返す…しょうがないじゃん、あの時は初めての料理だったんだし」
「私はその初めてで失敗した料理を出したさくら様の神経を疑いましたけどね」
「むぅ、またそうやって意地悪言う…」
「冗談です。それじゃあ早速いただきましょう」
軽い言葉の掛け合いをしながら俺とさくらはスプーンを取りシチューを食べ始める。ふむっ、なんか少し甘ったるい感じがするがそれでも味はいけるな。
「味も中々ですね」
「そう?良かったぁ~、隠し味がきいてるのかもね」
「……妙な物は入れてないですよね?」
「妙な物って…そんなの入れてないよっ!もう、そんな意地悪言うんだったら食べなくても良いよ!!」
「だから冗談ですって…おいしいですよさくら様」
「……ふんっ」
手料理を食べながら俺の言葉一つでコロコロと表情を変えるさくら。見ていて飽きないな…。もしジジイに引き離されていなかったら、こんな風に顔を隠すこともなく姉さんも一緒になって食卓を囲むこともあっただろう。今となっては不可能な未来だと思うけど……。
妹の手料理を食べつつ、俺はあることを思案する。それはさくらとの関係だ。もし自意識過剰でなければ、さくらは恐らく俺に惚れている。あんな風な恰好したり体を擦りつけたりするんだからラノベの主人公でない限りだれだって気づくだろう。だが俺には彼女の気持ちに応えることはできない。あくまで俺とさくらは主従関係であり、なにより実の兄妹でもあるのだ。常識的にも妹と恋仲になるのは絶対無理だ…。
それに素顔を見たことのない相手に惚れるとか我が妹ながら危なっかしいんだけど…。将来悪い男に引っかからないか心配なんだよなぁ~……。まあそれはまだ先で良いだろう。今の状況を俺自身も楽しんでいるのは事実なのだから……。それにしてもこのクリームシチュー本当に甘いな…何を入れたらこんな味になるんだ……。
二人が料理を食べ始めてから幾分か時間が経過した頃、そこには先ほどまで卓を囲み料理を味わい談笑していたとは思えないほど静かであった。テーブルに置いてあるシチューは半分ほど食べかけで残っておりスプーンは乱雑に放置されていた。そして話し声の代わりに、荒い息遣いが二人分ほど聞こえていた。
そこにいたのは、異常なほど頬を赤らめ肩で息をしているカムイとさくらであった。食事の最中、二人は段々と身体が火照っていくのを感じカムイはまだ入浴の熱が抜けていないのかと考えていた。さくらは感度を改造され、異常なまでに性欲が湧き上がるようにされた身体を抑えるために服用していた薬の効果が切れたのかと心配していた。
だが二人の思考はすぐに中断せざるを得なかった。二人は身体の内から急激に情欲が沸き起こり始めたのを感じた。特にカムイの方は症状がひどく、心臓が早鐘を打ち体中の血液が沸騰しているのではないかと思うほど熱を帯びた。特に下半身にある一物に集中し、ズボンを押し上げて苦しさすら感じている。
「はぁっ……はぁっ……!(考えが…まとまらない……なにが、起こって…)」
カムイはぼーっとし始める頭を揺り動かそうとするが、ほとんど意味はなくその場に倒れてしまう。体は気怠く、とてもじゃないが動けずにいる。一方さくらはカムイより症状が軽いためか彼が倒れたのを見て彼の傍に駆け寄る。
「うっ、うっ君…!大丈夫――っ!?」
倒れた彼の傍によるさくらであったが、はっと息を呑んだようになりその場で止まりある一点を見つめる。そこは今にもズボンを破りそうなほど膨らんでいるカムイの一物であった。さくらはそれを食い入るように見つめ、なにを思ったのか彼のベルトに手をかける。
「はぁっ……はぁっ……!!」
「さ、さくら、様…なにを……」
さくらの行動にカムイは困惑し、制止しようするが口が上手く回らず体に力が入らなかった。やがてベルトをはずし、さくらはカムイのベルトをずり下げると大きく猛っている剛直が勢いよく彼女の眼前に飛び出した。
「あっ……!」
「うっ……」
冷たい外気に触れ、カムイは思わず呻いてしまう。さくらは露わになったカムイの一物を目にし、固まってしまう。それはカオス・アリーナでも散々見てきたものだった。嫌がっても構わずにこちらを蹂躙し、無理やり自分の処女を奪い取った醜悪な男の分身。欲望のまま自分の体に種をまき散らし、人間としての尊厳や女の心を踏みにじったそれはさくらにとって嫌悪すべきものだった。
しかしそれがウツロのものであるとさくらが考えると、今まで抱えてきた男の象徴に対する嫌悪感が湧かず、逆にドキドキと動悸が収まらずつい見入ってしまう。さくらは無意識に喉を鳴らすと、一物の先に口づけをした。
「んっ……チュッ……ちゅるっ……」
「がっ……!」
ただ唇を触れさせただけ――それだけなのに強烈な快感を感じカムイは呻いてしまい、一剛直がピクピクと震える。一方さくらは最初こそ恐る恐るであったが何度も一物にキスをし、次第に我慢ができなくなったのか大きく口を開けてそれを飲み込んだ。
「じゅっ……れろっ……ちゅっ、じゅる……じゅるるるっ!!」
「ひっ…がぁっ!!」
アリーナで散々犯されてしまった影響か、さくらは一物を一気に喉奥まで飲み込んでいく。そして舌で刺激しつつ、口を動かして何度も出したり入れたりする。カムイはそれなりに女性経験があるが、なぜか今は異常なまでに感度が上がり刺激を受ける度に目の前がチカチカと点滅した。
「んっ……ちゅむっ……うっくん、かんじれる?」
「まっ、さくらさっ……ぎぃっ!」
「かんじれるんら……んふふふっ、うれひぃ……もっとさくらのくちで、かんじれ……んっ、れろ……ちゅっ、れろっ……ちゅうぅぅううううっ!」
さくらの行動をカムイは止めようとするが力が入らず、逆にさくらはウツロが自分の口で感じていることを知って得意げに笑い蕩けた瞳で彼を見つめながらますます口の動きを早くする。そしてあっという間に耐えきれなくなり、彼は剛直を震わせた。
「あっ……がぁっ……出るっ!!」
「んんっ、んんぅぶぅぅぅううううっ!!?」
一物が脈動し、さくらの口に盛大に精液がぶちまけられた。精液はどろどろしてマグマのように熱く、彼女の口から溢れんばかりに放出される。さくらはそれを喉奥で受け止めたためびくっと身体を震わせるが、決して剛直を離すまいと思いこびりつく精液を飲み下していく。
「ごくっ、ごくっ……んっ、ちゅうぅぅううっ……!」
「づっ……ひっ……かっ……!!」
口の中にあふれる精液を飲みほし、それでもなお足らないためかさくらは頬を窄め剛直を啜り尿道に残っている分も飲み込んでいく。やがて唇を離すと、さくらの口とカムイの一物は唾液と精液でてらてらと光っていた。カムイの一物はなおも熱く硬くなっているが、一度射精したためかカムイの思考は僅かに理性を取り戻していた。
「(っ!?……体が、少しだけど動く……一回出したからか……)」
「かはぁっ……はぁっ……はふぅっ……!」
「さくら様……大丈夫、ですか…?」
カムイは怠い体に鞭を打ち、さくらを心配して肩を揺らす。しかしさくらは精液を飲み込んでからますます頬を赤くしてぽーっとしており、ノロノロと動いてその場に寝転んでしまう。するとカムイに見せつけるように両手で自らの秘部を広げた。
「っ……さくら様、なにを……!」
「おねがい、うっ君……もう、我慢できないの……ここに、うっくんの……いれて」
さくらの行動にカムイは困惑するが、まだ完全に熱が抜けきっていないためかその視線は彼女の秘部に行ってしまう。くぱくぱと広がり、改造によって何度も使い込まれたとは思えないほど中はピンク色である。奥からは愛液がだらだらと零れおち、肉棒欲しさによだれを垂らしているかのようだった。
普段のカムイだったら鋼の精神でこれを抑えるであろう。そもそも妹の体には決して反応しまいと自ら抑え込んでいたのだ。しかし、今の彼は完全にストッパーが外れた状態であり、食い入るように見つめしまう。そして彼の剛直も早く中に挿入れたいと言わんばかりに震えていた。だが、ここで挿入してしまえばもう戻れなくなる――そんな考えがカムイの頭にあり、踏みとどまろうする。
「しかし、さくら様――……」
「おねがいうっくん……今は、さくらって……さくらってよんで」
「っ!!」
踏みとどまろうとするカムイに対し、さくらは甘えた声でカムイに自らを呼び捨てにするように促す。その声によってカムイは心臓が大きく跳ね上がったのを感じ、同時にさっきまで自らを訴えていた理性が再び掻き消えてしまう。
「さくらっ……」
「うっくん……きて」
「さくらっ……!」
カムイはさくらの名を呼び、自らの剛直を掴んで彼女の秘部に狙いを定める。さくらはカムイを見つめて彼を求める。そしてカムイは導かれるままさくらの膣奥へ剛直を押し込んだ。
「ひぁぁあ、はいっ、て、きたよ……うっくんのが、わたしのなかに、はいってきたぁぁあっ!!」
「さくらっ……さくらっ……!!」
「なにコレ、なにコぇぇええっ!!?」
怒張が押し込まれ、膣肉を擦るたびにさくらは絶頂に浸る。調教を受けた際は身体を改造されて感じやすくなり何度も犯され膣や尻穴に受け入れ絶頂したが、これはその比ではなかった。愛しい者が自らの名を呼び、愛しているという感覚がさくらの身体を駆け巡っているのである。
一方カムイも元々兄妹としての愛情も相まって、身体の異常からくる動悸や熱によってさくらに対する感情――愛情がどんどん膨れ上がり興奮を促していく。カムイは腰を動かし、剛直のエラでGスポットを何度も擦りながら子宮口を抉っていく。
さくらは快感のあまり喉を震わせ舌を突き出し絶頂を繰り返す。子宮口は広がり何度も突き込まれる怒張を銜え込む。あまりに強く連続する快感であるが、決していやではなく病みつきになってしまうほどだった。
「き、ひぃぃいいいいっ、うっくんのちんぽとわたしの子宮、なんどもキスしてるぅぅぅうううう、気持ちい゛いのとまらないのほぉぉおおおおおっ!!」
「さくらっ……気持ちいいか……」
「うん、うん、気持ちいいようっくん、気持ちよすぎて、こんなの知ったらうっ君のじゃないと、満足できなくなっちゃうよぉおおおおっ!!」
怒張で抉られ、興奮が最高潮になったさくらはカムイの身体を足と手で絡ませてより密着するようにする。激しく動いているためか、いつのまにかカムイの頭に巻いてあったバスタオルとサングラスは外れており、その素顔をさらしているがさくらの痴態に興奮しているカムイはそれに対しほとんど意識していなかった。
「(あっ、うっ君の顔……お姉ちゃんに、似てる?)」
「さくらっ……!」
「んんっ、ちゅっ、じゅる、んんんんーーーーっ!」
初めてカムイの素顔が晒され、その顔が右目に傷跡が大きく残っているがあまりにも姉であるアサギに似ていることにさくらは疑問に思うが、唐突にカムイがキスをしてきたためその思考を断念してしまう。
「んっ、ちゅっ……」
「えるっ、んんんんっ、ちゅうぅううっ……ぷふぅ!!」
「さくらっ……好きだ」
「っ!!?」
舌を絡ませ、何度も腰を振っている内に興奮が最高潮に達したのかカムイは思わず感情のまま言葉を出してしまう。好き――そう言われたさくらは少し動きを止めてしまうが、やがて感極まったかのように身体を震わせ、涙目になってますます強くカムイを抱きしめる。
「あぁぁぁあああああっ、好き、好きっ、私も好きだようっ君!!」
「さくらっ、愛してる!!」
「うひぃぃいいいい、きてっ、きてぇうっ君、私の中に全部出して……うっ君の精子で、わたしを妊娠させてぇぇえええええええっ!!」
さくらは足に力を込めて、より深く膣奥へカムイを迎い入れる。カムイもまた腰を突き出し、亀頭を広がっている子宮口へ押し付け震わせる。そして、二度目とは思えないほどの量と濃さを持った精液が勢いよく出された。
「おっ、おほ、ほぉぉおおおおおおおおおっ、イク、いく、いっくぅぅぅううううううううっ!!」
「ぎぃっ……!!」
「あぁぁぁぁあっ、すごい、すごいよぉっ……子宮が凄い感じてるよぉ……うっ君の精液子宮で飲んじゃってるよぉ!!」
さくらは子宮で直接精液を出され、熱い感覚に何度も絶頂する。カムイも歯を食いしばり、全て出し切るまで射精している剛直を押し付ける。やがてビュービューと精液を吐き出す勢いが弱まり、完全に止まる頃には子宮がタプタプになっているのをさくらは感じる。
「はぁっ……はぁっ……うっ君、好きぃ、好きだよぉ」
「さくら……俺も、好きだ」
「うっ君……んっ」
射精を終えて絶頂の余韻に浸った二人は、しばらく息を整え見つめ合い先ほどと比べ優しい触れる程度のキスをする。そして何度も愛を囁き合い、やがて興奮して再び性行を再開し始める。夜はまだまだ終わらない――――……。
「すぅ……すぅ……」
「……どうしてこうなった」
夜が明け、カーテンから漏れてくる光に目を覚ましたカムイは顔を押さえてそう呟いた。ベッドにはシーツに包まれて安らかに寝息を立てる素っ裸のさくらが隣に寝ている。そしてカムイの恰好もまた生まれた状態であり、下半身やベッドは白濁した液体で濡れていた。昨日の夜――さくらとの情事はカムイの脳裏に強烈に焼き付いていた。
絶対に素顔を晒すまいと決めていたのに、行為に夢中でいつの間にかタオルやサングラスが外れてしまい、それも気にせずに妹との情事に没頭していた。床でやった後、さくらをベッドに連れ込み夜が更けるまで何度も行為に及んだ。しかも全部膣内に出してしまったのだ。もしかしたらできてしまったかもしれない――そんな後悔の念がカムイを苛んでいた。
「ってか、そもそもなんであんな風になったんだ」
カムイはおかしいと思ったのが行為の前、食事をしている最中だ。別にさくらに対してそういった気持ちは抱いておらず、情欲だって対魔忍の修行をしているカムイからしてみれば抑えることは造作もない。しかしあの夜はまるで制御が効かず、感情が暴走してしまったかのようだった。
もしかしてと思いカムイはシーツを腰に巻き、さくらが料理をするために使用した台所へ向かう。昨日の晩にそのまま行為へ及んだため器具は当然そのまま出しっぱなしになっている。そして、カムイの目にある物体が映った。
「……まじかよっ、さくらの奴これを入れたな」
それはカムイがイングリッドとの戦闘でも用いた、アミダハラの魔術師ノイから買い取った媚薬の原液であった。本来は薄めて使うことで即効性を強めつつ効果を短くするのだが、原液で使ったのならその効果はより長く持続する。自宅で武器を整えた際に調味料に交じってしまったのか――そしてそれをさくらが調味料として疑わずに使ってしまった、という結論に至ったカムイはその場で頭を抱えてしまう。いくら常人より遥かに薬の耐性が強い対魔忍といえど、そこはアミダハラ随一の魔術師ノイ・イーズレーンが作った媚薬だ、効き目がバッチリである。そんなものを台所に放置していた自分の自業自得であることが余計にカムイの頭痛を酷くした。
「いくら媚薬のせいだからといって妹とあんな……しかも、好きって言っちまって……」
自らの痴態にカムイは完全に顔を真っ赤にしており、どんな顔をして妹に会えばと苦悩してしまう。しかし、そんな心配をよそに彼の傍にある人物が近づいていた。
「あっ……」
「っ!?」
「え、え~っと……お、おはよううっ君」
「……はぁ~」
そこにいたのはシーツに身体を包ませ、気まずそうに朝の挨拶をするさくらであった。彼女の姿を見たカムイは、大きなため息をついて頭を抱える。
「――――と、言うわけでだ……俺とさくらは実は兄妹だったということだ」
「……」
しばらくして、衣服に着替えたさくらとカムイはリビングのテーブルに向かい合うように座る。そしてすでに素顔がばれてしまい、なぜ姉と似た顔なのかと質問するさくらに対しカムイは観念したかのように今までの経緯を話始めたのであった。自分の偽装された死、今まで過ごしてきた日々、立場、女性関係からなにまで、そして昨日の出来事について―――。
「まぁ、そのな……というわけで、俺はもう何人も女の人と関係持ってるし、さくらとは俺は血が繋がってるから付き合えないんだ、分かるよな」
「……」
「昨日のことは俺も忘れる……さくらも昨日のことは間違いだと思って―――」
妹との関係を清算すべく、カムイは全てを話した。これで別にさくらに殴られても文句は言えない。むしろ殴ってくれればいい。今まで黙っていたし、こんな最低な兄なのだから殴られて当然だと彼は考えていた。そしてそのまま真っ当な恋を経験してくれれば――――そんなカムイの考えとは裏腹に、さくらは彼に近づいて行った。そして――。
「んっ!!」
「んんっ!?」
さくらはカムイの顔を掴むと強引にキスをした。何度も唇を押し付け、吸いつき、マーキングするように強くキスをする。やがて唇を離し、唖然とするカムイを他所にさくらは彼を見つめる。
「そんなの関係ないもん。うっ君が私のお兄ちゃんでも、私はうっ君のことが好きになっちゃったんだもん」
「……っ」
「それにねっ、決めたんだ私……もう我慢も遠慮もしないって」
「……はいっ?」
さくらの言葉が理解できず、ぽかんとするカムイであったがさくらは気にせずに笑いながらさらに言葉を続ける。
「うっ君が嫌だって言っても関係ないもん。あんなに気持ちよくさせられて好きって言われたらもう止まらなくなっちゃった」
「……」
「私だけ見てほしいっては言わないよ……ただ、そうさせちゃう位にうっ君を虜にしちゃうから、覚悟してよね?」
さくらは宣誓するようにそういうとちゅっと音を立ててカムイの頬に口づけすると、そのままいつもの明るい笑顔で玄関に向かっていく。
「あっ、お姉ちゃんには黙っておくから安心してね……それじゃあまた来るから、その時はまたいっぱいしようね、うっ君!」
さくらはそれだけ言うと手をひらひらさせて別れを告げ、部屋を出ていく。ぽつんと残されたカムイはただただ唖然としてしまうが、やがて思い出したかのようにそばに置いてあった煙草を咥えて火をつける。十分煙を吸い込んでそれを溜息と共に吐き出し、天を仰いで頭に手を乗せる。
「やっぱ姉さんの妹だよあいつ……全然敵わねぇ……」
予想外なまでの妹からの宣戦布告――それは行為を終えた後のカムイにとって、なぜかちょっと嬉しいと思いつつまたストレスになるのか分かっており素直に喜べるような気持ちになれなかった。ただ言えることはこんなこと不知火やカーラ、そしてアサギと遥かに自分よりも実力があるであろう自分の女と姉に知られればただじゃ済まないということだろう。
「あぁ、本当にどうしてこうなった……」
その彼のつぶやきは、誰にも届くことはなかったのであった……。
はい、というわけでさくらちゃん大勝利でした。お兄ちゃんは身バレした上に完全に宣戦布告されてしまったため心労がさらに加速しました、ハイ……。あれだね、なんだろう書いてて思ったんですが、主人公がヒロインと仲良くなりながらも苦労にまみれてひどい目に遭ってもがく姿ってなんでこうも楽しいのでしょう……書くたびに主人公の心労が増えることに申し訳なく思いつつも楽しいです(愉悦。
これにて最強の対魔忍の弟編はひとまず終了になります。次回からは心機一転、新しい主人公が登場する予定です。
では次回も暇があれば読んでください。