※この作品はR-18です。

女神「突然ですが、貴方たちには対魔忍になってもらいます!!」「「「「「えっ!?」」」」」   作:ニゴリエース

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漫画ネタも意外と馬鹿にできない

 

 目の前に広がる地平線の彼方――夕日が照らす広大な荒野が俺の目の前に広がっている。赤茶けた岩と乾いた砂地に、雑草すら生えていることはない。左を向けばそこにはおよそ人のものではない骸の残骸が積み重なり山を作り出していた。右を向けば傷ついた大小さまざまな武器が地面に突き刺さっており、まるで戦士たちの墓標のようである。死そのもので作り上げたその景色は、まるで異界――いや実際に魔界そのものの景色なんだろう。

 

「また、ここに来たのか……」

 

 俺はたまらずため息をついてしまう。この光景は俺が能力に目覚めた時から何度も見たことがあった。そしてここに住まう唯一の住人にもあったことがある。俺が屍の山に目を向け頂上に視線を移すとやはりそこに影がわだかまっている。そしてどこか悲しげに聞こえる呟き声が俺の耳に届く。俺はそれを鬱陶しく思いながらもその影に声をかける。

 

「また俺をここに連れてきたのか……いったい何の用だ」

 

 俺が問いかけると同時に影がゆっくりと立ち上がり、その姿を現した。

 

 

 

そいつは人の形をしているが指先が鋭く鉤爪のようになっており、両足の筋肉は人間とは異なっている。瞳は爛々と黄色に輝き瞳孔が縦に伸びてまるで獣のようである。だがそいつの顔――その顔だけは人間であり、俺が良く知る顔である。

 

俺とよく似た顔つき――だが女の身体を持ち女らしさを感じる鋭いその顔はまさしく俺の姉である井河アサギそのものだ。

 

そしてこいつは井河アサギそのもの――正確には姉さんの中に存在する対魔の力そのものだ。女は俺を見つけると笑みを浮かべてその鋭い凶暴な手をこちらに向ける。だが爪は俺を傷つけることはなくただ愛おしげに俺の頬をなでつける。俺はそれを振り払い目の前の女を睨み付ける。弾かれた女も先ほどの笑みが消え失せ、怒りと悲哀が混ざったかのような表情でこちらを睨み付ける。

 

「しつこいぞ、俺はお前なんかに用はない」

 

『なぜだ……なぜ私を拒む……なぜお前は私を受け入れてくれないんだっ!!』

 

「またその話か……俺はお前の力など必要ない」

 

『今のお前の力ではあの吸血鬼に勝てるはずがない、私を受け入れろ……そうすればっ!!』

 

「力だけで勝てるならわけないさ……俺は俺のやり方を貫きとおす」

 

 そいつが俺の目の前に現れてからというもの、掛ける言葉は全部『私を受け入れろ』だ。対魔忍は遠い祖先が魔の者たちに対抗するため、魔の者との間に作った子孫でありその中に少なからず魔そのものが存在する。そいつらはより自分達の力を発揮できるよう、己の主人格に囁き、誘惑し、導いて己との一体化を図り魔族へ転生させる。

 

しかしなぜ奴が俺の中に現れたのが謎である。姉さんと姉弟だからか、それとも別の理由があるのかは知らないが、こいつが現れてからろくに睡眠すらとれた気がしない。そして口を開けば私を受け入れろと来た。もちろんそんなことできるはずがない。魔族になるつもりもないし、こいつの力は原作から考えて関わり方を間違えれば姉さんの未来が悲惨なことになり得るかもしれないのだから。

 

そこからの攻防は苛烈を極めた。普段慣れない正面から――それも刀一本での戦いなんて俺にとっては地獄にもほどがある。おまけに相手はあの姉さんと同じ存在なんだ、どうやって勝てばいいんだよ。姉さんと同格の存在に勝つなんて奇襲や奇策抜きでは絶対無理だ。そして刀は弾かれ爪が俺の喉元目掛けて――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きろウツロ兄~~~っ!!」

 

「げぶぅっ!!?」

 

 みぞおち辺りにものすごい衝撃が走り胃の内容物がせりあがってくるのを感じるがそれを気合で飲み込み、いっきにクリアになった視界を見回して何が起こったのかを把握する。腹の上には褐色肌に黒髪のツインテールと、活発そうな少女が一人いた。俺のことをこんな風に呼ぶ褐色肌少女なんて一人しかいない。そう、将来対魔忍の次期エースとなるであろう未来の対魔忍、そして原作において最も心を抉る『NTR』というジャンルのヒロインという悲しい宿命を背負った水城ゆきかぜである。

 

 ゆきかぜとは不知火さんと仕事をこなしたり家に御呼ばれしたときなどに会っており、そこから交友が始まった。最初は俺の怪しい見た目から若干怖がっていたが、不知火さんに促されてかまっている内にいつの間に犬のようになつかれてしまったのだ。正直鬱陶しい。そして時々さくらと同じように家に突然訪れては俺の家を占拠するという。まじでこの女郎お尻ぺんぺんしてやろうか……。

 

「なにしやがるゆきかぜ、人が折角気持ちよく寝ている所を」

 

「ウツロ兄こそなんで寝てるの、今日はウツロ兄が私達の訓練の指導してくれるんでしょ!!」

 

「その訓練の準備を今まで寝ずにお前らのためにしてきたんだ、頼むからあと五分寝かせてくれよ……」

 

「駄目、ウツロ兄家に来た時そうやって寝て結局お母さんが起こすまで五時間以上寝てたじゃない……いいから起きろ~~!!」

 

「あぁ~~もうしょうがねぇなぁ~……」

 

 俺はしぶしぶ寝袋から這い出てテントの外に出る。そこは高い山の崖に位置する場所で、崖の反対側は鬱蒼とした森林が広がっている。そして大きめのテントが張られており、すぐ目の前にはかなり不機嫌そうな顔をした八津紫、そして一列に整列した班のガキ共がいた。

 

 班分けの用紙を貰った後、俺達はそのまま訓練の一環としてサバイバル用品一式を背負って目的の場所までのロードワークをしていたのだ。忍者たるもの体力作りは基本、そのため子供達にも総重量10kgの荷物を持ってもらった。その内一人だけは体力に難があったのか息を切らせていたのが見られていた。

 

ゆきかぜに関してはやけに馴れ馴れしく俺の偽名を呼びながら今まで何していた、次はいつ家に泊まりに来るんだだの質問攻めであったが俺はあえて無視しながら移動していたのだ。

 

目的地に到達した後は、俺はさっさと自分の分のテントの準備を始めた。子どもとはいえ女、しかも一人は年頃ときたもんだから流石に一緒のテントに寝るわけにはいかないため俺一人は小さなテントをさっさと組立て、子供達の分は紫に任せて俺は束の間の仮眠をとったのだ。

 

「遅いぞ、今日はお前が引率なのだからお前がいないでどうする」

 

「うるせー、こちとら睡眠時間削ってまでやってきたんだから少しくらい多めに見ろ」

 

「いい加減にしろ貴様、将来を担う子供達の前でそんなだらけた態度でどうする!!」

 

「だぁもう、なんでそんなにやる気に満ち溢れてるんですかねぇ~……」

 

 紫は俺があまりにだらけた態度だったためかかなりご立腹である。もう少しこいつをからかってもいいが時間も惜しいので俺はさっさと切り上げて訓練に参加する子供達を観察した。

 

 一人は幼いながらも凛とした顔つきの少女で、長髪を結ってポニーテールにしている。こちらを見ながらやや呆れた様子がうかがえる。こいつは秋山凜子――ゆきかぜの家を経由して知り合った秋山家の長女で、確か何とか流とかいう剣術の道場の跡取だったか……詳しいことは知らない。ただ分かるのはゆきかぜの姉貴分であり、こいつもゆきかぜと同じく原作においてNTRのヒロインとされて娼館の主かガングロ淫魔王に処女を奪われて奴隷にされてしまうという悲惨な結末を抱える不幸な少女である。

 

「よう、久しぶりだな凛子……相変わらず姉貴分しているか」

 

「あなたも相も変わらずのようだな……休息が必要なのは分かるが時と場所を選んでほしい、だらしがないように見えてしまっている」

 

「お前こそ年長者には敬語を使うべきだぞ……」

 

「ならせめてその襟の乱れを直すべきだと私は思うぞ」

 

「えっ、まじ、乱れてる?」

 

「ほら、私が直すから屈んでくれ」

 

 凜子に言われて俺は少し屈むと凛子は正面に立ってめくれている襟元を直し始めた。ふむ、仮面越しだがやはりこうしてまじまじと見てみると中々美人になりそうな顔つきだな。これでまさかのブラコンとか誰も思わんだろうなぁ~……将来凛子に告白する男子は今のうちに冥福を祈ろう。

 

「……っ!?」

 

 ん?目を合わせた途端急に顔を真っ赤にしたが……紫と同じで男性慣れしていないのか……まぁいいや、俺は凛子から視線を外して隣にいる女子に視線を移す。そいつはウェーブがかかった灰色の髪に凛子と同じような背丈をした少女……確か凛子の幼馴染で紫藤凜花だったかな……やたら凄い目つきでこっちを睨んでくるんだけど、何、俺なんかしたか?

 

「あなたが凛子ちゃんの言っていたウツロさんですか……」

 

「そうだ、俺が今日お前らの教育を受け持ったウツロだ、気軽に先生と呼べ」

 

「……あなた、本当に凄腕の対魔忍なんですか?」

 

「……あんっ?」

 

 なにやらやたらとこちらを目の敵にしてくるなこいつ……。

 

「凛子ちゃんから聞きました……あの最強の対魔忍である井河アサギさんの直属の部下だって」

 

「まぁ確かにあの人の部下だな……それがどうした」

 

「それがこんなだらしなさそうな人なんて……凛子ちゃんから聞いて想像していたのとかけ離れていて、正直がっかりしています」

 

「おっ、おい凜花、いくらなんでも言い過ぎだぞ」

 

「……だってそうでしょ凛子ちゃん、これのどこが凄腕なのよ……どっからどうみてもだらしないおじさんにしか見えないわ」

 

「……おじさっ」

 

 おじさんって……俺はまだ十代だぞコラこのクソガキ、単純に疲労感が半端なくて仮面で顔隠しているから残業疲れのサラリーマン特有の哀愁が出ているだけだ……自分で言ってて悲しくなってきた、訓練中に泣かしたろかこいつ……まぁいいクソガキ相手に怒っていては体力がもったいないし、俺はまた別の少女に視線をむける。

 

「んで、お前が日奈乃梨那か」

 

「は、はいっ、きょ、今日はよろしくお願いします!」

 

 うん、なんか緊張やらなにやらでがちがちに緊張してるな……確かこいつの家系は身体に作用する異能系の忍術の使い手だったような気がするが……しかしこれは緊張しすぎじゃないか、まるで忍者に向いている気がしないが。

 

「まぁ、緊張するのは分かるがあまり力入れすぎるなよ、訓練も実戦も力みすぎると失敗の種になるから」

 

「は、はいっ!勉強になります!!」

 

 ガチガチじゃねぇか……これは凛子たちと違ってまた別の意味で手がかかりそうだな……さて、最後の一人は……。

 

「……」

 

「最後に、お前が結城炎美か……」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 うん、目つきが悪いな……なんか孤高って感じで、空気がなんか痛い子のように思える。確か孤児院枠からだったなこいつは……これはあれか、自分以外は信じない系の子供かなぁ~……やだな~こういうのに限って直情型なんだよな~。

 

「この中でお前だけが孤児院枠みたいだが、将来はみんなと一緒に対魔忍として任務に就くんだから今のうちに交流しておけよ」

 

「必要ありません」

 

「……あっ?」

 

「別に私は仲間なんかいなくたって戦えますので」

 

「……そうかい」

 

 うわ~やっぱこんな感じかよ、めんどくせー……まぁ心のケアとかそんなもん俺ができるわけないので、これは後々かな……。俺は早々に切り上げることにし、子供達全員が並び終えるのを確認すると全員に呼びかける。

 

「さて、それじゃあ全員集まったことだし、それじゃあ訓練を開始するぞ」

 

「ウツロ兄、今日はどんなことやるの?」

 

「ゆきかぜー、今日は俺のことは先生と呼ぶように……さて、今回お前達にやってもらうのはこれだ」

 

 俺はゆきかぜに軽く注意しながら懐からあるものを取り出した。

 

「それは……」

 

「鈴、ですね」

 

 俺が取り出したのは鈴だ。軽く振るとチリンと良い音色を響かせる。突然場違いな物を出したためか訝しげな子供たちの表情がこちらに集中する。

 

「さて、今回お前たちに行うのは戦闘訓練だ」

 

「せ、戦闘訓練ですか?」

 

「そうだ、といってもシンプルなものだ……俺はこの鈴を腰につける、そしてお前たちはこれを俺から奪うことだ」

 

 俺が提示した訓練内容はいたってシンプルだ。これは前世の某忍者漫画で行っていた訓練で、内容自体は後半に連れてもう忍者関係なくねって思ったが、これはこれでなかなか使える訓練方法だと思い、子供達を試すついでに行うことにしたのである。

 

「ウツロ先生から鈴を奪うって……それだけですか?」

 

「そうだ、手段は問わない……お前たちが各々好きな方法で俺から鈴を奪えれば問答無用で勝ちだ、お前らの武器もちゃんと用意してある」

 

 俺は王の財宝を開き、中から小刀や手裏剣にクナイ、拳闘用グローブに鎖鎌など様々な武器を取り出す。ゆきかぜと梨那はどこからともなく大量の武器を取り出したことに若干驚いているようだ。他の三人は淡々と武器の方を眺めている。

 

「これは全部刃が潰れているから本気で俺を殺しにかかる勢いで来い、むしろそのくらいじゃないと俺から鈴を奪うなんて無理だからな。俺はこれから1分ここで待機する、ちなみに後ろの森に入って隠れながら俺に奇襲する方法が俺的におすすめだ……それじゃあ全員武器を持って開始しろ」

 

 俺がそう宣言すると、全員が立ち上がり一斉に武器を取る。梨那は若干控えめであり一歩引きながら全員が取り終えるのを待っていた。凛子は刀、凛花はグローブだけを手に取る。どうやら自分の戦闘スタイルは決まっているらしい。そして全員が取り終えるとそのまま森の中へ移動し始める。

 

 と、先ほどまで横で待機していた紫がこちらに歩み寄ってきた。

 

「おい、私はどうすればいい……」

 

「あぁ、紫は今はなにもすんな……あえて言うなら子供たちの動きを見て評価してくれればいいや」

 

「なんだ、戦闘訓練だというからてっきり私とお前の模擬戦を見せるのかと思ったぞ」

 

「それじゃあここまで来た意味ねぇよ」

 

 そんなのこんな場所じゃなくたってどこでもできる。今は子供たちに忍本来の戦い方を教えなきゃいけないわけだし……それにほぼ不死身で脳筋の紫と模擬戦なんて死んでもやらん、疲労がたまりまくる、はっきり言って体力の無駄遣いだ。と、すでに一分を経過していたのかその場には一人を除いて子どもたちが全員いなくなっていた。そう、一人を除いて――……

 

「……なんで隠れなかった結城炎美」

 

「必要ない、私は一人でも十分に戦えると言ったはずです」

 

「驕りか……協調性が取れないと戦場ではすぐ死ぬぞ」

 

「驕りではないです……それに、私の代わりはいくらでもいますから」

 

 その場に残っていたのはあの生意気な炎美である。炎美は隠れることもせずそこに突っ立って刀を構えている。どうやら思った以上にこいつは重症なようだ……少しお灸をすえるべきか。

 

「……クソガキが……お仕置きが必要なようだな」

 

 ガキ相手に本気になるわけにはいかないが、それでもこの糞生意気なガキの鼻っ柱をへし折る必要があるのだ、お尻ぺんぺんじゃすまさないぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 





間が空き大変申し訳ございません、ちょっとリアルでの事情が建てこみましてなかなか書けませんでした。今回は前回と比べてかなり短めです申し訳ないです。執筆の方ですがリアルの事情が続いて次の投稿がいつになるかわかりませんが、ちょくちょく合間を見つけてなんとか書いていきたいと思います。では次回も暇があれば読んでください。

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