女神「突然ですが、貴方たちには対魔忍になってもらいます!!」「「「「「えっ!?」」」」」 作:ニゴリエース
ウツロ達が密林にて襲撃を受け、すでに数時間が経過していた。訓練に向かっていた多くの班は山を下りて五車の里にたどり着いており、霧の部隊が連れていた多くの子供達はすでに親許のところへ帰されている。しかしまだ隊長であるウツロと八津紫が引率する班と自ら殿を申し出た八津躯達は未だに下山しておらず、襲撃者達の正体も目的も不明のまま里周辺の山に潜んでいるという非常に危険な状態である。
本来なら襲撃者に対しての迎撃及び行方不明者達の救助を迅速に行うのが当たり前であるが、タイミングが悪いことに長であるアサギは任務によって里を離れていた。本来里長自ら任務に出ることはほとんどないが今の五車の里は人材不足であり、難易度が高い任務にはどうしても井河アサギ自身が出撃せざるを得ないのである。一方五車の里の重鎮であるご隠居たちはこの緊急事態に対してどう動くかを検討中とのことだ。しかし実際は重鎮の連中はこの局面で救出に向かい井河に恩を売るか、もしくは無視を決め込み責任を負わせるかを決めかねているだけである。
例え少しであっても時間のロスは命を落とす危険性が高まる。しかも中には子供も含まれているにも関わらず、上の人間は自派の利益を考えているだけ。そのことに対して待機命令を出されて身動きが取れなくなっている『霧』のメンバーは苛立ちを募らせた。
自分達の隊長は敵が徘徊している範囲のど真ん中で取り残されいつ襲われるかも分からないためすぐにでも救助に向かいたいが、里長のアサギは任務でいないこの状況で勝手に動けば独断専行だのなんだのと重鎮たちからのいらぬ文句を与えてしまうきっかけにもなってしまう可能性だってある。組織というのはままならないものだと監視カメラで重鎮たちを見張っていたサスケは歯噛みしながら感じていた。
その時、彼の真横においてあった通信端末が鳴り響いた。通信してきた相手は『ウツロ』、件の隊長からである。サスケは慌てながら通信端末を手に取る。
『サスケ、聞こえるか……?』
「た、隊長…ウツロ隊長無事ですか!?」
『命があるっていう意味でならまあ無事だな……今里の状況は?』
聞こえてきたウツロの声から、彼は無事であることにサスケは安堵を感じつつウツロに現在の状況を大まかに伝えていく。今現在里自体に襲撃は行われておらず周辺の警備は強化されているが救助については上役がいまだに渋っているため期待できないこと、森の中にはウツロの班以外にも何人かが取り残されていることを伝える。
『そうか……サスケ、ご隠居共の様子はどうだ』
「相変わらず自分達の家の損得勘定でいっぱいです……ただ、怪しい動きを見せている連中はいませんでした」
『そうか……なら米連の方を探ってくれ』
「米連ですか……?」
『あぁ……今回の連中の装備から見て、襲撃者は恐らく米連の一機関だ。データベースにハッキングすればどこの連中か判明するだろ。ついでに、米連に情報を流した獅子身中の虫もな』
「……了解しました、隊長もどうかご無事で」
通信が切れると、サスケはすぐに端末を操作する。この事態を引き起こした米連の兵士は一体どこの所属なのか、そして米連に情報を売り渡した【裏切り者】は誰なのかを探るために。
「さて、それじゃあ俺も移動するか……」
辺りが闇に包まれた森の中、そこにひっそりと存在する洞窟のなかにウツロはいた。通信が切れた後、彼は洞窟の奥を見る。そこにいたのは彼が教育担当を務めた子供達と八津紫であった。彼女たちは様々な表情を浮かべており、紫は若いながらも何度も困難な任務を成功させてきた対魔忍でありその表情は真剣そのものである。
しかし子供達はどうかというとそうもいかない。凛子や凛花、炎美は顔を険しくしているが予期せぬ襲撃にその眼には怯えが見えている。ゆきかぜと梨那に関しては困惑と恐怖がありありと浮かんでいた。彼女らはまだ戦いすら経験したことのない幼子なのだから恐怖を抱く方が当たり前である。
「ここなら敵に見つかる心配もないだろ。紫、お前もついて来い」
「お、おい、待て。子供達の護衛はどうするつもりだ」
「いらねえよ、ここは襲撃地点から遠く離れてるし地理に詳しいやつじゃないとまず発見されることはないから襲われることもねえ。それに今は敵の殲滅が先だ。それに保険も残しとく」
ウツロはそういうと懐から二丁の拳銃を取り出す。そしてゆきかぜと梨那に近づくと彼はそれを二人に手渡した。突然のことに二人は驚くがウツロは気にすることなく二人に拳銃をしっかりと握らせる。
「いいかゆきかぜ、梨那……銃は撃った瞬間の反動がでかい。しっかり狙って撃て。頭か心臓をしっかり狙え。人間相手ならそれで楽に殺せる」
「「っ!?」」
「おいっ!!」
ウツロの言葉に対し我慢ができなくなったのか紫は彼に掴みかかる。しかしウツロは気にすることなく冷めた目つきで彼女を見据える。
「貴様、子供相手に何を言っているのか分かっているのか」
「なんだ、保険を用意しとくと言っただろ」
「そういうのは保険とは言わん。それに、子供だぞ!」
「だからなんだ」
「子供相手に人間を殺させようとするのか」
「だから、なんだ……」
「貴様は子供達に人殺しをさせようとしてるんだぞ!!」
「だからなんだっ!!」
紫の言葉に対しウツロはついに苛立ちを押さえられず彼女の胸倉を掴み返す。唐突の怒鳴りに紫は思わず気おされてしまう。
「子供だろうが人間だろうが関係ない、あいつらは俺らを本気で殺しに来てんだ。だったらこっちも同じだろうが、この状況で子供だの人殺しをさせるなだの宣うんじゃねぇよ!!」
「……っ」
「俺達は対魔忍だ、俺達は忍者だ、怪物殺しと人殺しを生業とする畜生だ。決して誇り高い戦士でも正義の味方でもない!遅かれ早かれ対魔忍になるなら人間も化け物も殺すことになるんだ。俺達はそういう存在なんだ!!」
ウツロはその場にいる者全員に言い聞かせるように怒鳴る。それは彼自身が対魔忍に抱いていた生の感情そのものでもあった。
対魔忍の多くは、対魔忍であることを誇りにし正義を謳う。自分達こそ世の秩序と人間たちを守る正義の味方なのだと。しかしウツロがそれに唾を吐いた。なぜなら彼自身が対魔忍として過ごしてきた日々は、彼が今まで殺してきた魔族や人間たちとほぼ大差がない外道の所業が多かったためである。
ただ立場が違うだけ、動機が違うだけ、信じる物が違うだけ――だからウツロは対魔忍にであることに誇りも持たないし、使える人材なら魔族でも重宝し自身の益にならないものなら人間であっても慈悲は持たない。それはある意味で人間と魔族を平等に扱っているともとれる。
ウツロは紫が気おされて反論してこないのを見ると手を離して再び子供達を見つめる。そしておもむろに口を開いた。
「いいかお前ら、対魔忍になるからには覚悟しておけ。この世は綺麗ごとだけじゃない。人間の汚さやおぞましさも目にする。魔族だけじゃなく人間も殺すことにもなる。だからこそ自分で選べ、引き返すなら今の内だ」
ウツロはそれだけを言うと洞窟から出ようとする。しかしすぐに立ち止まると今度は振り返ることなく、そして子供達に言い聞かせるようにつぶやく。
「逃げてもそれは恥じゃない、何もしらず普通の生活が送る方が幸せなんだって俺は思ってる。たかが正義心やあこがれで対魔忍になるのならきっと地獄を見て後悔だらけの人生になる……お前たちはまだ選べるんだ、だから……お前らは俺のようになるな」
ウツロは子供達にそう言い聞かせると今度こそ洞窟からいなくなった。そして彼の後を追い紫もまた走り出す。
「おい、さっきの言葉は―――」
「……」
「……ウツロ、貴様は後悔してるのか」
「……後悔だらけだよ、俺の人生は。失った物が多すぎる、苦労も多い、おまけにやることは山積みなんだ」
「―――」
「それでも俺は止まることはできない……俺にはまだ、止まれない理由があるんだ。だから俺はもう戻ることはできないんだ」
「……」
「お前も後悔しないようにしな紫……ただの女として生きるのも、悪い人生じゃないと思うぜ」
「……ふん、余計なお世話だ」
『おい、そっちは様子はどうだ』
『駄目だ、全然見つからない』
薄暗い森の中を複数の兵士が歩いていた。それは近代的な装備を身に纏い、流暢に英語をしゃべっている。彼らは米連の兵士である。彼らはとある任務遂行のため、米連よりもたらされた情報を頼りに対魔忍の里に位置する森の中で襲撃を行った。
しかし任務開始からすでに数時間が経過し辺りは闇に包まれている。ターゲットを見失った彼らはそれぞれの部隊で散開し、捜索に当たっている最中である。
『どうする、他の部隊と合流するか?』
『いや、こっちに逃げたはずだ。ガキも一緒にいるんだ、遠くへ行けまい』
『よし、しらみ潰しにここを捜索するぞ……』
兵士はそれぞれ合図し捜索を再開しようとする。その時一人の兵士が足を踏み出した瞬間、彼の足元より何かが飛び出し足に食らいついたのであった。
『ぐぁああゅ!!?』
『どうしたっ!』
味方の悲鳴を聞きもう一人が近づくと、そこには猛獣を掴めるために用いられるトラばさみが彼の足に食い込んでいたのである。トラばさみは足に深く突き刺さっており、肉を抉り骨まで刃が到達していた。その激痛は訓練された兵士と言えど我慢できるものではなかった。
『あ、足が……俺の足がぁ……っ』
『待ってろ、今助けるぞ!』
仲間を救助しようと近づいた瞬間、今度は彼の足に何かが引っかかる。するとバキバキとまるで木々が折れるような音が後方より響いた。彼は慌てて後ろを振り向くと、彼のすぐ目の前に巨大な大木が迫っていた。大木は彼の頭を強く打つと兵士の身体は大きく吹き飛ばされ、地面に打ち付けられるとぴくりとも動かなくなる。
他の兵士が突然の出来事にうろたえると、彼らの背後に音もなく何かが現れる。それは外套と面で正体を隠しているウツロと紫であった。ウツロは手に持っているクナイですばやく兵士の首をかき斬り、紫は両手に持った巨大な斧を薙ぎ払い兵士二人を寸断する。
たった一瞬の出来事により、兵士の部隊はトラばさみに足を挟まれているもの以外全滅したのであった。
「はい終了……意外とちょろいもんだな」
「思ったよりあっけないものだな……というより、いつの間にあんな罠を仕掛けた」
「ここは元々罠を仕掛けてあったんだ、万が一野生の獣に襲われないようにと前日から仕掛けてあったんだが、かかったのは猛獣より面倒なものだな……後処理が面倒な」
ウツロはなんてことないと言うように紫に言葉を返すと、彼は残った兵士にゆっくりと近づく。兵士は気づくと激痛に耐えながらなんとか銃を構えようとする。しかしウツロは一気に彼の懐に飛び込むとクナイを振るい、銃を持った手を切り落とす。
『えっ……あっ……うっ、うわぁぁあああああああっ!!?』
「あぁもう、叫ぶな煩わしい」
兵士は腕を切り落とされたことに更に苦痛と恐怖にさいなまれるが、ウツロはそれを鬱陶しそうに文句を垂れる。そして彼の首を掴み目と鼻の先にクナイを構える。
『俺の質問に正直に答えろ、嘘をついたら鼻をそぎ落とす、言いよどんだら目を抉りぬく、沈黙するなら喉を切り取る』
ウツロは英語でそう言い兵士を脅す。兵士は彼が冗談をついていないことを理解し、恐怖で顔を歪ませる。そして彼は自分達が触れてはならない何かに触れてしまったのだと感じるのであった。
|/H\
|OMO) ジ―――っ・・・
ナズェミデルンディス!!
仕事が忙しくなり、筆が止まってもう一年・・・・・・
社会人って辛いなーーーっ!!
主にシフトがバラバラな職業ってもう生活リズムがひどいことになるということを改めて思い知りました。
スランプも重なりほとんど投稿せずもうすぐ元号も変わるという事態にまずいと思いなんとか書きこみすることができました。ノートパソコンだから読み込みも遅い、動作が重い、ハードデスクの奴は置く場所がないから買えないという悪循環がががが・・・・
今後はなんとか頑張って時間を見つけて書いていこうと思います。
以前から読んでくださった方々はほんとうに申し訳ありませんでした。