女神「突然ですが、貴方たちには対魔忍になってもらいます!!」「「「「「えっ!?」」」」」 作:ニゴリエース
あの日、転生だのなんだのわけの分からない出来事が起こった日から俺の世界は劇的に変わった。まず俺、前世では○○○という名前であったが今は『井河カムイ』と別の名前を付けられている。まぁその名前も今じゃほとんど意味をなさないでいるが・・・。
女神の話では転生者は必ず物語に関わる立ち位置になるとのことだったので俺は生まれてすぐ状況を把握しようと周りを注意深く観察すると、生まれたばかりの俺をあやす母親と思わしき女性と父親と思われる男性ともう一人が見えた。父と母はまずいい、優しそうな人たちでひとまず安心はした。しかしその後に見えた人物が問題だった。
黒髪に翡翠色の眼、鋭い目つきの割に優しげな笑顔で将来は有望であると思われる顔つきに俺は見覚えがあった。間違いなかった、まだ幼かったが彼女は転生した世界において主人公であり将来的には対魔忍の長となるあの『井河アサギ』なのだ。あの時はまじで絶望した。まさかの主人公の身内になるとは・・・当然のことだがつまりそれは俺も将来的に物語の黒幕に関わることになるため俺はあまりの絶望にその場で大泣きしてしまった。まだ赤ん坊であった俺が泣いてしまったためアサギや両親がオロオロさせてしまったのは今にとってはかなり黒歴史である。
生まれた俺は両親やアサギの愛情を受け、すくすくと育っていった。妹のさくらが誕生した時は、こっちの指を握ってキャッキャッと笑う赤ん坊を見て兄貴になった実感と共に感動でガチで泣いてしまった。そんな家族の愛に包まれて幸せ絶頂だったが問題はすぐ後に起こった。4歳になったばかりの俺はその時の頭領、つまり井河の当主であったアサギや俺の祖父であり後にアサギの婚約者を死に追いやる原因を作るジジィに半ば強引に両親から引き離されてしまった。その時の両親の様子はとても穏やかではなかったが、それでも祖父に逆らえず、すごすごと引き下がっていた。それが俺が両親を最後に見た瞬間である。
それから俺は祖父に育てられ幼少期を過ごした。当然そこに愛はなく義務的なものであり、本当の地獄の始まりだった。俺はすぐに対魔忍になるべく修行の日々を続けられた。曰く、才能はアサギほどではないがそれでも将来を見込み、英才教育を施して強靭かつ従順な忍にしようとのことだったらしい。要するにあのジジィは俺を都合のよい兵隊に育てようとしたのだ。あのジジィいつか殺す・・・・。
修業はかなり辛いものだった。大人がやるような訓練を毎日毎日させられ、甘えも妥協も許さない環境は前世での両親からの虐待を彷彿させるほどだった。おかげで右目には深い傷跡が残り老後を待たずに早くも失明してしまった。それでも祖父からは謝罪の言葉なんかもなく、俺はこんな地獄に俺を放り込んだあのジジィを毎日呪っていた。本当にあのジジィいつか殺す・・・。
そして俺が忍術―――といってもそれは本来対魔忍の忍術ではなく俺が良く知る作品の能力であり、明らかに女神が言っていた特典であると悟った―――に目覚めた後に、おれは祖父から一つの部隊に所属することになったと告げられた。それは『霧』と呼ばれる部隊であり、これに関しては原作にはなかった事柄で俺は一瞬何のことか分からずぽかんとしてしまった。
調べたところ『霧』とはその特異性から従来の対魔忍の部隊とはまた違ったものであるらしい。その部隊は本来の素性を抹消し、それぞれ任務の際に一つの偽名を名乗る。装備や服装を外套で覆い隠し、顔も面で隠すことで徹底的に身バレするものを隠す。任務の内容はトップクラスの要人の護衛や暗殺、裏切り者の対魔忍を処分する懲罰部隊の内容、はては長から極秘中の極秘での内容を請け負うものであるらしい。その特異性から味方の対魔忍にも存在を知る者は少なく、霧のように掴めない存在から『霧』と名付けられた舞台だ。要するに某超絶バトル忍者漫画に登場する暗部みたいな組織である。
つまり、俺はその部隊の隊長として就任し、陰から対魔忍を支えてほしいと祖父が言ってきた。つまり俺の存在をなかったことにして散々鍛えて育ててきたのは全て俺を霧の部隊の隊長にするためとのことだ。そんなくだらねぇことで親許を離されるとか・・・・まじでいつかジジィ殺す。
そして記念の初任務は対魔忍の長となったあの井河アサギ―――つまり俺の姉さんとの合同で行うことになった。実に十年以上の再会に半ば心は浮足立っていた。しかしいざ顔合わせした時に彼女の嫌悪感に包まれた表情はとんでもなく心に打撃を与えられた。しかも言葉には所々棘があり、その場に崩れ落ちなかった自分自身を褒めたいほどだ。話によると、姉さんと祖父の関係はすこぶる悪く、原因は紛れもなく幼き頃の俺を連れ去ったことと、それに対して何の謝罪もフォローもなく俺の死をねつ造した祖父であった。当然祖父の直属の部隊である『霧』に対してもかなり嫌悪感を抱いており、もはや親の仇でも思われているかと思ったほどだ。こんな感じになるまで姉さん放っとくとかマジで余計なことしかしねぇぞあのジジィ・・・ガチでジジィいつか殺す。
まぁ、そんなこんながあり、俺も今は対魔忍の一人として立派に働いています。立派かどうかは知らんけど・・・。そして俺は今、いつものように顔などから身元が割れないよう灰色の外套を纏い狐の面をかぶって絶賛任務中です。
『隊長、標的の姿が見えました。57階の窓のすぐ傍です』
「了解、サスケはそのまま待機だ・・・ハヤテ、合図を頼む」
『了解、隊長』
部下からの通信が聞こえ、俺はすぐに気持ちを切り替え任務に集中する。今回の任務は魔族と接点が出来つつある日本政府の議員の暗殺と彼の持つ資料の回収だ。今頃ターゲットはこれから訪れるであろう快楽と愉悦に満ちた世界を夢想しているに違いない。その証拠に俺が立っているビルの屋上から1km離れた先の高層ビル―――『霧』所属であり俺の部下のサスケ―――当然彼の名も偽名である―――が言っていた57階の窓では明らかに人間ではない武装した人外達に護衛され、ご満悦な様子な剥げたオヤジがワインを片手に、高そうなスーツを纏った全身が緑色をして耳が尖っている謎の化け物と楽しく談笑しているのが見られた。
あの緑色は決してピッ○ロさんのようなものではなく、魔界からやってきたオークと呼ばれる種族である。皆から生殖猿と蔑まれてかなり毛嫌いされている。まぁ俺も嫌いだからこの間容赦なくストレス発散も兼ねてぶち殺しましたけど・・・。
『あ~ぁ、俺たちが必至こいて魔族と戦っているのにああいう連中はなんで平気な顔して手を組もうと考えているんですかねぇ~』
『無駄口を叩くなサスケ・・・』
『だって先輩も正直やってらんないでしょう?俺らは毎日金欠なのにあいつらは美味しいもん食って飲んで犯ってパーリーしてるんでしょ?羨ましすぎでしょ!?』
『どうやら貴様の頭の方もパーリーしてるようだな。羨ましいなら今すぐあいつらの輪の中に入ってこい。俺と隊長で骨も残さず吹き飛ばしてやる』
『怖っ!?先輩の態度が怖っ!?』
「はいお前ら黙りなさい、少しは落ち着いて任務に集中しなさい」
ターゲットの様子を見て不満たらたらなサスケと、彼に対して辛辣なハヤテを戒めつつ俺はターゲット暗殺の準備へと取り掛かる。意識を集中し、能力を発動させると俺の後ろから黄金の波紋がいくつも生まれる。そしてその波紋から古今東西に伝わるいくつもの刀剣が姿を現し、俺の背後で待機する。
これが俺が女神からもらった特典である能力『
そんなことを考えているうちにターゲットは突然の光に戸惑いを見せている様子であり、こちらを見ながら何やら慌てて護衛達になにか叫んでいるのが見られたが、すでに時間切れである。俺は右手を頭上へと掲げ、合図をするように手を振り下ろす。すると刀剣達はまるで砲弾のように射出され、ターゲットのいる部屋へと直撃する。それはもはや蹂躙とも言えない状態であり、刀剣は窓を突き破り、壁を破壊し、数々の調度品を砕き、その場に居合わせた人外達の肉や骨を裂き、床を真っ赤なカーペットのように染めていった。
「ふははっ、見ろ、人がゴミのようだ」
『うげぇ・・・隊長、やり過ぎっす』
『隊長、ぶちまけ過ぎです。これでは粉々になった家具を片づける人たちにいい迷惑です』
「確実に仕留めるためだ、少しくら多めに見ろ」
『いや先輩、粉々になったの家具だけじゃないからね?主に人だったものまでもぐちゃぐちゃになっていますよね?隊長も全然少しじゃないよね?床が完全に猟奇的になっていますよね?』
「『いつものことだろ』」
『いつもこんなやりとりだから言ってるんでしょうが!!?』
サスケとハヤテでお互いにボケと突っ込みををかましているが二人とも任務は忘れていないようであり、ビルの屋上を伝って部屋の内部へと侵入していく。俺自身もビルからビルへと飛び移り、部屋の内部へと移動する。確かにサスケの言う通りやり過ぎたかと思ったが、資料に関してはどうやら無事のようであり、ハヤテが資料を捲りながら内容をチェックしている。そのほかには何やら厳重なアタッシュケースがいくつも転がっており、中身を確認するとそこには予想通りぎっしりと人の顔が書かれた紙束、いわゆる万札が詰まっていた。
「うひゃぁ~、こんだけあれば暫く遊んで暮らせそうですね~」
「サスケ、それは証拠だ。ネコババするなよ」
「ちぇっ、分かってますよ~」
「ハヤテ、何か分かったか?」
「情報通りです。どうやらノマドとつながりを持とうとしたようですね。そのお金はどうやら東京キングダムで非合法施設、カオス・アリーナへの投資のようです」
「なるほどな・・・サスケ、本部に連絡しろ。ハヤテ、周辺を警戒しつつ撤退の準備だ」
「「了解」」
カオス・アリーナ…祖父からちょうど姉さん《井河アサギ》が結婚するから対魔忍を引退することと対魔忍が暗殺されていることを聞いたため、原作通りなら今の時期はちょうどアサギが婚約者を人質にカオスアリーナに連れて行かれるところか。情報通りならばこれだけで任務は完了ということにはなりそうにないな。帰って事後報告と今後の任務のための人数編成を―――。
「あら、そう簡単に帰らせると思っているのかしら?」
「「「っ!?」」」
ぞわりと寒気を感じ、女性特有の高い声が聞こえ俺たちは同時にその場から飛びのいた。声のした方を見てみるとそこには見た目は人だが明らかに人の気配ではないものが何人もいた。その中にいたのは赤い対魔スーツを纏い、鉤爪を両手に鋭い目つきでこちらを見ている明らかに悪女的雰囲気を醸し出す妖女が一人いた。見間違えるはずがない、原作でもアサギのライバルとして登場するその女の名は――――。
「裏切りの対魔忍、朧・・・」
原作において姉の最大の仇敵である悪女、裏切りの対魔忍である『朧』であった。
今回はこの作品を読んでいただき誠にありがとうございます。上手くチョメチョメできるかどうかはまだ書いてみないと分からないので上手く主人公達と絡ませられるように頑張っていきま~す。
最後に今回『最強の対魔忍の弟』編の主人公のプロフィールを紹介して終わりにします。
【名前】井河カムイ
【年齢】18歳(対魔忍アサギ1での年齢)
【性別】男
【能力・特典】王の財宝(蔵のみ)
【所属】対魔忍
【捕捉】
女神の身勝手な理由から井河アサギの弟として転生した男。見た目は右目の傷跡を除いてアサギの若い姿にそっくりである。しかし基本的にボケに徹する人間であり、その態度は姉とは似ても似つかない。冗談などが通じない堅物タイプが苦手。戦闘面に関しては一般的対魔忍のような真っ向勝負は苦手であり、地形を利用したり不意打ちやだまし討ち、強襲が専らの常套手段である。それでも他に手がない場合は自らの身体能力で戦いを挑むこともしばしば。
4歳の頃に祖父から引き離され、対魔忍として育てられる。その際に右目を負傷してしまう。姉のアサギや妹のさくらに対しては死亡したと報告されているためもはや家族としては会っておらず、アサギに対して互いに同僚として共に任務に就くこともあった。祖父に関してはもはや肉親のとしての情は一切抱いておらず、地獄に落ちろと毎日祈っているほどである。
口癖は『○○いつか―――する』で、理不尽なことを押し付けたり、割に合わない任務を請け負わされた時などの人物に対して心の中で毒を吐く。最近は『いつかジジィ殺す』がもっぱらである。