※この作品はR-18です。

千雨が狼に犯されながら狼になった後、狼をぶち殺す話 【完結】   作:ミキマル

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真面目な出産回後編。ケモ成分あり


千雨は数々の苦難の果てに、二人の子供を授かる話

「ちょっと待ってくれ、意味が分からないんだが…」

 

 予想外の提案に頭を悩ます千雨。

 超から提案された出産方法は獣人の姿での出産。一体彼女は何を考えているのだろうか、千雨の頭の中に無数のハテナマークが沸き溢れる。

 そして隣で納得した表情を浮かべるエヴァ。彼女までが超の提案に驚きながらも納得した表情で腕を組みながら頷く。今この場で状況を理解できていないのは千雨のみであった。

 

「先程話した通り、獣姿の千雨サンと人間姿の千雨サンの中間が獣人の姿って訳ネ。なんらおかしくないヨ」

「あぁ、言いたいことは分かる。ただ獣人と言うのがイメージが付かないと言うか何というか…そもそも私って狼の姿以外にも変身出来るのか? って言うか…」

 

 超の説明にピンと来ない千雨。

 そもそも何故姿を変える必要性があるのか。そもそも超の説明で千雨の精神は『長谷川千雨』であって人でも狼でもないと説明されたばかり。それならば出産の姿は関係ないのでは?

 すると隣で目を閉じ腕を組みながら話を聞いていたエヴァが片目を開け、千雨の方を見ながら口を開いた。

 

「なれるって言うよりならなきゃいけない。そもそも精神は肉体に引っ張られる。千雨も心当たりがあるだろう」

「あっ……」

 

 思い浮かぶのは狼の姿に成れ果ててからの出来事。人を襲い、血肉を貪った記憶。

 

「どんなに精神が強固な人でも環境や肉体など色んな要因で変わって行くネ。今の千雨サンが人としての比率が高いのは純粋に今までの環境、人間から生まれて人間として育ち、そして人間の身で狼の姿に堕ちたと言う経緯が今の千雨サンを作ってるヨ」

「千雨から生まれてくる子供達は肉体と言う面では千雨と違って最初から狼であり人間ではない。そう考えると人間の姿で出産した場合、子供の精神と肉体でどのような乖離を起こすか未知数。そう考えると狼の姿で出産するのが妥協だが…」

「そうなると今度はちょっと前に説明した通り、千雨サンと子供の間で軋みを産む可能性があると言う訳ヨ」

 

 精神は肉体に引き寄せられる。それは身をもって体験した出来事。ここでやっと千雨は過去の経験も踏まえて超の考えを理解した。

 千雨は茶々丸の持ってきたクッションに背中を預ける足を組み、獣の右手と人の左手の甲を下に膝の上に置くと目を閉じゆっくりと深呼吸、心を落ち着かせる。

 思い浮かべるのは何時もの過程、人から狼に変わる変身過程であり肉体を変化させるシーケンス。それを客観的に捉える。

 

 骨を動かすイメージ、それに伴う筋肉痛の様な痛みが身体全体に広がる。

 獣化を繰り返すうちに気にならなくなった痛みだが慣れというのは怖いもので今ではちょっとした違和感でしかない。

 骨が伸び縮み、それに従って肉付きも変わる。

 尾骶骨が伸び尻尾を形成すると太ももの筋肉、広背筋が発達する。膝の関節が曲がり逆向きになると足先にそってスッとスリムな肉付きに。指が短く内向きに回転するように動き出し親指が狼爪へと形を変え一本一本指の爪が内側に巻きながら伸び太く固くなった。

 身体は四足歩行に適した、お腹を下に向ける様な形に肋骨が動き体全体を支える背骨が横向きに適した形に。そして肋骨と背骨に一つずつ新しく形成される。内臓器官は狼のモノへと置き換わり、胸筋が発達すると後ろ足同等に腕の方も形を変えた。

 そして顔全体の骨格が前に伸びる形に。外から見る分には鼻先が伸びマズルを形成する。

 鼻先が黒く色を変え、仄かに湿りだすと一本一本の歯が形を変え牙を作る。ベロは長く太く、上唇が舌唇を覆い隠す形に。耳は後ろ上に引っ張られ軟骨が形を変え三角形に。目付きは横に鋭くシュッとした佇まいに。

 変身する過程で変化の兆しが見られる節ゝを覆うように生えた短く立った夏毛である銀色の狼毛は身体全体を覆いやがて千雨は狼の姿へ形を変えた。

 

「なにやってんだ千雨。狼の姿じゃ意味ないだろ」

「バカ、変身の感覚を掴んでるんだよ。何時もだったら一瞬で終わらせるし」

「何時見ても声帯が気になる所ネ。どれ、見せて貰っても良いかナ?」

「今はそんな時じゃねーだろ。これだからマッドサイエンティストは……」

「ハハハ、冗談に決まってるヨ。それでどうかネ、出来そうか?」

 

 突っ立ったエヴァの横で千雨と目線が合う様にしゃがみ込み、彼女の右手を弄りながら苦笑いを浮かべ気にかける超だが肝心の千雨は微妙な表情を浮かべ首を横に振る。

 

「さっきの過程を見てたなら分かると思うがピンと来ないんだよ。変身途中の姿だったら人と狼のキメラにしかならねーぞ」

「確かに。…しかしさっきの変身シーンはうん…」

「おいエヴァなんだよ、ちょっと顔見せろ。なんで顔逸してるんだ」

「なんかエッチかったネ…って痛いヨ!!!」

 

 ムッと来た千雨は超の右手に噛み付く。と言っても甘噛み程度の優しい物。

 しかし当たりどころ、いや噛み付きどころが悪かったのか超の右手に小さなキズが付きそこから血が小さく滲み出た。口の中で血の味が広がり、途端に眉を潜める千雨。

 超は条件反射で千雨の口から手を引くと傷から滲み出た血を舐め止血する。ちょっとした傷程度なので治療する必要もない。超は気にせぬ素振りをすると千雨に謝った。

 

「ゴメン、ごめんヨ。こんな時に冗談言うんじゃなかったネ」

「……」

「千雨サン、おーい千雨サン。大丈夫ネ?」

「んっ、いやなんでもない…。こっちもスマン」

「まったっく、お前バカだろ。それで千雨、イメージで言うとディズニーやカートゥーンを思い浮かべるんだ。なんならリビングのテレビを持って来るか?」

「……」

「おい千雨?」

「いや、大丈夫。何とかなるはず」

「千雨サン、ホントどうしたネ…?」

 

 上の空な千雨に違和感を覚える超とエヴァは二人顔を合わせ首を傾ける。

 彼女はナイーブな時間なのだろうか。そういえば陣痛で痛がっていた筈のオオカミ姿であるが今は痛みを感じていないのだろうか、先程から苦しそうな素振りが見られない。

 超はこの間、出産の準備と足りない物資を補給する為に短い時間の合間をぬって茶々丸を引き連れエヴァ家から飛び出す。元々緊急事態と言うことで千雨の元に駆け付けたのであってこうして余裕がある時に準備を進める最段であった。

 地下室にはソファに身体を預け横になる千雨とエヴァの二人になる。そして千雨は口を開いた。

 

「エヴァ、あいつは何者だ……」

「いきなりどうした…超の事か?」

「あぁ、明かせる所までで良いから教えてくれ」

「良いがどうして今?」

「……超の血に、私と同じ血が混ざってる」

「!? なんだって!!」

 

 血を舐めた時に感じた違和感。沢山の血が入り交じった奥に感じるその味は自分自身の血の味。これは一体どういうことなのか。

 考えられるのは遠い親戚。しかし長谷川家に中華系の親戚など聞いた事もない。

 もう一つ考えられるのはあの神社の狼の家系。遠い祖先にあの狼が居る可能性。言われてみれば超の発言には思わせぶりな発言が多い。ついさっき獣化する時も「何時見ても〜」と発言していた。つまり超の身近な所に喋れる狼が居た可能性が高い。

 しかし長谷川家と例の狼、どちらの血なのか判断するには量が少なすぎる。

 

「うむ…しかし超の身内にオオカミが居たと言う話は聞いた事がないし、そもそも知ってる事が少ない。麻帆良に来る前の情報は皆無だ」

「はぁ!? あいつってそんなに胡散臭いのか?」

「それも彼女はここ麻帆良で何かしでかすみたいだぞ。私にアポを取ってきた時に無関与を提案してきたからな。その報酬が茶々丸だし」

「…あの学園長は何を考えているんだ…?」

「あの妖怪ジジイの考えている事は私にも分からん。私はどうでも良いからその時は放っておいたがな」

 

 そう言ってエヴァはクーラーボックスからペットボトルを取り出し大皿に注ぐと千雨の前に差し出す。それを千雨はゆっくりと舌を出すと口の中に含み、血を洗い流すつもりで濯ぐ。そのままゴクリと飲み込んだ。

 

 途端に目を見開く千雨。

 彼女は驚き、考え、思考し、取り込む。

 それは血に記された証。断片的な思い出。

 超の記憶。一間の追体験。

 その血から読み取れたモノは一片の記憶であり、超と言う存在にたどり着けるモノではない。しかし少なくともこの現状を打破するモノを持ち合わせていた。

 

「……」

「…今は考えても仕方ない。超の事は後回しだ。それで変身出来そうか?」

「…あぁ、大丈夫だ」

 

 超の事は出産後の二人の時まで取って置き、千雨はイメージする。

 あの記憶を元に。

 ベースは人間。骨格や体付きは人と変わらない。変わるのは外見、その周りの容姿。

 骨を人の姿に戻し狼の名残を残しながらも身を引き締める。一本一本の指がモノを持てる形と開いて行く。大きく発達した太ももはそのままで。脚の関節は曲がった形から真っすぐに直立の姿勢を保てる形に。そして前足は細く女性らしい腕となる。

 顔は狼の時とあまり変わらずマズルを保ちながら目線の向きが人に近く内向きにと、どこか人の姿の千雨の面影がある顔に。そして首下にはモコモコの毛が生えた。

 大きな胸の乳房の下に並ぶ小降りの乳房が段となり複乳となる。膨らんだお腹周りの毛は薄く露になる胸。そして恥丘。

 

「…妙に生々しい変身だな」

「初めてだから文句言うな。それよりも服取ってくれ」

 

 水の入った大皿に映るメスの狼姿の獣人。

 エヴァの言う通りディズニーのキャラクターを生々しくした様なその姿はあの記憶のまま。超の記憶の、千雨の姿。

 彼女の記憶を垣間見たその姿は千雨自身。狼であり、人であり、そして今の獣人の姿。その姿を頼りに自身の姿を変えたのだ。

 ゆっくりと立ち上がり身体をほぐしながら身体全体を見回す。

 エヴァから手渡された浴衣を羽織る千雨。狼としての姿が長かったせいなのか羞恥心はそこまで感じない。しかし人の姿に近いのもあって常識的に考えれば服を着るが当たり前と考えるのだが毛皮の上に羽織る布地がまるで服を二枚着る感覚であり違和感を感じる。

 

「毛皮の上の服ってなんか落ち着かないな」

「そう言えば私が見てきた獣人達も露出が多かったり、ゆったりした服の奴らが多かったな。そう言う理由もあるのか」

「私みたいな奴って案外普通?」

「魔法世界ではな。私は見慣れてるしそこまで気落ちしなくても大丈夫だ」

「そうか、普通か…」

 

 普通と言われて嬉しかったのか耳と尻尾をピョコピョコさせる千雨。その様子を見ていたエヴァは無性に恥ずかしくなり顔を赤くする。

 

「んっ? どうしたエヴァ」

「なんでもない、なんでもないぞぉ!」

「声裏返ってるって。なんだよ、恥ずかしいのか?」

 

 くっしっしと口に手を当て意地悪そうな顔を浮かべあざ笑う千雨。エヴァにとって自分のモノである千雨の可愛らしい仕草にドキッとし、その感情が悟られない様に顔を反らす。

 そんなエヴァにイタズラ心が産まれた千雨は浴衣の留め紐を緩め両襟に手を掛けた。

 

「ほらエヴァ、コッチを見ろよ」

「なんだよ…ってブッ!!!」

 

 浴衣を開き裸体を露にする千雨に吹き出すエヴァ。銀色の狼毛が薄暗い地下室の中で艶やかに艶かしく反射する。毛に覆われた身体でありながらお腹周りから陰部に掛けての体毛は薄く身体のラインがくっきりと現れ大きく膨らんだお腹が目に付いた。

 エヴァをからかう千雨。しかしエヴァはため息を吐いたあと千雨に苦言を指す。

 

「いや千雨。今はそんな時じゃないだろ」

「えっ、ダメ? エロくない?」

「セックスアピールは後にしてくれ。今は恥ずかしいとか言ってる場合じゃないからな」

「はっ! つまりこんなモフモフした姿でもこれが平時だと…!?」

「うっさい! そろそろ超達が戻って来るからちゃんと羽織っとけ」

「はいはい、エヴァロリおばあちゃん」

「誰がロリババアだ!」

 

 エヴァは千雨にペット関係、主従関係、家族関係と入り交じった感情を抱いている。

 それがファンタズマゴリアの一件しかり、独占欲であったり。この感情は彼女自身表せるモノではない。もしかしたら恋愛感情を含む可能性だってありえる。

 その複雑な感情をぶつける際に姿など二の次。人でも獣でも獣人でも何も変わらない、全てが長谷川千雨に変わりないのだ。エヴァ自身、一生成長しない不死身の身体。自分にハンデがあるからこそその人個人を対象として見る。それがエヴァの考えであった。

 そうしているうちに天井の方から玄関を開く音が。二人の足音が段々と近づい来ると地下室の扉が開かれる。そこから買い出しに向かっていた超と茶々丸が沢山の荷物と共に顔を出した。

 

「おっ、千雨サン。変身出来たのかネ」

「おう、『超のお陰で』イメージ出来たからな」

「? よくわからないけど良かったヨ」

「えっ……千雨さん、ですか?」

「なんか茶々丸の反応が当たり前な筈なのに妙に新鮮だ…」

 

 ケモノとなった千雨の姿を見て引き気味の茶々丸の反応が一般人としての全うな反応であり新鮮味を感じる。

 と言っても引いてる茶々丸本人がロボットと言う非常識な存在であり、大きな矛盾を抱いているのだがこうも奇想天外摩訶不思議な人生を歩んでいると感覚が麻痺してる気がする千雨。そう言えば教室には幽霊である相坂さよも居ることだし今頃かと半場諦めの境地に。彼女自身が非常識であるがうえの心境であった。

 後日さよの所に顔を出さなくてはとつらつら考える千雨。そうしているうちに超と茶々丸は大学の方から持ってきたのであろうか、簡易的なベッドを組み立て今度は動物としてではなく人間の出産に必要な器具を用意していた。

 

「それで千雨サン、今の千雨サンは人間で言うと開口期、本陣痛の最中ネ。ちょっとゴタゴタが入ったから意識が逸れていたかも知れないけどまた痛みが周期的に襲って恐らく数時間続くヨ」

「ベッドなどを用意したって事は今の姿が人寄りだからか?」

「そう言う事ネ」

 

 超は千雨とエヴァに彼女が考えられる出産の流れを説明する。

 基本人間と流れは同じだが時々獣としての特徴が顕になるだろう。そこら辺も踏まえながら懇切丁寧に解説していく。

 

「それで千雨サン、私たちは席を外すべきカ? 一応飼い主であるエヴァンジェリンさんは置いておくガ」

「えっ? ちょっと待て超。私一人で千雨のお産を手伝わなきゃいけないのか!?」

「なんだよ超。今更抜け出す気か?」

「いや、だって千雨サン。すっごい今更だけど……」

 

「同級生に出産もろともアソコとか色々見られて良いのかネ? 今は比較的人に近いと思うんだガ……」

「「あっ…」」

 

 

 

 「それじゃ私と茶々丸はリビングで待機しておくから何かあったら呼びに来てネ。頑張れ千雨サン! 後エヴァンジェリンお婆ちゃんも」

「おう、ありがとな」

「任せろ、年の功を見せてやる。あと誰がお婆ちゃんだ!」

 

 そう言い残し茶々丸を一緒に退散する超。地下室は千雨とエヴァのみとなる。

 千雨は10分以内という比較的短なループの中で陣痛の痛みに襲われながらも茶々丸が持ってきた子育て雑誌を読みながら気を紛らわせ、エヴァは隣に置いた机で必死に超の持ってきた出産マニュアルをメガネを掛けながら読みふける。

 獣人という常人から逸脱した身体が幸いとなりそこまで痛みに苦しむことがない。しかし次第に間隔が短く、痛みが強くなるのを見るに子宮口が広がっているのは確かであった。

 こうして時間が刻一刻と過ぎていく。そんな中エヴァはメガネを掛け直し本を置くと口を開いた。

 

 そこで話されるのは千雨の今後の人生について。

 子供の子育てや身元の証明、生活や学校など千雨の将来を決めること。それをエヴァは千雨に聞き、まとめ、妥協案を考える。

 エヴァはこの麻帆良では学園長との繋がりが強く権威も権力も全うではないがある程度通じる立ち位置かつ独立したポジション。千雨にとって最高の環境であった。

 エヴァと千雨は互いに言葉を交わし考え、悩み、答えを見つける。それはごく自然の家族としての出来事であり主人としての勤め、そして飼い主としての責任。そして千雨を手放したくない独占欲。それがエヴァを動かす原動力となる。

 そうして二人の会話が一段落し、暫くすると千雨の痛みは更に酷くなる。

 

「んぅう…っ…」

「いいか、肩の力を抜いて長くゆっくりと息を吐くことに集中するんだ。なんならテニスボールもあるぞ」

「だ…大丈夫ぅ……」

 

 周期が短く、痛みが酷い。それは娩出期に入る証拠。

 ここでいきむ訳にはいかない千雨は大きく深呼吸したり姿勢を変えたりしていきみを逃し、痛みを紛らわせる。

 やがて子宮口が全開となるとお腹の子が下降するのが感じられた。それは娩出期に入った証拠。途端に胎児を包んでいる一番外側の幕が破れ、陰部から水が噴出する。

 

「んっ…ぅう…っ。うぅ〜…っ…!」

「良いか! 目を閉じるなよ、私の方を見ておくんだ」

 

 エヴァは千雨の口に布を当てると悶える痛みで顔面の皮膚が内出血しないように目を開けるように指示する。破水した千雨から子供が産まれるまでそこまで時間は掛からない。

 陣痛の波に合わせて何度もいきみ続けると、赤ちゃんの頭が膜に包まれ見えたり隠れたりする排臨の状態に。産道を通って降りてきた子供達の頭の形が膣口とぴったりと合うまで排臨は続く。そして数時間。

 

「ふっ、ふっ、ふっ…ぅ〜ん」

「よし、羊膜が顔を出したぞ! ほれ、ひっひっふー。ひっひっふー」

 

 ラマーズ法で呼吸を整え腹部に力を入れる。会陰が伸びるにつれて感覚的に麻痺し、焼け付き刺すような痛みをともなう。そんな千雨の隣でエヴァは彼女の手を握りながら励まし続ける。そしてまた数時間の格闘の末に膜に包まれた赤ちゃんが膣口から顔を出し続ける状態、発露に入った。

 

「いきむのを止めて呼吸は短く、ハッハッハッと落ち着くんだ」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」

 

 赤ちゃんが一気に飛び出して会陰が裂傷するのを防ぐ為に短促呼吸に切り替える様に指示する。浅く短くなった呼吸が静かに木霊する。そして数回の陣痛収縮の後、遂に出産を迎える。

 

「っ…ぁあ…ぅぐぁあああ…ぅわぁあああぉぉぉんっっっ!!!!」

 

 本能のままに声を出すアクティブバース。人として、狼としての叫び声。

 それと同時に羊膜に包まれた赤ちゃんが立て続けに二人娩出する。エヴァと千雨は一人づつ赤ちゃんが包まれた羊膜を破くと千雨は赤ちゃん達と繋がったへその緒を噛み切り、一人一人鼻と口を舐めて呼吸を促した。

 そして赤ちゃん達が大声で鳴き無事に呼吸している事を確認すると千雨は自分の乳に近づけ授乳する。難なく赤ちゃん達は千雨の乳房に口を付けた事によって、千雨の出産における最大の山場は乗り越えたのであった。

 

 

 

 後産期に入り、後は胎盤が外に押し出され出血が治まるのを待つのみ。その間、千雨はベットに身を任せお腹の上でぐっすりと眠る赤ちゃんに目をやりながら静かに微笑む。

 赤ちゃん達は予想していた狼姿ではなく人の姿でありながら手先や足先、耳や尻尾などが狼である半獣人の姿で産まれてきた。例えるならケモミミ尻尾と獣人の合間であろうが。二人は幸せそうな寝顔を浮かべ乳房を枕に眠る。

 千雨の後陣痛が収まるまでの間に破水などによって汚れたシーツの後片付けに徹するエヴァ。そんな中、彼女はふとある事を思い出すとベットの上の千雨に尋ねた。

 

「なぁ千雨。今更だけど子供の名前って決めてるのか?」

「えっ…うん…。まぁな……」

 

 まさか突っ込まれるとは思わなかったのか尖った爪で顔をポリポリかきながら明後日の空を見上げる千雨。そこには気まずそうな空気が漂う。

 

「なんて名前なんだ?」

「…私って千雨って名前だろ」

「うん」

 

 静かな地下室ですやすやと眠った子供たちの寝息が響く。暫くの沈黙。やがて千雨は気まずそうに口を開いた。

 

「だから千雨から一文字ずつ取って女の子は千、男の子は雨ってのはどうかな…?」

「どこかで聞いたことあるんだが……」

「…うん。後になって気付いた」

 

 こうして長谷川千雨は、数々の苦難の果てに千と雨と言う名の二人の子供を授かったのであった。

 




まさかUQの方でネギと千雨が結婚するとは…驚きと罪悪感で胸が一杯でドキュメンタリーっぽく…なんかスミマセン…

ちう狼は次回で最終回の予定。最後までお付き合い頂けたら幸いです。
感想、評価よろしくお願いします。
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