※この作品はR-18です。

千雨が狼に犯されながら狼になった後、狼をぶち殺す話 【完結】   作:ミキマル

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書いていると長くなりそうだったのでキリの良い所まで。なのでエロはなし。そして次回もエロはない予定。
チャチャゼロとタカミチ回です。


千雨と人形と出会い、エヴァは忘れ物をする話

 それは千雨がエヴァの家に従者と言う名の居候を初めてから1週間が経った時の事である。

 安定期に入っている彼女は元の引きこもり性格と身バレ防止と言う名目で普段テレビを見ながらゴロゴロと時間を潰していた。

 エヴァと茶々丸は学校に向かい、千雨以外誰も居なくなったエヴァンジェリン家。ワイドショーではレポーターが麻帆良お勧めのスイーツショップを紹介しており女性キャスターの甲高い声がリビングに響き渡る。そしてその音をを書き消すかの様にバリバリと骨をかじる彼女。

 言わば煎餅感覚なのであろう。茶々丸から今日のおやつとして渡された骨をソファに寝転びながらかじるその姿は怠慢した主婦の様であった。

 

「あぁ~暇だ……暇すぎる……」

 

 人型となっている千雨のだらけきった愚痴が空しく消え去る。エヴァの加護に入る前の一ヶ月が騒がしい毎日であっただけの事であるがこうも刺激がないとつまらないものであった。自分が長谷川千雨であり、人であった事を隠しているこの身では出来ることが限られているのだ。

 今なら何故、野良猫やペットの犬が寝てばかりなのかが何となくわかる気がする。それぐらいやることがない。そんな千雨は今日もぐた~と眠って時間を潰そうとしていたのであった。

 そんな時である。ふとダイニングに置いてある電話のベルが鳴り響いた。

 エヴァは交流関係が狭いため、滅多に家の固定電話が掛かってくることなどまずない。あったとしても茶々丸が普段所持している携帯電話からである。千雨が居候を初めて一週間が経とうとしているが初めてエヴァ家の電話機の着信ベルを聞いたレベルであった。

「よっこらせっ」と足を降り下ろし、その反動でそのまま跳ねるように起き上がる。手首を振り、首をグルグルと動かしながら固まった体をほぐすとそのままトントンと軽快に向かう。

 そして電話機のディスプレイを覗き込むとそこには『絡繰茶々丸』と表記されていた。

 

 ほいほいと受話器を手に取る。

 この時千雨は失念していた。ほぼ無意識である。

 彼女は隠していた“長谷川千雨”として受け答えしようとしたのだ。普段は狼の姿であり、喋らない自分が人型の状態で受話器を取って受け答えする。それはつまり自分の隠し事がバレてしまう可能性が格段に上がってしまう一因であり、相手になにかしらの疑いが持たれるトリガーであった。

 そんな事も考えず着信を取るため受話器を本機から外そうとする彼女。

 

『オイオイ、電話二出テ大丈夫ナノカヨ』

 

 不意にリビングから聞こえる声。

 咄嗟に声の聞こえる場所に身を振り替え警戒する千雨。狼の本能による警戒心が格段に引き上がり、尻尾と耳がピンと立ち上がる。

 一体何事であろうか。今だ鳴り響く電話機を背にゆっくりとリビングへ向かう。

 今は茶々丸の電話より侵入者であろうこの声だ。一体何者であろうか。

 一歩一歩慎重に歩む。襲いかかれても大丈夫な様に警戒心も忘れない。

 

「おい! 誰か居るのか」

『ココダゼココ。収納ノ上ダ、ホラココ』

 

 そう受け答えられその方に目を向ける。

 目を向けた先、そこにはDVDやビデオなどが収納されている収納が置いてありその上にはエヴァが製作したであろう数々の人形が置いてあった。

 

『ソノ前ノ人形ヲドカシテクレ、オレハ動ケナインダヨ』

 

 言われるがまま手前の人形を退かして行く。そして切り拓かれた先。そこにはゴスロリ風の服に身を包んだ一体の人形が。そしてその人形が喋りだす。

 

「ヨウ、オレハチャチャゼロ。オマエト同ジエヴァノ従者ダ。ヨロシクナ後輩」

 

 呆気とられる千雨の後ろで電話の着信音は止まり、ピーと言う音が鳴った後に茶々丸の声で伝言が吹き込まれる。その声が静かになったリビングの一人と一体の間を流れていったのであった。

 

 

 

「つまりお前はエヴァの従者であり、茶々丸の姉でもあるのか」

「ソウダゼ、妹ハロボットデモ分類上ハ人形ダカラナ。俺ト妹ハドール契約ヲ結ンデイルンダゼ」

 

 机の上で酒瓶片手に喋る人形とソファで胡座をかくケモ耳尻尾の少女。

 そんな彼女の右手にはお猪口が備わっており二人は真っ昼間から酒を嗜みながら交流を深めていた。

 出会って当初、エヴァの魔力不足で動くことの出来ないチャチャゼロは部屋の魔力濃度を上げるように頼む。

 いわれるがままあの忌々しき狼から略奪した知識を用いてこの部屋一体の魔力濃度を上げて行くと喋るだけであったチャチャゼロと言う名の人形は立ち上がり一体の人形の背中に手を突っ込んだ。

 そして引っ張り出したその手には隠されていた酒瓶が握られており、せっかくなので二人で親睦を深めようと与太話しながら飲む事になったのだ。

 

「そう言えばエヴァって何者なんだ? 人外ってのは何となくわかるんだが力も弱いし」

「オマエ知ラナイデココ二来タノカ。ソリャ傑作ダ、ハッハハハ。

 吸血鬼ダヨ、ソレモ真祖ダ。封印サレテイルケド」

 

 千雨はチャチャゼロを通して様々な事を知る。

 エヴァの正体から関係性、関東魔法協会、そしてこの街、麻帆良についてなどなど。

 それは今まで千雨が予想や推測で考えていた物の答え合わせであり、彼女は真剣に耳を傾け食い入るように話を聞いていた。

 

「……トマァ、ソンナ所ダナ。ソレデ次ハオマエノ番ダゼ。

 オマエハ人ノ姿ニナレル事ヲ隠シテイル事ナド、ウシロメタイ事ガ多ソウダカラナ。場合ニヨッテハオレハエヴァ二伝エナケレバ、ケッケケケ」

「それは……」

 

 そして次は千雨の番となる。

 チャチャゼロはこの一週間私の事を人形の隙間から観察していた。ここで変に嘘を付いたり誤魔化したりするのは現状、得策ではないだろう。

 墓穴を掘ってしまう可能性が大である。ここは素直に述べるべきであった。

 そして千雨はこれまでの経緯を掻い摘んで説明する事となったのであった。

 

「ハッハハハ。オマエッテ人間、ソレモゴ主人ノ同級生ダッテ。驚イタワ」

「何だ悪いか。こっちだって色々大変だったんだぞ。笑われたくない」

「スマンスマン、デモ良カッタジャネーカ。元人間同士、ゴ主人トハ仲良ク出来ルンジャネーカ」

「んな簡単な事じゃねーよ全く。人形は気楽で良いな」

「人形ダシナ、ハハハ」

 

 軽口を叩く人形とため息を付く彼女。彼女はこれから先、どの様に立ち回れば良いか悩み頭に手をやっていた。

 正直、バレるとしてももう少し時間が欲しい、せめてお腹の子を産んでからだ。

 もしその前にバレてしまうと堕ろされる可能性がなくもない。人間の倫理的観点からしてそちらの方が正しいだろう。まぁ人ではないのだが。

 

「それで……エヴァに私の事を伝えるのか」

「オマエハドウシテ欲シインダ?」

「今はちょっと。せめてこの子達を産んでからにして欲しい」

「ソウカ、イイゾ。元々話スツモリハ無カッタシナ」

「ほ、本当か……?」

「コンナ面白クナリソウナ事ヲ自ラ潰シタリシネーヨ」

「……」

 

 性格や言葉遣いがかなり乱暴で残忍であるチャチャゼロ。そんな彼にとってこのような面白い話は類になく、退屈な日々に刺激を与える良い塩梅となると言う考えであった。

 

「性格悪いなお前」

「イイジャネーカ、オマエト俺トノ秘密ダゾ」

「そう言うと更に気持ち悪い」

「ハッハハハ、イイネイイネ。ホラモウ一度乾杯ダ」

「はいはい、わかったよ。ほら従者同士……」

 

「「乾杯」」

 

 

 

「……ソー言エバ伝言メッセージ、ドウナッテンダ?」

「あ、忘れてた」

 

 

 

 場面は変わってここ、2−Aの教室。

 休み時間となりわいわいと騒がしくなる同級生達を前にエヴァは机をトントンと人差し指で叩いていた。組んだ足は貧乏ゆすりしており、彼女が如何にイライラしているのが解る。

 

「おい茶々丸、アイツには連絡ついたのか」

「いえ、留守電でした。おそらく眠っているのではないだろうかと」

「えぇえいクソ。こんな時こそでペットであり、従者であるアイツの役目だろう!」

「……その前に狼のちうさんは電話がとれないのでは?」

 

 ハッとその事に気が付くエヴァ。

 授業をサボる事が多いエヴァであるがその事を良く思わないタカミチが今日一日エヴァを監視するため、クラス見学と称して教室の後ろに待機している。

 普段NGOの活動として教室に顔を出すのが少ない彼である。周りのクラスメイトにとって納得のいく理由であり、オレンジ髪のツインテールの子なんかは顔を赤くし恥ずかしさで教室の後ろを振り向けないでいた。

 そしてお昼休み明けの5時間目は体育である。サボる事前提で登校していたエヴァが体操服など持ってきてる訳がなく、仕方がないのでうちにいるあの狼に持って越させようと言う算段であった。

 

「……だ、だが何とか出来ない事はないだろ?」

「取り敢えず伝言メッセージに要件は吹き込んでおこましたので気が付いたら持ってきてくれると思いますよ」

「クソ……あの駄犬め」

 

 自業自得である。

 

 そうして昼休み。

 作ってきたお弁当でワイワイと盛り上がるグループや売店のパンやゲテモノジュースを片手に飲み食いしながら図書館島について語り合うグループ。食堂に食べに行くグループもあれば中華料理を食べにいったりする人などなど。

 学生一人ひとりが自由にお昼休みを過ごす中、エヴァと茶々丸はタカミチと一緒に超が経営する中華料理屋台「超包子」で昼食を頂いていた。

 

「それで、何か聞きたいことがあるんだろタカミチ。普段、私を監視なんかするような事しないからな」

「わかっていたのかエヴァ。でも授業に出て欲しいってのは本心なんだけどなあ」

「言ってろ、それでお前が聞きたいのはあの狼か」

「そうだよ。エヴァ、あれは何者だい?」

「ただの神狼だよ」

 

 それからエヴァはタカミチにあの狼に出会ってから解かっている事を話す。

 しかしながらエヴァ自身、未だにあの狼について分からない所が多く、そして知ろうともしていなかった。元々互いに詮索しないと言う契約であり、知る気もないのだ。

 彼女にとってその様な事どうでもよかった。

 

「しかしどうしたタカミチ。あいつについて何かあったのか?」

「そりゃあるさ。只でさえ魔法先生、生徒から警戒されてるエヴァが新しい戦力を手に入れたんだ。先生たちの反発もあるし自分たちの身の安全を考えると意見する事も止む得ない事さ」

 

 そう言いながら小籠包を摘むタカミチ。

 蒸し器でホカホカに蒸らされた小籠包の先端を摘むとそのまま生姜が千切りされた酢醤油に着ける。そして千切り生姜と一緒に口の中に運ぶと熱々の肉汁と酢醤油の酸味、生姜のさっぱりさが合わさって素敵なハーモニーを生み出していた。

 

「それに彼女の件もあるしね……」

「彼女と言うと……」

「そう、千雨君の事だよ」

 

 美味しそうに食べる彼を横目にゴマ団子を頬張るエヴァ。しかしこの時、彼女の箸が止まっていた。

 

「一月前から行方不明。手がかりは当時の所持物とバラバラになった洋服。現場に飛び散っていた血痕からは長谷川千雨とみられるDNAも発見される、ね……」

「あの後、学園長がなんとか関西に連絡を取り付ける事が出来たんだ。神社職員も把握していなかった社殿だから元々の管轄である関西に聞いてみたんだけど……」

 

 彼は箸を醤油皿の上に置き、遠くを見つめる。

 そこには他学年の生徒達がキャピキャピと騒ぎたっており、如何にも学園生活を楽しんでいるのか伝わってきた。

 

「けど、なんだ?」

「資料提供は断られた、だけど大まかな概要は発覚したよ」

 

 そしてかれの口から紡がれる。

 

「彼処に祀られていたのは狼だ。

 それも眷属信仰の大口真神とは別に神格化したもの、周囲一帯の土地神などと同じ側面を持っている」

「でも彼処の主神は伊邪那岐と伊邪那美だろ? どう言う事だ」

「元々土着信仰として狼を祀られていた場所に建てた神社が三峰神社らしい。なので元は別系統だ。諏訪神社と同じだよ。

 関東が当時、そこを封印した原因は神仏分離と似たような理由じゃないかと思ってる」

「つまり……」

「あぁ、あの神狼はそこの神様の可能性、またその関係者であり千雨君についての最重要人物、いや最重要神様なんだ。僕と学園長はそれを懸念してる」

 

 そう言って一度コップに注がれていたプーアール茶を手に取る。ゆっくりと口に持ってゆき、軽く一服。そうしてタカミチは自分を落ち着かせていた。

 

「学園の対応は?」

「知ってると思うけどクラスの子達には短期留学、親御さんには記憶操作を掛けてるよ。

 そして魔法協会で必死に捜索中。死体が発見されていないのが唯一の救いだよ」

「そうか……」

 

 そういってエヴァは茶々丸からタカミチと同じくお茶を注いで貰う。2人の間には重苦しい空気が漂っておりそんな中茶々丸は居心地悪そうにそわそわしていた。

 そんな時茶々丸に一匹の救世主が現れた。彼女はエヴァに耳打ちする。

 

「マスター。ちうさんがやって来ましたよ」

 

 

 

 チャチャゼロとの一杯を楽しんでいる最中、伝言の存在を思い出した千雨。

 恐る恐る再度、音声メッセージを再生してみるとそこには茶々丸からエヴァと自分の分の体操服を持って来てくれと言う頼みであった。

 持って来ることなどなんら問題はない。茶々丸はメイドとして普段から体操服一式など揃えてラックに掛けているので後は学校まで運ぶだけである。

 

「という事で行ってくるわ」

「オウ、気ヲ付ケロヨナ。ボロヲ出スンジャネーゾ」

「分かってるって」

 

 そう言って千雨は前足を床に置くと手先と足先から毛深い獣毛に覆われる。

 爪は太く長く曲がり、手のひらと足の裏には衝撃を抑えるための柔らかな肉球が浮かび上がる。尾てい骨から伸びたフサフサの尻尾がさらに大きく、太くなり手足の骨格が急速に作り変えられ、配置が中心線に寄るように内側に持っていかれる。

 鼻は前に前に伸び、それに釣られて唇や歯の配置など口全体が前に持っていかれマズルを形成。鼻は黒く湿り、獣毛に覆われそのまま首を辿って身体全体に広がって行く。

 そうして身体中の骨格と体格が一回り、二周り移り変わるとそこには一匹の銀狼が姿を表したのであった。

 

「ソレッテ質量保存ノ法則ハ何処イッタンダ」

『うっさい、十分ファンタジーのお前には言われたくない』

「ソリャソウダナ」

 

 一瞬で獣化する姿を観察しながら茶化す腹黒人形とリアリストだった銀狼。

 千雨はラックに掛かった体操服入れの紐を口に加えると顎でハンドルを下げ玄関扉を開く。

 

『行ってくるからな。片付け頼んだぞ』

「オーケーオーケー、行ッテコイ」

 

 そうして千雨は2ヶ月振りの学校へ足を向けたのであった。

 




 一月おきの更新となってる今作。次回も2月になる予定です。リアルが落ち着くまで変わりにTwitterでも覗いておいて下さい。

【挿絵表示】

Q.あれ? 挿絵が付いてる‼
A.そうです、描いて貰いました。名も知らぬ描きあきさん、ありがとうございました。
 ただリクエスト時に色の指定をしていなかったので銀狼ではないと言うミス…。
『狼とエヴァ』と言うコンセプトアートと言う事で。

 感想、評価宜しくお願い致します。
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