超エキサイティンッ!!
どっかで見覚えがあるのは仕様。
だって書いた魚類が一緒だもの。
第一話
「……お。新規クエストか」
一人の青年がパソコンに向かって小さく呟く。
彼の名は野口 聖耶。一般的な社会人である。
しいて言うならば、彼はゲーム好き……特に国作りなどをするシミュレーションゲームが好みだ。
そんな彼が今プレイしているのはブラウザ型ネットゲームと呼ばれるものである。
最近のブラウザ型ネットゲームも多岐に渡り、その中では対人を前提としたシミュレーションゲームもある。
そんな彼も、自分の都市を繁栄させ、他のプレイヤーとの戦闘に明け暮れるプレイヤーの一人だ。
聖耶は、マウスを動かし、新しく表示されたクエストウィンドウをクリックする。
「何々……亜人を保護し、国を繁栄させよ……?」
聖耶は怪訝そうに首を傾げる。
このゲームは、資源を稼ぎ稼いだ資源でオブジェクトを設置し、そのオブジェクトの効果で兵士を生産・強化して戦争を行っていくと言うゲームである。
確かに設定上、亜人と呼ばれる種族などが存在するのは事実だが保護がどうだとかそう言った細かい作業は設定されていないのだ。
「まぁ……受諾しておけばそのうち条件も満たすか」
ぽちっとな、と呟きながら、聖耶はイエスをクリックする。
その瞬間、パソコンの画面が眩しい光を放ち、聖耶は声をあげる間もなかった。
彼の意識は、その白い光に飲まれて断絶したのだった。
「……なんだったんだ、すっげぇ眩しかったけど」
眩しい光に目が眩みながらも聖耶は周りを見回す。
そして、次の瞬間には疑問を抱くこととなる。
「……何これ」
そう、彼がいたのは彼の部屋ではない。
例えるならば、キャンプ先にあるログハウスやそう言う類の部屋の一室にいたのだ。
夢か、と思い聖耶は頬をつねってみるが、痛みがあったので夢ではないことにした。
「意味わからん。YESをクリックしたらログハウスにいましたとか訳がわからん」
「疑問にお答え致します」
そう呟いた彼の言葉に唐突に返事が返ってきた事に聖耶は心底驚き、振り返る。
彼の背後にいたのは、濡羽鴉色の髪を腰元までまっすぐ垂れ流した女性だった。
身長は聖耶より若干低めなので160後半、その瞳は空のような青い色。
顔の作りは美少女としか形容のしようがない程に整っており、その格好は……突っ込み所しかないが、メイド服であった。
メイド喫茶などで見られるミニスカートなメイド服などではなく、古めかしいクラシックメイド服と呼ばれる部類のメイド服だ。
「……あー、えーと、君は?」
「この度、セイヤ様の補助を命じられ、セイヤ様のお傍付きとして御仕え致しますオートマタ・カリンと申します」
カリンと名乗る少女は、その手を腰の前に揃えたまま、深々と頭を下げる。
ますますを持って聖耶は混乱をしていた。
何故ならば、彼は一般的な社会人であり、富裕層ではない。メイドを雇う余裕もないし、雇った覚えもないからだ。
「あー……えーと、じゃあ、まず最初に。ここ、どこ?」
「はい、ここはセイヤ様の世界で言うヴェルゲグリムになります」
ヴェルゲグリムとは、聖耶が謎の光に包まれる前にやっていたネットゲームの設定に乗っている単語なので聖耶にも覚えがあった。
そう、そのネットゲームにおける世界観の一つで、その世界の呼称だ。
「……異世界トリップ? ははは、まさかご冗談を」
「いいえ、事実です。セイヤ様は、セイヤ様の世界で言う異世界トリップと言う事象が起こっています」
マジかよ、と呟く聖耶に、はい、マジですと丁寧に返すカリン。
聖耶もこうなったら認める他無い。認めたくはないが、認める他ない。
「テンプレート的だな……いや、しかし事情を把握していて、なおかつ、事情に詳しそうなカリンさんがいるだけマシなのか……?」
「多くのテンプレートなどを存じておりますが、非常に恵まれた環境だと推察出来ます」
零した言葉の一つ一つにも、カリンは丁寧に答えていく。
聖耶は考えた。カリンと名乗ったメイドは、聖耶の補助の為に命じられたと言った。
つまり、彼女は聖耶を手伝ってくれる、と言うことである。
だが、その前に追求せねばならないことが、聖耶にはあった。
「補助を命じられたって言ってたけど誰に? あと、俺は帰れるの?」
「前者の質問に対する回答はこちらの世界神にして世界意志でもあるグリムに当たります。後者の質問に対する回答は、不可能です」
「マジかよ……」
聖耶は愕然とした。
見知らぬ世界に唐突に連れてこられて、帰れないなどと言われたのだ。
あまりにも衝撃的過ぎて、暴れなかっただけ聖耶は落ち着いている方であろう。
「正確に申し上げるならば、帰る必要がない、と言うべきでしょうか」
「帰る必要がない?」
「セイヤ様は元の世界におられます。今、ここにいるセイヤ様は、元の世界のセイヤ様の魂のほんの少しから作り上げられたこちらの世界のセイヤ様なのです」
つまり、"セイヤ"は、野口 聖耶と言う存在の欠片から作り上げられた同じ魂、同じ体、同じ記憶を持つ別人なのだそうだ。
故に元の世界の野口 聖耶は、普通に何の影響もなく元の世界で生活している為に、こちらにいる"セイヤ"は戻る必要がない。
仮に戻ったとしても、野口 聖耶が二人に増えると言う意味不明な現象が発生するのだ。
「解った。なんか納得出来ないけど納得しとこう。で、俺は何の為にこっちに来たの?」
「亜人の保護が、セイヤ様に求められる使命です」
「それがそもそも、よくわかんないんだけど」
それを聖耶が告げれば、嗚呼、と納得したようにカリンが呟く。
申し訳ありません、とカリンが小さく頭を下げれば、聖耶をその水色の双眸で見やる。
「では、長くなりますが、ご説明致します」
ヴェルゲグリムでは、ヒューマン、つまり人間とエルフ、ドワーフ、ノーム、フェルプール、エルダーの五つの亜人が存在する。
そして、この世界の覇権を欲しいがままにしているのは、人間である。
人間は、亜人よりも脆弱な体に短い寿命を持つが技術開発や環境対応性に優れ出生率も高いと言う特徴を持つ種族だ。
亜人に比べて増える速度が速い人間は、多くの国を乱立させ、そして争いながらその技術力を高めていった。
しかし、ある時から人間は、互いに向け合っていた矛先を亜人に向けたのだ。
そこには様々な理由があったが、兎にも角にも亜人たちに人間はその牙を向けた。
個々の能力は亜人たちに劣るが、その物量、そして、亜人たちを倒す為の技術を練磨させ発展させていく速度は、異常なまでに優れていた。
それどころか、亜人たちの技術すら模倣し、自らの技術として変遷させていく器用さすら持っていたのだ。
あっと言う間に亜人たちは追い詰められ、大陸中に散り散りになっていった。
そうして、人間は亜人から奪い取った土地から更なる発展を遂げていった……。
しかし、それを望まぬモノがいたのだ。
それが、亜人どころか、人間すら信仰しているこの世界の神でもあり世界の意志の体現者でもあるグリムであった。
だが、グリムは、この世界を作り上げた際の契約により、世界への直接的な干渉を行えなかった。
そこで、グリムは異世界の神々に頼み、そしてその異世界の神々が管理する世界の中から特に優れた魂を借り受けて、世界に誕生させたのだ。
「……つまり、それが俺ってこと?」
「はい。セイヤ様がそれに当たります」
いまいち信じがたい話であるが、もう実際に事が起こっているのだから信じられないだとかわめき散らしても仕方ない。
そう考えている聖耶は、次なる質問をカリンに投げかけることにした。
「特に優れた魂って言ってたけど、俺はそんな特殊な力ないよ」
「はい。ですがセイヤ様は、こちらの世界で誕生した際に多くの力を授けられています」
「え、マジで。って言うかそんな力授けても良かったの?」
「はい、マジです。セイヤ様が選ばれたのは、ただの一欠けら程度ですらそう言った力を授けても問題の無い程力を秘めた魂だったからです」
なんとも衝撃的なお話である。
だが、世界神でもあるグリムに命じられたと言うカリンが言うのだから間違いはないのだろう。
カリンが謀っている、と言う可能性もないとは言えないが、現状謀る意味もわからないので鵜呑みにしておく聖耶である。
「で、与えられた力って?」
「第一に不老と超再生能力です」
「不老はともかく、超再生能力?」
「はい。セイヤ様を死亡させるには、重要器官である頭部、主に脳と、胴部、主に心臓を同時に破壊しなければいけません」
それって実質的に不老不死じゃね、と思ったが、口には出さずにいる聖耶であった。
絶対に死なないのと死ぬ可能性があるのとは大きな隔たりがあるからだ。
「他には?」
「はい。性行為を行った人物にも不老と超再生能力を与えることができます」
「は? 何そのエロゲ」
何そのエロゲ、と言われてもおかしくない設定である。
そもそも、そんなものを授けて何の意味があろうと言うのか。
「世界意志グリムが、自らの願いを以てセイヤ様をこの世界に誕生させました。言わば、これは世界意志であるグリムの我侭なのです。セイヤ様といた世界とヴァルゲグリムは大きく価値観や常識などに隔たりがあります。つまり、セイヤ様は巻き込まれただけとも言えます」
確かに聖耶は巻き込まれただけである。
しかし、元の世界に野口 聖耶が存在する以上、セイヤとして生まれた彼がそれに怒りなどを覚える必要は欠片も無い。
「そりゃそうだが、それとこれと何の関係があるんだ?」
「誰かを愛しいと思ったり、愛したりもするでしょう。そう言った人々と永劫の別れを何度も経験させるには忍びないとグリムは考えたようです」
「……随分とこう、なんだ。人間臭いなその世界神」
「そもそも、亜人を生み出した理由が、異なる隣人も愛して欲しいと言う願いからですからそういう面も多く持ち合わせているのでしょう」
「まぁ、いいや。他にはないの?」
「二番目の能力に関係しますが、セイヤ様の精力などが増強されています」
「まじでエロゲだなおい! などって例えば?」
「例えば男性器などが一般平均より遥かに巨大で、なおかつ、射精量も一般平均を遥かに上回り、また、絶倫です」
黒髪の美少女が、卑猥なことを口走っているのだが、あまりにも淡々としているせいでそこにいやらしさは見えない。
いや、ある意味これはこれで萌えるのかもしれないが、突っ込み所がありすぎて突っ込み切れない。
と言うより、腰に感じていた違和感はこれだったのか、と聖耶は思ったのだ。
「……うん、まぁ色々突っ込みたいけど、他には?」
「はい。これがセイヤ様最強の力とも言えるでしょう。物質生成設置です」
「……ごめん、意味がわからない」
物質生成設置。
言葉からすれば、何らかの物質を生成し、設置する能力なのだろう。
だが、言葉だけを見ると漠然とし過ぎていて何が出来るのかがさっぱりわからない能力である。
「セイヤ様に解りやすく申し上げるのならば、セイヤ様が想像したオブジェクトを設置する能力です」
「あー、つまり、城壁や練兵場とかを設置する能力なのか」
「はい。セイヤ様がプレイなさっていたゲームに近いものです。ただし、それよりも優れている点と劣る点もありますが」
「じゃあ、説明してくれるかな」
「畏まりました。ご説明致します」
物質生成設置能力とは、聖耶の魔力を消費して物質を生成して、指定した地点に設置する能力である。
生成できる範囲は多岐に及び、建造物から、固定式の攻城兵器、それどころか指定地域の土壌改善すら行える。
土壌改善については、ゲーム中における畑の建造に当たるであろうことを聖耶は推測をつけていた。
無論、中身の設備なども完全に再現して設置が可能と言うとんでも能力である。
しかも、消費するものはあくまで魔力であり、資源・資材などは一切使わないし、寝て回復するような代物を消費するだけと言う反則も反則な能力である。
ただし、何でも出来ると言うわけではなかった。
まず一つ目に、同時に実行できる作業は五つまで。
余談だが、城壁や柵などと言った長く張り巡らせる必要があったりするものは指定した範囲から範囲までで一つと数えるらしい。
そして、二つ目。一つ作るのに12時間かかること。
しかも、一つ作る、と決めたら追加は出来ない。
複数個の施設を作りたければ、最初から複数個の施設の作成を行うか、既存の作業が終了するまで待つしかない。
三つ目は、あくまで作れるのは施設だけ、である。
攻城兵器、例えば大石弓……バリスタを作っても矢はセットではない。
これよりも致命的なのは、施設を作っても運用する人間その物がセットで付いてくるわけではないことだ。
例えば製鉄所を作っても、製鉄できる施設が出来るだけで製鉄できる人間も一緒についてくるわけではない。
森林と言う施設と言うかオブジェクトを設置してもそこに動物が住み着いてるわけではない。
つまり、動物が住み着くかどうかは、その設置した森林の環境次第だし、設置した設備が運用出来るかは、保護した亜人次第と言うわけになる。
結論から言うと、とりあえず人をまず確保して人口を増やしていかないとならない、と言うことである。
次に説明されたこともなかなかに厄介なことだった。
聖耶は、国の長となるべき人であり、その国の現状を見る事が出来るのだ。
聖耶はカリンにやり方を教わり、展開をしてみた。
国名:無銘
宗主:セイヤ=ノグゥツィ
人口:2/2
食糧:2/0
技術:0
魔法:0
農業:0
治安:0
彼の目の前に半透明のウィンドウにはそのように書かれていた。
聖耶は首をかしげてカリンに問いかける。
「何もしてないから技術・魔法・農業・治安が0なのはわかるが、人口と食糧の現在値が最大値を上回ってるのはなんだ?」
「はい。人口と食糧は主な目安であって絶対的な数値ではありませんが、最大値を上回った数だけ衣食住のうち、食と住が満たされてない住民の数になります」
「なるほど。つまり今あるのはこの家だけだから、食糧事情は改善されてないからこうなってるのか」
「ご理解いただけたようで幸いです」
「……じゃあ、とりあえず食糧事情だけでも改善しとくか」
聖耶はそう言うと、自らの家の周りを指定し、とあるオブジェクトを設置する。
設置の作業が完了し、家の窓から見てみるとまるでビデオを高速再生したかのように樹木が生育していく。
「何をなされたのですか?」
その様子を見て、カリンが怪訝そうに首をかしげて見やる。
可愛らしいそのしぐさを見て、一瞬胸が高鳴ってしまった聖耶であったが気を取り直すように小さく一度咳き払いをする。
「果実の樹を五つ植えてみた。一つでどれだけの食糧になるかはわからんけど二人なら十分だろ?」
「果実の樹ですと、一本あたり平均的な人間を5人を養うだけの食糧が得られます」
「……植えすぎたか? いや、まぁいい。どうせいつか必要なことだし。そういやそれで気になったんだけど世話とかする必要あるのか?」
「果実の樹のことでしょうか? 世話をする必要はございません。ただし、実を取り尽すと自動的に消滅します」
「便利なのか不便なのかわかんねえ!!」
そんなことを叫ぶ聖耶と、それに小さく小首を傾げて見やるカリン。
でこぼこ主従の異世界ヴェルゲグリムの建国記は、ここから始まったのだ。
と言うことで投稿。
一応かつて書いた所まではネタがあるのでそこまでは予約投稿でシュート超エキサイティン。
続きはようこそ妖精郷と同じでのんびりお待ちください。