結論から言うとフィルを美味しく平らげてしまった聖耶である。
小柄な体に入るのか、と心配になったが入ってしまった。
それどころか根元まで突きこんで、そこで吐き出しまくった。
性魔法の影響なのかはわからないが、自重が効かなくなりやすくて困る。
と言うか処女相手に酷いことをしたものである。
「……OH……」
ステータスウィンドウを開くと60ポイント溜まっていた。
もう迷わずにSTR20、AGI10、MND10、DEX20にいれる。
これにより、聖耶のステータスは
名前 :セイヤ=ノグゥツィ
性別 :男性
年齢 :25
STR:70(B)
AGI:80(B)
VIT:38(D)
INT:100(B)
MND:50(D)
DEX:70(B)
MGC:255(EX)
となった。
VITとMNDが低めが未だに追いついてはいないが、大陸最強の剣士である剣聖にSTR・AGI・DEXが追いついた。
つまり、彼は最早一線級の戦士であり、無双モードに入れる可能性が出てきたのだ。
「……そういえばスキルは……」
『NEWSKILL!!
剣技スキル:アースクラッシュ
剣技スキル:メテオスラスト
剣技スキル:フィニッシュピアース
剣技スキル:サイクロンウェイブ
を取得しました。』
「……大剣技ってなんぞ……カリンそんなの持ってなかったぞ……」
カリンは所謂技スキルと呼ばれる上記のようなスキルは持っていない。
これらの技スキルは、魔力を瞬間的に指向性を持たせて爆発させることにより事象を叩き起こす技術だ。
そして、カリンはそんなことをしなくても物理的な力だけでその手の事象が起こせる。
つまり、大地を叩き割ると言う指向性魔力爆破を行わずともカリンは、その蹴り一発で物理的に大地を叩き割ることが出来る。
故に、カリンは持っていなかったのだ。必要性がなかった為に。
「……あとで使い方を教えて貰おう」
隣で力尽きたように眠っている蒼髪の少女を撫でてから聖耶は身を起こす。
なお、致した後の惨状は寝てる間にカリンがどうにかした様子で清潔その物である。
疑問点としては眠っている二人をどのようにしてどかしてベッドのシーツを入れ替えたかであるが、気にしないことにした。
「エルさんの所に行って今後の事を話し合わないと」
もそもそ、と着替えを終えてから、フィルをもう一度撫でてから部屋を出て行く。
……後々、隣に聖耶がいない事に気づき慌てながら追いかける少女の姿が確認されたとか。
「ふむ……なるほどのう」
エルの所をたずねた聖耶が真っ先に聞いた事は、治水計画についてである。
この集落は、西の山脈から流れる川には若干遠い。
これらの更新作業は、屋外タンク程度の規模なら古代魔法の使い手が三人もいれば出来るらしいので問題はない。
が、農業用水やそのへんともなると規模が段違いになってくる。
そんなものを更新出来るのは聖耶だけだし、聖耶は死ぬ可能性が著しく少ないとは言え、死ぬ可能性がないとは言い切れない存在だ。
彼一人いなくなったら水が枯れてしまいました、ではお話にならない。よって川から水を引き込みたい。
しかし、聖耶には治水の専門的知識はない。そこで農耕種族であり、自然魔法を持つノームの長に話を持ってきたのだ。
「お話はご理解出来ました。計画もこちらでまとめてから、セイヤ殿に提出しましょう」
「それならいいのですが……作業とかは大丈夫です? 手伝うところとかあったらやりますけど」
「ああ、いえ……ノームの民とエルダーの民で作業をすれば一週間ぐらいで出来ますからの」
「え、速すぎじゃないですかそれ」
「古代魔法は偉大ですのう」
精霊魔法に引き続き、古代魔法のチートさも判明した。
大地を削減する古代魔法などを利用すればいいだけなのだが、古代魔法の数が多すぎて正確に何があるのかわからない聖耶にはどのように作業を進めるのかが解らない。
あとでゴンさんを尋ねて古代魔法のあれこれについて教えて貰おうと決意する聖耶であった。
「本当に手伝わなくても大丈夫です?」
「いやはや、セイヤ殿には他にやらねばならないことや、やって頂きたいこともありますしの」
「お伺いします」
「治水については我々が担当しますが、その間、それにかかりきりになってしまいますからのう。セイヤ殿はどうやら水田を作りたいご様子。下準備程度でよいのでそれらを容易しておいて頂きたい」
「ああ……なるほど。他に何かありますか?」
「あとは……ドワーフの民やフェルプールの民も連れてきて欲しいのが本音ですな」
「理由をお伺いしても?」
ドワーフをつれてきて欲しい理由はぶっちゃけると作業道具の問題である。
ドワーフは技術屋で職人肌で研究家である。
彼らは日夜、どのようにすればより効率的に作業できるか、と言うことを考えながら日々、金属具を作り上げる。
農具なども、彼らの手で誂えられたものも多く、彼らがそばにいるのと、いないのとでは大きく違いが出る。
フェルプールの民を連れてきて欲しい理由は、単純に戦力問題だ。
ノームの民たちを受け入れたことでこの集落も100人を軽く超える規模になってきた。
小さな村と言っても良い規模になってきているのだ。早々に人間たちにここは捕捉されるだろう。
ここは聖耶の契約大地である為に、早々抜かれることはないだろうが物事に絶対は生じない。
エルフも、ノームも、エルダーも直接的な戦闘はあまり得意とはしていない。
そう言う彼らの被害を減らす為にもドワーフ製の装備やフェルプールの直接戦闘能力と言うものは得がたいものである。
「なるほど……」
精霊魔法は大地に根ざした魔法である。
東南は草原地帯な上、そちらに及んでいる契約は僅か1km弱しかない。
聖耶ならば、大地を制御して歩兵や騎兵は食い荒らすことが出来る。
ここが"普通の中世時代"だったならば、それは最早絶対的な攻撃力と防御力を誇る。
しかし、ここは"ファンタジー"な世界なのだ。
そして、聖耶の世界では、制空権を得ると言うのは戦略・戦術的に絶対的優位である。
この世界に戦闘機・爆撃機は存在しないだろう。だが、航空戦力は存在する。
ドラゴン、グリフォンやペガサス……そういった空を飛ぶ生物を駆る騎兵が存在するのだ。
最も、彼らは空からの急降下突撃や、大した射程の無いブレスを吐き付ける為に低空飛行をし、ブレスを吐きつけてくるなどと言う戦術を取る。
だが、彼らは人間である。そう、人間なのだ。
如何に世界が違えど、人間の発想力と言うものは変わらないだろう。
焼夷弾を作り上げ、爆撃をかけてこない、なんて断言しきれるものではない。
そして、敵が爆撃戦術を完成させた場合、精霊魔法は最早絶対のものではなくなる。
そう、"大地に根ざした"魔法は、空には及ばない。
古代魔法を使えば、空間爆裂などで迎撃は可能であろうが現在はエルダーは僅か22人しかいない。
しかも、彼らも今後その手の土木作業に従事したりしてもらう予定でもある。
一週間や二週間と言った電撃的侵攻されるとは思ってもいないが、仮に今のエルダーが全員揃っていても22人で航空戦力を全て撃退しきるのはまず無理だろう。
そうなると、戦力の増強はしておいた方が無難である。
「うーん……じゃあまずはドワーフの民の受け入れ準備ですね」
フェルプールは今どこにいるかさっぱりわからないので、情報を得次第受け入れることにした。
今すぐドワーフを迎えにいけない理由は、水田の準備やドワーフやドワーフと共にいるエルダーの為の長屋の設置。
さらにドワーフを受け入れるとなると製鉄所や鉄工所などの作業場も必要となる。
付け加えると人口増加の影響が食糧問題にも出始めている。
要するにチート大根を持ってしても補え切れなくなっていた。
爆発的に増えすぎたのだ。聖耶がこの地に降り立ってからまだ二週間弱と思うとそれが良くわかる。
しかも、その二週間の大半は移動時間である。一日、一日が実に濃すぎる。
エルとの話し合いを終えた聖耶は、屋敷へと戻る道を歩きながら作業をしていた。
「じゃあ水田の準備に……井戸もチート井戸だけだと足りなくなってきたな……増築しよう」
屋外タンク方式は、現状はまだ採用しないことにしている。
長屋に設置するには、色々と設備が足りていないためである。
さらに仮称・畑のレストランとグリムの樹も増築しておく。あまり乱用するには危険過ぎるバランスブレイカーだが背に腹は変えられない。
水田の為の下準備で作業開始スロットを三つ、井戸をそれぞれの長屋付近に一つずつ。
予約スロット1に長屋を五つ、予約スロット2に製鉄所と鉄工所、ある程度の戦闘訓練を行っておいた方が良いと思い、練兵場を一つ、見張り台も二つ予約にいれておく。
そこまで作業を完了した瞬間、ふと聖耶は眩暈を覚え、足元が危うくなる。
「……あれ、なんだ……?」
ぐらつく体は言うことを聞かず、そのまま地面に倒れこむ。
聖耶の薄れ行く視界には、急いで走ってくる蒼髪の少女と、黒髪のメイドが見えた。
「……ん……」
聖耶が目を開くと、彼の顔を覗き込む蒼色が目に入る。
フィルのその瞳は潤み、明らかに心配の色で染まっていた。
視線をずらすと、エルフィが忙しなくうろちょろしているし、不動の構えで佇むカリンも安堵の色を浮かべていた。
「気づかれましたか、セイヤ様」
カリンが声をかけてくるのに、ああ、と頷き、起き上がろうとする聖耶。
それを無理やり押さえ込むのはフィル。この細腕にどれほどの力があるのか、と言わんばかりの力で押さえ込まれる。
「……解ったよ、フィル。俺は一体どうしたんだ?」
「はい。結論から申し上げると過労です」
「……は? 過労?」
「はい」
告げられれば解るが、確かに言われてもおかしくはない状況である。
何せ聖耶がこの世界に降り立って二週間と少々しか経っていないのだ。
しかも、その内のほとんどは移動時間に費やされている。
挙句、休めるはずの時間は、これは誘惑をしたカリンやフィルが悪かったりもするが、致してしまったり、ノームの村の滞在時間中も忙しなく手伝いに走っていた。
一日、一日の濃度が非常に濃すぎるのだ。挙句の果てにチートボディを得た為に聖耶はその疲労を一切自覚していなかった。
そして、その反動が今頃吹き出た為にこのような形になった。
「……不幸中の幸いか」
そう、不幸中の幸いである。
今はまだ平穏な最中だ。今後来るであろう嵐の時期に、倒れていたらもっと混乱は酷かっただろう。
その呟きに、カリンもはい、と頷きを返す。
「物質生成設置の作業が終わるまではお休みくださいませ、セイヤ様」
「うーん……でもなぁ」
聖耶……と言うか日本人の悪い癖がここで発生していた。
そもそも日本人はワーカーホリックと揶揄されるほどに働くのが大好きな人種である。
アメリカでは、日本人が働きまくるからそんなに作業が滞ってるのか、と確かめてみたらむしろ自分から仕事をかき集めていた、と言う変な話を聞いたことがあるぐらいだ。
皆が働いてるのにゆっくり休むのも、と言う意識が聖耶の中にあった。
「セイ……ご主人様はちょっと働きすぎなのよ。……いや、そりゃあ二日目で厄介ごと持ち込んだ私のせいでもあるけどさ」
確かに世界降臨二日後に厄介ごとを持ち込んできたのはエルフィである。
とは言え、聖耶としてはその厄介ごとの原因は人間であり、決してエルフィその物が持ち込んできたわけではないので気にしないでいいと思っていた。
「……やすんで」
フィルの潤んだ眼差しで見つめられると聖耶は非常に弱い。
これが仮にエルフィやカリンであったならば普通に流していたのであろう。
小さく苦笑すれば、フィルに頷きを返して聖耶は横になる。
「セイヤ様がお休みの間の作業は受け持ちますので。エルフィが」
「そうそう、どーんと任せ……えぇ?! 私?!」
「今こそ学んだことを生かす時です。折角セイヤ様が予定の倍以上の学ぶ時間をくださったのですから」
それは予定外のことであって与えたくて与えたわけじゃない、と言おうと思ったが、言おうとした瞬間、カリンの鋭い視線で言葉が殺された。
視線をカリンから逸らしつつ、エルフィに聖耶が発した言葉は――。
「頑張れ」
「見捨てられたぁぁぁぁぁあああッ!!」
仮称・セイヤ村風物詩が一つ・エルフィの断末魔は今日も木霊する。
その断末魔の叫びを聞きつつ、聖耶は迫り来る眠気に身を任せてそっと目を伏せた。
「……おやすみ……なさい……」
蒼色の少女の声を耳元に聞きながら。