※この作品はR-18です。

オートマタと行く亜人建国記   作:まんぼう

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第十四話

「出立しようと思う」

 

数日経過した事のことである。

治水事業も終わり、集落に水田が完成したのだ。

それが終わると同時にノームたちは、農業の準備に取り掛かっていた。

なんとも忙しない連中だと思うのだが、実はノームとしての本能とか習性だとかで農作業をしてないと落ち着かないらしい。

難儀な種族特性である。

ドワーフやフェルプールの長屋も作り上げたし、防衛用の堀も設置して、獣避け用の柵は石壁になっている。

聖耶専用トーチカは、今は撤去され魔力式重機関砲は、南方を向けて石造りの見張り台の上に設置した。

石造りの見張り台は主に東南方面に重点的に配置してあり、そこで見守る役目は弓術に優れ、鷹目の如き視力を持つエルフと、古代魔法・遠視を使うエルダーの二人一組だ。

閑話休題、聖耶が出立しようと言うのはドワーフの集落のことだ。

 

「そうですね……そろそろ頃合ですし、グリム神のお告げがノームの集落に下ってから随分経ちますし」

 

カリンが、それに頷きながら返答する。

聖耶が倒れてから、多少の作業をしつつではあるが比較的休んでいる。

無論、リングウェインや、エルに乞われて作業をしたこともあるが、それ以外では専ら設置と見回り、それにある程度の方針の指示程度だ。

無論、今はこの程度でいい。集落が大きくなればなるほど、彼に求められる役割が大幅に増えていくのだから。

 

「距離にして四日ほどですか……護衛にはフィル様を、仲介役にゴン様を連れて行けばいいかと思います」

 

リングウェインはエルフを、エルはノームの統制を取っている。

現状はゴンがエルダーの統制を取っているわけだが、エルダーたちの役目はエルフや、ノームの護衛である。

故に、一時的にエルフ・ノームの長たちの下につくだけなので離れても問題があまりない。

カリンは、相変わらず聖耶の代わりの集落の庇護を担うことになるし、エルフィはカリンのお傍付きである。

ただ単に教育指導を行われているだけで、カリンの従者ではないのだが。

フィルが護衛につくのは、フィルの戦闘力が優れている事と、聖耶の護衛役である事。ぶっちゃけてしまえば、最も自由の利く戦力であるからだ。

人が増えてくればもう少し話は変わってくるのだが。

 

「それじゃあ、それでいこうか」

 

フィルが頷き、カリンが畏まりましたと言う。

方針が決まり、屋敷の面々は各々のやるべきことの為に解散する。

 

 

 

 

 

「ドワーフの集落は、山を切り出して出来ている」

 

ゴンが先導に立ち、草を踏み分けながら道を作っていく。

その後ろをついていくのが聖耶であり、その後ろに控えているのがフィルだ。

 

「山を切り出して?」

 

「そうだ。ドワーフは山肌を削り、その内部をくりぬいてその中で生活する」

 

そういう類の家は聞いたことはある。

フィクションなどでも、崖の中に作られた集落なんてものはよくある設定だ。

 

「それって崩落の危険性とかはないのかな」

 

「ノームたちと同じように、ドワーフにも山に関する知識や本能、経験がかなりある。問題ない所に彼らは作り上げるのだ。落盤事故や環境問題も彼らには無縁だ」

 

要するにノームが農業チートならば、ドワーフは鉱業チートである。

さらに、エルダーの護衛もついてる故に、発生した尾鉱は古代魔法・錬金にて有用な鉱物資源に変換してしまう。

 

「……亜人ってチートどころじゃないよな」

 

余談だが、人間の鉱山では事故多発の環境問題多発である。

魔術では、古代魔法・錬金に匹敵するほどの練度は期待できないし、根っから年中掘りまくり作業しまくり、挙句寿命も長いから蓄積された経験はそのまま伝えられるドワーフとは経験の蓄積量が違う。

そんな彼らが何故人間に押し負けるのかが、非常に疑問になってきたがやはり「戦争は数だよ兄貴ぃ!!」なのだろうか。

この調子だと、エルダーは魔法チートで、フェルプールは牧畜チートなのだろうか。

エルフは戦闘力チートになるのだろうか。精霊魔法の性能を考慮すればありえる。

 

「日も暮れてきたな……今日はこのあたりで野営をしようか」

 

ゴンが立ち止まり、野営の出来る地点をさっくり探索する。

慣れたものだなぁ、と思い見ているとその視線に気づいたようにゴンが顔をあげ頭を掻く。

 

「我らエルダーの民はノームやドワーフ、フェルプール、時にはエルフたちと行動を共にするのだ。故に色々な経験がある」

 

これを聞いてなるほど、と思うと同時に実際はエルダーが一番すごいのではないか、と思いなおす聖耶。

実のところエルダーと言うのは古代に作られた多目的戦術戦闘生命なのだ。

あらゆる環境に対応し、あらゆる状況に対応し、それらの経験を確実に蓄積しより効率的に思考する。

そういう意味では、あらゆる点において人間に最も近い亜人とも言える。

 

「手伝うよ」

 

そう言う聖耶にゴンは厳ついながらも人好きのする笑みを浮かべ頷く。

フィルもこくり、と小さく頷き三人は野営の準備を始めることとなる。

 

 

 

 

 

聖耶の目の前にあるのは鉱山である。

その鉱山はところどころに窪みが開いている。

綺麗に切り出された石が階段状になっていたりするその様は、鉱山と言うよりは……。

 

「鉱脈のある山をそのまま居住区兼作業区にしたようなノリだな……」

 

しかも、それらも荒削りして住めるようにしました、と言うものではなく、まるで職人芸で磨き上げられた陶器の如く芸術性も兼ね揃えている。

 

「では使徒殿。俺はここの長を呼んで来る」

 

ゴンがそれを告げ騒がしい鉱山の中へ歩いていくのを見送りながら、隣に寄り添ってるフィルを見やる。

フィルは、何を思ってかここについてからずっと彼の裾を握りながら、目の前のドワーフの集落を見ている。

 

「どうかした?」

 

「……すごいな、って」

 

確かに目の前の集落はすごい。もしこれが現代社会に残っていたら世界遺産として登録されてもおかしくないぐらいだ。

どれほどの労力を注ぎ込んだのか、と思ってからこの世界には魔法があるから現実と比べる意味はないな、と思いなおす。

二人で、そんなすごい集落を見上げていると、ゴンがおっさんを女性を引き連れて戻ってくる。

 

「待たせたな、使徒殿」

 

「おめえさんが使徒か、なかなか良い筋肉してるじゃねぇか!! 俺ぁボルトスってんだ、宜しく頼むぜ!!」

 

ボルトスなるドワーフドワーフしたヒゲ面のおっさんは、まるでだるまに筋肉むきむきの腕と足を加えたような体系だ。

ばしばし、と強烈に叩かれると身長の関係から腰に当たる。腰に走る衝撃が壮絶に凄まじく咽そうになる。

 

「……ふむ……」

 

傍らにいた女性は、切れ長の瞳でまるで何かを鑑定するかのように聖耶を下から上まで眺める。

その視線にどこか居心地が悪くなる聖耶。それを見やり、嗚呼、と女性が呟く。

 

「いきなりのぶしつけ失礼したの。わしはエルダーのヤパーテ氏族が長・リンと言う。エル殿たちの所におった我らが氏族の受け入れを感謝するぞ、セイヤ殿」

 

ふわり、と緩やかに微笑むのはリン。

エルダーの氏族であり、その両腕にはエルダーの証である紋様が刻まれている。

身長は160前半ほどで、スタイルはカリンほどではない――カリンもフィルもエルフィも大きい為に基準がおかしくなっているが、リンが決して無いわけではなく標準レベルか、標準より多少大きいレベルである。

カリンと言い、エルフィと言い、フィルと言い、彼の周りにいたのは可愛らしい美人さんばかりだ。

大人の女性と言うのはあまり係わり合いがなく、その微笑に少し見惚れてしまった。

無論、不服そうなフィルにわき腹を小突かれたのは言うまでにない。

 

「ああ……いえ……ああ、そうだ。ドワーフの人たちは引っ越すのは構わない、のかな」

 

徒歩四日と言う距離は結構ある。つまりドワーフとしてはこちらの方が住み心地は良いのではないか、と思ったのだ。

実際、街道なども整備されていないし、馬車なども存在しない以上輸送はかなり不便になる。

 

「ああ、それなら問題ねぇ。どうせそのうち使徒殿がこっちまで着易いようにしてくれんだろ? それよりも俺達ぁもっと気になってることがあんだよ」

 

豪快な笑みを浮かべながらボルトスががっし、と聖耶の手を掴む。

首をかしげて聖耶は悩む。はて、彼らの興味をひくようなものがあっただろうか、否、そもそも初対面だ。

 

「ブローニングエムトゥとやらのことだ!! 俺達の知らねぇ機械仕掛けなんて……くぅ、燃えるじゃねぇか!! 他にも色々知ってんだろ!!」

 

なんで知ってるのかが非常に疑問になったが、ゴンとリンが古代魔法には遠く離れた場所と会話するための念話と言う魔法があるらしい。

ただし、通常に使う分には魔力消費が多すぎて不便なので専ら道具に魔法をこめて、魔道具に魔力を一日ごとにこめていき、定期通信として使っているそうだが。

 

「ええ……知ってますけど……」

 

「バラされてくれるんだろうなぁ使徒殿よぅ。俺達に任せてくれりゃあどんな道具だって作って見せるぜぇ」

 

常時酔っ払ってんじゃねぇか、と思う高いテンションに聖耶はたじたじだ。

だが、と聖耶は思いなおす。彼らの自信のほどがどこから来ているかも解らないし、現代装備を理解出来るかも解らない。

だが、もし理解して作れるようになってくれるのならば、その分には問題はない。むしろ大歓迎だ。

 

「じゃあ、引越しして貰ってもいいんでしょうか」

 

「おうよ、暫くの間、鉄工業はできねぇだろうが、できねぇ間は使徒殿の機械技術の研究させてもらっからな!! ついでにすぐにでも引越しは出来るぜ!!」

 

準備良すぎだろう、と思う。

一体いつから準備していたのか、と首を傾げるとボルトスが豪快に笑いをあげる。

 

「んなもん、ノームたちからの定期通信来た時からいつでも来ても良いように荷物まとめさせてたに決まってんだろ」

 

変な行動力があった。しかも何がアレってテンションの差はあれどこいつら全員が全員そんなノリだったことだ。

クールに萌えるドワーフ、否、ロリーフ。狂ったようにハイなおっさんドワーフ。きらきらとした眼差しでまだ見ぬ技術に思いを馳せるおっさんドワーフ。他諸々。

若干どころか、かなり疲弊しつつ聖耶たちはドワーフの引越し準備に入ることになった。

その疲弊した様子をおかしそうに眺めているのはリンである。

 

「…………セイヤは、だめ」

 

「んう? ふふ、好ましい男ではあるがの。案ずるな、まだ喰いはせぬよ」

 

「……だめ」

 

「あやつも想われておるのう。くく、覚えておくがよい、フィルや。あやつは女誑しじゃ」

 

「…………知ってる」

 

「ふふ、最早複数誑しておったか。なればわしぐらい問題ないのではないかの?」

 

「……もっとセイヤを知ってから」

 

「さよか。そのようにしておこうかの」

 

そんな二人の会話を聖耶は聞いていなかった。ボルトスの大声にかき消されていたせいであるが。

また増えたライバルの予感に、フィルはぐ、と拳を握り頑張ることを決意して。

そして……。

 

「……また何か増えた気がしますね、流石セイヤ様です」

 

どこかで何かを感じ取っている最強万能メイド・カリンと。

ぎゃー!! 火が、火が!! と叫びながら料理をまた焦がしているエルフィであった。こちらは日常茶飯事だが。

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