※この作品はR-18です。

オートマタと行く亜人建国記   作:まんぼう

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第十六話

 

街道整備のお陰で、人数が大幅に増えてもあまり時間はかからずに済んだ。

綺麗に整備した道と獣道との差を大きく実感する聖耶である。

ドワーフたちを集落に受け入れ、製鉄・鉄工所に長屋と案内した後である。

屋敷についてから書斎で上空俯瞰図で集落を眺めつつ、腕組みして聖耶は考えていた。

 

「……うーん……」

 

今思うが、こうして街道を整備したのなら普通に、機関車などの公共交通機関を設置するのもありだ。

だが、機関車は公害が激しい。そもそも蒸気機関なんてものを使う必要があるのかが疑問である。

何故ならば、この世界では現実には存在しない魔法って言うものが存在している。

それなら、永久磁石と雷魔法を利用したモーターや、水生成による永久的な水力発電もあるし、発火と水発生を利用した火力発電もありだ。

と言うか、電力を得るだけなら普通に発電魔法とか作ればいける気がしてきた。それが万人に使えるかは研究しないとわからないだろうが。

そうなるとわざわざ蒸気機関に、公害避けの魔法をかけるよりは遥かに効率的だ。

が、それらを実用化するまでには時間がかかる。となるとそれらが完成するまではやはりメインは馬車や荷車になるだろう。

 

「とりあえず、家畜確保の為にフェルプールと接触しないと……」

 

遊牧民族であるフェルプールがどこにいるかを探さないといけない。

が、曖昧な俯瞰図ではどこにいるかわからない。こういう地形である、と言うのしか解らない。

 

「そういえば定期通信をエルダー同士でしてるとか言ってたな……」

 

その定期通信を利用すれば、接触出来るんじゃないか、と思っていたら書斎の扉をノックする音が響く。

どうぞ、と告げれば、入ってきたのはカリンだ。

 

「セイヤ様、フェルプールのお客様です」

 

「……は?」

 

予定なき客人到来。しかも、接触したかったフェルプールのである。

わかった、と告げながら聖耶は書斎を後にした。

 

 

 

 

 

「フェルプールがメギ氏族、リューテだ」

 

そこに立っていたのは、銀色の髪を腰あたりまでまっすぐに流した女性がいた。

頭頂部には犬のような耳がぴこぴこ揺れており、お尻からは銀色のふさふさな尻尾が生えていた。

ふさふさもこもこ感の尻尾からして狼の化生のようだが。

フェルプールは、基本的に150代の身長であるが、リューテは長身で、その身長は聖耶と同じか若干低い程度もある。

プロポーションも整っており、胸は美乳だ。実に整っている。

しかし、その腕や足は同じ戦士であるはずのフィルよりはかなり筋肉質に思える。と言っても決してムキムキマッチョな訳でもなく、女性らしいしなやかさなどを兼ね揃えたものだ。

そんな女性が、なめした革の鎧に、腰には短剣、背に槍を背負った出で立ちで立っていた。

 

「えーと……セイヤ=ノグチです。今日はどのようなご用件で……」

 

正直、聖耶は困惑をしていた。

フェルプールの受け入れの準備は整ってるので、いつ来ても大丈夫ではあるのだが彼女は見るに単独のようだ。

メッセンジャーなり何なりの役目を追っているのではあろうが、何を伝えに来たのかがさっぱりわからない。

焦った様子などもないので、人間に攻められたと言うわけでもなかろう。

 

「ああ。我らメギ氏族の長からの通達だ。私が見るに限り、家畜を育てる為の場所さえあれば我らに不満は特に無い。故に、特定条件を満たす限り、我らは使徒殿の温情を受けようと思う、とのことだ」

 

「特定条件……?」

 

家畜育成の為の場所を確保する……と言うのは特に特定条件ではないようだ。

こちらでもそれらを整備するつもりではあるが、彼らなら独力で完成させることも出来よう。

 

「私たち……正確にはフェルプールは遊牧民族であるが、その真価を発揮するは戦場において。戦働きをすることに不満はないが、我らが戴くに相応しいかどうかを見極める為に私がここに来た」

 

話を聞いていると、聖耶自身が強いかどうかを確かめに来たらしい。

彼女、リューテは氏族最強の戦士であり、彼女の眼鏡にかなえば彼らは聖耶の下に来てくれるらしい。

別に従えさせたいわけではない聖耶なのだが、それがフェルプールの流儀なのだ。

 

「一見した限り……正直私には使徒殿が戦う者とは思えない。が、長の定めたことだ。故に手合わせを願いたい」

 

リューテは彼を戦う者ではないことを見抜いている。

彼は戦闘者でも、王者でも、覇者でもなんでもない一般人だ。

だが、それが必要なことならば厭う気はない聖耶は、その申し出を受ける。

 

「解りました。それじゃあ練兵場で待っていてください。準備をしていきますから」

 

「解った。ではお待ちしている」

 

リューテをエルフィに案内させながら、聖耶は自身のステータスウィンドウをオープンする。

 

名前 :セイヤ=ノグゥツィ

性別 :男性

年齢 :25

STR:70(B)

AGI:80(B)

VIT:38(D)

INT:100(B)

MND:50(D)

DEX:70(B)

MGC:255(EX)

 

残りステータスポイント:192

 

「……なんかいつの間にかすっげぇ溜まってる。あれか。フィルとカリンとにゃんにゃんしすぎたか……!?」

 

語られてないだけで実は結構な回数を致してる聖耶である。

STRに30、AGIに20、VITに62、MNDに50、DEXに30をぶちこむ。

結果として彼のステータスはこうなる。

 

名前 :セイヤ=ノグゥツィ

性別 :男性

年齢 :25

STR:100(B)

AGI:100(B)

VIT:100(B)

INT:100(B)

MND:100(B)

DEX:100(B)

MGC:255(EX)

 

人類最強の剣士を天も次元も突破した聖耶は、これならば問題はないだろう、と判断した。

そして、満足げに練兵場に向かうことにしたのだ。

 

 

 

 

 

練兵場では、リューテが待っていた。

その佇まいは正に歴戦の戦士と言った様相だ。

 

「私は、この槍を用いる。使徒殿は好きな武器を使われよ」

 

そう言われると聖耶は迷いもなく長剣を手に取る。

彼の中では剣聖まじかっこいいよ剣聖程度のノリであったのだが、微かにリューテの表情が動いた事に彼は気づかなかった。

フィルとカリン、それにルトとリンは遠巻きに見ている。

後者二人はなんか楽しそうだから、でやってきたのだ。

エルフィに関してはどこから持ってきたのはシーツを敷いてお菓子をもごもご食べていた。完全に観客気分である。

 

「それじゃあ、合図を頼むよカリン」

 

その言葉にはい、と答え、カリンが一歩だけ前に出る。

聖耶は、剣術を習ったわけではないがカリンとフィルから得たスキルがある為にその構えは熟練の戦士、それその物だ。

リューテも、槍を構え――吐息を正している。

 

「開始してください」

 

カリンの一声と共に、リューテが一気に踏み込み、突きを繰り出す。

その神速の踏み込みと突きに聖耶は泡を食ったのか若干慌てながら剣でそれを反らす。

 

「オォォォォォォォォォッ!!」

 

リューテが吠え、その突きの速度をさらにあげていく。

対する聖耶は、奇妙な事態に陥っていた。

その突きは"見える"し、捌き、流し、防ぐには特に問題はない。だが、それ"しか"出来ないのだ。

ここに来て、リューテは確信した。

 

(――経験が無いなっ!!)

 

そう、その通りである。

聖耶は、その身体能力や技術は最早、人間と言う括りにおいては最強に属する。

しかし、彼には致命的なまでに実戦経験がかけていた。お手本のような剣術なのだ。

もう一つ、聖耶は致命的なミスをしていた。

そう、槍に対して剣を選んだこと。それが致命的過ぎた。

剣道三倍段と言うのはよく聞くものだが、これ自体は漫画で作られた造語だ。

だがしかし、これはある意味では真実を捉えたものとも言える。

何故、戦場では槍がメイン武器として扱われ、剣は補助武器とされ、短剣はとどめ用の武器とされたのか。

それは単純に、間合いの広さだ。確かに、剣の間合いに踏み込んでしまえば、槍よりは剣であろう。

拳の間合いに踏み込んでしまえば、剣より拳なのだ。如何なる武器においても"最低射程"と言うものは存在する。

間合いを潰す手段に長けていれば話は別なのだが、彼はその手の技術を習得はしてはおれど、使ったことが今までになく、彼はそれを生かすだけの経験が全くなかった。

 

(くっそ、槍ってこんな厄介なのかよっ!)

 

剣ってかっこいいよね、剣は武器の王様だよ、と言う安直な理由で長剣を選んだ聖耶であったが、今は後悔していた。

リューテの猛攻を防ぎきることは出来ても、彼女に一撃を撃つための間合いに踏み込めないのだ。

素の身体能力ではリューテなんて目ではないほどに上回るが、フェルプールの彼女は、獣化魔法により、その身体能力を上昇させることが出来る。

故に身体能力の差など、実質的にはほぼなかったのだ。

 

(……本気で来ぬか……侮るなよッ!!)

 

リューテは、心底怒っていた。聖耶が本気で来ない事に。

ここは聖耶の思い違いがあった。そう、聖耶が最強たらしめているものは何か。

現代人としての知識でも、物質生成設置と言う能力でもない。そう――魔力だ。

聖耶は、同じ土俵でしか戦っていない。否、全魔法と言う固有スキルを持つ以上、聖耶も獣化魔法が使えるのだ。

その獣化魔法を使っていない時点で、彼は同じ土俵ですら戦わず手を抜いているとすら言える。

聖耶としてはそんなつもりもなく、ただ気づいていないだけなのだがリューテとしてはそうは思えない。

手を抜かれることは戦士として侮辱されているも同然。リューテは怒りから、その突きの威力と速度をさらにあげていく。

 

(な、なんで怒ってるんだ!?)

 

対する聖耶は、さっぱり理解してなかった。

手合わせ、と言うから直接的な武技を競い合うのだ、と言う思い込みがあったからだ。

最強の魔力を持つ聖耶ならば、契約範囲内なのだから精霊魔法を使用するだけでリューテには勝てる。

故に、手を抜いていると言う自覚は無かったのだ。直接的な武技で言えば彼は本気であり、全力であった。

 

「本気で来ぬ、と言うのならば本気を出させてくれる!!」

 

リューテが吠え、槍を放り投げればその身が銀色の毛に覆われていく。

四つん這いになり、一声大きく遠吠えをすると、その体は巨大になり、銀色の魔狼がここに降臨した。

 

「ええぇぇぇぇぇぇぇっ!!??」

 

心底驚いた聖耶であるが、ここに来て漸く彼女の言っている意味と怒った意味を理解した。

獣化魔法の身体強化とは他の魔法と違い、表に出にくい。魔力の流れをしっかり見ていれば聖耶も解ったのだろうが、リューテの攻めのせいでテンパっていた為に見る余裕がなかった。

故に、ここに来て初めて外的に影響のある奥義・完全獣化を見て魔法を使っていない事に、否、魔力すら使っていない事に気づいた。

聖耶が最強たる所以を使わない。それが本気だ、などとは聖耶ですら言えなかった。

 

「とう」

 

間抜けな声と共に地面が陥没し、リューテの巨躯がそこに沈む。

精霊魔法による大地制御である。こうなってはあとは最早一方的な蹂躙しかない。

その様子を呆れたように見やるカリンとフィルとルト、衝撃的なものを見たと言わんばかりのエルフィ。あまりにもおかしくて大笑いしているリンがいたのであった。

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