エルフ少女さんが非常にむかつく人格なのは仕様です。
色々非常識なのも何も考えずに執筆していた為でございます。
その事を執筆していた当時にご指摘なされ、途中で改善するためのお話を向けました。
よってその時まで我慢して頂けると幸い。
ベッドで昏々と眠り続けるエルフの少女。
その隣で甲斐甲斐しく世話をするのは黒髪のメイド。
「片付いたぞー」
そこにやってきたのは野口 聖耶。この家の家主である。
「お疲れ様です、セイヤ様」
「しっかし、あれすっげぇ魔力持ってかれるのな」
「当たり前です」
さも解っていましたと言うように淡々としたカリン。
それを怪訝そうに見やり、首を傾げる。
「え、なんで」
「あれは魔力を弾丸としているのではなく、魔力で弾丸を練成して放っている為です」
「まじで!?」
「マジです。魔力式の銃と言うものはありますが、それらは魔石と呼ばれる魔力を含有した石をマガジンとして、そこから魔力を抽出して弾丸として放っているのです」
「ふむふむ。で、なんで魔石式のブローニングM2にならなかったの?」
「単純に機構の問題かと」
「え?」
「ベルト給弾式ですから。あの重機関砲は」
「なんてこった……」
「そう言った齟齬があり、その齟齬を埋める事は可能ですが、その齟齬を埋めようとセイヤ様はなさいませんでした」
「つまる所、俺が適当に指定し過ぎたから無理やり生成されたのか……」
詰まる所、欠陥兵器と化したのは自業自得であった。
弾丸をいちいち魔法で練成して発射するのだから必然的に魔力消費は増える。
挙句、ブローニングは秒間十数発と発射する兵器である。つまり、秒間に十数回と練成魔法を使うこととなる。
「そりゃあ魔力も持ってかれるわ……じゃあ魔石式にすれば誰でも使えるのか?」
「使えますが、使えません」
「? どういうことだ?」
「単純にブローニングM2の性能を再現する為には巨大な魔石が必要となり、そんな魔石があるならば別の形で用いた方が遥かに便利だからです」
魔石は巨大になればなるほどに魔力を溜め込む性質を持つ。
そして、ブローニングM2に使える程度のサイズだと撃てば1秒に満たない時間で魔石の魔力が枯渇してしまうのだ。
かと言って巨大な魔石ともなれば、そのサイズに取り付けるには聊か邪魔だし、そんなサイズなら別のものに用いた方が遥かに有用だ。
戦略・戦術級の兵器になりえる能力のアイテムを据え置き式の重機関砲に使うのは勿体無さ過ぎる。
「なるほど。俺専用兵器なのは把握した」
「ところでセイヤ様」
甲斐甲斐しく世話をしていたカリンが聖耶に振り返る。
「ん? 何?」
「私とセイヤ様の愛の巣に異物が入り込んだわけですが」
「え?! 何それ?!」
「冗談です」
「冗談かよ!! で何?」
「住民が増えるかまではわかりませんが、増える可能性が出来ましたので家を増やすべきかと思いますが」
「……あー、そうか。これだけじゃあ問題だよなぁ。でも作業完了まで12時間かかるぜ」
「それまで目覚めないと思われますので大丈夫かと……とは言え急ぎたいのは事実ではありますが」
「……まぁ、ねぇ」
亜人とは互いに寄り添い、人里を離れて暮らしている。
そうでなければ、人に迫害されるからだ。そんな最中に少女がただ一人、人間に追われると言う状況は頂けない。
あえて亜人は人里離れ、秘境とも呼べるような所に引きこもっているのだ。
つまり、明確な場所を突き止め、明確な目的を以て、そこに向かわねば偶然見つけました、なんてことは起こりえない。
つまり、あの山賊のような連中は明確な目的を以てエルフの隠れ里を突き止めたのだ。
付け加えるならば、たかが一人追い回すのに10人もいた、と言うことはその総数はかなりのものになるはず。
組織だっての行動ならば、10人帰らず……と言うのも直に解るだろう。
さらに生け捕りを狙っていたと思われる節がある。
それらから考えると、連中の目的は生け捕りの奴隷化だと思われる。
「しかし、奴隷ねぇ……奴隷なんてのはそもそも自分たちもそうなる可能性があるからって歴史的には割りと大切に扱われてたはずなんだが」
「どちらかと言うとこちらの世界の亜人奴隷と言うのは、労働力の確保以外にも、人間以外を外敵とみなす事により、国民の目を外側に向けたり、亜人を辱めたりすることによる国民感情の操作などが目的ですから」
「うわぁ、生々しい」
どろどろとした裏事情など知りたくもなかったが、だからこそ亜人保護の為に聖耶は選ばれたのだろう。
しかし、元々見知らぬ隣人を愛せよと言う事情から亜人が生み出された事を考えれば、グリムは人を滅ぼす事も望まないだろう。
かと言って、和解を求められるほど浅い因縁とも思えない。グリムの意思に則るのならば和解が最も良い選択肢なのは間違いないのだが。
さて、話が脱線したが山賊っぽい連中の目的が奴隷化ならば、確かに時間はない。
しかし、土地と契約することにより戦闘能力においてはサイヤ人化するエルフたちがそう簡単に負けるとは思えない。
「そのへんはどうなってるの?」
「土地から離れれば弱くなるのならば、土地から離してしまえばいいのです」
「追い立てる方法なんて幾らでもある、ってことか……」
しかし、そうなると土地から追い立てて漸く捕獲に踏み切れる。
そして、エルフの少女が必死に逃げ回っていたことを見るに、詰まる所、今はエルフの民は逃げ回っているのが実状だろう。
逃げ回ってるエルフを保護するのも難しい、まして聖耶は人外離れしてるとは言え人間だし、カリンも傍から見れば人間であるからだ。
「とりあえず上空俯瞰図で監視しとくか」
「集まった所を一網打尽にし、保護と言う形でしょうか」
「一網打尽に出来るかは怪しいけど」
「古代魔法を使えば一発です」
「……そういやそうだったな!?」
水生成なんて言うチートな魔法が使える古代魔法である。
広域殲滅魔法ぐらい存在していてもおかしくはない。
「そういえば井戸にあんな機能がつくなんて思ってなかったから別のやり方した方が良い気がしてきた」
「貯水タンク式ですか。ついでですので、下水道にも水浄化の術式を刻み込む事により永久機関でも完成させましょうか」
「汚物も丸ほど真水に変わります。精神的には飲みたくないけど」
カリンと聖耶の話し合いは、エルフの少女が目覚めるまで続いた――。
「……ん……」
少女の意識が戻る。
彼女の翡翠の双眸に飛び込んできたのは見知らぬ天井。
そして、ありえないほどふかふかのベッドである。
「……知らない天井だわ……」
「なんと言うテンプレート」
テンプレートな台詞に思わず突っ込んでしまった聖耶。
反面、唐突にかけられた声に思わず飛び上がってしまう少女。
しかも、その声をかけた相手が人間だと言う事に気づき、見る見るうちに青ざめていく。
「ご安心くださいませ、私たちはあなた様の味方です」
また別の声をかけられ、エルフの少女はそちらに振り向く。
そこにいたのは、彼女を抱きとめたメイドの少女、つまりカリンである。
助けられた人物であったから多少の安心感と、多大な警戒心を浮かべたまま、少女はカリンと聖耶を見やる。
「……なんで助けたの?」
そう問われて困るのは聖耶である。
素直に世界神・グリムから亜人保護の為に遣わされた、などと言って頭の悪い人扱いされないだろうか。
そう言う不安が聖耶の中にあったのだ。
「セイヤ様が、グリム神に遣わされた使徒だからです」
「なん、ですって……?! ……言われてみればすごい魔力ね……」
「信じるのー!?」
聖耶の懸念はあっさり覆された。
グリム神への信仰は人族ならず、亜人にも広まっている。
そして、人どころか魔力を多く持つエルダーすら上回る魔力を持つともなれば、聖耶がそういった存在に近いことは明白なのである。
それが、こちらの世界の住民の認識なのだが、異世界出身の聖耶には疑問にしか思えない。
こんな所にも異世界ギャップが発生していたのだ。
「助けてくれてありがと。私はエルフィルリース。エルフィって皆呼ぶわ」
「野口 聖耶……いや、セイヤ=ノグチかな」
「オートマタ・カリンです」
「セイヤ=ノグゥツィと……オートマタ? あなたオートマタだったの!?」
驚くエルフィに淡々としたままのカリン。
無表情なカリンに、ころころと表情の変わるエルフィ。
対照的な二人だな、と聖耶は眺めていた。
「……ってそれどころじゃなかった!! グリムの使徒ならみんなを助けて!!」
状況を思い出したように、エルフィが訴えかける。
これだけではよくわからない、と言うのが普通なのだが、衛星画像の如くリアルタイムで監視していた聖耶には解る。
「んー……まだだね。逃げ回ってる人たちがいる」
「そんな、捕まってもいいって言うの!?」
「落ち着いてってば。森は広いんだからばらばらに散った人たちを一人ずつ保護するのは手間なんだって。一つにまとまったところを助けた方がいい」
「……そりゃ、そうだけど、殺されたりする人だっているかもしれないじゃない」
「監視してる限り全員生け捕りにされてるね。傷の大小はあれど生きているなら問題なく癒したり出来る」
納得し難いのか不満そうな顔のエルフィ。
確かに助けられるのならば今すぐ助け出した方がいいのは事実だ。
トラウマになってしまったりする可能性もあるし、死者が出る可能性もある。
だが、それでも動かない理由はあった。
「全員に集まってもらう必要性があるからね……」
何故集める必要があるのか。
それは単純に奴隷商人なのかまではわからないが、人側に生き残りを出さない為である。
装備からして、国家公認の相手ではないと聖耶は判断している。
下手に情報を与える必要も無い。全てを殲滅し尽くす為である。
「……むぅぅ……」
頬を膨らませて抗議の眼差しを送り続けるエルフィ。
苦笑しながら、その眼差しを受け新たな物質生成設置を行う。
この家を屋敷に改装する生成と、複数人が住める長屋を四つ設置しているのだ。
「……建物が完成する前に行動することになるかな」
そのついでに俯瞰図を眺めながら、一人、小さく聖耶は呟いた。