※この作品はR-18です。

暖簾の先(18禁短編集)   作:ミキマル

9 / 13
主人公の女の子が狼になって従兄弟を犯しながら友人の姉とイチャイチャする話


溺れる狼

 

001

 

 福山麻衣には年の離れた高校生の龍之介という従兄弟が居る。

 麻衣の住む街の高校に通うためにわざわざ山奥の田舎から一人で引越してきた彼は麻衣の家の近所にアパートを借りており、時折彼女の両親は彼を誘って一緒に夕食を共にしたり麻衣の小学校の宿題をみてやったりと良好な関係を結んでいた。

 

 そんな彼に麻衣は恋心を頂いている。

 今まで接していた男性は父親と同級生しか居なかった彼女にとって、彼は初めて身近に接せる機会のある大人なお兄さんであり、またやんちゃ坊主な同級生の男子しか知らなかった彼女にはとっても新鮮かつ落ち着いた雰囲気に心動かされていたのであった。

 また同じ女子中学生の中には大学生のお兄さんと付き合ってるという噂話も少なからず耳にする。言わば年上と付き合うのは大人の恋心を捉えた凄いヤツと言う単純な風潮であり、彼女らからすると一種のステータスでもあった。

 

「それで麻衣ちゃん。何時になったらあのお兄さんに告白するの?」

「ちょっとカナちゃん! 何いってんの! 私、龍ちゃんの事なんて……」

 

 昼休みの教室の片隅で女子数人のグループが一人の机の周りで輪になって談笑する、よくある学生ならではな光景。そんな彼女たちの今日のテーマは恋愛話。

 誰に彼氏が居るやら、誰が誰かのことを好きという噂やら、一つ一つの話題に皆が声を出しリアクションを起こす、そんな女子特有の世間話である。

 そうしてしばらくするとクラスメイトの一人であるカナちゃんがふと麻衣の好きな人の話思い出すと進歩を訪ねたのであった。

 

「うそぉ〜もうバレバレだよ。顔真っ赤じゃん」

「ちょっと! 見ないでよ〜……」

 

 途端に真っ赤な顔を覗き込まれない様に顔を伏せる彼女に皆から笑いが起きる。

 クラスメイトにとって麻衣の好きな人が龍之介、彼女が言う「龍ちゃん」なのは公然の秘密。

 なんせ話の合間合間に従兄弟の話を交えたり、放課後一緒に帰ってる姿を何度も目撃されてたり。

 はたまた龍之介の部活がない日はわざわざ麻衣が高校の校門前で待ち合わせする彼と一緒に帰る為に早足で教室を飛び出したりと、龍之介に関わる麻衣の表情は誰がどう見ても恋心を抱いた只の乙女でしかないのであった。

 

「お兄さんはカナちゃんが好きって気付いてないみたいだからね。あれは純粋にイトコの小さい女の子としか見てないよ」

「そうなの、多分好きって言ってもloveじゃなくてlikeとしか思ってもらえないと思う……。なんか良い方法ないかな?」

 

 麻衣の恋の悩みにクラスメイトの女子らは黄色い悲鳴を上げながらあーだこーだと色んな手段を模索する。

 手紙で率直な思いを綴ってラブレターを手渡したり彼の前で素直に告白するなどシンプルかつ定番な方法からいっそ最初から肉体関係を結んでしまう過激な手段など、他人の恋バナは彼女らを飽きさせない絶好のトレンドであった。

 そんな中、話を切り出したカナちゃんがふと思い出した様に手を挙げる。

 

「あっ、そういえば」

「どうしたのカナちゃん?」

「いや、なんていうかオカルトなんだけどね……」

 

 彼女曰く、学校近くの雑木林の奥に今は朽ち果てたボロボロの神社があるが実はそこの神様は恋愛成就で有名な神様であり、その神社に好きな人と結ばれたいと強い思いで拝むとその人と結ばれるという話である。

 

「それ本当? そんな話聞いたことないよー」

「あんなボロボロな神社なんだから知らないのは仕方ないよ。でも本当だって!」

「そうかもしれないけど……」

 

 神社の話題を振られた途端に静かになる彼女ら。それは無理もないこと。なんせその神社は悪い噂しかないであった。

 殺人現場の舞台。自殺の名所。放火現場に浮浪者やヤンキーの溜まり場など。

 どれも噂話の類でしかないが全くもって良い噂はなく、この街に住む人達からは一種のタブー扱い。だからこそ心霊スポットとして有名であるのだがこの街に住む彼女らは物好き以外は進んで行ってみようとは思わないのが大多数であった。

 

 その後も彼女たちは恋愛話に花を咲かし、神社の話題は次第に頭の片隅に押し込められそのまま忘れ去られる。そうしてるうちに昼休み終了のチャイムが教室に鳴り響くと彼女らは次の授業の為にバラバラとなった。

 何時もと変わらない毎日。廊下を駆ける麻衣。

 そんな彼女はふと先程の神社の話を思い出すと一種の疑問が思い浮かぶのであった。

 

「……恋愛成就のウワサってどこで知ったんだろう?」

 

 

 

002

 

 彼女の転機は噂話を聞いたその日の放課後であった。

 その日は週に一度しかない龍之介と一緒に帰宅する日。彼女にとって特別な一日であり麻衣は帰りのHRを終えると急いで教室を飛び出したのだが何時もの集合場所の校門には誰もおらず、人影すらなかった。

 気になった彼女はケータイのメールをチェックする。

 そこには用がある為に一緒に帰れないというごく単調な短いCメールのみであり、理由など添えられておらず酷く端的な寂しい一文であった。

 

 一体龍ちゃんはどうしたのだろう?

 つい先程まで想い人に関する恋愛話で花を咲かしていた彼女にとって、彼は普段よりも意識せざるを得ない存在になっておりそんな彼が今日に限って姿を表さない。得体の知れない焦燥感に囚われる麻衣は何時もの帰り道とは逆方向である龍之介の高校へ足を向けた。

 紺色のセーラー服を着た女子高生のお姉さんや、龍之介と同じ学生服に身を包んだ男子高校生の波に逆らいながら一歩一歩進んでいく。

 普段は通るはずない道を一人で進むのは小学生の彼女に取ってあまり体験することのない非日常。身近な『スタンドバイミー』とでも言うのだろうか。そうしてるうちに真っ白なコンクリート造りの高校の校舎が見えてきた。

 麻衣は高校の校門前にある土手の大きな楠の木の下に真っ赤なランドセルを下ろすと根本に座り込み彼が校門から出てくるのを待つ。

 

 もしかしたら先に帰ってるのかも知れない。でもそんな時はちゃんと私に連絡してくれる筈。

 なんとなく彼がまだ学校に残っているのだと微かな望みに願いを託し、現れるのかわからない龍之介を待ち続ける。そうして暫く待ってると校門に見慣れた黄色い自転車が顔を覗かせた。

 何時も登校時に共にする黄色の自転車、それは彼が現れる兆し。彼女は寄りかかっていた楠の木の裏に回り込むとこっそり覗き込むように顔を出した。

 彼が現れたらなんて声を掛けようか。

 

「心配だったからわざわざ迎えに来たよ。何かあったの?」

 

  否、それだとなんだか厚かましい気がする。

 

「友達ん家に遊びに行った帰り道に近くを通ったんだ。龍ちゃん偶然だね!」

 

 そうだ、これにしよう。これぐらい自然じゃなければわざわざここまで龍ちゃんに会いに来た事を悟られてしまう。

 そうして彼女は龍之介に声を掛けようと身を乗り出した。

 

 その時である。

 彼の押す自転車の向かい側に顔を伏せ佇むのは一人の女子高生。通学路で通りかかった高校生たちと同じ紺色のセーラー服に身を包む彼女は彼の押す自転車のスピードに合わせゆっくりと歩幅を合わせる。

 ボブカットのふんわりとした黒髪に長いまつげ、そして目の下の泣きボクロ。龍ちゃんと殆ど変わらないでろう女子の中では高身長な背丈がスレンダー体型も相まってまるでモデルさんの様である。

 そんな彼女は学校指定のカバンを両手で持ちながら会話の合間合間に口へ手を当て、時折微笑みながら龍之介との会話に花を咲かす。

 

 すぐに身を翻し楠の木の裏に隠れる麻衣は胸に手を当てる麻衣。

 心臓の鼓動はバクバクと早くなり、身体中に響き渡る。

 彼女、龍之介の隣に居た女は龍之介に恋をしている。

 彼女は私と同じ、好きな人の隣で恋しながらも自分の思いを伝えきれない女の目。

 それは恋い焦がれる琥珀色の瞳。焦れるハートを胸の奥に抑え込み、いつかこの思いを伝えなければと言う思いが犇ゝと、同じ思いを持つもの同士伝わって来る。

 

 そんな、まさか。

 悪い予感というモノは当たりやすく、また恋バナをしたその日と間が悪いと言うべきなのか、わざわざ彼に会いに行った際にこのような出来事に遭遇するとはまったくの想定外。麻衣は直ぐにランドセルを手に取ると見つからない様に木の下の土手を降りるとそのまま小学校まで通じる川沿いの道を走る。

 数多な思考や思いや考えが滝のように流れ頭の中を駆け巡る。名も知らない彼女と龍之介の関係に思考を巡らし、想像し、そして悪い方に考えてしまう。

 

 どうしよう、どうしよう、どうしよう。

 お昼時の会話を思い出し慌てふためく麻衣。なんせ向こうは彼と同じ学校の同級生。家族として接する麻衣と違い、彼女は第三者として接する同じ立ち位置の女の人。

 彼女が知人か友人か、はたまたもう既に恋人なのか麻衣には分からないが、少なくとも彼女には麻衣よりも数多なアドバンテージを保持しており二人付き合う大きなチャンスがあるのだろう。

 

 まさかのまさか。

 この様なタイミングで彼女のような存在が現れると麻衣は想像もしておらず、龍之介と彼女から逃げるようにその場を走り去ったのであった。

 

 

[newpage]

 

003

 

 彼女が逃げ込んだのは家ではなく小学校。

 家に帰って暫くすると龍ちゃんが麻衣の家に顔を出してしまい、気まずい顔をしなくてはならないのかも知れない。そう思った彼女は静かな教室の席で一人机に突っ張り不貞腐れながら彼女と龍之介の関係性にもやもやと頭を悩ませていた。

 そんな時である。

 

「どうしたの麻衣ちゃん?」

「……カナちゃん?」

 

 突然声を掛けられ顔を上げる麻衣の先には目を細めながらショートヘアに泣き黒子を付けた彼女、お昼休みに恋愛話に花を咲かせていたカナちゃんが腰に手を当てながら麻衣を見下ろして居た。

 

「いや、なんでもないよ」

「あっ、嘘付いてるでしょ。大体麻衣ちゃんはさっき下校してたじゃん。普段とは逆方向の方に」

「……見てたの?」

「ここから見てたよ、お昼休みにあんな話してたから。まさか告白してフラレちゃった?」

「うんうん、違う。まだ告白してない」

「もしかしてもう既に他の人と付き合ってたの?」

 

 カナは前の席の椅子を引いて横向きに座り足を組むと、麻衣を覗き込み額にデコピンを食らわせた。突然の事にビックリし額を抑え込む麻衣だがそんな彼女にカナはお構いなしに話し始める。

 

「いい麻衣。恋愛に置いてはね、勝てば官軍って言葉があるように結果さえ良ければ過程なんてどうでも良いの。とっとと彼の唇奪っちゃいなさいよ」

「でも……なんて言えば良いかわからないし……」

「だぁ、もう! そんなんなら神でも仏でもなんでん良いから縋りなさい! なんだったら例の神社に飛び込んで一日中うんたらかんたら拝んどけば良いのよ!」

「えぇー……」

 

 彼女の迫真の演説に目を背けながら机で丸くなる麻衣であるが彼女自身このまま自分から動かなくては彼の心を仕留められないと既に分かっている。親戚の従兄弟でしかない私はどうあがいても向こうから好意を持たれるはずがなく、このまま待つばかりでは新たな進歩は望めないと。

 自分自身から動かなくては進歩はない。まさしくカナちゃんの言う通り。

 そんな麻衣の心情を読み取ってか、カナは一度黙り込むと今度は背もたれに手を組んで麻衣を下から覗き込む様に目を合わせた。

 

 彼女の琥珀色の眼がじっと麻衣を見つめ、短く揃えられた前髪が麻衣の額に這いこちょばゆく感じ顔をしかめてしまう。クリクリとしたお目々にピンと長い眉毛、そして彼女の目下には泣きぼくろ。そんな彼女の顔に麻衣はデジャブを感じるとなんとなくであるがふと思ったことを尋ねる。

 

「カナちゃん、カナちゃんってもしかしてお姉さん居る?」

「居るけど……どうして?」

「……龍ちゃんの隣に居た女の人に似てるなーって」

「あっ」

「「……」」

 

 麻衣が聞くには彼女、ミズキと言うカナちゃんのお姉さんは龍ちゃんと同じクラスに通ってる同級生であり最近好きな人が出来たという話だったらしい。

 しかしながら彼女も麻衣同等に奥手であり、また家の事情がなんとかと言う事で強く前に出ることができずに家の中でしどろもどろする姉にカナちゃんは私と同等に発破を掛け、そんな彼女を姉に持つお節介焼きのカナちゃんはどうすればお姉ちゃんが恋愛成就するか考え頭を悩ませていた所、同じような悩みを持つ私を姉と重ね合わせお姉さんと同等に声を掛けたのであった。

 

「まさかお姉ちゃんの好きな人が麻衣ちゃんのお兄さんだったなんて……」

「ううん、カナちゃんが悪い訳じゃないしそれにカナちゃんのお姉ちゃんって確定した訳ではないよ」

「いや、たぶんってか絶対お姉ちゃんだよ。だって瞳の色、私と同じだったでしょ?」

 

 そう言ってカナちゃんは自分の瞳に指を差す。その目は琥珀色、瞳が縦に裂けた特異な眼。おおよそ人の目には見えないまるで獣の様な瞳。

 

「言われてみればその眼、どうしたの?」

「そうだね、これは教えなきゃお姉ちゃんとフェアじゃないよね……」

 

 するとカナちゃんはゆっくりと立ち上がると麻衣に背を向け一歩一歩前へ。そして教室の黒板前に立つとゆっくりとブラウスに手をかけた。

 教室の窓から射す夕日が彼女を幻想的に照らし出し、麻衣はただその光景に見とれるしかない。そしてカナちゃんはブラウスを脱ぎ捨てるとそのままスカートのホックを外し下着一枚の姿になる。

 突然教室で下着姿になるという普通では考えられないシチュエーションでありながら、麻衣はただ見とれるだけ。そんな彼女をカナちゃんはじっと見つめる。

 

「いい、麻衣。まず先に説明するとね。私は人間じゃないの」

「……どう言うこと?」

 

 突然の告白に自体が飲め込めない麻衣は暫くの沈黙の後、どう言うことなのか彼女に問いかける。突然同級生が下着姿で自分は人間ではないと言われても返事に困るだけ。しかし次の瞬間、麻衣は彼女の言葉の意味を理解する事となる。

 

 カナは突然身を丸くすると背中に浮き出る背中の部位からワサワサと白茶色の毛が縦筋の様に入り、そのまま横に広がると胸や腹部を包みだす。

 そして背骨に入った縦筋はそのまま真っすぐとお尻の部位まで広がるとそのまま尾骶骨を引き伸ばし、長くて太い灰色の毛に覆われた尻尾を形成する。

 そのまま毛皮は下半身全体を包み込み膝を通り抜けると今度は弁慶の泣き所と言われる脛骨と腓骨が短くなり始め、それに準ずる様に踵の位置が高くなるとまるで関節が逆になったような出立ちになるとつま先から鋭く尖った爪が顔を見せる。

 それは両手両腕も同様であり、肩の方から侵食するように広がった黒の混ざった灰色の毛は幾分しない合間に両腕を包み込み手のひらにはピンク色の肉球が浮かび上がっていた。

 そして背骨の方から広がり始めた毛皮は後頭部から顔を覆いかぶさる様に毛が広がり、耳の位置が上へ上へとまるで新芽の様な動きでピンっと伸びると前方に耳の穴が見える位置に。そして鼻先は湿り始めると黒く変色しそのまま鼻の穴の形を変えてそのままキノピオの鼻のようにメキメキとまるで犬の様なマズルを作り出す。

 

 閉じられた瞳がゆっくりと見開かれる。その瞳は金色。縦に裂けた瞳は捕食者の眼。

 彼女の口端から垣間見える真っ白で鋭い牙。噛みつかれたら一溜まりもない鋭い牙。

 そんなカナの姿はまるでテレビや動物園で見る獰猛なオオカミの姿でしかなかった。

 

「カナ……ちゃん……!?」

「……」

 

 目の前に佇むのは一人の、否一匹の怪物。人ならざるモノ。

 シルエットは人型でありながら容姿はオオカミのそれ。大きな牙を光らせて鋭い眼光で覗き込むカナは一匹の人外でしかない。

 そんな彼女は乱れた息を整え目を瞑り心を落ち着かせるがその間も麻衣は突然の出来事で心臓がバクバクと乱れ、ハァハァと大きく息が上がっていた。これは一体どう言うなのか。目の前に居た彼女がまるでアニメや映画みたいに突然変身すると一匹の狼男、いや狼女になっているのではないか。

 軽く錯乱状態の麻衣。すると狼の姿になったカナはそんな麻衣の様子に気がついたのか彼女から目を離すと淡々と話を切り出した。

 

「あのね、私んちって実家が神社なの。お昼休みに話した神社」

「……じんじゃ?」

「そう、そんな所に生まれた私とお姉ちゃんは生まれながらにして神様と私達を結ぶ巫女としての運命が決められたの。そしてこの姿は私んちの神様に仕える時の姿。そう、私んちの神様は狼なの」

「そ、それじゃカナちゃんは狼女なの?」

「正確には違うけどそう思っておけば良いよ。それで私たちには普通の人には出来ないまるで魔法の様な事が出来るの……それこそ、人の気持ちを操るような……」

「人の気持ちを操るって……もしかして両思いに出来るとか!?」

「そう……私とお姉ちゃんはやろうと思えばそう言う事も簡単に出来る。そして私はお姉ちゃんに『好きな人が出来たんだったら魅力でも使ったら良いじゃん』って言っちゃったの……」

「えっ!? それじゃ龍ちゃんはもう……」

「ううん、それは大丈夫。お姉ちゃんと私は言わば一心同体だから力を使ったらすぐに分かるの。だけどお姉ちゃんが何時力を使うかは分からない。だから私は今から麻衣ちゃんにも対抗する力、私と同じ力を分け与えようと思う」

 

 すると突然カナは麻衣に飛びかかるとそのまま教室の床に押し倒した。

 同級生に襲われると言う突然の出来事で頭が真っ白になる麻衣。

 そんな彼女の目の前にはまるで獲物を捉えた獰猛な獣の目をしたカナが麻衣の両手を抑え、腹部に馬乗りに成りながらじっと彼女を見据えていた。

 そしてゆっくりとマズルを顔に近づけるとそのまま首筋にザラザラとした舌を這わせゆっくりと慎重にまるで注射針を刺すように噛み付くカナ。途端に麻衣の全身の血液に流れ込むような不快感と共に身体に染み渡る高揚感が襲いかかり、頭がハッと冴え、まるで周りの空気の流れ鮮明に感じられる様な過敏な感覚が全身に感じられる。

 

 そんな二人の姿はまるで血を吸う吸血鬼と獲物のよう。

 そうして暫く噛み付いていたカナの狼耳はどんどんと小さくなると全身の毛は引っ込み、体格は年相応の華奢な女児の身体に戻り始め、長く伸びたマズルが短くなる頃には元の女の子の姿に戻っていた。

 突然の事で頭が回らず床で寝そべったまま混乱する麻衣の隣でカナは床に散らばった服を手に取ると下着一枚の姿から着替え始め、最後に髪ゴムを口に加え後ろ髪を結い直す頃には麻衣は幾分か落ち着き、乱れた息を整えゆっくり立ち上がると何が起きたのか分からずじまいなこの現状を問いただし始めた。

 

「と、突然私に何をしたの!?」

「……いい、ちゃんと聞くんだよ」

 

 そう言ってかなちゃんは麻衣に真剣な目で振り向くとゆっくりとした口調で説明し始めた。

 

「私は麻衣に一時的にこの力を受け渡した。私が力を行使出来なくなった代わりに麻衣がこの奇想天外な力が使えるようになり、私のお姉ちゃんと同じ対等な存在になったの」

「えっ、つまり私がさっきのカナちゃんみたいに……」

「そう、なろうと思えば狼になれるし、さっきも言った通りその他の色んな力が使えるようになる。これで只の人間であった麻衣は言わば狼女って訳」

「な、なんでそんな事したの!? カナちゃん達がなんか特別な事が出来るってのは分かったけど意味が分からないよ!」

「いい、龍ちゃんを仕留めるとために心を鬼にした麻衣のライバルになる私のお姉ちゃんに対抗できる力は私にしかないけどそもそも私に龍ちゃんへの恋心なんてない。そこは同じ思いを抱いているもの同士でしか意味がないからこそ、一時的ではあるけれど麻衣は私の力で人を逸した存在になったの」

「こ、心を鬼にしたって……」

「……妹だから言えるけど今のお姉ちゃんは手段を選ばない狼。私が麻衣ちゃんにアドバイスしたように私はお姉ちゃんに今ある力を駆使するように力説しちゃったの……」

「……つまりこんな事になった一番の発端ってカナちゃん……」

 

 途端にカナは目線を逸らしそのままスタスタと教室の窓際に向かうとサッシに手を置き遠い目をしながらオレンジに染まった夕焼け空に目を向ける。

 

「……空が綺麗だね……」

「…………」

 

 カナは現実から目を背けた。

 

 

 

004

 

 カナから背中を押され学校を飛び出た麻衣。一人トボトボと帰路につく彼女はカナから受け取った人では考えられない程優れた嗅覚で龍之介の居場所を嗅ぎ分けながら進む。

 龍ちゃんは恐らく既に帰宅しているという目論見であるがカナちゃんが言うにはお姉さんは手段を選ばないという事であり、もしかしたら実力行使しているのかも知れない。なので麻衣はカナが昨日お姉さんにアドバイスしたデートコースに沿って周りに神経を尖らせながら人混みをかき進める。

 普段は通らない帰宅ラッシュの駅前を突き進み、カラオケボックス、複合デパート、ゲームセンターなどを一通りチェックするが二人が居た痕跡は見当たらず、カナの心配は杞憂であったとホッと一息付いた後に公園で一休みしようとしたその時である。

 

 なんと龍之介の匂いが児童公園の雑木林の裏の路地の方から風に乗って運ばれてのだ。そして彼と一緒に漂う匂いはもう一人の知らない女の匂い。

 途端に旋律を覚える麻衣。

 まさか本当に一日二日で行動を起こすとは思いもよらず咄嗟に雑木林を横切って路地裏の通りに飛び出る。

 そこに広がるのは繁華街。ネオンに彩られたカラフルな看板が大通りを照らし、沢山の人が行き交う街。小学生の麻衣には全くもって関わりある場所ではなく、逆に「怖い」と思ってしまい尻すぼみしてしまうが背に腹は変えられない。

 そんな大通りを匂いに頼りに早足で駆け抜け路地裏に入るとそこは繁華街でも更に人を選ぶホテル街。お城の形をした建物もあればギンギラギンに照らされた金ピカな建物など、客の気を引くためにふざけた名前のラブホテルがズラっと一直線に並んでいた。

 

 麻衣自身、マセた女の子程度には性知識を持ち合わせているがたかがラブホ程度で普段はなんとも思わないであろう。しかし今回はこの中の一つの建物に龍ちゃんが居る。

 それだけで恥ずかしさと焦燥感の両方が彼女を蝕むがそんな事に四の五の言ってられないのもまた真実。

 そしてなにより今の麻衣は教室で彼女に自分の姿を見せたカナちゃんと同じ様に狼女であり、その影響なのか次第に思考や考えが単純かつ積極的な思いや考えに移り変わっている。

 麻衣はなるようになれとそこら辺のモヤモヤとした考えを一気に投げ捨ると恐らく龍之介と彼女が居るであろうホテルの一室に向かって一直線に走り出した。

 

 小学生の麻衣にとってホテルのロビーを通るわけにはいかない、そこで従業員に見つかってしまえば大問題であろう。こうなったら強行突破しかなかった。

 彼女はそのまま助走を付けた状態でホテルの外壁に足を掛けると身につけた獣の脚力で体重を壁に押し付け爪を喰い込ませ、一気に上の階へと壁を駆け上がったのである。そして一気に窓際まで駆け上がるとそのまま窓ガラスを割ってさながらハリウッド映画のワンシーンの様に部屋の中に滑り込んだ。

 

「なっ……!」

「えっ……」

「龍ちゃん、助けに来たよ!!!」

 

 麻衣の目の前にはベットで這い寄られる龍之介と惚れ惚れとした表情で詰め寄る彼女、カナのお姉さんであるミズキ。

 そんな二人はガラスが割れると窓から女の子が飛び出てくるという突然の出来事で呆然と目を点にする。

 龍之介とミズキが既にまぐわっていないことに一安心した麻衣はランドセルを床に投げ捨てるとそのままベットの上の龍之介を連れ戻す為に彼の腕を握ろうと手を出した。しかしながら彼女の左手はもう一人

女、カナの姉であるミズキの手によって振り払われる。

 

「ちょっと、なにしてるのかしら?」

「ちょっともそっとも、なに龍ちゃんを連れ出して如何わしい事しようとしてるんですか! ほらお兄ちゃん帰るよ!」

「えっ!? あっ、うん……」

「如何わしい事なんてこの年だと健全な事なのでは? それを言うのであれば貴女はなんなんです? だいたいなんで窓から出てくるんですか?」

「なんなんってそんなの私は彼の従姉妹で貴女みたいなポッと出の女に龍ちゃんを渡したくないからでーす! そして窓から出てきたのは色々あったんです!」

「いや、あの、僕はどうすれば……」

「お兄ちゃんはちょっと静かにしてて!」

「あっ、はい……」

 

 突然の出来事で整理が出来ずにボケっとしている龍之介を傍目に二人の女が火花を散らす。

 一人は女子小学生、もう一人は女子高生。二人は静かににらみ合いながら互いに牽制し合って居るとそんなピリピリとした雰囲気に耐えきれなくなったのか龍之介はこっそりとベットから抜け出そうとするが、そんな彼を動向に気が付いたミズキは背中を向ける龍之介の肩に触れると彼は振り向きざまにミズキと目が合った。

 すると突然龍之介はゆっくりと膝から崩れ落ちるように前のめりに倒れるとそのまま眠り込む。

 

「……眠らせたの?」

「やっぱりその感じ……私と同じね。となるとカナが一枚噛んでるわけか」

「カナちゃんから色々聞いたよ。貴女のこと、そして貴女の家の事も」

 

 そう言って麻衣はミズキに事のあらましを淡々と説明する。

 自分の好きな人のこと。その好きな人への告白に奥手だったこと。カナに背中を押されたことからカナとミズキの家の秘密まで何から何まで包み隠さず彼女に伝える。

 その話をミズキはベットの上で手足を組みながら静かに目を閉じ静かに聞く。そうして暫く話を聞き入ったミズキは麻衣の話が終えるとゆっくりと目を開き、そして口を開いた。

 

「話は分かったけどそのまま私に諦めろって言うのはちょっと違うんじゃないかな。なんせ私だって思いは負けてない自信があるし、なんだったら龍之介くんに聞いてみる? 従姉妹の小学生が好きかどうかって」

「そ、そんなこと言ったって! 私は……私は……」

 

 麻衣自身分かっているのだ。

 彼にとって私は従姉妹の小さな女の子でしかないことを。どうあがいても彼の隣に立つ者ではないことを。確かにカナちゃんが最初に伝えた通り自分に正直になって彼に突撃するのは何もせずにうじうじと尻すぼみよりかはマシであろう。しかしこうやって恋敵に現実を突き付けられると否定するしかなかったのであった。

 

「……まぁそう考えるとカナが貴女にその力を貸し出したのはそう言う事かもね」

「そう言う考えって……?」

「なに、無理やりつがいにさせるって事よ」

「へっ!?」

「とぼけちゃって。今のあなたの彼を見る目が凄いわよ。まるで獰猛な獣みたい」

 

 途端に身体中が熱くなり、意識し初めた為か急に呼吸が早くなるのを感じ動揺が抑えきれなくなる。今までなんともなかった普段の私が彼女の言葉で何かタガが外れた様な、そんな感覚。

 

「普通の人間が突然自分の力量を超えた力を持ってそのままな訳がないでしょ。今貴女は想い人が目の前で無防備にしてるのをみて理性が抑えきれなくなってるのよ」

「はっ、はっ、はっ、それって……」

「カナから力を渡されたって事は動物としての理性の反対である本能の側面が強く滲みでる。私達は生まれつき備わってるのである程度抑制出来るけど小学生の貴女が抑えきれる訳がないわけ」

「それじゃカナちゃんがこの力を受け渡したのは……!」

「おそらく私が腹を括って彼、龍之介くんと既成事実を作ろうってしたのと同じじゃない? 告白のその先にステップアップみたいな?」

 

 熱い、身体中が熱い。

 まるで全身が沸騰するような感覚。校庭を思いっきり走った時とはまた違う、沸騰したお湯の沸々と泡が弾けるようなそんな感覚。

 全身に熱を持ち視界がボヤけるとそのままフラフラと壁により掛かる。しかしなんとか意識を保とうと顔を上げるが焦点が上手く定まらずそのまま床に倒れ込んだ。

 そんな中、床に這いつくばる麻衣の視線の先でミズキは彼女の事など気にせず淡々と制服を脱ぎ始め素っ裸になると鼻歌を歌いながら服を畳み出す。彼女の目はカナと同様に金色の琥珀色に輝いており、ボヤけた視野でもはっきりと分かった。

 スタイル抜群のプロポーションに程よい胸。キュッと絞ったウエストからの緩急をつけたお尻はまさにセックス・シンボルでしかない。そんな彼女はベットに座り直すと金色の眼に掛かった前髪をかきあげ黒髪のショートボブが波を描いた。

 

「なに、待ってあげるわよ」

 

 泣きボクロに薄目の妖艶漂う雰囲気で麻衣を見下ろすミズキ。

 熱い、キツイ、まるで自分自身を内側からひっくり返す様なそんな感覚。自分が人では無いものに変わるという漠然とした恐怖。

 

「安心して良いわ」

 

 それはほんの一瞬、瞬きする合間の出来事。目の前で佇んでいたミズキが教室のカナの様に人ではない怪物、まるで男を誑かす艶めかしい淫魔の様に狼へと姿を変える。

 カナちゃんと同じ灰色の毛皮が二人は姉妹なんだとただ漠然に考えてしまう。

 

「今はその血に身を任せましょ」

 

 途端に私の意識は途絶えた。

 

 

[newpage]

 

005

 

 目の前で人だったものが別の存在、それこそポピュラーな存在である狼に変身する経験を踏まえた上で自分が同じ様に狼に変身するとは微塵に考えておらず、実際こうして意識が朦朧としたうちに手放してしまった私はやはり只の一般人でしかなく、同い年のカナは不慣れながらも難なく獣化しその姉であるミズキはほんの一瞬で獣化するのを見ると如何に二人が普通ではないかと実感してしまう。

 どれくらい経ったであろうか、混濁した意識の中ゆっくりと目を覚まし立ち上がる。

 割れた窓からは真っ暗な夜の闇と共にネオンの明かりが差し込み暗い部屋をぼんやりと照らし、ベットの上で未だ意識を失っている龍之介の顔を顕にする。その横で妖しい雰囲気を漂わすミズキはスマホ片手に時間を潰しながら律儀にも私が目を覚ますまで待っていたようだ。

 

 ゆっくりと身体を起こす私だがやけに視界が鮮明である。

 なんとなく今の自分の身に起こったことがなんとなく察してしまうのは人の慣れというべきかであろうか、ゆっくりと視線を下に向けるとそこには銀色に輝く毛に覆われた自分の手が。手のひらにはカナちゃんと同じピンク色のプニッとした肉球が付いておりそのまま胸に目を向けるとそこにはばっつんぱっつんになったTシャツが目に入る。

 私はせかせかと不慣れな手付きで服を脱ぎ母親から買ってもらったばかりのフックが壊れたジュニアブラを外すとそこには普段より一回り大きい胸とそれに連なるように小さな胸が胴体へ連なり副乳となっていた。

 

 そうしているうちにミズキは私が目を覚ましたのに気がついたのであろう、ベットの上にスマホを無造作に投げると私に手を指し出した。

 私は何も考えず彼女の灰色の手を握ると思いっきり引っ張られそのまま立ち上がる。

 すると部屋に立てかけられた姿鏡に自分の姿が映し出され、そこには教室のカナちゃんと目の前のミズキさんと同じ様な一匹の銀狼が佇んでおり嫌でも自分が人ではない別の何かなのだと実感するのであった。

 

「心配しなくてもやりたいことやったら元に戻るわよ」

「そう言われてもやはり奇想天外ですよね。一体どうなってるんだか……」

「なに、今はこの一夜を楽しみましょう。私は考え直したのよ」

 

 そう言って彼女は龍之介のズボンに指を滑らせそのまま股間のチャックに手を掛ける。そうして開かれたチャックに手を突っ込むと中から男性特有の男根が顔を覗かせた。

 

「確かに私はこの摩訶不思議な魔法みたいな力を使えば彼を意のままに操ることが出来るでしょう。でもそれじゃ元の人間の姿に戻った貴女とは対等ではない。私は貴女をライバルと認めたのよ」

「それはありがとうございます。で持ってその右手は……?」

「んっ? いや、彼まだ気絶したままだからせっかくなので遊んじゃおうかなーと。それに貴女を元に戻すにはせっせとセックスした方が早いでしょ」

「へっ? はっ? えっ!?」

 

 ミズキは私と向き合いながら右手でフニャフニャと柔らかなペニスも揉み扱く。そうしているうちに彼のペニスは次第に太くて長い淫棒へと形を変え、逞しく仰け反りあった。

 

「それで……ヤリたくないの? あなたそのつもりで来たんでしょ?」

「でもそんな事したらミズキさんは……」

「貴女が彼の初めてを奪ったトコロでまだまだヒヨッコの貴女に彼を自由自在に操る事なんて出来ないでしょ。だから……」

 

 そう言って彼女は立ち上がり私の長く前に伸びた顎を引くと顔を近づけこう言ったのだ。

 

「今日は一緒に遊びましょう」

 

 そして彼女は私に抱きつくとそのままベットに身を投げ込む。

 一緒に真っ白なシーツの海に溺れ、そこには一人の男と二匹の狼が身を委ねており、街頭とネオンの明かりがこの海面をぼんやりと照らす。彼女の灰色の毛皮は街明かりを吸い込み、私の銀色の毛皮はキラキラと幻想的かつ儚き光を放っておりまるで対局な私達。しかしながらこの二匹は一人の男を巡る恋敵でありながら、また一人の女によって紡がれた人なきモノ。

 彼女のマズルと私のマズルが触れ、彼女のチクチクとしたヒゲがこちょばゆく感じる。それは恐らく彼女も同じであろう、湿った黒い鼻がまぶたの下に触れ、金色の眼が私を覗き込む。

 

「貴女って妹のクラスメイトなんでしょう。ふふっ、なんだか背徳的ね」

「私はもう何がなんだかで全然理解出来ないんですが」

「良いのよ、今日の出来事は一夜の儚き夢。また明日から貴女は従兄弟の兄に恋い焦がれる女の子で私はクラスメイトに恋をする女の子。そこに私の家の事とか超能力とか狼とか関係なくなり対等な人としてのライバルになるの」

 

 彼女の右手が腰に回るとそのままゆっくりとお尻を撫で回され一瞬ビクッと身体を震わす。しかし私もなされるがままではなく、そっと彼女の胸を下から指を這わせて行った。

 同性でありながら私は目の前の彼女に今までとはまた違った、それこそ私の龍ちゃんへの思いと似たり寄った親戚の様な思いを描き感じ始める。

 好きというのにはまた違う、身体を重ねたいというこの思いは未だ幼き私の中では言葉で表すのが難しく、ただただ今はこの名状しがたいこの気分と彼女に身を委ねるしかないのであった。

 彼女と私の口が触れる。胸と胸が触れもみ合い、仄かにピンク色の乳頭が薄い毛の合間から顔を出す。彼女の足が股ぐらに入るとそのまま秘部に触れ、恥丘の毛を掻き上げる。

 私と彼女は彼のことを忘れて二人だけの世界に深く、深く没入する。まるで深い海の奥に沈み込む様な感覚。しかし差し出された手に引かれ私は連れ戻される。

 

「だめでしょ、彼を忘れては」

 

 そう言って私は彼女によって意識の向こう側から引き戻された。そうだ、そうだった。私はりゅうちゃんと今から初めて交わるんだ。

 彼女の言葉で現実に引き戻される。

 ゆっくりと身体を起こし川の字の端で一人力なく倒れ込んでいた彼を横目にシーツに包まれた自分の身体に目を落とす。私の身体は人のソレとはかけ離れた異形の姿。恐らく今彼が目を覚ましても誰だか分からないだろう。

 しかしそれで良いのだ。私と彼女は只の一匹の獣でしかないのだ。

 ピンク色の亀頭が顔を出す彼のペニスの裏地を玉袋の方からゆっくりと舌を這わせ尿道をくりくりと舐め回す。途端にピクピクと彼の牡肉は反り返り上へ上へとそそり勃つ。

 股間に顔を埋める私の横で彼女は彼の白いワイシャツのボタンを一つ一つ外してゆき、部活動で鍛えたのであろう厚い胸板に触れ摩りながら貧相な男の乳首に軽くキスをすると糸を引く唾液を指で這わせながらゆっくりと乳首を甚振る。すると先程までしなっと凹んだ元気のない乳首がほんの微かであるがぷっくっと立ち上がり小さな乳頭が顔をだした。

 

 意識を失いながらもピクピクと身体全体を震わせる龍之介を見るとちゃんと感じてくれているのだと安心感を覚えながらそれと同時になんとなくシュールな光景に思わず失笑してしまう。

 先程の彼女とのペッティングで自分の秘部は濡れており、これなら彼の肉棒を問題なく包み込める事が出来るだろう。

 心臓がバクバクと音を鳴らし鼓動が全身へと響き渡る。目の前の彼のペニスを自分の好きなようにされるがまま操れる。背徳感と好奇心、そして征服欲の3つがせめぎ合いながら自分の心に語り掛ける。

 そうしている合間にも私は髪を上に跳ね上がった狼耳に掻き上げると彼のペニスを口の中で頬張り、鋭い歯が触れて気づかないように掻き回す。そのままほっぺを膨らませながらピンク色のアイスキャンディを舐め回し、何時彼を犯そうか今か今かと機会を伺っていた。

 

 獲物を狩る狼の目は獰猛な獣の眼。

 そこに私と言う存在はあってないようなモノ。今宵は儚き胡蝶の夢、夢でぐらい私は彼と一緒になっても構わないであろう。

 私は彼女、ミズキと目を合わせる。それは二人のアイコンタクト。

 顔を上げ上半身を起こすと目の前の彼女の手を握りエスコートしてもらう。

 腰を上げ膝をズルズルと動かし彼の腰の上に乗っかかると恥丘の割れ目に彼のペニスがピッタリとくっつく。太くなった血管の暖かさが薄くなった毛の先からじんわりと届き、愛液によって染められた。

 そして目の前の彼女はゆっくりとうなずくと腰を持ち上げやすいように支えてくれる。そそり立った肉棒が自分の大陰唇に触れ、赤い肉裂を目の前に今か今かと待ちわびている。

 

 意を決して私はそのまま力を抜いた。

 そのまま腰ががくっと下がると淡いピンクの陰唇が口を開きそのままヒダをかき分け膜を突き破り中へ奥へと進んでいった。

 達成感と痛みと快感で複雑な感覚と感情が襲いかかる。

 彼と相思相愛が目的となるのではなくそのまま支配する狼としての本能と彼と一緒になるという当初の色欲の2つの欲求が快楽と混ざって脳を刺激し全身から多幸感で満たされ、身体の芯から快感と言う名のエクスタシーが脳を駆け巡り身体中に満たされる。

 彼女はそんな私の様子を見てにこやかな笑顔を浮かべるとそのまま彼の胴を跨ぎお尻を彼に向け私と対面する形となる。そして彼女の右手と私の右手、彼女の左手と私の右手が結ばれると私と彼女は向き合う形で互いに目を合わせた。

 

「これで最初の予定は達成出来たでしょ」

「あなたに奪われるからって意味だったんですがまぁ良いですよ。それで貴女もこの後ヤります?」

 

 腰を振りながら私は彼女と会話する。それは傍から見ると恋人同士のピロートークのよう。しかし私と彼女は股の下に寝転がってる彼を巡るライバルであるのは変わりない。

 

「いいわよ、私と貴女だと私のほうが依然アドバンテージがあるのだし。今日は憐れみよ」

「それなら良いです。そこで胡座をかいてる合間に私が何時の間にか掻っ攫いますから」

「この短時間で急に強気と言うか大人っぽくなったわね……元に戻った時が楽しみだわ」

 

 そう言って彼女はマズルに手を当てクスッと笑うと互いの鼻と鼻が触れ、そのまま彼女は私のマズルを優しくかぶり付きそのまま舌を絡め合う。くちゅりくちゅりと舌と唾液の入り混じった音と一緒に下の口からはジュボジュボと粘液が擦れ混じり合う卑猥な音。

 この時間がほんの数十分の出来事でありながら長く長くまるで一瞬の刹那に感じる。自分の中に彼の子種が注ぎ込まれ、充実感が満たされた後も私達は彼の上で互いにこのひと時を重ね合いながら汗で雨に濡れた犬のようになるまでひたすら快楽に身を委ねるのであった。

 

 

006

 

 次の日の朝、何時もの目覚まし時計で目が覚めた私は普段の日常と同じ様にパジャマ姿で自室のベットに横になっていた。

 ゆっくり顔に手を当てるもそこには昨夜の毛に包まれた狼の姿ではなく今までどおりののっぺりとした肌色の人の肌であり、まるで昨日の出来事が夢だったような、そんな錯覚に陥ってしまう。

 眠たい眼を擦りながら階段を降り朝食が用意してあろうリビングに顔を出す。

 そこには昨日あんなに生気を絞り出した彼がまるで死んだ目でゾンビの様に弱々しく食事をしている所であり、昨夜の出来事が本当にあった出来事だったのだと再認識。途端に子宮が収縮するとツーと太ももに一本の透明の粘液が流れ、今自分の中には彼の子種が溜まってると思うと興奮せざる負えなかったのであった。

 

 そんな中でも私は何時も通り身支度をし終えると学校へ向かう。

 しかし今日は彼と一緒ではなく最初に学校裏の雑木林、カナちゃんとお姉さんのトコロへ向かった。それは勿論今の自分の事だったりカナちゃんの事だったり、何より狼の件だったり改めて伺うことが沢山あるからだ。

 しかし雑木林の奥に向かう前に通学路で私は高校の制服に身を包んだミズキさんが一匹の狼を連れているところにすれ違うのであった。

 

「おはようございます、昨日は色々お世話になりました」

「いいのよ、私も楽しかったし。彼まるで干からびたゾンビの様だったでしょう?」

「あの後もこってり絞り尽くしましたからね……。それでその犬の様にくたびれた狼は?」

「んっ、これカナ。ちょっとお仕置き中」

「カナちゃん!?」

 

 カナと呼ばれた狼は一瞬私の方を振り向くと申し訳なさそうに頭を下げる。

 恐らく只の人間であった私に力を分け与えたとかそう言う理由であろう。彼女の家は神社とか話していたのでそう言う物事には厳しいのだと思うと仕方ない事だと同情と哀れみの目を送り、哀愁漂うその姿に私はミズキさんに事のあらましを訪ねたがそこでまさかの返答を受ける事となる。

 

「貴女に力を与えたのがいけなかったのよ。ホントは一夜経てばカナの元にその力、権限は戻るんだけどどうやら貴女とその力の定着率が良いのかカナに権限が戻らないの。恐らくあの姿で貴女が子種を宿したのも原因だと思うのだけど取り敢えずお仕置きとして3日間はこの姿ってわけ」

「えっ、それってつまり……」

「あなたはまだ純粋な人間に戻ったわけではないの。昨日の夜から妙に大人っぽくなった感じしない?」

 

 言われて確かに自分が昨日までと比べて考え方や思考が小学生らしくない事に気が付いた。思わずお腹を擦ってしまう私に彼女は笑みを浮かべると私の背中からコンクリートの地面に伸びている自分の影を指さした。

 そこには今の私にあるはずのない耳と尻尾が映し出されている。その姿はまるで昨日の私の様な、一匹の狼の様な姿。

 

「流石に妊娠はしてないと思うけど血が馴染んでるかもね。ようこそ人外の世界へ」

「えっ……」

 

『えぇえええぇぇぇぇっっっ!!!!!』

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。