※この作品はR-18です。

人物病愛物語   作:cl.

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皆様お久しぶりです。今回は結月ゆかりの物語です。宜しければ最後までお付き合い下さい。


月ノ兎

昼下がり、とあるマンションの一室に、女性の美しい声が文を読み上げる。

 

「そして菜花は少年に微笑みかける。『ありがとう。大好きだよ』それを聞いた少年は満足そうな顔を菜花に見せると水膨れのように腫れた体を海に落とすだろう。」

 

女性が文章を読み上げ、一息つく

 

「誤字は内容ですね。マスター」

 

「そうみたいだね。よし、これで投稿出来るぞ」

 

男はそう言うとカチカチッとマウスをクリックし、小説サイトに小説を投稿する。

 

「よし、ありがとうゆかり」

 

男はデスクチェアに乗ったまま屈伸をしながら、朗読をしていた声の主、結月ゆかりに声をかける。

 

「いえ、文字を読み上げるのはボイスロイドの役目ですから」

 

「それよりもマスター。もうこんな時間ですし昼食にしましょうか。直ぐに用意しますね」

 

ゆかりはそう言うと、いそいそとキッチンの方へ向かう。

 

「ごめんね。家事とかも任せちゃって」

 

男は少し申し訳なさそうにダイニングへ移動する。

 

「大丈夫ですよ。家事は嫌いじゃないですし、それにマスター放って置くとインスタントばかりじゃないですか」

 

「まぁそうなんだけど…」

 

「だから大丈夫ですよ。マスターはテレビでも観ててくださいね」

 

男は言われるがまま椅子に座り、テレビの電源をつける。

 

こんな生活が始まったのは数ヶ月前、ボイスロイド結月ゆかりを購入したのが始まりだった。

 

元はというと男はとある小説サイトで小説を書いており、自分で見ていても誤字や文がおかしい所が出てくる。

 

だから最近話題になっているボイスロイドを買い、それに朗読させる事で誤字や文章がおかしい所に気づける。という寸法だった。

 

そうしてた結月ゆかりはやって来た訳だが、最初マンションの中に入ったゆかりは驚愕した。何故なら部屋は散らかっている訳ではないが手入れがされておらず埃が溜まっているし、台所は惣菜のインスタントのカップが積まれていたからだ。

 

これを良くないと思ったゆかりは料理はもちろん、掃除なども引き受ける事にしたのだ。

 

小説の方も、読み上げてもらうことにより誤字や違和感のある部分もかなり減り、男的には万々歳だった。

 

まぁ生まれたばかりとほぼ同じな状態のゆかりも最初は料理も掃除も下手ではあったが、ネットや書籍等を駆使し徐々に上達していった。

 

そしてそんなこんなで楽しくお話をしながら2人は昼食を終える。

 

「ふぅ、美味しかった〜」

 

「ご粗末様です。じゃあ私は食器片付けてきますね」

 

「ありがとう。じゃあ僕はその間に小説少し書き進めておこうかな」

 

といった具合に男は別の部屋に行く。ゆかりはそれを見届けると食器を台所に運ぶ。そして食器を台所に置くとマスターの方をチラッと確認する。

 

するとマスターは既に作業部屋に戻っており、しばらくはこちらに戻っては来なさそうだった。

 

それを確認したゆかりはマスターの使った箸を手に持つ。そしてそれを口にいれた。

 

クチュ…チュパ…と音をたてながら箸を舐る。

 

1分程だろうか、箸を舐り終わり、糸を引きながら箸を口から離す。

 

ゆかりは光悦とした表情を浮かべる。

 

「マスターと間接キス…ふふっ」

 

光悦とした表情のまま彼女は笑を零す。

 

それが少し続いたが、そのあとゆかりはハッと我に戻り洗い物を始めた。

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

洗い物を終えた後、ゆかりは洗濯等の家事をこなし、その後仕上がったマスターの小説を読み上げ、夕飯を作り、風呂に入り、寝る。それが結月ゆかりの日常だった。

 

そして自室のベッドの上で彼女はゆっくりと自分の手を秘部に当てる。

 

ん…ふぅ…と甘い吐息を洩らしながら彼女は秘部を撫で続ける。

 

「ます…たー…ん…」

 

マスターの名を呼び、撫でる強さは次第に強くなる。

 

頭の中で描かれるのはマスターとの行為、彼が彼女に挿入をする所だった。

 

妄想の激しいピストンと共に撫でる強さはまし彼女も喘ぐ。

 

「あぁ…んん…だめ…そこ…感じちゃう…」

 

妄想の中の激しさも彼女の昂りも最高潮に達する。

 

「だめ、イク、イク…んん────」

 

最高潮に達して間も無く彼女はイキ、絶頂の後は、はぁ…はぁ…と息を洩らしながら眠りについた。

 

彼女には積み重なる思い、悩み事があった。

 

それは彼と、マスターと恋仲になりたい。という女性なら誰もが夢見る様なものだった。

 

普通ならば、これは淡い恋心を伝えられないという可愛らしい悩みだろう。

 

だがゆかりの場合は違った。

 

ボイスロイドは、最新技術で造られているため、機械ではなく、クローンだ。

 

オリジナルから採取したDNAを元に造られたクローンを急速成長させ、基本的な情報等をインプットする。それがボイスロイドだ。

 

クローンを作るためのオリジナルはかなり希少で適応する人間はまずい無い────などの説明は今はいいだろう。

 

とりあえず、彼女は人間だが人間では無いのだ。

 

それが、彼女に大きなコンプレックスを与えている。

 

マスターに好きと言いたい、愛して欲しい、愛し合いたい、という感情に対し、でも自分はボイスロイドだ。私なんかを愛してくれるはずがない等の感情が彼女を締め付けた。

 

それが徐々に徐々に積み重なり、マスターを求める欲求は次第にまし、何時からかマスターが口につけたものを舐ったり、マスター隠しどった写真等で自慰をしたりした。

 

最初は真っ直ぐだった恋心は抑えている内に歪み、曲がっていった。

 

そして積み重なる歪んだ愛情、独占欲、愛されたいと思う気持ち、彼を求める心は抑えていても何時かは溢れてしまうだろう。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

 

翌日も、彼女は何時と変わらず朝の6時に起床し、着替えてから朝食を作り、マスターを起こしに行く。

 

「マスター朝ですよ。起きてください」

 

そう言って体を揺さぶると、彼は、ん〜と気の抜けた声を出しながら起床する。

 

「おはようございます。朝ごはん出来てますからね」

 

マスターはゆかりが出ていくのを眠たい目を擦りながら見届けたあと、着替えてリビングに行く。

 

「おはよう〜ゆかり」

 

そういうとまだ目が覚めきらないマスターは椅子に座り、朝食のパンを食べ始める。

 

そして朝食を食べ終わるとコーヒーに口をつける。

 

「美味しかったよ。ごちそうさま」

 

「ご粗末様です」

 

何時ものやり取りをしていると、マスターが言葉を零す。

 

「きっとゆかり良いお嫁さんになれるよー」

 

その言葉を聞いた瞬間、ゆかりの胸が痛む。

 

彼への気持ちが強くなる。それに対して歪みも大きくなる。

 

ゆかりに自覚はないが、それでも着々とそれは歪になっていった。

 

「あぁ、そうだ。今日は少し出かけるよ」

 

マスターの言葉にゆかりはハッと我に帰る。

 

「は、はい。えぇと何処に行くんですか?」

 

「いや、ちょっと友達の会う約束があってね。それで買い物するんだ」

 

「へぇ…そうなんですか。わかりました。いつごろ帰ってきますか?」

 

「あー5時位かな?」

 

友達 それは男なのか、それとも女なのか、どれほど密接なのか、もしかしたら実は恋人なのか。平静を保ちながらもゆかりは友人に対してマスターをとられないか、気が気でなかった。

 

ついて行って確認しないと。ゆかりの頭は直ぐにそれでいっぱいになった。

 

その後マスターは直ぐに支度を済ませ、出かける。

 

「じゃあ行ってきます」

 

「はい。行ってらっしゃいマスター」

 

マスターが外に出て間も無く、ゆかりも家を出る。

 

マスターは電車に乗り、ゆかりもマスターに見つからぬよう後を追った。

 

隣の街に着くとマスターはそこで降りた。

 

駅から出るとマスターは近くの大きなデパートへ向かった。

 

デパートの前に着くと、マスターはキョロキョロ辺りを見回す。

 

そして誰かを見つけた様で、マスターは「おーい」と言いながら近づく。

 

ゆかりはそれを影で息を飲みながら見守る。

 

マスターが近づいたのは男なのか、それとも女なのか。

 

マスターが近づき声を掛けた人物が明らかになるとハラハラしながら見ていたゆかりの目は光を失う。

 

そこにいたのは女性だった。しかもその女性はゆかりも良く見知った人物でもあった。

 

「おまたせー」

 

「もう遅いよー」

 

金髪の長髪、豊満な胸、明るい性格、そう、ゆかりはその人物をよく見知っていた。

 

弦巻マキ。ゆかりの友人だった。

 

何故マキさんがあそこに?なんでマキさんが?

 

気がつくと自室に戻ってきていた。

 

ゆかりはベッドに包まる。

 

目を閉じても何を考えてもあの光景ばかり目に浮かぶ。

 

なんで私はだめなの?なんでマキさんなの?なんで?ねぇ、なんで?なんで?なんで?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

 

「なんで!!!」

 

歪んだ恋心がもたらしたのはは、もはやボイスロイドだから愛してもらえない。等否定的な感情ではなく、何故自分じゃないのかという独占欲の塊に変化していた。

 

そんな独占欲がもたらす結論は一つだ。

 

ベッドの上ではぁ、はぁ、と先程の大声で息を切らすゆかりは小さく呟く。

 

「マスターが私を愛してくれないのなら、私がマスターを愛せばいい」

 

「マスターを愛せばきっとマスターも私の思いに気がついてくれる、私を愛してくれるようになる」

 

壊れた思考回路が導いた答えを遂行するため、ゆかりは立ち上がる。

 

時計は4時50分。そろそろマスターは帰ってくる時間だ。

 

ゆかりはふ、ふふ、と嗤いながらベッドから降りる。するとガチャと玄関が開く音が聞こえた。

 

ゆかりは扉を開き、それをみたマスターは

 

「ただいまゆかり」

 

と言って靴を脱ぐ。

 

「おかえりなさい。マスター。それで今日は何処へ行かれてたんですか?」

 

マスターを出迎え、取り繕った笑みで今日の出来事を訊ねる。

 

「あぁ、友達と買物をしてきたよ」

 

「…それは男性ですか?女性ですか?」

 

「え?あぁ、男だよ。高校の友達だよ」

 

嘘だ。

 

私は見たんだ。今日マキさんと会っていた事を。

 

なんで嘘をつくの?

 

付き合っているから?

 

私にバレたくないから?

 

マスターの『嘘』は、ゆかりの零しながらも抑えていた蓋を壊すには充分だった。

 

ふ、ふふふ

 

『嘘』を聞いてゆかりは嗤う。

 

その目は虚ろで、浮かべる表情は狂った微笑み。

 

その気配を察したのかマスターがぐんっとこちらに顔を向ける。

 

「どうかしましたかマスター?」

 

マスターが顔を向けるとそこにはいつもと変わらないゆかりのきょとんとした顔。

 

「早くあがって座って待っててください。何か飲み物いれてきますね」

 

ゆかりはパタパタとキッチンへ歩いていく。

 

マスターはおかしいなと首を傾げながら家へあがりソファへ腰掛ける。

 

キッチンへつくと、抑えていたモノを再び開ける。

 

ふふ、ふふふふふ

 

再び狂った微笑みを浮かべる彼女はせっせと2人分のアイスコーヒーを用意する。

 

ふふふ、マスターの分にはアレを入れましょう。

 

ゆかりは床下から一つ薬を持ってくる。

 

これはなにか。答えは痺れ薬だ。

 

これからマスターを自分のモノにするのだ。これ位なければ上手くいくはずもあるまい。

 

ゆかりは鼻歌交じりにアイスコーヒーに薬を入れ、かき混ぜる。

 

そしてお盆に載せるとそれをマスターの元へ持って行く。

 

「お待たせしましたマスター。アイスコーヒーです」

 

痺れ薬入りのアイスコーヒーをマスターの元へ、普通のを自分の所へ起き、ゆかりは何時もの優しそうな顔でアイスコーヒーを飲む。

 

顔はいつも通りだ。だが視線は鋭くマスターが飲もうと口を近づけるストローへと行く。

 

あぁ、後少しで、マスターは私のモノに

 

何も知らないマスターはストローに口をつけ、アイスコーヒーを吸い上げる。

 

半分くらい飲んだ辺りだろうか。マスターはアイスコーヒーを机に置くと

 

「なんか、変だな…体が…動…かない…?」

 

薬が効いてきたのかたまらず横になるマスター

 

「それはそうですよ。痺れ薬が入っていますからね」

 

ゆかりの一言に目を見開くマスター。何かを言おうとしているが、薬のせいでもう言葉すら発せない。

 

「マスターが悪いんですよ?私に内緒でマキさんと会って…デートして…」

 

マスターの前で取り繕っていた仮面(笑顔)はボロボロ剥がれ落ちる。

 

「…私じゃ駄目なんですか?私は、こんなにもマスターを愛しているのに…」

 

横になったマスターの前に立つ。

 

そして着ていたワンピースを、パンツを、ブラを脱ぎ捨て、マスターに馬乗りする。

 

マスターは踠き逃げようとするが、体は言うことを聞いてくれないようだ。

 

「ふふふ…マスターも服邪魔でしょう?」

 

ゆかりはマスターの服も全て脱がす。

 

マスターは抵抗する術もなく服を全て脱がされる。

 

下半身の逸物は既にそそり勃っており、亀頭の先からは我慢汁が垂れる。

 

「なぁんだ。マスターもその気じゃないですか」

 

虚ろな目で頬を紅潮させたゆかりは、そのマスターのペニスを咥える。

 

亀頭を舌で舐めると、快感からマスターはビクンと体を揺らす。

 

次は口で咥える、ジュブ、ジュブと音をたてながらしゃぶる。

 

すると、口に生臭い味がする。恐らくマスターが射精したのだろう。

 

精液は生臭く、とても変な味がしたけども、それがマスターの物と思うと不思議と嫌ではなかった。

 

口に射精した精液を飲み込む。精液は喉に粘付き、酷い不快感を与えてくる。

 

でも、その不快感は一種の快感へと昇華されて、その快感は酷く癖になりそうだ。

 

飲み込んだ後、ペニスについた精液も舐め取り、飲み込む。

 

「ごちそうさまです、じゃあ次は、メインディッシュを頂きましょうかね♡」

 

ゆかりはそう言うと動けないマスターの上に跨る。

 

やめろと言いたそうなマスターを尻目に、ゆかりは自分のぐちゃぐちゃになった恥部にペニスを当て、腰を降ろす。

 

ボイスロイドに処女膜なんて存在しない、ペニスはずぶん、と押いり、その瞬間先程の快感と比較にならないほどの快楽が私を襲う。

 

「〜ッ♡」

 

押れるだけでイってしまった。マスターも同様にイったのだろう。お腹の当たりが既にあたたかい。

 

マスターと繋がっている感触、マスターの子種を注がれている幸福感、マスターを自分だけを見ているという独占欲が満たされていく。

 

絶頂の余韻を三十秒程じっくりと堪能し、再び喘ぎを漏らしながら腰を動かす。

 

ピストンは時間と共に激しさをを増し、それと共に喘ぎ声も激しくなる。

 

「あっ♡はっ♡ああっ♡」

 

押さえ切れない嬌声を押し殺す様にゆかりは自分の唇をマスターの唇で塞ぐ。

 

重なった唇の中でゆかりは舌を彼の口内へ侵入していく。

 

侵入した舌は彼の舌と濃厚に絡めあう。

 

それは想像を遥かに超える快感がゆかりを襲う。それは甘く、濃密で、脳が蕩けてしまいそうな程、淫らかな快感だった。

 

クチュ、チュパと音を立て舌を絡ませる。絡む度に快感は押し寄せ、口からは微かに喘ぎが漏れる。

 

ピストンも同様に快感に任せ激しくなる。

 

理性などすでに無く、イってしまいそうな快感を身に感じながらも彼女は激しく腰を動かす。

 

ピストンの中、彼の陰茎も熱くなり、彼ももうイってしまいそうだとわかった。

 

「っぁ♡~~♡♡」

 

口づけの中、二人は絶頂を迎え、膣内に再び精液が流れ込む。

 

上に跨っていたゆかりは快感と疲れから身体に力が入らなくなり、彼の身体に覆い被さるように倒れ、そのまま二人は眠り込んだ。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

 

夢を見た。

 

マスターと初めて会った頃の事だ。不安を抱えマスターに初めて会った時、彼は優しい笑顔で出迎えてくれた。歓迎してくれた。

 

いつも優しくしてくれて、大切にしてくれて、私は何時からか、彼に恋をしていた―――――――

 

 

目が覚めると、ゆかりは自室のベッドで寝ていた。

 

ばっと身体を起こし、正気に戻った頭で自分が何をしたのかをじわじわと思い出す。

、

ただ、自分を選んでくれなかった。それだけの理由で狂い、独占欲に飲まれ、飲み物に薬を仕込み、彼を、汚してしまった。

 

自分は想いすら伝えなかったのに、それで他の人に彼を取られて、嫉妬して、あぁ、私はなんて情けなくて、意気地なしで、卑しいのだろう。

 

目から大粒の涙が零れだす。

 

こんなことになってしまえば、もう彼の側に居られない。いや、居てはいけないんだ。

 

こんなことをしてしまったのだから、彼の側にいる資格などないし、なにより彼がマキさんと結ばれる所など見てしまったら、また、いや、今以上に私は壊れてしまうだろう。

 

だから、私はもうここに居てはいけないんだ。

 

溢れている涙を腕で拭い、いつものワンピースを着て上着を羽織る。

 

私なんかは何処かで野垂れ死ぬのがお似合いだ。

 

そう決断したゆかりは小声で「ありがとうございました、ごめんなさい、さようなら」と呟き、部屋を出ようとした時だった。

 

ゆかりが手をかける前にドアが開き、そこにはマスターの姿があった。

 

「ます、、、たー、、、」

 

ゆかりが声を漏らす。彼は何を言いに来たのだろうか。こんなアンドロイド(女)に。

 

罵倒?それとも自分の手でアンドロイド(私)を壊しに来たのだろうか?

 

それなら、良い。彼の手で壊されるのなら、私は本望だ。

 

「何所に行くんだ?」

 

彼が発したのは、どちらでもなかった。

 

それに対してゆかりは微笑み

 

「何処かに、ですよ。貴方の邪魔にならない、何処かへ」

 

「私は貴方に酷いことをしてしまいました。それこそ、裏切りのような事を」

 

「でも私には贖罪なんて出来ない」

 

「だから、せめてあなたの邪魔にならない所へ行くんです」

 

乾いた微笑みで伝えると、彼の隣を通り部屋を出ようとする。

 

「それで、俺が喜ぶと思ってんのか」

 

マスターは通りすぎるゆかりの手を掴んで続ける。ゆかりはそれに思わず「え」と漏らす。

 

「あんな事で俺がお前を捨てると思ってんのか!」

 

「俺はあんな事でお前を捨てたりなんかしない!だって」

 

「だって俺はお前が好きだから!!」

 

彼が放った言葉にゆかりは衝撃を受け、フリーズする。

 

それに気づかず話を続けるマスター。

 

「ちょっと発情した位で――――「ちょっと待ってください」え?」

 

マスターもキョトンとした目をする。

 

「マスターは私の事が好き?」

 

「好き」

 

「え?じゃあマキさんは??」

 

理解が追いつかなくなり混乱し始めるゆかり、それに対してマスターは「見てたのか!?」と驚くと、少し恥ずかしそうにしながら

 

「買い物に付き合ってもらたんだ。その、プレゼントを選ぶのに」

 

と頬を掻きながら話す。

 

「プレゼント、、、?」

 

混乱のあまり言葉の意味が理解出来てないゆかりに、小さい箱が差し出される。

 

「開けてみてくれ」

 

理解出来ぬまま箱を開けると、そこには綺麗な金の指輪があった。

 

「へっ?これ、もしかして、、、」

 

「もしかしてだ。ゆかり、俺と結婚してくれ」

 

照れくさそうなマスターから差し出されるその言葉に先ほどまで押さえていた涙が決壊したかのように溢れ出る。

 

「!?嫌か!?」

 

オロオロするマスターに泣きながら答える

 

「違うんです、嬉しいです」

 

「でも、私は、ボイスロイドで、しかも、私は壊れてて、、、だから、貴方に、相応しく、、、」

 

それを聞いたマスターはため息を一つつき、ゆかりを抱きしめる。

 

「俺はゆかりの良い所、悪い所含めて愛してる」

 

「だから、ボイスロイドだって構わないし、例えゆかりが壊れていたとしてもそれだって愛してみせる」

 

「だから、結婚しよう」

 

その言葉にゆかりはより一層涙を流し

 

「はい、はい、結婚します。だから」

 

ゆかりは涙を拭い、彼に向って精一杯の笑顔で

 

「だから、幸せにしてくださいね」

 

左薬指に指輪を嵌めた彼女はそう言って優しい口づけをした。

 

 




ここまで閲覧して下さった皆様ありがとうございました!

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