あの相模までもがおかしくなってしまってから二週間近くが経とうとしている、七夕を翌日に控えた六日のこと。
俺は朝っぱらから変なメールをスマホが受け取った着メロで起こされた。
変、と言っても差出人は知り合い。というかなぜアドレスを知っているのかが知りたいが、魔王様だったので仕方ないと諦めた。
「およ、おふぃふゃん、おひはの?」
それよりも下半身が生暖かいことの方が今は重大な気がする。
「あの………小町ちゃん? どうして俺の股のところにいるのでしょうか? すごく下半身がスースーして、その割に生暖かい感触があるのですが……………」
「ぷはっ、お兄ちゃんが、ごくっ、悪いん、だよ。朝から大きくしてるからつい小町も我慢が抑えられなくなっちゃたんだから」
「こらこらこらっ。さすがにこれはまずいでしょ。もう千葉の兄妹あるあるまっしぐらじゃねーか」
「なに、寝ぼけたこと言ってんの? ちょっと顎が疲れちゃったから、今度はこっちでしたげるね」
そう言って俺の股関節の上にまたがってくる小町。
待て待て待てッ!?
なんで今日も履いてないんだよ。
制服姿で履いてないとかどんな変態趣向なんだよ。
「あっ、これっ、きもちいぃ………」
前後に腰を動かし、俺の性欲を駆り立ててくる我が妹。
ついでに自分の性欲も満たしているあたり、そのうちやばいことになりそうで怖い。
けど、これ拒否したら晩飯どころか朝飯すら抜かれる可能性があるから、引きはがせないのが辛い。
「あっ、あっ、あっ、お兄ちゃん、もっと、もっときもちよくしてぇ」
いや、動いてるのはあなたですからね。
俺もう頭がついて行ってないからね。
「あ、ちょ、お兄ちゃんっ!? なんで、さらに大きくしてるのさ」
「いや、この状況が十中八九の原因だろうが。いいからそこどけ」
「え? お兄ちゃん、ここまでやったんだから、んあぁっ、最後まで出した方が楽だと思うよ」
「それは自分でなんとかする」
「むー、もう小町が我慢できないからこのまま出しちゃうね」
と、腰の動きを早める小町。
俺も口ではこんなこと言ってるが正直結構限界にきている。
おい、童貞舐めんな。
こんな生々しい感触を直に味わったら、しかも擦り付けられたらいくら相手が妹とあれど限界に達しないわけがないだろう。
「お、お兄ちゃん…………おにいちゃぁぁぁあああああああああああんッッッ!!!」
小町が絶頂に達したところで俺も限界を迎えた。
どろっとした感触が下半身を伝っていくのがわかる。
「はぁ…………はぁ…………きもち、よかった…………よ」
肩で息をする小町をよそにテキパキと白濁液を拭う俺。
なんか悲しくなってきた。
いつもよりちょっと過激な朝を迎え、そのあとも一悶着も二悶着もあり自分の教室にたどり着いてようやく魔王様からのメールを見ていないことに気づく。
絶対碌でもないことだろうけど、見なかったら見なかったで後が怖いため、由比ヶ浜を遇いながら渋々メールを開く。
「………ねえ、あんた朝からどしたの。いつにも増して目が腐ってんだけど」
珍しく俺よりも早くに来ていた川崎が訝しんだ顔で俺の目を見てくる。
「い、いやそのな、まあアレだよ、アレ」
「はっ? あんた頭でも打ったの」
さすがに朝のアレは口にはできん………。
だからと言ってこれといった言い訳も思いつかないわけで………。
「…………そういうことにしておいてくれ」
「ああ………」
何かを察した川崎はそれ以上聞いてくることはなかった。
それで、陽乃さんのメールはなんなんだ?
メールを開くとこう書かれていた。
『明日お姉さんの誕生日だから一日祝ってね☆』
どゆこと?
明日も俺学校なんですけど。
これって休めということなのか?
まあ、一応期末テストは終わったし。
返却と夏休みに向けてってだけの学校生活しかないけど。
休めと?
「横暴だな………」
「ほんと横暴ね」
耳元で聞き覚えのある声がした。こそばゆいから耳元で話さないで欲しいんだけど。
「さ、相模…………」
「また、新しい女の人でも引っ掛けてきたわけ」
こいつの誕生日を祝わされた日にあんなことがあったのに、なんなら月曜日にはあんなことまでしてきたのに、こいつの普段は変わらない。スイッチがあるのか、迫ってくるときはいたって二人になったとき、あるいは俺がやった首につけるアクセサリー(首輪とは決して言ってはいけない)をつけたときのみ。分かりやすい子で大変対処が楽です。そもそも対処する事態にならないのが最もなんだけど。
「いや、新しくはないな。お前も知ってる人だし」
「へー、知ってる『人』なんだ」
「な、なんだよその含みのある言い方」
「あんたこういう時は大体知ってる『奴』って言うくせに、その相手が歳上の人だとしってる『人』って言うのよ」
「…………よく見てるな」
「ば、バカじゃないのっ!? そんないつもいつも見てるわけじゃないんだからっ! たまたま、そうたまたまよ。たまたまあんたの言い癖に違和感を感じたってだけよ。それで注意して聞いてみたら、この有様だったの! それ以上、変な勘違いしないでよね!」
はい、出ました。
相模さんの『勘違いしないでよねっ!』。
二次元のツンデレさんたちが口にする言葉を本物のツンデレさんが口にしちゃいました。
いやー、和むわー。
「大方、雪ノ下さんのあのお姉さんでしょ。……………………あの人怖い……」
ああ、あの文化祭の一件以来、相模も魔王様の恐怖を身に沁みて実感してるのね。トラウマになってなきゃいいけど。
赤い顔から急に青くした相模を見ながらメールを打つ。
『俺、学校あるんですけど』
そう送ると二十秒ほどで返って来た。
ちょっと早くない!?
メールってこんな早く帰ってくるもんなの?
由比ヶ浜とかもそうだけど、なんでみんなあんなに返信が早いの? 暇なの?
『雪乃ちゃんには許可とったから』
………………。
これはあれだな。断れば雪ノ下からの制裁が待ち受けてるということか。最近のあいつは何をしてくるか分からんからな。ちょっとは素直になった分、病んでるんだよなー。言動が。
「あんた、それどうすんの?」
「え? あー、まあ行くしかないだろ。行かなかったら後で何されるか分かんねぇし」
「だよね……………」
陽乃さんの怖さを知る者同士、文面を見ただけで色々と理解してしまったようだ。
『分かりましたよ』
そう送った瞬間さらにメールが入った。
『駅で待ってるからね…………………こないとお姉さん泣いちゃうんだからっ☆』
「「こ、怖すぎる………」」
相模と俺は声をそろえて恐怖を感じた。
横では川崎がさらに変な目で俺を見てくるし、由比ヶ浜は俺の腕にすりすりと頰を押し当てている。
なんかどっかから戸部らしき声で、「ヒキタニくん、朝から女の子三人も侍らせるとかマジパネェわ」「「それな」」というのが聞こえてきた。うん、後であいつを呪ってやろう。