※この作品はR-18です。

ハリーポッターと逆行少女の受難   作:色慾

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試合と特訓a

あっという間にクィディッチシーズンがやってきた。あの事件以来、4人の仲は頗る良い。最初は精神年齢の違いに戸惑っていたセシリアも、何だかんだ馴染んでいた。

 

閑話休題。ともかく、今日はハリーの初試合だ。グリフィンドール席最前列のど真ん中を陣取り、大きな旗を掲げるロンやハーマイオニーは勿論の事、読書中に無理やり連れ出されたセシリアも一応応援に来ている。ヘリオスはというと、あまりの騒音に、セシリアのローブの中ですっかり丸まっていた。神獣と雖も、彼はかなり甘えん坊のようだ。

 

「見て!ハリーよ!!」

 

応援の声に負けないほどの声量で、ハーマイオニーが耳元で怒鳴る。額を押さえながら指差す先を見ると、確かに赤と黄色のユニフォームに身を包んだハリーが、今にも吐きそうな顔で歩いていた。

 

「大丈夫なのか、あれ?」

 

「さあね。おっと、マルフォイが挑発してらぁ!」

 

答えたロンと、声につられたハーマイオニーが、すかさずマルフォイを、スリザリンを親指を下に向けて煽る。青筋を浮かべたマルフォイが何か喚くが、こちらには届かない。かつてスリザリンに在籍していたセシリアとしては、何とも言えない気分だった。

 

試合はグリフィンドールの優勢で始まったが、スリザリンの度重なるラフプレーで、逆転されつつあった。最初こそ呆然としていたハリーだったが、何かを見つけたのか、矢のように選手の合間を縫って飛び出した。しかし、指先が金色に輝くスニッチに届こうとした瞬間、彼の箒が暴れ出した。

 

「どういう事?ハリーの箒が暴走してる!このままじゃ彼が危ないわ!!」

 

「通常箒には保護呪文がかかっていてああはならない。加えてポッターは飛行に天性の才能を持つ、非常に強力な魔法がかけられている証拠だ」

 

「呑気に分析してる場合じゃないよセシリア!誰かハリーを狙ってるんだ!」

 

「箒にじっと視線を向けてるやつを見つけて妨害してくれ。そいつが下手人だ。ぼくはここで反対呪文を唱えて箒の動きを抑えてみる。頼めるか?」

 

「「勿論!」」

 

セシリアが全神経を箒に向け、反対呪文を唱えている間、ロンとハーマイオニーは望遠鏡で観客席を素早く見回した。だが皆の視線がハリーに向かっており、判別がつかない。箒の暴走はまだ続く。セシリアが額に汗を浮かべながら対抗しているが、流石に長時間は持たないだろう。これは生徒にできる仕業じゃない。教員席に目を向けると、1名だけ不審な動きをする者が居た。

 

「持っててロン、ちょっと行ってくる!」

 

「おい待ってよハーマイオニー!」

 

有無を言わせず、望遠鏡をロンに押し付けると、ハーマイオニーはすばしっこく人並みに紛れた。ロンの望遠鏡の先でハーマイオニーは素早く教員席に火をつけ、何事もなかったかのように戻ってきた。ハリーが辛くも態勢を立て直し、スニッチを捕まえたのは、その直後だった。轟く歓声に反し、3人の心は晴れなかった。

 

 

 

翌朝、4人は朝食を詰めたバスケットを持ち、湖のほとりにいた。誰にも聞かれないよう、皆が概ね大広間にいるこの時間帯を選んだのだ。サンドイッチを摘みながら、ハリーが口火を切った。

 

「昨日はありがとう。一体誰だったんだい?」

 

「クィレル先生よ、多分」

 

「馬鹿言え!あんなにおどおどしてたのに、かい?」

 

「あの時ハリーの箒から目を離さず何かブツブツ唱えていた人はクィレル先生だけよ。まあ、先生が誰かに脅されていた可能性はあるけど」

 

「だとしても、何でハリーを?」

 

「例のあの人の残党……とか?」

 

「何れにせよ結論を急ぐより、自衛の練習をした方がいいだろう。確定できない限りは」

 

容疑者を性急にリストアップする3人を、セシリアが止める。手は以前と分厚い書籍を繰っているが、しっかりと話は聞いていたらしい。

 

「そうね…けど、難しい呪文に手を出したって、今の私たちには……」

 

「その通りだ。むしろ基礎体力と反射を鍛えて避ける練習をした方がまだマシだろう。コントロールできない魔法など無用の長物に他ならない」

 

「そうだ!セシリアが鍛えてくれるってのは?」

 

「反対だ。ぼくは今攻撃呪文が使えない。確かに杖なしで頑張ればどうになるが、それじゃあ威力不足で練習にならないよ」

 

「うへぇ…じゃあどうしたら…」

 

ぴしゃりと撥ね付けられ、ロンが思わず顔を曇らせる。すらと、いつもセシリアの懐でゴロゴロしていたヘリオスが着地し、彼女の袖を引っ張った。

 

「本当にいいのか?ヘリオス。…………分かった。喜べ。ヘリオスが遊んでくれるそうだぞ?」

 

「冗談はよしてくれよ。猫だろ?」

 

馬鹿にするロンに、セシリアが片眉を吊り上げる。

 

「試してみるか?幸い今日は休日だ。時間はたっぷりある」

 

 

 

セシリアの言葉が冗談じゃない事は、すぐに実証された。訓練内容は簡単だ。誰も使っていないクィディッチグラウンドを使って、追いかけるヘリオスから3人が逃げるだけ。杖を使ってヘリオスを攻撃するなりして足止めしても良い。15分1セットで3回繰り返す。15分逃げれば3人の勝ち、ヘリオスが3人捕まえたら負けだ。

 

「ちっくしょおおおおおー、こんなの聞いてないよ!!!」

 

隠れたポールに越しに、爆炎の熱が伝わる。普段のヘリオスの姿からはおよそ見当もつかないような雄々しい肉食獣の姿に、ロンは叫んだ。因みに、魔法が効かないのにショックを受け、ハーマイオニーは早々に捕獲され、今はセシリアと並んで観戦してる。監督係が必要とのことでセシリアは免除である。理不尽だ。

 

「仕方ないよロン!言い出したのは僕らの方だ!!もう半分は過ぎた、あと一息さ!!」

 

頭上をよぎる爆炎を前転で避け、別のポールに隠れたハリーが、すかさず浮遊呪文で観客席の座席をヘリオスにぶつける。その隙に、ロンがポールに登って、ゴール横の旗を、槍代わりにヘリオスに射出する。シンプルかつ有効な戦術だ。最も、その両者とも、ヘリオスがドーム状に射出した火炎ですぐに撃ち落とされた。

 

「くっそおおおおお!これでも啖え!」

 

「危ない!挑発に乗るな!!」

 

痺れを切らしたロンが手当たり次第ポールの旗を射出する。コントロールの不正確なそれが当たるはずもなく、返って高い位置に登って身動き取れないロンがヘリオスに捕まるのも仕方ない事だった。

 

「9分23秒。初回にしては頑張ったのではないか?あとはハリーだけか」

 

「涼しい顔しやがって。ずるいよ、セシリアは」

 

「まあでも、確かに有効な練習よねー生き物相手にするのは。次はもっと頑張るわ」

 

持ち前の柔軟性と運動神経で逃げ続けていたハリーも、13分52秒であえなく捕まり、ヘリオスにポイと観客席へ放られた。

 

「フィールド活用が出来てないな。もっと柔軟に対応してしっかり足止めしないと、現実では死んでいたな。特にロン、あのヤケクソな攻撃はダメだ」

 

「そこまで言うならセシリアがやって見ろよ!一人だけずるいぞ!」

 

「ちょっとロン!」

 

「どうせいつも本ばっかり読んで、運動できないんだろう?」

 

最初は淡々と聞き流していたセシリアがピクリと眉を動かす。

 

「言ったな。私が勝ったらどうする?」

 

「な、なんでも聞くさ!」

 

精一杯虚勢を張るロンに、セシリアは余裕の表情である。ローブを脱ぎ捨て、グラウンドに軽やかに立つと、セシリアは静かにヘリオスを見据えた。

 

「あ、あれ、大丈夫か?」

 

流石に攻撃呪文が封じられているのが心配になり、ロンが漏らす。振られたハーマイオニーはしかし、それを冷ややかに一蹴した。

 

「自分で言い出したんでしょう?黙って見てなさいな」

 

 

 

先ほどは文字通りお遊びにすぎなかった事を3人はすぐに悟る事となった。ハーマイオニーによる開始の合図以降、小石などによる目潰し、魔法植物を群生させる事による足止めなどは朝飯前で、果ては飛びかかったヘリオスの動きを予測し、着地点の土地を底なし沼に変えてしまった。瞬時に足場の異変に気付いたヘリオスが爆炎を足裏に纏い、一瞬の推進力で近くのゴールに飛びつく。そしてその勢いのまま、外周のセシリアに飛びかかろうとした。

 

「アグアメンティ!」

 

セシリアはむしろ迎合するようにヘリオスの懐へ飛び込み、その反対側へ抜けた。彼女が声を張り上げた途端、競技場が凄まじい速度で水に満たされていく。水に対してヘリオスの爆炎は相性が悪い。神獣ともあれば確かに周囲の水分を蒸発させるのは容易いが、大量の水分を吸った底なし沼がその下にあるのだ。いくらヘリオスといえども、引きずり込まれる危険はある。

 

「そのための伏線か!ロン、ハーマイオニー、逃げよう!」

 

意外にも真っ先に気づいたのはハリーだった。促す彼にハーマイオニーもあっと声をあげ、惚けているロンを二人で引きずってスタンドを駆け上がる。振り返ると、水位は既にスタンドの半分を埋め尽くし、競技場全体が大きな湖となっていた。ヘリオスは一同の予測に反し、器用にゴールの柱を渡り続けている。一方のセシリアはと言うといつの間にか群生させた大量の睡蓮を踏んで軽やかに、舞うように逃げ惑っていた。この時点で経過時間は8分47秒。レベルの差を痛感したハリーは思わず歯噛みした。

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