※この作品はR-18です。

曙からクソ(を)提督に   作:ちょこらーた

21 / 26
中々濡れ場に届かない…。


稲妻〜電の場合弐

〜 〜 〜

「大丈夫か。しっかりしろ。キスは遠いぞ。いや、キズは浅いぞ」

「姉さん、とぼけてる場合ですか。電ちゃん、大丈夫?」

「響、どうして、行ったらダメなのです?」

電の意識はまだ過去に囚われていた。電の手が羽黒の頭に伸びる。

「あっ、こら」

「うふっ、いいですよ、姉さん」

羽黒の手が優しく電の手に重なって、幼い手がより幼い手を包み込み。

柔らかい手触りに電の目が焦点を取り戻す。

「ふわっ」

ごちっと鈍い音がして、起き上がったばかりの電の脳裏に火花が散った。

「あいたたた…」

羽黒は痛がりながらも長姉を思わせる可憐さがあった。

「はううう」

対照的に稚さ全開で幼児的外観の艦娘が呻く。漫画的に両手で頭を押さえてる。

「あ、おい、大丈夫か」

足柄の声に反応して、

「は、はわわ、すいませんなのです!」

再び頭を妹とこっつんこする前に飢えた狼の手が防ぐ。さすがは重巡の要であった。これでカツカレーしか推せない婚活の飢えた負け犬でなければ。羽黒は内心思った。

(でもこの鎮守府で婚活って。そう言えば姉さんが着飾るところは見たことあるけど、いつもどこに行ってるのかしら)

 そんな考えが羽黒の頭に浮かんだが、目の前の現実に戻ることにした。

「ごめんなさい、電ちゃん。ちょっと提督に緊急入電を届けないといけないから失礼するわね」

「悪かったな、電。あまり他の艦娘にぶつかるなよ」

 立ち上がった重巡姉妹は電の目から見ても凛々しかった。

「は、はい、気をつけます、なのです!」

 早足で立ち去る二人を半ば憧れの目で見る電だった。

 ーーふわぁ、足柄さん、かっこいいのです。それに羽黒さんも優しいし。私もあんな風になれたらいいのです。

 ふと「私は立派なレディーなのよ」と自慢げにコーヒー(中身は響が事前にコーヒー牛乳にすり替えてある)を飲み干す自称姉の顔が頭に浮かんだ。

「ふふっ、なのです」

 立ち上がろうとして拳を握ったとき、電の手にチクッと痛みが広がった。

 手の中には羽黒の髪飾りがあった。カタパルトを模した妙高四姉妹の証とも言える品だった。

「は、はわわわっ、はわわわわわっ」

 慌てふためき両手をバタバタさせて電が踊る。

 冷静さを取り戻したのは数分後だった。

 ーーい、今すぐ返しに行かないとっ!

 だが、電の耳に響の声がささやいた。

『提督の執務室には何があっても近づいちゃダメだよ』

 その言葉の意味するところが何なのかは理解できなかったが、電は手の中の髪飾りを見た。

 ーーこ、こんな時、羽黒さんや足柄さんだったら・・・・・・。ぐ、軍隊は命令が絶対だけど、ひ、響は妹だから命令じゃないもん。それに、すぐに走って渡せば約束は破ってないもん。

 数瞬の逡巡の末に髪飾りを握りしめて電は走り出した。

 





濡れ場は何処行った?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。