生物は争う。
生物は奪い合う。
生物は殺し合う。
これらは、世界の真理であり、生物に宿命付けられた呪いのようなもの。
逃れる事は出来ず、克服も出来ず、従う事しか出来ない、絶対的な規範。
私達人類も例外ではなく、互いに争い続けている。
だが、他の生物と決定的に違う点が幾つか存在していた。
それは、道具を用いる事と、明確な規範を持つ事である――
――
「…………」
私は湖畔を囲む岩の一つに腰掛け、折り畳み式釣竿を握っていた。
既に二時間は同じ体勢のまま。
魚がかかる気配も無いまま、無為に時間が過ぎていく。
澄んだ水面に写る、自分の姿を眺める。
長い前髪の銀髪セミロング。端整だが人形同然の顔。線の細く華奢な身体。
表情は無く、呼吸しているのかも疑わしく見える。
生きている以上、呼吸はしているのだが。
普通の人間が見れば、人形と勘違いし、頭の軽い男性ならば、
(…………どうでもいい)
今は食料の確保が先だ。
再び、釣糸に集中した直後、浮子が浮き沈み。
暫し、様子を伺い――完全に沈むと同時に、引き上げる。
かかっていたのは、比較的大きい魚。
主食としては充分な大きさだった。
脇に置いていたバケツに放り込む。
餌を付け直し、釣りを再開。
程無くして、二匹めが釣れると同時に、背後から声が聞こえた。
「おいおい、こんな僻地に何があるってんだよ?」
「あるのは確か……シュネーベルの跡地だろ?」
「そう、シュネーベルの跡地だが……そういう場所には――」
男性三人。声の調子からして、放浪者か。
一ヶ所に留まらず、世界中を転々とする放浪者のうち、彼らは盗賊寄りの連中だろう。しかも、かなり駆け出しの。
そんな奴が豪雪、永久凍土である極北地域のシュネーベルに向かうのは自殺行為に他ならない。
が、私には関係無い。勝手に苦労すればいい。
通り過ぎてくれればいいのだが、現実そうは行かない。
「お、テントに…………女がいるぜ」
男の一人が私に気付いた。
「ほんとだ。……しかも、北国系か」
「…………悪くねぇな。胸は無さそうだけど、小さいって事は、孔も小さいって事だ」
「あぁ、締まりが良いんだろ?」
遅れて気付いた二人もの声音には、下心がありありと浮かぶ。
下衆か。
あぁいう連中は、男尊女卑の精神が強く、女は性欲の捌け口でしか無いのかもしれない。
故に、このままだと、私は人身売買の商品か、肉便器になる。
(言葉が通じるような連中には思えないし、対処法は……実力行使)
釣竿を折り畳み、収納。
バケツにも蓋をし、反対側の傍らに置いていた物に手をかける。
それは、全長1.1m程の折り畳まれた金属の棒。……否、金属の棒ではない。
「なぁ、嬢ちゃん……こんな所に一人は危ないぞ。お兄さん達が街まで送ってあげようか?」
下心を隠さず近付いて来る男に向けて、先端を向け――
棒の中ほどを握り込む。
すると、軽い炸裂音が響き、
「大丈夫、お兄さん達は怖くな――い……ぐあっ!?」
男の心臓部が赤く染まる。
私は立ち上がり、棒を展開。
全長2m程の槍が組み上がった。
組み上がった槍を構えたまま、胸を押さえる男を蹴り倒し、
出血部を踏みにじる。
「ぐぁあぁぁぁぁっ!?」
寒冷地用のブーツのスパイクが傷口を抉る激痛に男は絶叫し……絶命。
まずは一人。
「……死にたくないなら、去れ」
槍の中ほどから突き出た、
これで立ち去れば御の字。
「テメェ……」
予想通りというべきか、男達は怒りを露にし、得物を抜いた。
(……安物のブロードソード)
傷一つ見えない新品。
壊すのは勿体無いな。売り払っても端金程度にしかならないけど。
早く終わらせよう。
穂先を男の顔面へ向け、グリップを握り込む。
軽い音。
血の華が咲く。
男は何が起きたか分からず、絶命しただろう。
(関係無い)
華が咲いた時、既に私はもう一人の男に向けて、疾走していた。
「なろっ!!」
振り回された長剣。
だが、直線的。素人め。
頭を下げて回避し――
「ごふっ!?」
ダッシュの勢いを乗せた突きを、胸部に叩き込む。
穂先は易々と肉を貫くが、絶命には至らない。
「まだだ……死ね、糞アマァアァァッ!!」
死力を振り絞るかのように、大上段に掲げられる長剣。
現状ならば避けられない。
……
「
柄の中程を握り込む。
すると、炸裂音が響き、鮮血と共に穂先が抜ける。
その衝撃を利用し、私はバックステップ。
男は胸部を大きく抉り取られ、肉がこびり付いた肋骨を覗かせながら、絶命。
辺りには、鮮血と肉片。砕けた骨片も散乱してしている。
「……
宙に槍を一薙して鮮血を払いながら、私は呟いた。
既に物言わぬ、死体に――
――以上、Blood Edge Survivorのプロローグでした。
本作は、どちらかと言えば理由稀薄なケレン味ありの近接アクション。
主武装は刃物や鈍器で、基本的に銃火器は出ません(予定)。
尚、続きを読みたい方が多数の場合は続けます。
……実を言えば、プロローグを書き殴っただけで、荒筋も5割くらいしか出来ていないので。
今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました――