出血を以て、己の弱さと愚かさを知る。
それが弱者であり、強者である。
即ち、等しく全てが卑称で、愚かな存在だ。
数日後――
(……着いた)
森林地帯を抜けた私は、アイズロスト大陸北部の都市、《North Frost》に辿り着く。
移民が築いた街であり、主な産業は第三次の接客業。
質の悪い物しか売っていないだろうけど、多少の物資補充はできるだろう。
そう思い、雑貨屋に入ったのだが――
「テメェみたいな小娘に売る物はねぇ。帰って飯事でもしてな」
態度の悪い店主に、商売する気は無かった。
一見すれば、横暴とも思えるが、これがシュトラーフの日常。
餓鬼は金を生む駒か、情欲を満たす為の道具に過ぎない。そのどちらも果たせない、“穀潰し”から搾り取れる金等、端金にも満たないのは自明の理。
穀潰しと商売をして、端金を手に入れるぐらいならば、餓鬼を
「……金は払える。いいから、食料と水を提供して」
「にわかに信じ難いな。……本当に払えんのか?」
店主が私の身体を舐めるように見る。
「……そんな貧相な身体で」
……やっぱりか。
この店主は、身体で払うと思っている上に、豊満な女性が好みな質らしい。
反吐が出る。
「悪いが、知り合いにも買ってくれそうな奴がいないんでな。お帰り願おうか?」
売り払う先も無いならば、価値は無い、という事か。
(仕方無い。力尽くか……)
と、思った直後、奥から数人の男がしゃしゃり出る。
「ちょっと待ってくれよ、親方。こんな良い原石を手放すなんて損だ」
「そうだぜ。……嬢ちゃん、このお兄さんが欲しい物を買ってくれるらしい。代わりに、少しお兄さん達のお手伝――」
下衆が。
「――
「何だって?聞こえないな」
私の発した言葉が理解できなかったのか、男の一人が舐めてかかるように、復唱を要求。
要求を呑む理由は無い。
必要なのは、この馬鹿共を苛つかせる事だ。
「
「おい、俺達に分かる言葉で言えよ!」
別の男が激昂。もう少しだ。
「Augen verloren Sprache auch Nante nicht verstehen , es ist nicht weit zu den Ungebildete(訳:アイズロスト語も理解できないなんて、無教養にも程があるよ)」
「だから……」
今の言葉で、男の一人がブチ切れ、
「分かる言葉で喋りやがれっ!!」
ナイフを抜いて襲い掛かってくる。
単調な突進だ。
半歩横に避け、腹部を殴打。
それだけで、男の内臓が裏返り、床でのたうち回る。
「貴方達は血を見る方が良い?」
私は、残る男達を見据えつつ、腰のホルスターに手を掛ける。
そこに収まっているのは、大振りの刃物――
柔な移民の首ぐらい、楽に叩き斬れる代物だ。
「あぁ?まぐれ当たりで喜んでじゃねぇっ!」
脅しは無駄だった。
いや、脅しと感じ取る程度の脳味噌も持ち合わせていなかった、だろう。
やや大振りの短剣……外見からすると――マン・ゴーシュ――を振るう男達。
牽制用にあたる短剣を主武装として扱うか。
刺突を紙一重で避け様に、男の腕にマチェーテを斬り上げるように振るう。
軽い手応えと共に、マン・ゴーシュを握る男の腕が宙に舞い、
「ぐぁあぁぁぁぁあっ!!…………ぁ」
激痛で絶叫した後、出血死。
まず一人。
振り上げたマチェーテを持ち替え、踏み込みつつ、手近な男に袈裟斬り。
右肩から心臓、肺、内蔵の一部と脇腹を切り裂き、二人目。
残りは一人。
姿勢を低くして、薙ぎ払われたマン・ゴーシュを避けつつ、更に踏み込み、
左手を一閃。
ズボンの上から男の象徴を切断。
続けて斬り上げるように、腕を振るい、正中線の肉と臓器を裂く。
だが、致命傷には至らない。左手に握るのが、刃渡りの非常に短い、ブッシュダガーだからだ。
「……
故に、右手に握るマチェーテを心臓に突き立て、左右に切り裂きつつ抉る。
心臓と肺を裂かれる激痛に男は絶叫。程無く絶命。
これで全部だ。
(……こういう手合いは、力尽くで捩じ伏せるに限る)
刀身に付いた返り血を払い、それぞれを鞘にしまう。
が、コートに付いた返り血はどうしようもなさそうだ。
「……買い物、して良い?」
再び店主に向き直り、私は言う。
「……あぁ、構わねぇ。金も……要らねぇ」
快諾してくれた。顔面蒼白で、だけど。意外と肝が据わっていないな。
「代金は払う。……商売は商売、だろうから」
これ以上、血を撒き散らす気も無いので、そう言ってから物色を始める。
……血塗られた店内で。
一時間後――
《North Frost》を出た私は、近場に合った廃墟に腰を下ろす。
そして、背負っていたリュックを降ろし、棒状の砥石を取り出した。
(……さて、手早く済まそう)
手近に落ちていた石を長方形に近い形に割り、そのうちの一つを手に取って砥石にかける。
初めは角を落とし、それから徐々に回しながら研磨して、全長の1/3は円錐となった円筒形に仕上げていく。
一本、二本と元々やり易い形に砕いてからやっているとはいえ、慣れも手伝って次々と尖頭円柱が出来上がっていき、数十分で、20本を研磨した。
(……これだけあれば、充分)
切子を払って、砥石をしまい、腰に巻いたポーチから、鈍色の箱を取り出す。
先程研磨した尖頭円柱を箱の中に収め、ポーチにしまう。
ポーチの一角には、似たような箱が数個あった。
(……まだ、80本はある)
当分は持つだろう。
(……次は…………腹拵え)
ポーチのファスナーを閉める。
リュックから、棒状の携行食糧を数本取り出し、腹の中へ。
寒冷地仕様の同携行食糧は栄養バランスは元より、摂取カロリーが多い。
にわかに信じ難い宣伝文句ではあるが、1本で三日は断食可能だとか。
(……まぁ、それぐらい高カロリーなのは確か)
多少とはいえ、体温が上がってきたような気がする。
が、すぐに下がる。 そういう体質だから、気にならないが。
(……さて腹拵えも済んだら……移動しよう)
リュックの蓋を閉じ、背負い直す。
スリングで背負った、折り畳み式の槍、腰のホルスターには、二本の棍棒と、マチェーテ。
左足のホルスターに二本のブッシュダガー。
……全武装共に問題無し。
確認を終え、私は歩き出す。
《North Frost》に、
――以上、Blood Edge Survivor第一話でした。
即興で書いたせいか、内容が薄く、文字数もかなり少ないです。
まぁ、追々増えるでしょう。
で、主人公である少女の名前は決めてありますが、判明するのはもう少し先の予定。
作中で相当な暴言を撒き散らしていますが、そういう風に荒んじゃった娘なのです。
基本無口だけど、かなりの美幼女なので、可愛がってあげたいね。……性的にだとこっちの首が飛ぶけれど。
では、今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました――