※この作品はR-18です。

Blood Edge Survivor   作:空薬莢

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気紛れは不都合を呼び寄せる。
世界に裏切られる者は、そう言う。
彼ら彼女らにとって、世界そのものは悪意の塊である。




Blood.Ⅲ ~気紛れの悪意~

 

盗賊の身ぐるみを剥ぎ取り、物資を回収した私は、次の街へと辿り着いていた。

(……снеговик(雪達磨)?)

立て看板には、そう記されている。

移民――温人が築いた街の一つか。

記憶を掘り返し、該当する街は――ある。

снеговик。

移住した温人が雪人と共に拓いた街。

確か、ここの主要産業は――第2次産業。

主に、装身具等の工芸品が有名だったか。

正直、どうでも良い物だ。

私には必要無い物だし。

(……一先ず、換金所を探そう)

剥ぎ取ったブツを金に変え、街を出るとしよう。

そうと決まれば、案内板と睨み合い。

が、張り合い無く目的地は見つかる。

移動開始。

程なくして換金所に着く。

何処の街もそうなのだが、換金所には、柄の悪い塵のような人間が集まりやすい。

合法、非合法問わず、“物”の換金が行われるからね。

(……尤も、合法、非合法の区別なんて本当は無いのだけど)

実力者が勝手に、自分にとって都合良く設けた“規則”上で決まっているモノだから。

邪な視線を送るゴロツキを無視して、カウンターへ。

剥ぎ取り物のうち、食糧と屑鉄以外を提出。

「換金をお願い」

「畏まりました。……こちらが控えの番号札になります。計算が終了次第、お呼びしますので、少々お待ちください」

物を受取り、代わりに渡される番号札。

描かれた数字は23。現在の数字は19。

確かに、少しのようだ。

近くの壁に寄り掛かり、待つ事にすると、邪な視線が再び注がれる。

今日は下衆しかいないらしい。

おそらく、純粋に“物”を換金しているのは私だけか。

なら、警戒しておこう。嫌な予感がする。

視線を寄越すだけで、行動に移さない臆病者を心の中で罵りつつ、待つ。

「20番でお待ちの方――」

「はい」

次の番号に移り、手早く済まされる手続き。

洩れ聴こえた額はそこそこ。

砂糖かな?

私としては、モルヒネの方が必要だと思うが。

鎮痛剤等は戦闘を行う都合上、必須と言える物。

“砂糖”はただの現実逃避剤。

自分にとっての不都合から一時的に逃げる為の手段に過ぎず、大概は自己の破滅を促進する。

金の無駄遣い。

「――3番の方――23番でお待ちの方――」

私の番が来た。

「250Eisになります」

提示された額は意外と高額。

少しはマシな物があったのだろうか?

何はともあれ、硬貨を受取り、懐へ。

「またのご来店をお待ちしております」

決まりを聞き流し、出ようとした、その時だった。

「ほら、歩けよ」

「っ!?」

見るからに賊といった風貌の男が入ってくる。

続いて、引き摺られるように、入ってきたのは、頭陀袋を被った少女。

後手に回された両手に軽合金製の手錠がかけられ、両足首にも同じく足枷。

「~っ!~~っ!!」

声のくぐもり具合からすると、口腔一杯に丸めた布でも詰められて、舌を抑えられ、猿轡でもされているのだろう。

(完全に口を封じるならば、布などを詰めた上で唇を縫い合わせ、ダクトテープでも貼るべきだけど……私には関係無い)

第一、男が換金所に少女を連れ込む理由と、少女のその後を考えれば、この案は使うべきではない。

早く出よう。

要らぬとばっちりを受けたくはない。

男から視線を逸らし、出入り口へと向かうが――

「待ちな、嬢ちゃん」

肩を掴まれる。

下衆が。

「俺と来ないか?たっぷり良い思いさせてや――」

下衆の言葉に耳を傾ける暇は無い。

肩に置かれた手を振り払い様に、腕へとマチェーテを突き立てる。

分厚い刀身は男の腕を易々と貫き、骨も砕く。

「ぐっ……ァアァァァァッ!?」

絶叫。

喧しい雑音。

突き立てたマチェーテを引き抜き、足払いを仕掛ける。

男があっさりと転倒。

すかさず、首を踏み抜いてやる。

床に落とした硝子細工か何かのように、男の頸椎が砕け散り、絶命。

この程度で死ぬという事は、温人か。

でしゃばるから、死ぬというのに……。

何故、学習しないのだろう?

嘆息しつつ、店内を見回すが、店員以外誰もいない。

本当に臆病者しか居なかったらしい。

「……この死体、幾らで引き取る?」

換金所的にも、広場の中央に死体を放置する利点は何もないだろう。

こっちとしても、私一人で掃除するのは面倒だ。丸ごと金に変える方が早い。

「…………しめて、50Eisぐらいですね」

予想はしていたが、安い。

「構わない」

交渉成立。

大柄な男が奥から出てきて、死体を運んでいく。

幸いというべきか、床に付着した血痕はさほど大きくないようだ。

「……御客様。そちらの女性はどうします?」

「……託児所にでも投げ込んで」

もしくは、刑務所にでも。

枷の類を外される様子を確認せず、私は退出しようとした。

しかし、

「待って!」

背後から呼び止められた。

今しがた、自由になった少女に。

「……」

無視して、歩き出す。

「待って、って言ったよね!」

すると肩を掴まれ、無理矢理止められる。

視界の端に映るのは、病的に白い指先。

雪人特有の肌色。

悪意は無かった為、何とか腕を切り落とさずに済んだ。

運が良かったね、貴女は。

「……待つ理由が無い」

「私には待たせる理由があるの。お礼を言うべき立場だから」

お礼?

自己防衛のついでに助かっただけだろうに。言う必要があるのか。

先程の様子では、報酬も用意できそうに無いけど?

「礼もいらない。邪魔だから」

手を振り払う。

「まだ、私の用事は済んでいません」

今度は腕を掴まれる。

「礼儀を欠くなんて、人間として失格ですから」

さも当然のように、少女は言う。

……何処まで私を怒らせたいのか。

「人間自体が、そもそも世界の汚点。その考えは改めた方が良い」

聖人は狩られるだけ。

悪行に手を染めずに生きていける者などいない。

「……貴女こそ、そんな哀しい考え方を止めるべきだと思いますよ。だから、言わせてください。……助けてくれて、ありがとうございます」

「……気は済んだ?」

嫌気を隠さず、告げる。

「…………」

少女は暫し沈黙し、

「いいえ。まだです」

と、答えた。

「貴女は孤独に囚われている気がします」

「……馴れ合いなら結構」

私の旅は、孤独で良いのだから。

「孤独は寂しいものでしょう?……だから、一緒に来ませんか?」

「必要無い」

腕を振り解く。

哀しみを背負う存在は個人で充分だ。

当然、復讐に人生を捧げるのも。

「なら、貴女に付いていきます。……私も“一人”になりましたから」

聞いてもいない情報。

だが、予想の範囲内。

人身売買に於いて、口封じが行われないなんて事は有り得ない。

少女の身寄りは根刮ぎ彼の世に送られたとみて良い。

(……邪魔物はいない方が良いけれど……)

少女は意地でもついてきそうだ。

労力は少ない方がいい。

「……好きにすれば」

だから、投げやり気味に言葉を返した――

 




――以上、Blood.Ⅲでした。
今話の執筆は、苛立ちが共にありました。
無論、作中の少女についてです。自然とキーを叩けたのですが、文字を打つほど、苛立ちが増していく。
そもそもの執筆意欲が怒りだった事にも起因しますが。

今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました――
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