※この作品はR-18です。

Blood Edge Survivor   作:空薬莢

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人に限らず、邪魔な存在は多数ある。
だが、そこから有益な存在となるものは少ない。
即ち、この世は邪魔者で溢れている。



Blood.Ⅳ~足枷~

 

 

――当然の事だが、金を浪費する事態に遭遇する。

少女の衣装代他、諸々だ。

とはいえ、衣装は何処ぞのクソ野郎の衣服を借用したので解決。

散々渋っていたが、知った事ではない。嫌なら其処らのクソ野郎に股を開けば良い。金はすぐに貯まる。

……という点はともかく、食料については…………基本、自給自足。

故に、必要なのは…………武装だ。

「本当に必要なんですか?武器なんて、無くなるべき物じゃないですか」

「……」

私は少女を連れ、刃物屋に向かう。

馬鹿丸出しの世迷言を無視して。

“武力”を持たぬ者に生きる資格は無い。

それがシュトラーフの規則の一つ。

世界を否定するのは、死期を早めるだけ。

「……着いた。入るよ」

入店。

「あまり予算は無い。物は私が見繕う。……だから、貴女は何もしないで」

返答も待たない。

時間が惜しい。

商品と値段を流し見し、定まる。

SUS-440ステンレス鋼製の刀身を持つ、やや小型のセレーション付きダガーナイフ。

「店主。……ダガーナイフを一本」

「あぁ?ダガーナイフ一本だとっ……。しけた注文してんじゃ――」

「――物を売る気が無いなら、店なんて構えないで」

反論を遮りつつ、代金をカウンターに置いて、ナイフを取る。

そのまま入口へ。

嫌な予感がする。

何時ものパターンならば、流血沙汰は避けられない。

「出るよ」

少女に声をかけ、ダガーナイフを渡す。

店を出ると――

(……やっぱりね)

嘆息。

数人の男に囲まれたから。

この店の用心棒――というよりは、暴力団の類だろうか?

ならば、店主が私の注文にキレた理由も想像できる。

ショバ代だ。

偽りの用心棒としての役割を高額で請け負い、金だけむしり取って傍観する。

力で捩じ伏せ、他者を良いように使う、シュトラーフという世界の体現者。……の、中で最も弱い集団。

「困るなぁ、嬢ちゃんたちぃ?お兄さん達はオジサンに店を賃貸してるんだから、いっぱいお金を落としていってくれなくちゃ。……“公共の福祉”に反する行為だぜ」

男の一人が、軽い調子で言う。

反吐が出る。

何が“公共の福祉”だ。

初等教育で習い、中等教育で否定される、価値の薄い概念をほざいて。

ようは、『有り金と身ぐるみを差し出せ』という事でしかない。

まぁ、追加で、『お兄さん達、溜まっているんだ。世話もお願いしようか?』という要求も付随するだろう。

……救いようはない。救えると思える方が阿呆。

とはいえ…………邪魔な事、障害である事は揺るがない、という事実があるならば充分だ。

取るべき手段は自ずと決まるから。

「……下がっていて」

少女に言い、腰のホルスターに手をかける。

「こういう場合の対処法は一つだから」

駆動棍二本を抜き、コッキング。

「抵抗する気かよ……メンドくせぇな」

「俺は後ろの嬢ちゃんが残ってりゃ、なんでもいいぜ」

「馬鹿野郎。両方あるから良いんだよ。片方じゃ、すぐに飽きちまうだろ?」

「……下らねぇ」

意図を察した男達は殺気と共に、各々の得物を抜く。

(ナックルダスター、ククリナイフ、コンバットアクス、他は……サバイバルナイフか)

一部、阿呆な武装の奴がいる。

殺るのは簡単そうだ。

各ホルスターに指す、武装も確認。

間合い的に、駆動槍は使えない。使う必要も無いけれど。

使えるのは駆動棍、マチェーテ、ブッシュ・ダガーあたり。

充分。

後ろの少女(足枷)の得物がダガーナイフである以上、それに近い間合いで戦い、手本を見せてやる必要もあるけれど――それはまたの機会だ。

思考を止め、私は男達を見据える。

さて、どう出るのやら――

 

彼女は棍棒を抜き、男達と対峙する。

その瞬間から放たれる冷たい感覚。

殺気、というモノだろうか?

ともかく、今の彼女に近付いたら、殺されそうな気がしたのだ。

だから、私は今し方渡された“ダガーナイフ”というらしい、鞘入りの刃物を抱き締め、後退。

直後、彼女は動き出した。

滑るように前進し、手近な男の腹部を殴打。更に、破裂音と共に鮮血が舞い、男の背から石の杭が飛び出す。

だが、まだ死んではいないらしく、空いた手で握る棍棒で首筋を薙ぎ払い、破砕音を伴い、弾け飛ぶ頭部。

考えるまでもなく、即死。

理解しているであろう彼女は、死体を蹴り飛ばし、反動で後退。

再び破裂音。

今度は複数。

鮮血の噴水も複数。

何れもが頭部からで、即死。

生きている男は3人。

僅か数十秒で、この有り様。

彼女は、一体どんな生き方をしてきたのだろう?

容赦無く命を刈り取り、躊躇無く捨てている。

生死そのものに興味を示さぬように。

(……人形みたいな人)

私が抱いた感想は、“人形”だった。

それも、空想の世界にしかいない、泥人形(ゴーレム)等の類。

与えられた命令に一切の疑問を抱かず、ただ淡々と遂行する。

彼女はそんな、人形なのだろうか?

(なら、私を助けてくれなかった筈だけど……)

あのまま、お金と引き換えにどうなっていたのか。……想像したくない。

ともかく、彼女にも人としての感情はある筈。

ならば、武力に訴えなくても良いだろうに。

力に頼らずとも、言葉で分かり合える――

私は思う。

力を力で捩じ伏せる、騒がしいだけがシュトラーフの真理ではないと。

もっと、誰もが物(・)理(・)的(・)には傷付かずに済む世界に出来る筈。

……という具合に、思考に耽りかけた事が間違いだった。

「クソッ!何なんだよ、この餓鬼はっ!!」

「勝ち目がねぇじゃ……………ん?」

焦りを隠さない二人の男が、私を視認。

「「なら、鈍そうなこっちを使えば良いか!」」

狙いが変わった。

「体の良さそうな、身体してるしなぁ!」

「さぞ、良い思いをさせてくれる筈だぜぇ!」

欲望剥き出しの視線が身体中を撫で回す。

生物の三大欲求は――って、違う。

避けないと。

視認は出来てる。

でも、信号が伝わる前。

最悪を悟っているが故に、体感時間が思考的にのみ、引き延ばされている。

(避けられない?)

何か、解決策は――

――手に握り締めた刃物?

いいや、これは使ってはならない。私が私を捨てる事に繋がる!

そうこう考える内に比嘉の距離が縮まっていき、残り1m程度。

私は身体を動かせていない。

立ち竦んでいるだけ。

受け入れるしか無いのか?

諦めの思考に陥り始め――

 

――二つの破裂音。

 

視界が赤く塗り潰される。

「油断禁物」

遅れて、彼女の声が耳に届く。

同時に、視界を染めるものが男の鮮血だと理解し、拭う。

「ありがとう、ございます」

「……あぁいう場合は後退するか、体当たりの要領で腹部を抉る等が取るべき行動」

お礼が無視され、代わりに醒めた口調で言われる。

「腹部を抉り取れれば、横隔膜が機能しなくなり、窒息死に追いやれるから」

物騒な助言を。

「まぁ、もがかれても面倒だから、心臓や頸動脈を裂いても良いけれど」

教師が、生徒に教えるような言い方。

彼女が先程の私と同じ状況に立たされたならば、迷い無く、言葉通りの事をするのだろう。

「……それが、貴女の処世術ですか?」

思考力を取り戻し、言葉を返す。

理解したくない助言だと伝えるべく、言葉を紡ごうとしたが、

「理解したくないなら、しなくていい。その代わり、世界に呑まれるだけだから」

紡ぐ前に、遮られた。

聞く耳を持たないらしい。

何故?

理由すら教えてくれない。

いや、教えるほど親しくないのだから当然だろうけど。

お互い、名前さえ知らない間柄なのだから。

「…………この町ですべき事は済んだ。……出るよ」

口をつぐんだ事で、反論する気が無くなった、と解釈したらしい彼女は踵を返し、町の出口へ向かって歩きだす。

その小さな背中を見据え、思う。

(彼女の価値観を変えさせたい)

武力だけが世界の真理じゃない、と教えてあげたい。

だから、私も歩き出す。

彼女を追って――

 

 

 






――以上、Blood.Ⅳでした。

今回はそれぞれの視点で書きましたが、やはり腹立たしい、新規加入の少女視点。
基本的に、現実主義者ばかりを書いているせいですね。夢想家というのは、苛々します。

尚、今更ですが、今作は9割方の話で、流血を伴うようなプロットになっております。血生臭く、救いなど無い生地獄がシュトラーフなのです。

……というか、シュトラーフとはドイツ語の“Schlacht”のもじり。元の意味は“戦闘”。
名は体を表す、ということです。

今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました――
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