※この作品はR-18です。

親友・・・恋人 改訂版   作:創生路ハイローラー

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どうも、こちらの界隈では初めまして、華範です。
この小説は以前同タイトルでプリパラのウェスト姉妹で書いてて挫折した小説を元に設定・キャラクターを完全オリジナルに変更した小説です。オリジナルは初めてとなり拙い作品ですが、よろしくお願いします。


第1話 夕日の教室~ディープキス~

 こんな雨の夜は、一人昔のことに思いを馳せる。

 

 思春期には誰にでも、人生を変える程の重大な出来事があるものだ。心身の変化、交友の広がり、そして恋愛。それまで家庭環境で培った価値観が、社会の価値観とぶつかり合い、反発と受容を繰り返しつつ、『大人の自我』を形成する。

 私にもそんな出来事があった。愛と性、境目の見えない2つの間で、私と、親友であり、恋人であった姉弟との間に存在した、歪な関係の破綻・・・

 

 忘れたくても忘れられない。いや、忘れてはならない取り返しの付かない過ち。夜は更けて、睡魔と、その次に待っている多忙な日常に再び沈み込む前に、それらをここに書き記しておきたい。

 

 

 あれは、中学二年の秋のことだった。

 例年以上に暑かった夏を引きずった残暑も次第に褪せ始めた9月終盤。私と、同じクラスで親友の藍は部活のあるクラスメイトに押し付けられた掃除をさっさと片付けて、夕陽の差し込む教室で彼の双子の姉の蒼を待っていた。

「それで、紫に教科書貸してって頼んだんだけど」

「うん・・・」

 私も藍もあまり話す方ではない。ゆったりと今日あったことや本で読んだことを話し合いながら、机に座って夕日を見るのが私達の習慣だった。ただ、この日の藍はいつにもまして無口だった事を私は記憶している。熱い夕日も、私の顔も見ずに、ただ俯いて自分の影を見ていた。

「藍?」

こちらの話にも上の空な様子の藍に我慢できなくなった私は、肩を軽く叩いて彼の顔を覗き込んだ。中性的な、と言うより女顔な彼の顔がはっきり見える。2次性徴を迎えても変わらない華奢な身体と合わせて、よく彼は女の子と間違われたものだ。その上私にいつもベッタリだから、クラスでは私たちは夫婦呼ばわりされることも少なくなかった。

「どうしたんだ?悩みごとがあるなら言ってくれ。その・・・友達として」

 私はごく普通の友人として彼に訊いた。藍は暫く迷っていたが、覚悟を決めたように告白した。

「その・・・もうすぐ私、引っ越すかもしれないの」

 

 

「お母さん、お父さんとずっと喧嘩してて。私達を連れて実家に帰るって・・・その・・・リコンだっけ?」

 当時の藍の家庭環境は、それほど良いものではなかった。東京の大学で知り合った彼の両親は親の反対を押し切って結婚し、藍と蒼を産んだ。しかし、良家の娘である母親と、奔放な父親は釣り合わず、夫婦関係は日に日に悪化していたらしい。とはいえ、あまりの突然の離婚に私は驚いていた。

「お母さんが東京に行ったら、もう帰らないって。転入先も決まってて、一ヶ月したら引っ越しだって」

「そうか・・・蒼も一緒に?」

「うん。だから、もうすぐ君にも、お父さんにも会えなくなるの」

 そう話す藍の声は苦しげだった。目は潤んで涙が溜まっていた。藍は泣き虫だが、これほど辛そうな姿は久しぶりだった。ある事情によって交友の狭い彼にとって、片親と親友を同時に失うのだから当然であろう。実際彼も蒼も、父親を嫌っていたわけではなかったのだ。私は藍を慰めようと、手で涙を拭って頬をなでた。

「二度と会えなくなるわけじゃないだろ?実家の場所を言ってくれればまた会いにいくさ」

「でも・・・君との関係は」

「大丈夫。会えない時間があったほうが、思いを確かめられると筈さ。おじさんたちもきっとそう考えて別れるのを選んだんだ。だからきっと大丈夫。俺も、藍も」

 そう言って彼の手を握る。同級生たちが精を出す野球よりもピアノの鍵盤が似合うような白く綺麗な指が、自然と私の指に絡みついた。彼は数瞬遅れてそれに気づき、はっとして顔を赤らめた。

「・・・あ、えっと。ごめんなさい。急に」

「いいって。今更恥ずかしがるような間柄でもないだろう。でも、こうしてられるのもあと一月なんだな・・・」

「そうだね。ねぇ、今日も・・・」

「あぁ」

 私達は互いに見つめ合い、お互いの顔を見合わせる。藍が瞳を閉じて、少しだけ顔を傾けた。まるで本物の美少女にねだられているかのような錯覚を覚える。それに引き寄せられるままに、私は彼女の唇に自らのそれを重ねた。

「好きだよ。藍」

「私も・・・」

 男同士の恋愛。これが、私と藍の秘密の関係だった。

いつからこんな関係になったかといえば、小学校の卒業式の日に、当時からいつもべったりだった私と藍に、悪乗りしたクラスメイト達の手で『結婚式』をさせられたことがあって、その後で2人きりの、ちょうどこの時のような夕日に教室でキスをしてみたのが始まりだろう。

「じゅるる・・・ちゅぱ・・・」

「うぅ・・・びちゃ・・・ぁあ・・・んん・・・」

 唾液を交換し合い、息が続く限り歯列をなぞってお互いの口を洗っていく。

『結婚式』以降、私達は二人きりになるとこうしてキスをしていた。私達にとってキスは、背伸びした大人の真似事であり、ロマンチックな雰囲気に浸る遊戯であり、同時に自分達が他とは違う友達以上の関係であることを確認する行為であった。

「んん・・・ぷはっ・・・はぁ・・はぁ・・・」

やがて息が苦しくなって一旦舌を離す。唾液が糸を引き、やがて途切れた。その間も藍と私は見つめ合う。吐息が顔にかかり、乱れた服の間から上下する胸が見え、それが興奮を促す。この日の藍はいつになく煽情的であった。

「今の藍、なんか・・・エロい」

「だって、君に会えなくなると思うと、胸が苦しくなるから」

 上目遣いでこっちを見つめながら藍が答えた。それに我慢できずに私は彼の唇を奪う。今度は欲望のままに舌を絡めあった。実のところ離別には現実味を感じていなかったが、彼の憂いをはらんだ目が、自然とそうさせたのだ。藍は確かにそういった魅力を持っていた。

「むぐ・・・んん・・・う・・・うぅ・・・」

 藍は私のキスに応えて自分の舌で私の口内を愛撫した。しかし、そのたびに彼はむなしい気持ちになって、キスが終わると嗚咽を漏らして泣き始めた。

「私、怖いの・・・君と離れたら、君が私のこと忘れちゃうんじゃないかって、私が、君のこと忘れるんじゃないかって・・・」

 私の腕の中で泣き虫な藍は、引っ越した先で関係が自然消滅することを恐れていたようだった。ここまで泣いたのは蒼と大喧嘩したとき以来だと思い出しつつ、私はその時そうしたように彼の頭を優しくなでた。

「引っ越した先で俺のこと忘れそうとか思ってんなら、お互い忘れられないぐらい思い出を作ればいい。期末テストもあるけど、まだ一ヶ月も時間がある。それまで、たくさん思いで作ろう。楽しかった日々を思い出せれば、きっとまた会いたくなると思うから」

「うん・・・そう、そうだね。ありがとう」

 藍は私の胸に寄り掛かったまま答えた。

「ねぇ・・・君」

「なんだ?やりたいこと、思いついた?」

「うん・・・私、君とキスのつぎが・・・」

 藍が言い終わる前に、廊下から走り寄る足音が聞こえた。私と藍は慌てて体を離して身構える。走り方でおおよそ見当のついている相手は、予想通りこの教室の戸を勢い良く開けた。

「お待たせ!2人とも!」

闖入者は藍の双子の姉、そして私の悪友の蒼だ。藍にそっくりな容姿と、真逆の性格をした少女は、慌ただしく私たちの間に駆け寄った。

「ごめん、委員会の手伝いやらされて遅くなっちゃって・・・ってあわわっ!」

「おいおい、ほんとにそそっかしいな蒼は。中学も2年なんだし、廊下ももっと静かに歩けよ」

 慌てて机の脚にぶつかりそうになる蒼を見ながら、心にもないことを言って笑う。蒼は笑われたとわかると頬を膨らませた。

「うるさい、とにかく帰ろう!下校時間近いし!」

「はいはい。藍、帰ろ」

「うん。蒼がそう言うなら」

 蒼をなだめながら、私たち『仲良し3人組』は家路についた。いつも通りの、夕日の綺麗な日の事だった。

 

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