「蒼のやつ、なんか変だったな」
「うん。とっても綺麗だった」
「そっか?」
デパートを出て、公園を散歩しながら時間をつぶす。
結局、蒼が何をしたいのか全く分からなかった。だが、何故か彼女のことが頭から離れなかった。顔を掴んだ時にみせた怯えた瞳、前かがみになって見えた胸元の膨らみと体の曲線。いつにない弱々しい彼女の姿になぜだか、藍とキスしている時のように、興奮するものを覚えた。藍もそれに気づいたのか、けげんな表情でこちらを窺う。
「どうかしたの?」
「なんでもない・・・今日は意外なものがたくさん見れたなって・・・」
「そう・・・手、つないで」
藍は頬を赤らめてもじもじとおねだりする。そうだ、彼が私の恋人なんだ。蒼が藍に似ているから少しどきっとしただけで、藍が好きなことには変わりはない。私はそう心に言い聞かせ、藍と手をつないで日の傾いた公園を歩く。しかし、意識しまいとすればするほど、感情は強くなってしまうものだ。さらに藍は私の手を引きながら、時々こちらを振り返り気遣うのだが、それが蒼の姿を思い起こさせて、私は終始そっけない受け答えしかできなかった。
やがて藍は公園の一角の森林で足を止めた。高い樹木が立ち並ぶこの場所は夕方でも暗いので、この時間は人が来ない。藍が私をそんな場所に連れてきたということはやることは一つだ。
「ん・・・」
藍は木に背中を預けた私に唇を重ねた。藍の呼吸は最初から荒かった。散歩中もちらちらこっちを見ていたのだから、キスのことで頭がいっぱいだったのかもしれない。
「ん・・・ふぅう・・・あぁ」
いつもとは逆に、この時は藍にされるがままに口の中に舌を入れられる。こちらが受け身になる新鮮な感覚と、猫のような小さな舌、唇の感覚を味わった。
「藍。興奮してる?」
「うん。君に舐められたの・・・ずっと、残ってて・・・怖いけど、我慢できないの・・・」
思い出して興奮が高まっているのか、話すたびに藍の息が上がっていく。恐怖と快感の混ざった瞳、赤い頬、温かい吐息を流す唇。藍の魅力が詰まったものがそこにあった。その姿がデパートで蒼の顔をつかんだ時の彼女の表情と重なる。蒼だったらどんな反応をしたのだろうか・・・
「責任・・・とってほしいな」
藍は普段の姿からは想像もつかないほど積極的に私に触れる。首筋から胸を通って私の身体を愛おしく撫でまわした。私も藍の体をさする。細い背中のラインや壊れてしまいそうな肩、柔らかい頬、青くきれいな髪。蒼ととてもよく似た体を。藍の手が、わき腹から足の付け根を通って、股間に到達する。
「あっ」
「君も興奮してるんだね・・・私のも、触って」
藍が私の手を掴んで彼の股間にあてがうと、小さな硬いものを服の上から感じ取った。
「すぐに気持ちよくしてあげるよ」
「え?ちょっとまって!」
突如藍は私が止めるのも聞かず私のズボンのチャックを下ろし始めた。器用な手つきで下着を下ろすとそそり立ったイチモツが露わになる。藍の突然の行動に私は当惑した。
「藍?」
「こうすると・・・おちんちん気持ちいいよね」
混乱する私を他所に、藍は私のペニスを愛おしそうに撫でまわす。
「っ!藍・・・やめろ・・・」
「はぁ・・・君のすっごく大きい」
「汚いからよせって」
「汚くなんかないよ。だって君のだから」
藍は右手の細い指で包み込むように撫でて、時どき露出した亀頭をくりくりといじる。左手は彼のものに宛てがわれて、同様のことが行われているようだった。それが何をしているか知らないわけではなったし、自分でしたこともあった。しかし、藍がした時の快感はそれ以上のものだった。
「うぅ・・・あ・・・」
「気持ちいよね?痛くない?」
「あぁ・・・」
藍はこちらを気遣うように問いかけてきた。私は首を縦に振る。藍は「よかった」とだけ言って手コキを再開する。
「ちょっとひどいことされて・・・すっごく怖かったんだよ。でも見られるかもしれないって思うと、とっても興奮するの・・・私って変態さんなのかな?」
「そうかな?悪いことじゃなきゃ、隠し事って楽しいもんだろう?」
「君がそう言うなら、そうなのかも。だから、君のおちんちんも一緒に気持ちいいんだよね?」
藍は嬉しそうにそう言った。実際には私が思い浮かべていたのは蒼の姿であり、今ここにいる藍も、『彼自身』ではなく『蒼に似た藍』としか見られなくなっていた。それまで自慰をしたことはあっても、藍でしたことなどなく、むしろ藍をそういう対象にするのは許されないことっだと思っていた。一時の困惑が次第に覚めると同時に、甲斐甲斐しく私のペニスを扱く藍の姿に罪悪感が心を埋め尽くしていった。
「藍・・・実は・・・」
「次はお口でするね」
私は軽蔑されることを覚悟でやめさせようとしたが、藍は私のいきり立ったペニスを小さな舌でなめ始めた。
「うぅ!・・・藍!やめてくれ・・・ほんとうに」
「大丈夫だよ。汚くなんかない。君の汗の匂いも平気だから。ひもひよふなって」
藍は竿を横から舐め回してよく濡らすと、それを口に含んで亀頭を刺激する。
「あっ・・・まずい・・・まって!」
今まで常に主導権を握っていた藍のフェラに、私は情けなく声を上げる。薄暗く人気のない茂みに、水音だけが響いた。誰かに見られていないか、聞かれていないか?試着室の緊張がそのまま私に帰ってきた。
「藍、十分だ。仕返しのつもりならもういいだろう・・・すまなかった」
私は藍に謝る。藍は私のペニスから口を離した。
「はぁ・・・はぁ・・・。藍、ごめんな」
「最後までしなくていいの?」
藍はガチガチにそそり立った私のペニスをさして言う。藍の唾液と我慢汁で濡れたそれは、今すぐにでも触って中身を吐き出したかったが、私は欲望を抑えた。
「いい。こんなの・・・汚いよ」
そう私が言うと、藍は無言のまま残念な表情をしたが、すぐに笑顔を作りなおして「君がそう言うなら、私もそう思うよ」、と言って家路についた。
家に着くと、誰とも顔を合わせずに部屋に戻った。こんな事、親には話せないし、何より下半身が収まらない状態で母親や姉に近づきたくなかったのだ。
「はぁ・・・」
自分のベッドに横になり、今日のことを思い出す。
「藍、どうしちまったんだよ」
私にとって藍は日常を共有するパートナーだ。藍は可愛いし、放っておけないし、何より一緒にいて幸せになれる。付き合ってキスをするようになったのも平穏な日常(友情)と隠された非日常(恋愛)を両方共有することで、もっと2人の事が分かり合えると思ったからだ。
家庭環境から当時の自分はセックスは欲望を吐き出すだけの汚いものと思っていた節があった。中学の2年ともなれば雑誌の水着グラビアで自慰をすることもあるが、現実の藍に射精するような真似は、その写真で精液を拭くような感覚であり、それ以前に藍を性の対象として見ていなかった自分がいた。藍は欲望の対象でなく、人生のパートナーだったのだ。
「でも、俺はカーチャンがセックスして生まれたし・・・」
幸運にも私の両親は夫婦仲がよく、私にとっても理想的な生活共同体としての『家族』を形成していた。永続的に支えあいながら『生活』を続けられる関係こそが、夫婦の理想だと今でも私は確信しているし、自分にとっては藍がそれを共創できる存在だった。
「・・・わからん。寝よう」
眠気に任せてベッドに横になるが、いきり勃った下半身が邪魔をしてなかなか寝付けない。
「・・・・・・」
無言でペニスを取り出し、右手で握る。上目遣いにペニスを咥える藍の顔が思い浮かび、首をふる。
「駄目だ駄目だ!藍はそういう対象じゃない」
藍の事を振り切ろうとする。雑誌は・・・先週たしか捨ててしまった。何かネタになるものは・・・そう考えていると、今度はデパートで見た蒼のことが思い浮かぶ。
「は、何考えてるんだ。あんな男女のことなんて・・・」
しかし、蒼の顔とワンピースの中に見えた体のことを思い浮かべると、不思議と手が動く。蒼の手でしごかれている妄想が夢うつつに現れ、彼女が小さな胸やおしりにイチモツを擦り付ける。
(こんな貧相な奴に・・・)
グラビアでもない、顔も体も橙花の方が断然良いはずなのに、頭とは裏腹に、下半身は布団に腰を振っている。元々ガチガチに勃っていたペニスは、程なくして限界を迎え、ついに果てた。射精して頭がすっきりすると、重大なことに気づく。
「・・・・・・ダチでセンズリなんて、何やってんだっ!」
結局その日は後悔で眠れなかった。