※この作品はR-18です。

山城嫁提督がだらだら書く、艦これの妄想置場   作:もののけティラミス

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仮投稿 今日に間に合わせてください。


山城と記念日の祝杯を

 今日4月8日。旧暦では仏教の開祖であるガウタマ・シッダールタ、いわゆるお釈迦様の誕生日であり、仏教が盛んな地域では花祭りの日とされている。

 しかし、日本においてそのことの認知度はかなり低い。それだけ仏教が生活に根付いてしまっているのだ。別にそれをとやかく言うつもりはない。

 ではなぜ、私が知っているのか。それは私が信心深いわけでもなく、博識なわけでもない。

 ただ今日が私の誕生日である。それだけだ。

 そしてその日も、残り数時間で終わりを告げる。

 もちろん、誕生日だからと言うことで業務が休みにするわけにはいかなかった。

 朝、いつも通り起き、遠征部隊の出迎え、見送り、そこからお昼時まで書面とにらめっこ。昼食後からはいまだ全貌が明らかにされていない次作戦のための準備(資材の確認、新兵器のテスト等)。特に午後は、明石のところへ行って、演習場へ行って、資料室に行って、執務室の戻っての繰り返しで、鎮守府内を歩き回った。久しくデスクワークしかしていなかった私の身体はだいぶなまっていて、足に疲労を覚えている。

 そして今日はこれで終わりではなかった。

 残っている者たちだけだが艦娘たちが私のためにお誕生日会なるものを開いてくれる。

 そう、開いてしまうのだ。

「憂鬱だ」

 実のところ、本日分の業務は30分前には終了していた。しかし、私はその後すぐに執務室を出ることなく、一人、窓の外をぼんやりと眺めていた。

 開けられた窓の先には自己主張の強い星空と、それらに照らされた水平線が広がっている。本土から離れた遠く南洋の土地であるため、春先の冷たさは感じない。だが、穏やかな風が窓から室内へ迷い込んできてくれるため、汗をかくほどにもいたってはいない。

 そんな、何もかも中途半端な世界を、私は肌で感じ、心を飛ばしていた。

 いつごろ向かおうかなぁと心の中で考えていると、執務室の扉をたたく音が聞こえた。

「山城です。提督、入ってもよろしいでしょうか」

 声の主は、私の秘書艦の片割れであった。

「提督…何しているのですか?」

 半眼の彼女がそう問いかけてくる。おそらく、私がまだ執務をしていると思ったのだろう。

「何をしているか。まったくもって難しい質問だ」

 私はそう茶化しながら彼女を自分の近くに手招く。

 彼女はその表情を崩さぬまま、私の隣に立つ。

「全く…人を待たしといて何をしているか聞いたら何もしていないですって」

「なんだ。お前、待ってくれていたのか」

「私ではありません、姉様達です」

 顔色一つ変えずに答える山城。これが1年前であったら無言のパンチが飛んできたであろう。最近では、そのようなことも減ったなぁとしみじみと感じる。

「そうか。それならそろそろ出向かなければなるまいな」

 私は一つため息をつく。

「なんですかそのため息は」

 まだに表情を崩さない山城。

「いや、なんでもない」

 私が執務室を出ようとに窓に背を向けると、手首を山城につかまれる。

「なんですかそのため息はと聞いているのです」

 彼女の表情は先ほどと打って変わって真剣だ。

「ちょっとまて、そんな深刻ぶらなくてもいい」

 私は彼女のその表情に度肝を抜かれる。そんなつもりの溜息ではないのだから。

「なら、ため息の理由をお聞かせください」

 手首への圧力が強くなる。

「わかったわかった。扶桑たちが待っているのだろう。歩きながら話そう」

 そう言って、手首から彼女の手を振り払う。

 私は手首をつかまれるのが好きではないし、彼女もそのことを知っている。

 山城は扶桑の名前を出されたら従うしかないと、しぶしぶ了承する。

 私たちは二人そろって執務室を後にする。向かうは食堂である。

 道中が始まってすぐ、私は話始める。

「私が悩んでいることは2つだ」

「2つですか」

「そう。まず一つ目、お前たちがまともに私を祝ってくれるのかと言うこと」

「それはどういうことですか?」

「お前たちの誕生日…まぁ進水日になると仲の良い艦娘たちが集まっていることは私も知っているし、場所を用意してほしいだとか出撃日を調整してほしいとかの要望にも応えている」

「そうですね」

「だろ。でだ。大体そう言う奴らに限って散々なことをやっているだろう」

「あー、何となく読めてきましたわ」

「そうだ。わざわざ実弾演習を行って中大破を続出させたり、出撃と偽って違法漁業行為を働いたり、部屋を一つクリームだらけにしたりなどなどなど、お前たちの祝い方は、はっきり言って私が考え付かないことを行って来ただろう。私は、それが今回も適用されるのではないかと危惧しているのだ」

 特にあの演習はひどかった。演習とだけ頼まれたからいつもの模擬弾だと思ったら爆発音が聞こえ始めるし、遠征部隊を除いて、演習後の残存兵力が戦艦2空母2しか存在しなかった。

 それは誰の進水日かと言うと、あの神通だ。あの三姉妹では一番まともだと思って油断していたのがいけなかった。

「確かに、あの時は大変でしたね」

「他人事のように言っているがお前も中破していたじゃないか」

「あれは小破です!軽巡相手に中破なんて私の戦艦としての矜持が許しません!」

 その軽巡とは神通の事だ。

「そんなことはどうでもいい。あの後、備蓄資源まで手を出して事態の収束をやっとみたんだぞ!今回もそんなことをされたらたまったものではない!」

「提督のお考えもわかりますが今日は流石にそんなことにはなりません。流石にあれの二の舞にはなりません!細心の注意を払っております!」

「ならいいが」

 彼女の言う通り今回は気を使ってくれてはいるのだろう。いるのだろうが一度生まれた気持ちはなかなか消せない。

「それで、二つ目はなんですか!」

 ここでこの話は終わりにしたいのであろう。

「二つ目。二つ目はなぁ」

 そこで少し私は言いよどんだ。

「提督?」

「いや、その、な?あのな…」

「なにもごもご言っているのですか」

「恥ずかしいのだが、単純にな、その…まぁ…な。恥ずかしいんだ」

 そう、単純に、

「誰かに誕生を祝ってもらうのが恥ずかしい」

「は?」

 山城のこの反応も納得がいく。

「いや、だって、もう祝ってもらうような年齢でもないし、誰かに祝ってもらう経験があんまりなかったものだから、どのような心持でいればいいのかが分からないんだ」

 家族ですら、誕生日はケーキを食べて終わり、プレゼントをもらうなどはそれこそ学生時代の中ごろで終わっている。

「今日一日を過ごしてきて、君たちがこんなにも私を祝ってくれているとは思わなかったんだ。せいぜい夜ご飯を共に過ごすとばっかり思っていたが、あちらこちらで、私は既に祝ってもらえている。それだけで十分なのにこれから本番であるから、今、非常に緊張している」

 今日、それこそ鎮守府中を走り回った。その道中に出会った艦娘たちは、それはそれは皆、にこやかに「お誕生日おめでとう」と言ってくれた。私はそれで十分すぎたのだ。

 一連を聞いた山城は、その場で吹き出し、彼女には珍しく腹を抱えて笑い始める。

 そしてそれが落ち着くと、こう切り出してくる。

「全く、貴方にこんなに笑わせられるとは思わなかったわ」

 さっきまでの表情はどこへやら、彼女は、彼女には珍しい笑顔になっていた。

「なんだよ」

 なぜだか知らないが笑われていい気分になる私ではない。

 私の怒気をものともしない彼女はこう続ける。

「だってそうでしょう。貴方は私たちに様々な経験をしろと言ったじゃない。船ではなく、こうしてまがい物だとしても人の形を取っているのだからって。だから、少なくとも私は、こうして自分の気持ちに真正面向き合ってきたわ。その中には苦しいことも恥ずかしいことも、そして楽しいこともあったわ。それを教えてくれたのは貴女じゃない」

 彼女は、そう言って私の右手を彼女の左手で握る。

「今、こうして貴方と手を握ることが最初はどれだけ恥ずかしかったか。でも、今ではこうして握ることができる。そして、これがとても素晴らしく、楽しく、幸せだってことに気付けたわ」

 彼女の力が強くなる。

「だから、今度はあなたの番ね。思う存分恥ずかしがって、その先にある感情をつかみなさい。私に強要したのだから、貴方が逃げられるとは思わないことね」

 彼女の歩みが止まる。

 食堂は目と鼻さの先だ。

「それでは、私は、姉さま達に貴方が来たことを伝えますから、お迎えが来るまでここでドキドキしてなさい」

 そう、彼女は悪戯な笑みを浮かべていた。

 

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