山城嫁提督がだらだら書く、艦これの妄想置場 作:もののけティラミス
今日の日付は12月24日。
そう、今日はクリスマスイブ。日本全国で多くの人が今日と言う日を様々な場所で祝っていることだろう。
それはここも例外ではなく、多くの艦娘たちが今日と言う日を祝っている。
今日開かれているクリスマス会。会場は食堂。主催者は那珂と青葉。料理は祥鳳と山城を中心にその他様々な艦娘たちが腕を振るっていた。
会は今日の日没から明日まで続けるらしい。そこは変にこだわっていると思ったがよく聞けば今夜が任務の艦娘もいるためこの様な運びになったという。
聞いてしまえば、ただの偶然の一致だった。
そもそも艦娘は艦内神社があったように神道だろうとおもうが、まぁそこはあらゆるものを受容してきた日本らしくて個人的には好きだ。
特に駆逐艦が楽しみにしている。その象徴的な出来事があの二人だ。
お昼を少し過ぎた位であろうか、朝雲と山雲が真っ赤なサンタの衣装を見せに来た。山雲がつけている角の生えたカチューシャ(で合っているよな、あの頭のやつ?) からもわかる通りトナカイの役で、反対に朝雲がサンタの役らしく赤い帽子をかぶっていた。違いは頭だけで、それ以外はお揃いの白いモコモコで縁どられた赤いポンチョ(これは本人たちに聞いた)、チェックのスカート、そしてクリスマスらしい白い格子柄の入ったストッキングを着ていた。何でもふたりで前々から準備をしていたらしい。
二人を見た扶桑(今日の秘書艦)があまりにもその二人を見て気に入ったのか、館内放送を使って青葉を執務室に招集し、一緒に写真を撮ろうとした。(流石に止めた)
二人がこの衣装を決める際に、中佐のところの鈴谷さんや熊野さん、そして漣ちゃんにアドバイスを求めたようで、あちらはあちらで楽しんでいることが分かった。何でも今年は誰が一番サンタ姿の似合う艦娘かを決める選手権を開催するらしい。それに誰が出場するかも二人は鈴谷さんに教えてもらったようだ。肝心の審査員は中佐と伊勢型姉妹の三人。中佐が審査員と言うことで出場者の気合も高く、いくつか参考例として二人のところに当日彼女たちが中佐達に見せるであろうサンタ姿を写した写真や動画が送られてきた。二人はそれを私と扶桑に見せてくれた。正直な話、元が良いと言うことも相まって審査はかなりなんこうするだろうと言うのが私と扶桑の予想だ。というか、間宮さんや翔鶴さんが出場するらしく、二人の姿もその中にはあった。
…中佐は選ぶのもそうだが目のやり場にも困るであろうなと、間宮さんの写真を見て私は思った。
それはともかく、我が泊地でクリスマスを艦娘たちが自主的に楽しもうとしている事に、私は喜びを感じている。去年もクリスマスにかこつけたパーティみたいなものは行われていたが、それはあくまで仲が良い仲間内の会合的な意味合いが強く、今年それに比べればささやかなものであった。それが今年は泊地全員、それこそ妖精を含めた全員がなるべく一堂に会してクリスマス会を開くと言うのだ。主催した那珂と青葉には後で個人的にお礼を渡しておこうと私は決めていた。
こんなことができるのも、あの大規模作戦を無事に終えられたからだ。あれで消費した資材を集めると言う名目で今、ここは最低限の出撃しか行っていない。それが許されるのも彼女たちの働きが大きいからである。
しかし、それは違う問題を生み出した。だからこそ私は23時を過ぎてもここに居るのだから。
勿論、一度は彼女たちに交じってクリスマス会に参加してきた。
日没から数時間後、執務室をノックする音と共にかわいいサンタさんが来た。
犬の耳のようなくせっ毛を持つ彼女は、服装こそいつも通りであったが、朝雲とお揃いであろう赤い帽子に白いマフラーを巻いて、手には大きな袋を持つという出で立ちであった。
彼女は、私の前まで来るとその大きな袋からに手を入れ、中から綺麗な便箋に描かれた手書きの招待状をプレゼントしてくれた。
「と言うわけさ提督。僕は提督をちゃんとクリスマス会まで連れて行くよ。いわばこれは「提督護衛任務。クリスマス会へ無事につれて行け」って感じかな」
「そうか。なら、しっかりと護衛してもらおうかな」
私はそう言って、手を繋いだ彼女に引っ張られながら会場に向かった。
会場は色とりどりの飾り付けが施されていた。私をここまで連れてきたサンタに聞くとどうやら駆逐艦の子たちが暇な時間にその飾りを作っていたらしい。
会場は、いつもの食堂とは配置から変わっていた。いつもなら等間隔で並べられている机は大きく二つの島を形成しており、壁際に寄せられている。
そうして作られた会場の中心のスペースに円柱型のお立ち台が置かれている。
立っているのは主催者の一人である那珂だ。今は元気に歌っている。
会場に参加している艦娘の様子は、ステージに夢中になっている者(主に主催者の片割れの姉妹艦)、食事を楽しんでいる者(主に空母)、グラスを片手に談笑を楽しんでいる者など様々であった。
特に目を引いたのが長門であった。長門はいつもつけているあの角のようなアンテナを外し、山雲がつけていたトナカイの角をつけている。そんな山雲は私に見せてくれたトナカイの角ではなく朝雲と同じようなサンタ帽を被っていた。
そんな様子を見ていたら時雨が中身の入ったグラスを手渡しし
「メリークリスマス、提督」
と、彼女の手にあるグラスを私のグラスに軽くぶつける。
コツン、と綺麗な音が鳴らし、彼女はそのままグラスの中に入れられたオレンジ色の液体に口をつける。
「メリークリスマス、時雨」
私も彼女に倣ってグラスに入れられたオレンジ色の液体に口をつける。
なんてことはない、アルコールの入っていないオレンジジュースだ。柑橘類特有の甘酸っぱさが口の中に広がる。
それからしばらく時雨と談笑していたら、私に気付いた艦娘たちがかわるがわる話しかけに来てくれた。
中には、自らが作った料理を持ってきてくれる者もいて、私は彼女たちと話す間、渡された紙皿の上から食べ物が無くなることはなかった。
彼女達との会話にひと段落がついたと思ったら、次は那珂に引っ張られてステージの上でデュエットさせられたり、すでに出来上がっていた隼鷹に絡まれたりしながらその場を過ごしていた、そして、駆逐艦の子たちが会場を後にするのと同じ時刻に私もその場から立ち去った。
むろん、残っている者達に付き合いたい気持ちはあったが、いかんせんまだ仕事が残っていた。それも明日中には本土へ送らなければならない代物なので後ろ髪をひかれながらもその場を後にしなくてはならなかった。
その書類こそが、先に挙げた問題だ。
あの作戦を私は自艦隊と中佐の艦隊だけで成功させた。これは、私や艦娘たちが信頼できる環境を作りたかったことからの判断なのだが、それが上のお歴々には信じがたかったらしい。
いつもなら受理されるであろう報告書に大量の疑問符が付けられて送り返されたのが昨日。それから、実際に参加した彼女達にもういちど聴取を行ったり当日使っていた作戦簿を見直したりして彼らの示した説明不十分な点(と言う名の言いがかり)を説明する附録を作成している。それが明日までに完成させなくてはいけないものの正体だ。
と言っても、流石にこの時間ともなればそのほとんどは完成している。後は誤字脱字などがないかチェックして送るだけだ。
休憩に何か飲み物でも入れようかと考えていたとき、突然執務室の扉がノックされた。
「貴方、私です。手が空いてないので扉を開けてください」
扉越しの頼みに応えて扉を内側に引いてやると、その先に声の主が立っていた。
山城の両手をふさいでいたのは山城の全幅よりも大きいお盆。それの上には切られて120度ほどしか残されていないホールケーキにそれを切る用のナイフ、切った後にそれを置くための青い線がプリントされた陶器製の皿二枚とそれを食べるために使うであろうフォークが二本。さらには、横に倒された洒落た英文のラベルが巻かれている瓶とそれが注がれる時を待っているグラスが二つ、乗せられていた。
「貴方、今夜はケーキも食べてないでしょうしお酒も飲んでいないでしょう?このケーキ、せっかく祥鳳が作った自信作なのだから食べないと損ですよ」
山城はそう言ってお盆にのせられたそれらを綺麗に机に並べる。
ケーキは見事に二等分に分けられ、それぞれ皿に山城によって移し替えられた。
「ほら、貴方」
山城は、ソファーの右端へ座り、隣の空いている場所を山城の細く白い左手でたたいて、私を催促する。
その左手に一筋の線がキラリと光っている。同じものが私の左手にも…。
私は、山城の言う通り示された場に座ると、山城は私にグラスを持たせその中に瓶の中の液体を注いだ。
注がれた液体は薄い桃色をしており、グラスに注がれた瞬間からシュワシュワと大量の気泡を生み出している。
山城は私の分を注ぎ終わってから、机の上に置かれた自らの分も注ぎ、瓶を置いてグラス手に取り、
「メリークリスマス、貴方」
とグラスを上に少し掲げるようにして私に近づける。
私は、それに対して
「メリークリスマス、山城」
と返して山城のグラスにぶつけずに、それを保持している肌色の指に私の指を軽く当てた。
音がないまま乾杯をし終えた後、互いに自分の身体に気泡を生み出す魔法の薬を染み込ませる。
ほんのりと甘く、アルコールも微量だが感じる。そして何よりも炭酸特有の口の中で小さな泡がはじけるような感触を味わう。
それらを堪能したら、次に私は皿に盛りつけられたケーキに手を付けた。
ケーキは、見事に二層になっている。層と層の間にはスライスされた苺と生クリームが挟まれている。そしてケーキの屋上にも生クリームが乗せられ、その中でみずみずしい赤色をした苺が一つ輝いている。
扇形の中心角を切り取るかのように私はフォークを入れていく。
切り取られたケーキは角が一つ増える。
そして、切り取った部分を自らの口の中に入れる。
スポンジのふわふわとした触感と甘い生クリーム、その中で光る苺の酸っぱさ。
これらが見事にマッチしており、私の口から出た感想は
「おいしい」
の一言に尽きるのであった。
「それはそうでしょう。祥鳳の自信作なのですから」
山城は私が味わっている内に自らのケーキを半分ほどの大きさにしていた。
「お前、食べるの速いな」
「だって、本当においしいですもの」
確かにと、心の中で相槌を打ちつつ、私は目の前の白いごちそうを切り取って口へ運ぶ。
私がそれを食べ終わった頃にはすでに山城はそれを平らげており、グラスの中に二杯目となるシャンパンを注いでいた。
私もグラスに残ったそれを飲みほす。すかさず、山城が酌をしてくれる。
「で、一体今は何をしていたのですか?」
山城がそう聞くので、今まで私が行っていた附録の作成に至ったまでの過程を話してやる。
「あら、私が離れている間にそんな面白いことになっていたのですね」
「まぁあな」
山城はあの作戦以来、近海の対潜哨戒以外の業務は全て行っていない。その中には秘書艦の仕事も含まれている。
基本、私の秘書艦は扶桑と山城が交代で行ってくれていた。しかし、山城がそれを断ったので、今は手の空いていた艦娘(主に長門と赤城)に入ってもらっていた。
当然、そのような状況なので山城はあの作戦以降の私の業務については何も知らないのであった。
それどころか、あの日以降私と共に寝る日はない。私はそれに加え報告書とそれの附録の作成に追われていたので、山城と会話したのは書類作成のための聴取くらいであろう。
山城がなぜそうしはじめたのかについて、私は山城自ら説明されている。
曰く、腑抜けた、そうだ。
「あの作戦が終わった後。いいえ、〝彼女〟を倒した瞬間からでしょうか。私の何かがすっかりと落ち着いてしまって何をすることも億劫になってしまったのよ。もちろん、貴方の手伝いや他の子達のために頑張りたいと言う気持ちもあるのだけれど、それをかぶせている何かがあるのよね。何もしないと海の上に立つ方法でさえも忘れてしまいそうだから楽な近海の対潜哨戒(本人は対潜が一番考えなくていいので楽と考えている。決してそれが簡単であったり手を抜いたりしていいものとは考えていないがこの言い方は誤解を招きそうだ)をやらせて頂戴。あと、秘書艦もしばらくお休みさせてください。多分ミスを連発することになるでしょうから」
そう言って以来、山城はずっとこんな感じだ。
山城の空いた穴は、ビスマルクと長門に代わってもらって出撃している。ビスマルクは元々出たがりであるからむしろ喜んでいた。
長門に関しては
「私にも山城のそんな気持ちに身に覚えがある。そんな時もあるからゆっくりするといい」
とやさしく語りかけていた。
その時の長門の顔がとても柔和で穏やかなものであった。
「なら、お邪魔したかしら?」
課された仕事に追われる私に対して山城はそう言った。普段であればもっと手伝えだの確かに邪魔だったと嫌味を言う私であったが、今の山城をおちょくる気分にもなれなかったので
「いんや。もうほとんど終わってる。あとは細かいチェックだけ」
と現状を素直に返した。
山城はそれを聞くと、山城には珍しく
「それはよかった」
と上機嫌に返した。
それから、互いにあの日以降に何をしていたかを話した。
私の方は明石が、私が忙しいのをいいことに謎の新薬開発の許可願いを紛れ込ましたことなど執務室からわかる艦娘たちの様子を話す。
反対に山城は、山城自信が泊地内を歩き回って見たり話したりした艦娘の様子を話す。
互いに互いの事を話しているようで実際は自分たち以外の艦娘の話をしていることに気づいてはいる。どこか話が第三者視点から変わらなかったのだ。それに気づいているのだが、だからと言って独断自分の事で話すこともないのでそのまま続ける。
山城は自身の目で見たここの様子を客観的に伝える。今までもこうしたことは山城に一任してきたが、それとはまた角度の違う、本当に何でもないような日常を切り取った内容を精査して言葉にしているようであった。
それはそれで楽しいので黙って聞いていたが、やはり話慣れていないのか山城はよく言葉に詰まっていた。
それでも楽しそうに話す山城。
今日までのこれは、山城にとってとても有益であったんだなと、山城の表情から私はそう思った。
「――だから、島風は結構大人しい子だということを実感し…あ、無くなってしまったわね」
山城はそう言って、ひっくり返している瓶をお盆の上に置く。
「あら、もうこんな時間じゃない。楽しいときって本当にあっという間ね」
時計の針はそろそろ2時を指そうとしている。いつの間にかイブからクリスマス当日に日を跨いでいたわけだ。
「そうだな。俺も疲れたし寝るかな」
そう言って両手を上に上げ大きく伸びる。
同時に私があくびをしているさなか、山城はこう告げた。
「私、実は長門からクリスマスプレゼントをもらっているの」
あくびを終えた俺は、へー、どんなもの?と聞く。
「それはね、明日の昼から明朝にかけての出撃の権利よ」
「ほーそれはそれは」
艦娘同士の出撃日の交換は俺に一度話せば原則認めてやっている。
「それは構わんが、またどういう風の吹き回しで?」
「逆よ、貴方。今までが変だったの。むしろ本来の姿に戻ったと言うべきね」
そう言いながら後片付けをする山城。
「まーそれもそうか」
確かに、あの日からが特別であっただけと考えられるか。
「ええ。それに明日は赤城、吹雪、白雪の三人とでしょう?なら明日が久々の復帰に最適じゃないですか。流石に復帰直後に旗艦はよくないと思ったから、旗艦を赤城になってもらって、吹雪と白雪の二人で私が足をひっぱった時にカバーしてもらいおうと思って」
机の上に広がっていたものは、既にお盆の中に納まった。
「わかった。お前の事だから話もすでに通してあるんだろう?」
「ええ。既に三人からは了承を得ているわ」
「ならいい」
それなら、私が口を挟むことはない。
「でも、それでもまだ私は不安です。ですから貴方からのプレゼントとして頂きたいものが有るのですけど」
「なんだ?」
「あの時にもらった応急修理女神。彼女たちをそのまま私が持ち続けることを許してほしいです」
応急修理女神。ダメコンの概念が強く表れた妖精たち。彼女たちは艦娘が不意に強い衝撃を受けて沈みそうになった時、一度だけ彼女たちの存在と引き換えに受けた損傷をすべて回復させる不思議な力を秘めている。
あの日、俺は彼女たちからお願いされたこともあり、彼女たちを山城に託した。そして、それは使われることなく終わった。
「俺は別にかまわないが、彼女たちはそれでいいと納得しているのか」
「もちろんです。彼女たちは私のために頑張ってくれるそうです。無論、そうならないように心がけますが、私は決して沈みたくはないのでお守りとしてついてきてほしいです」
「なら、俺から言えることもない。彼女たちを連れて行ってあげてくれ」
「ありがとう、貴方」
山城はそう言うと両腕を広げて私の隣から強引に抱きついてくる。
山城がこうして肌を合わせて喜びを表すのは珍しい。それこそ、あの日以来だ。
私は、山城のその行為に、ただ自らの手を山城の片腕に重ねることでしか返すことができない。
「では、私からも一つプレゼントをあげますね」
山城がそう私の耳元で告げ、そのまま顔を下へ動かして。
「ちゅう」
私の首の右側面に唇をつける。唇をつけられた箇所は吸われているのか、何かに引っ張られている感覚がする。
それを堪能するように何度も私の首に吸い付く山城。俺はと言うと、山城のこの行動に固まるほかなかった。
「おまけも受け取ってください」
山城はそう言って、私のシャツを軽く引っ張り、俺の右肩付近を露出させるとそこへ向かって
「かぷっ」
と噛みついた。
それもまるで肉を咀嚼するかのように何度も何度も唇放さす、歯だけをガシガシと波打たせ、何度も噛んだ。
「これでいいでしょう。これは確実に明日、赤く腫れますね」
山城は自らが今付けた二つの傷を山城の指先でゆっくりとなぞりながら、明日の様子を思い浮かべているのか恍惚の表情を浮かべる。
このあたりで俺は我に返り、明日の秘書艦は誰であったかを思い出す。
「…明日はビスマルクか。お供のレーベとマックスに質問攻めにあいそうだ」
あの二人はなかなか進んでいる。誰が教えたのだろうか、それはわからない。
「いいことを教えてあげます」
俺から離れ、すでに両手をお盆にかけている山城が告げる。
「明日の秘書艦、ビスマルクじゃないですよ。ビスマルク達はクリスマスをゆっくり過ごしたいと言っていたので、別の方に変わってもらっていました」
確かに、彼女たちは以前からそう言っていた。
「じゃあ誰が来るんだ?」
「長門です」
「あー長門か。…そうかぁ」
「ええそうです」
山城はそう言ってクスクスと悪戯っ子のように笑う。
長門は察しの良い艦娘だ。
そう、察しがよすぎるのだ。
察しの良い彼女であるが、その憶測が間違うこともすくない。
そう、彼女の想像したことが現実と違っているは少ないのだ。
首元のキスマーク。二人きりの夜間の執務室。
状況証拠は完璧だ。
これから彼女が思い浮かべるであろう光景は想像に難くなく、かつ、彼女はそれが間違いであると言うことに気付かないであろう。
なぜなら彼女がそう思ったことが大体どうなのだから、それを疑うことを彼女がしているはずがないのだから。
「ちなみに、長門には執務室の近くを他の方が通らないようにして下さいともお願いしています」
「ええっ!?」
山城の言葉でさらにダメ押しされた。
「なんてことをしてくれたんだ」
「あの時の仕返しですよ」
山城はさも当然かのように言う。
「あの時って、あれは帰ってきた時のあれで終わったんじゃないのか」
そう、山城たちが帰投した時、それを迎えに行った桟橋で。
「あれは言われた時の分。これはその後、連絡に出なかった分です」
「まじかよ…」
山城は俺の反応に完全に満足したのか、お盆を持ったまま遂に席を立つ。
俺も一緒に席を立ち、両手がふさがっている山城の代わりに執務室の扉を開けてやる。
「どうも、ありがとうございます」
山城はそのまま出ていくかと思ったが、左足を執務室に残したまま、廊下と執務室の境界線上に立ち止まる。そして腰ごと身体を回し、顔をこちらに向けて俺の顔を見ながら
「貴方。愛しています」
とはっきりと述べた。
「そうか。俺も愛してる」
俺はそう返して、山城の左肩に俺の右手を乗せ、山城の唇に自分の唇を近づけそのまま触れるだけのキスをした。
その後、顔を離した際に見えた山城の表情は、いつもなら大きく見開かれている赤い眼をまぶたの裏側に隠し、そのまぶたの線は緩やかな山なりのカーブを描いており、口元は両端の口角が美しく上がっていた。
そう、山城は満面の笑みを俺に返してくれたのだ。
その笑みは、とても美しくて、とても可愛らしくて、とても山城らしい暖かいものであったと山城のいなくなった執務室で俺は一人、納得していた。
「昨晩はお楽しみだったようだな」
「いや長門、それは誤解だ」
「今朝はなぜか、喚起をした後のようにこの部屋は涼しいな」
「そんなことはない。気のせいだ」
「首元、虫に刺されているぞ」
「それは知っているし、心当たりもあるがまずは話を聞いてくれ」
「私は大人なビック7。提督殿の私生活にまで口は出さない」
「それは大きな誤解だビック7。大人なら、まずは話し合う必要があると私は思う。平和は対話の中で生まれていくものではないか」
「大丈夫だ。私と提督は既によく語らったではないか」
「いや、だからこそ改めての対話が必要だと俺は思うのだ」
「その必要はな…い…」
「…?おいなんだその間は。おい!なぜ目を逸らした!」
「いや…その…な。この…右肩のな」
「…これがどうした」
「いや、昨日は結構ハードだったのだなと思って…な?」
頬を赤らめてそっぽを向く長門。
それを見て、俺はまんまと昨夜の彼女の見事な復讐劇に嵌まっていたことを改めて理解させられたのであった。
生まれて初めてクリスマスを題材に書きました。
作者用時系列メモ
山城提督ケッコンカッコカリ済
山城返事済
H済
事件後、某戦い後
海峡突破後