山城嫁提督がだらだら書く、艦これの妄想置場 作:もののけティラミス
航空母艦瑞鶴とは不思議な艦娘だ。
姉とは違う緑を感じる黒い髪を二つに結び、私を見つめる眼は他の艦娘よりもくりくりと大きく、比較的大人びている空母衆の中ではめずらしい、まるで発芽したての子葉のような、生まれたばかりの若々しさを放っていた。
上官である私にも気後れすることなく自らの素直な気持ちをぶつけてくる彼女。
彼女と出会った当初、彼女の姉である翔鶴と気心が知れていたため、それが原因で何度も爆撃を受けた。
だが、それも昔の話だ。
改装を受け、装いを新たにした彼女。我が艦隊唯一のカタパルト化改装を受け、新兵器、ジェットの翼を手に入れた彼女は、かつて、敵視していた、そして彼女の憧れであったであろう加賀の戦果を超える活躍を挙げることとなり久しい。
にもかかわらず、彼女はそれで天狗になることもなく、さらに高みを目指すため、今でも加賀に稽古をつけてもらっていると聞く。
そんな、出会ったころの幼さが隠れた彼女であるが。
「あったまいったーい!!」
現在、私の私室で、いつもの元気さのかけらもない瑞鶴の顔が私の視界に映る。
「あれだけやめろと言ったのに飲んだのはお前だ」
「だって、提督さんがあんまりおいしそうに飲むから…」
昨夜、私が一人で酒を友に月見をしていたら、騒がしい彼女が入ってきた。
曰く「姉が居なくてさびしいからかまえ」とのことだ。
彼女の姉である翔鶴は、佐々木(私の指揮下の提督の一人)とケッコン旅行を楽しんでおり、しばらく此処を離れている。
艦娘は基本姉妹艦、またはそれに準ずる艦娘同士で相部屋になっている。しかし、翔鶴型航空母艦は、彼女とその姉の二人しかいないため、どちらかが居なければ、必然的にその部屋でもうどちらかは一人となる。
彼女はそれが嫌だったのだろう。隼鷹からくすねてきたと言う酒を片手に、まるでかつて彼女が私に放ってきた爆撃機のような激しさをもって、私の私室に突撃してきた。
そのとき、すでに彼女は酔っていた。
彼女自身は決して酒に弱いわけではなかったが、その日は私の部屋に来た時点で足取りや言動は怪しいものであった。
今から空母寮に送り返すわけにもいかず(艦娘寮と提督寮は別)しかたなく、中に引き入れ、彼女が寝るまで付き合い、そして今に至る。
彼女は、酒に強いがそれを生かさず、まったく飲みなれていなかった。
それがまたいけなかった。
「うー…最悪。二日酔いがこんなにきついなんて…」
今日は、彼女が初めて二日酔いを経験した記念すべき日となった。
「ほら水だ。飲め」
「ありがとう、提督さん…」
素直に水を飲む瑞鶴の姿は、久々に幼い雛のころを思い出させる。
ここしばらくは、彼女のこのように情けなく、頼りない姿を誰にも見せていない。彼女の後輩にあたる、特に葛城辺りは瑞鶴の子の姿を想像できないであろう。それほどまでに、以前の彼女が持っていた子供っぽさを、私は感じなくなっていた、
それは、翔鶴も同じであるらしく、佐々木からの話によると、翔鶴は、それはそれでさびしがっているようだ。翔鶴としては手のかかる妹であってほしかったのであろう。
そして、今の甘えん坊な彼女の姿を久々に見た私は、彼女の変わらぬ姿を見て、少しの安堵を覚えた。
艦娘の成長の速さには驚かされる。それこそ、私が恐怖を覚えるほどに。
「――提督さーん?聞こえてるー?」
瑞鶴が覗きこんでくる。改装と共に姉を超えた身長では、下を向いている私を覗き込むために、少し大きく腰を曲げねばはならなくなっている。
「ああ、少し考え事をしていた。なんだ瑞鶴?」
「お水のおかわりがほしいなって」
「立っているなら自分で取りに行きなさい…」
そう言いながら彼女のグラスを受け取り、水を汲んでくるあたり、私も甘い。久々に甘えられていることを感じ、それが悪くない気分だと言うことも手伝っているであろうが。
私から水を受け取った瑞鶴は、わーありがとう、などと言ってそれを口に含む。その瑞鶴のあんまりにもかわいげのある姿を見ると、翔鶴の気持ちを私も少し理解できるものだ。
私は、仕事に行くための着替えはじめる。艦娘と言う物に羞恥心を感じるほど、私は人間をやめていないつもりだ。
そして、彼女もそれを気にすることもなく、次は自主的に3杯目となる水を汲んでいる。
着替え終えた私は、唯一手元近くにない帽子を取りに行こうと振り返る。すると瑞鶴がいつの間にか近づいていたようで、なんだかワクワクしたような表情を浮かべ私を待ち構えていた。それでも、いつもの半分ほどしかない生気のない顔ではあるが。
「はい、てーとくさん」
私は、彼女に帽子を頭にのせられる。
「ありがとう瑞鶴」
「ううん。昨日迷惑かけたから、それを返しただけ」
それにしてはいささか小さすぎることだと思うがそこはあえて追求しなかった。
「ちょっとそのままね」
そう言って瑞鶴は私に身なりを整えるため、首元や胸元を触る。まるで、子供がおままごとで人形のお世話をしているみたいだ。
「はい、オッケー。ばっちし。いつもよりちょっとかっこいい提督さんだよ」
「はいはい」
私はそう返事をして、私室を後にする。
「どうせ今日は、お前は使い物にならんだろう。久々に休暇と言うことにしてやるから今日はゆっくり羽を伸ばせ」
「さっすが提督さん!わかってるぅ~!」
寝起きと比べて大分よくなったのか声色がいつものように明るくなりつつある。
私は、そんな瑞鶴に背を向け、私室の扉に手を駆ける。
ふと頭に思い浮かんだことを瑞鶴に問う。
「瑞鶴。昨日はどうして俺のところに来たんだ?加賀のところにでも行けばよかっただろうに」
その問いに対して彼女はこう答える。
「提督さんに久々に甘えたいなって思って。提督さんならだれにも言わないでくれるでしょう?」
彼女の素直な感情を受けとめ、私は「そうか」とだけ返し私室を出る。
装甲空母瑞鶴には、この返答で十分だ。
―雛鳥は成長し、親鳥を超えたが、まだ成鳥には程遠い―
ふっと艦これSSを書きたくなったので即興で。
瑞鶴は翔鶴から遅れるほどかなりの月日が経ちました。そんな彼女ももう98レベルです。
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