まるで月と太陽。だとしたら俺は月で仁藤は太陽だと思う。
時に暑苦しく鬱陶しいと思うところも含めて。
そんな仁藤攻介の祖母がやってきた時、俺は全力で平静を装った。
正直、心の中はパニックに近かったと思う。
なぜならフェニックス戦の直後……仁藤を襲ったのはついこないだの事だからだ。
俺とあんな関係になってから、仁藤は無駄に女の子へ目を向けるようになった。
自分は女が好きだと思い込みたいような勢いであの子が可愛いこの子も可愛いと騒いでいる。
コヨミの事も可愛がろうとして、地味に嫌がられてるところは笑えた。
その無駄なあがきのような行動も俺には可愛く見えるんだけど。
そんな時に仁藤の祖母が現れて仁藤はさらに迷走し始める。けれどその祖母がゲートなら話は変わる。
仁藤の祖母なら俺にとっても祖母同然だ。いつもより気合いをいれて守らなければ。
大切な仁藤の祖母だから。
だがまたしてもあいつ
仁藤は俺の調子を狂わせる。魔法少女ビーストってなんだよ
ファントムに惚れられたらどうするんだ
って、それはないか
夜、キャンプ場にいた仁藤の元を訪れるとあいつは寂しげな顔をしていた。
寂しげに祖母は厳しい人だったのだと語る。
なあ仁藤、おまえは今どんな表情をしているかわかってるか?
本気で祖母を疎んじているのなら、そんな寂しげな顔はしないぞ。
「晴人、俺の代わりにばあちゃんを福井まで送ってってくれ」
そう頼まれた俺は断ることをしなかった。
仁藤は祖母の事を大切に思っている。そう思えたからだ。
祖母がファントムに狙われる中で仁藤なりの葛藤もあったと思う。そして俺はまだそこに立ち入ることはできない。
だけど祖母を守ることで手を貸すことはできる。仁藤の力になってやれる。
フェニックスを倒した今の俺ならそこらのファントムに苦戦することはないはずだから。
ただファントムへの止めはあいつに譲らないとな。
魔力をあいつに食わせてやらないと
そうしてファントムを倒した日の夜、珍しく仁藤が俺のところにやってきた。
聞けば仁藤は自分で福井まで祖母を送っていく事にしたらしい。
「この前は晴人に頼んだけどさ。やっぱこういうことは自分でって思ったんだ」
「ふぅん、いんじゃない?」
「なんか悪いな。今回はなんか……」
振り回しちまって、と仁藤はいつもではありえないほどの小声でつぶやく。
そんな仁藤に近付き、俺はじっと仁藤を見つめる。
すると仁藤は分かりやすいくらいの戸惑いを見せて顔を背けた。
「しばらく会えないってこと?」
「そっ……!」
戸惑う仁藤の冷えた手をつかんで、俺はそれを自分の頬に当てる。
「今回は仁藤に食わせたんだから、俺にも食わせてくれないか」
「っ! ……それは……っ!」
「嫌ならいいけど?」
仁藤は人が良いから頼まれると断れない。俺はそんな仁藤の性格を利用して自分の欲望を叶えてる。
福井まで祖母を送ると言うことは実家に帰るということだ。だったら何日も帰っては来られないだろう。
だから抱き納めじゃないけど、俺は何度も仁藤を食らった。
「俺とキマイラ……どっちが貪欲なんだろうな?」
「知るか……っ!」
キャンプ場にある仁藤のテントで、俺はグチグチと音をたてながら腰を動かしている。
仁藤は前ほどつらくはないらしく、俺にしがみついて声を漏らしていた。
それだけで、酷く安心する。
仁藤の中は熱くて生きてる感触が得られる。
俺も仁藤も戦い抜いて、生きて夜を迎えられた。その安堵感と快感に溺れかけながら俺は馬鹿みたいに腰を動かし続けた。
「仁藤……仁藤っ」
「…ぁああっ、ぁぁぁぁあっ!」
「…………っ!」
互いに声を重ねて絶頂を迎える。息も絶え絶えになりながら、俺は必死に呼吸を整えていた。
すると仁藤の手が俺の後頭部に伸びて優しく撫でる。
「……そっこー……帰って来っから……な」
疲れ果てたその顔に、仁藤は笑顔を乗せる。それはまるで、寂しがるなと言っているように聞こえた。
ああそうか。
俺はこいつが福井に帰ることで、また独りになるのが嫌なんだ。
だからすがるようにこうして仁藤を抱いて、今も放せないでいる。